Warrior beyond despair   作:レオ2

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おはようございます。愛美編最後です。

ほぼ戦闘です。GO!


~裏~覚悟

 新生アインクラッド 第27層の小島

 

 日本は深夜、アメリカはお昼、あの時の界王神の連絡から一週間経った今日は愛美を試す日だ。そして仲間の殆どはこの戦いを見に来ている。この時間帯になったのは単純に他の面々の時間の都合もあるが愛美が一番実力を発揮できる時間でもあるからだ。

対してキリト達側からの人は一日の疲れが一番溜まる時間だがそれはハンデでもあった。

 

「来るか、愛美は」

 

 そうクラインが呟く。

 

「来るよ。愛美は絶対」

 

 そうユウキが返す。最早愛美の師匠の風格が出ているのには誰もツッコまなかった。

 今、ALOは日本の時間とは同期していない。だから深夜であるのにも関わらず周りは明るい。そして小島の向こう側から飛んでくる人影を認めアリスが呟いた

 

「どうやら来たようですよ」

 

 アリスに言われるまでもなくその姿は徐々に大きくなっていく。そして小島の上空にまで来ると翅をしまいそのまま下降する。地面に着地寸前にくるりと回転し見事に着地を決めた。

しかしそんな体操選手顔負けの着地もこの面子の中では最早常識なので余り褒められないのが可哀そうだが。

 だけれどもそんなのは着地を決めた愛美にはどうでもよかった。一週間前とは仮想世界の順応能力が伸びているのは実感しているが。

 

「おまたせしてしました」

 

 それにはセブンが答えた

 

「大丈夫よ。元々私達が速かっただけなんだから」

 

 そう首をすくめた。しかし隣にいるレインはそんな妹を放っておき最終確認で聞いた。それも結構な……アイドルにあるまじき睨みを聞かせて。

 

「最後にもう一度聞くよ。本当に”戦場”に行く気?」

 

 その言葉に面子のほとんどの視線が愛美に固定される。最初は勢いのままに、その次は迷いがあった。だけど……そんなものはもうない。自分にとって光輝の存在を再確認したから。だから愛美の答えは

 

「私は行きます。光輝は私の彼氏で私は光輝の彼女、運命共同体だから」

 

「行きたい」ではなく「行く」。その二つは似ているようで違う。行きたいは願望が入っている。だが行くは自分の意志が完全に固まっている。その違いがレインには分かる。

 前回、一週間前は無我夢中って感じだった。自分が言っていることの重大さも分かっていない様子だった。時間を空けたのはそれを愛美に認識させるためでもあった。そしてその上で答えを聞こうと。だけれど答えは変わらなかった。ならやる事は一つ

 

「……分かった。始めよ」

 

 レインはそう言って面々から離れ小島のスペースが開けている場所まで歩いていく。愛美はレインが相手する事に特に意外に思う事もなくついて行く。

いや、愛美は誰が相手するのか聞かされていた訳じゃない。今レインが行動を起こし初めて知った。

 

 でも……そんなの関係ない。私に本当に覚悟があるなら誰が相手でも関係ない。ただ私の全力で私の今の力を見せたら良いだけなんだから。

 

 愛美はレインの前まで相対した。その距離は約10m。レインは目の前まで愛美が来たのに合わせその雰囲気を変えた。何時もの”お姉ちゃん”や”アイドル”ではなく一人の剣士、”紅の歌姫”として。

 そしてその変化は愛美にも分かった。だが、怖気づくこともなかった。レインはそのままメニューを開き決闘(デュエル)申請を愛美に送った。愛美はそれを概要を簡単に見て受諾した。

 二人の間に決闘開始のカウントダウンが始まる。その一分間で二人はそれぞれの剣を抜いた。レインは何時もの真っ赤な二振りの剣を、そして愛美は

 

「愛美ちゃんの剣が新しいものになってる」

 

 そうアスナが呟いた。事実その通りで前までの愛美の剣は真っ蒼な剣だった。だが今愛美が持っている剣は蒼も残しつつその中にピンク色も織り交ざっている。その剣の模様にレインは少し驚いたように見る。その混ざりようは光輝の剣にどこか似ているからだ。

 唯一ユウキだけはそれを微笑んでみている。あの剣の素材を一緒に探したのは他でもないユウキだからだ。そしてリズも似たような顔だ。あの剣を打ったのはリズだからである。

 それ以外の面々には今日が初披露だ。

 

「キリトよう、お前はどう思う?」

 

 クラインが決定的に主語が欠けていることを聞いてきたが言われるまでもなく愛美の事というのは分かる。キリトはカウントダウンが進むにつれゲームではない雰囲気を出し始めている二人に聞こえないように言った

 

「前の愛美なら間違いなく勝てないだろうさ」

 

 ただそれだけだったがキリトの言わんとしていることは分かった。キリトは「今の愛美」の強さは分からないと言いたいのだ。ちらりとユウキを見るとユウキは自信があるのか意識しているのかは分からないが口元を緩ませている。

 そしてキリトは二人に視線を戻した。

 決闘は完全決着モード、どちらかのHPを消し飛ばすまで戦い続ける。SAOでは忌避されてきた決闘方だ。HPが0になると比喩なしで死んでしまうあの世界ではこの決闘方は論外だったのだ。ただALOでは珍しくもないが。

 

 カウントダウンが迫ってる。お姉ちゃんの雰囲気はそれに伴って鋭くなっていくのが分かる。私はまだあんな雰囲気は出せない。勝てないかもしれない。だけど……勝てなくてもいい。これは実力を見せるための戦い。ただ全力でぶつかって戦うだけ。この決闘はただの通過点、本当の敵は自分自身。

 あなたはいつもそうしてきたんでしょ、光輝? 

 

 カウントダウンが0になった

 

「──!」

 

 愛美が飛び出した。たった10メートルの距離を一瞬で駆け抜ける。そしてそれに伴って使った技は片手剣・突進技<レイジ・スパイク>だ。蒼色の光を伴って愛美はレインに突き抜ける。

 だがレインはそれを簡単に横にずれることによって躱す。

 そして自分もソードスキルを発動させる。片手剣・単発技<スラント>

 

「ふっ!」

 

 だが愛美はそれを見越して技後硬直に入る前に次のソードスキルへ移った。ソードスキルと言っても体術の技、単発水平蹴り<水月>だ。その技自体に驚きはない。光輝もこの世界ではよく使っているからだ。驚いたのはそれではなく

 

「スキルコネクト!?」

 

 それに驚きの声を出したのはセブンだった。

 スキルコネクト……SAO時代からキリトやレインが使っているシステム外スキル。基本的にソードスキルは連続して使えない。過去の光輝はその隙をついて攻略組をボコボコにした。だがこのスキルコネクトはソードスキルを終える直前にアミュスフィアが行っている脳の出力を切り替え次のソードスキルに繋げる。そうする事で実質的な連続攻撃になる。だがそのタイミングがとんでもなくシビアで繋げるソードスキルを切り替えるタイミングはコンマ1秒以下、意識的にアミュスフィアへの運動命令を左右に分ける必要があるから違和感がある。おまけに次に繋げるソードスキルは前のソードスキルの終わりと開始地点が近くないとできない。

 この世界ではキリト、レイン、そして二人ほど上手くはないが光輝しか出来ない高等技術だ。それをこの短時間で仕上げて来た。

 

 スキルコネクトをやったことで少し違和感があるけれど何とかお姉ちゃんを後退させた。私はキリトさんと違って二刀流じゃなくて体術とのスキルコネクトだから幾分かマシだけどね。

 水月も技後硬直が短い、私は技後硬直が解けたのと同時にお姉ちゃんにまた突進した。

 

「はっ!」

 

 愛美が1週間前とは違うスピードで剣を振るう。光輝のSTR一強の剣と違い愛美はバランスのよい剣を使っている。だから振るわれるスピードはある程度早い。だけれどもオーディナルスケールをやるにあたって光輝から地獄の修業を乗り越えたレインからすればまだ遅いと感じられるスピードだった。

 そしてそれとは違う問題も愛美にはある

 

「くっ……」

 

 それは手数だ。愛美は片手剣一本に対してレインはいつも通りの二刀流……いや仲間からしたら訳あって多刀流だが今は二刀流を前提とする。元々二刀流は二振りの剣があるからこそある防御力がある。単純に使える武器が二つあるのだから攻撃出来る場所が限定される。だからレインからしたら攻撃される場所が予測しやすい。

 本来、剣道のルールでの二刀流とは長刀と小刀で二刀流だ。そしてそのリーチの短さやルールの関係で小刀の方で一本とる事は珍しい。

 だがレインはSAOの頃から部類としては長刀の二刀流だ。おまけに基本的にやるかやられるかPvPでは二刀流にルールはない。つまり現実の剣道と違って制約がない。

 後は二刀流元来のデメリットしかない。

 

「やあっ!」

 

 レインが叫び愛美の剣を片手剣一本でパリィしてもう一つの剣で切裂く。愛美はそれをガード出来ずにまともに食らう。愛美の左端のHPが減少する。まだ8割はあるがレインはほぼ10割だ。まだ決闘が始まって5分も経ってないがこれだけで二人の実力差が表れ始めた。

 愛美は攻撃を貰ったことによりそれ以上追撃はさせまいと体術後方宙返りスキル<弦月>で牽制しつつレインから距離を取った。

 

「はぁ……はぁ」

 

 愛美は想定よりも動かされることに今更気が付いた。二刀流の手数に対抗するためには愛美も剣のスピードを上げ、更に反撃しなければならない。だが今のままだとジリ貧だ。反撃どころか防御に力を注がないとあっという間にやられる。

 

(強い……こんなに強かったんだ)

 

 光輝が異常なだけでレインはALOでも最強クラスに位置付けられている。基本的に決闘大会では選手よりもアイドルとしていくことが大半なので余りその実力は知られていないがSAO最前線の攻略組の時点で弱い筈が無かった。

 

「……まだやる?」

 

 レインは本気で愛美には残っていてほしい。もしかしたら……いや、恐らく光輝を助けに行った時誰かは必ず”死ぬ”。それこそ自分かもしれない。いや、いざとなったら光輝の代わりにレインは死ぬ覚悟がある。それは誰にも言ってない決意だがそれだけレインは今回の事に危機感を持っている。

 勿論、タイムパトロールという仕事は嫌いだ。だが……光輝が世界の為に必要な戦士なのはレインにも分かっている。そんな光輝の隣には愛美がいてほしいのだ。

 8年間も一途に光輝を想い続けた愛美なら光輝を任せられると思った。だがその愛美が来て最悪死んでしまったら光輝はどうなるか分からない。怒り狂うか戦意がなくなるか……だから愛美には残ってほしいからこその問。

 

「当然!」

 

 だが答えはそれだけだった。アスナにどこか似て頑固だなとレインは少し思った。だがそれだけだ。レインも一週間何も考えなかった訳じゃない。考えてもやはり愛美には残ってほしいという結論にしかならなかった。

 

「愛美ちゃんじゃ私に勝てない」

 

 どこかラスボスみたいな事言ってるなとレインは他人事のように思った。だが、冷静にいられたのはそれまでだった。

 

「そんなのは分かってます!」

 

 まさか普通に肯定してくるとは思わなかった。いや、前もそれを聞いて俯いてからそれ自体は自覚していたのかもしれないがそれを声を出して肯定するとは……

 

「だけど……あなたは今まで光輝の何を見てたんですか!」

 

 そこでまさか光輝の事が出てレインも少なからず眼を見開き驚きを表した。それを放っておき愛美は続けた

 

「光輝はどんな時も諦めなかった! どんなに相手が強くても退かなかった!」

 

 それは全て光輝の話じゃないのかと割と皆思った。だが愛美がこう言った理由は

 

「私は光輝の彼女、だから私も諦めない、退かない。光輝と同じ景色を……光輝の隣で見たいから!」

 

 その芯の籠った叫びにレインは動揺した。愛美の光輝への感情が愛美の力を引き出している。現に目の前に迫った愛美は先程よりもスピードが出ていた。

 

(早い!)

 

 今の愛美のスピードはシステムに縛られている愛美にはステータス的に絶対出せないスピードだった。だが愛美はあっという間にレインとの距離を詰めた。

 

「くっ!」

 

 勿論その変化は他の面々にも分かった。いや、誰もが分かった。それほどのスピードの変化だったのだ。システムを超えるその力の存在は面々も知っている。

 

「愛美ちゃんの思いがここまでなんて……」

 

 アスナがそう呟く。アスナも別の次元ではシステムを打ち破った事がある。それを感じたことはないがその難しさは知っている。いや、そもそも考えようともしなかった。自分達は所詮システムの中で動いている存在なんだと……そう決めつけていたらこの現象は絶対に引き起こせない。

 システムを超えるための力……それは心意、心の力が不可能を可能にする。

 面々の目の前では愛美が先程以上の手数でレインを押し始める。押し始めると言ってもようやく拮抗状態に持って行けただけだ。レインも最初はそのスピードに驚いていたが直ぐに慣れた。

 

「ふっ!」

 

 愛美が受けきれないタイミングでレインは剣を振るった。だが愛美は受けきれないのを直感的に悟り直ぐにしゃがんで躱す。レインはそのまま愛美に剣を振ろうとしたが直ぐに止めてバックステップした。

 先程までレインがいた場所に愛美の宙返りがさく裂していた。

 

「愛美ちゃんの戦い方が慣れてきている」

 

 リーファが少し汗を流しながらそう呟く。愛美の一挙手一投足が前よりも進化している。恐らく今の愛美の攻撃は殆ど無意識状態にまで持って行っていた。

 いや、頭の片隅では今の動きを神経を通して命令しているのだがそのスピードが先程よりも早い。愛美の体が……脳も合わせて戦いに適していっているのだ。

 面々の目の前では愛美が再びレインに肉薄していた。レインもそれに迎え撃つ。

 

「……驚きました。愛美の動きがレインについて行き始めています」

 

 アリスがそう呟いた。その言葉の通り二人はどこか踊るように剣を交わしている。剣と剣がぶつかり火花が散る。そのぶつかり合いの余波により互いのHPが徐々に削れている。だがその削られるスピードは愛美の方が若干早い。レインの方がSTRが高いのでその分愛美の方が削れるのだ。

 

「戦いの中で進化しているのか」

 

 キリトが思わずそう呟いた。徐々に愛美の手数がレインに追いつき始めている。二刀流の防御を崩し始めている。

 

「──!」

 

 レインは一旦仕切りなおそうと愛美の剣を力強くパリィして弾いた。そのまま攻撃する事も考えなかった訳じゃないがやめておいた。直にバックステップで距離を取った。

 だが直ぐに愛美が来ることが予想されたのでレインはギリギリシステムに認識されるくらいの声量で呟いた。

 

「エック・カッラ・マーグル・メキアー・レクン!」

 

 そう言ったのと同時にレインの上空から空間の狭間が現れた。愛美のそれを見て流石に眼を見開いた。だがそうしている間に事態は進んだ。その空間の狭間から無数のエンシェントウェポン級の武器たちが青白い燐光のエフェクトと共に愛美に向けて放たれた。その数はぱっと見では分からない程だ

 

「なっ!?」

 

 愛美は咄嗟に横に避けようとしたが幾らかの攻撃は当たってしまう。それによりガクンと愛美のHPが削れてしまった。愛美はこれ以上近づいたら今の攻撃の餌食になると考え距離を取った。

 

「今のは……」

 

 どう考えても運営側が用意したスキルではない。まさに剣の嵐というのに相応しいスキルだった。

 その攻撃方法に愛美は驚愕の顔を出した。レインはそんな驚いている愛美に向けて再び同じ攻撃……「サウザンドレイン」を放った。光輝が良く現実でも同じ攻撃をしている。

 

「レインちゃん……サウザンドレインまで使うなんて」

 

「それだけレインも本気なのよ」

 

 アスナの呟きをシノンが付け加える。サウザンドレインは釜に複数の剣を同時に投入するレプラコーン専用鍛冶魔法の熟練度をMaxにする事と剣を遠隔操作する事を可能にしたALOでは規格外の技だ。

 

「レインにこんな技があったなんて」

 

「ええ、驚きました」

 

 ユージオとアリス、二人も勿論レインと手合わせしたことがある。単純に光輝の姉と聞いて勝負を吹っかけた事はあるが……主にアリスが……その時レインはサウザンドレインを使わなかった。別に手加減していた訳じゃない。単純に接近戦がメインの二人とは相性が悪かっただけだ。この技を放つにはそれなりの距離も必要になる。いや、本当は0距離でもいいが自爆する事になる。

 

「くっ!」

 

 愛美が苦渋の声を上げる。近づいてもサウザンドレインの餌食になるだけだ。だが近づかなければ攻撃が出来ない。遠距離攻撃の魔法が使えない事もないが詠唱している間にサウザンドレインをくらいまくるのがオチだ。

 愛美がちらりと自分のHPを見ると5割を切り既にイエローゾーンに入っている。対してレインはまだ8割はある。このままではやられる。

 

(どんな攻撃も必ず弱点があるはず)

 

 完全無欠の技なんてない。どんなに無敵に見える技でも必ず弱点がある。少なくとも私が見て来たアニメの技はそうだった。お姉ちゃんのこの技にだって弱点があるはず。

 ちらりと使い終わった剣を見ると青白い光に包まれてなくなる。でもそれは単純にお姉ちゃんの技に装填されなおされているだけ。弾切れはないと思った方が良い。

 

「甘いよ!」

 

 愛美がサウザンドレインを避けるのに夢中になっていたらレインが愛美との距離を詰めていた。レインの二刀が愛美を襲う。

 

「はっ!」

 

 愛美は気合の声と共にレインの剣に自分の剣をぶつけた。だがレインの剣は2つある。愛美が止めた剣とは別の剣が愛美に迫る。愛美はその剣をバックステップで躱す。

 だが直ぐにサウザンドレインが愛美に向けて降り注ぐ。愛美はそれを咄嗟にバク転で躱す。

 

「流石に愛美も疲弊が出てくるか」

 

 キリトがそう呟く。愛美は先程からサウザンドレインから逃げるために神経を研ぎ澄ましている。だがそれをずっと続けるのはしんどいものがある。実際愛美はこの世界では疲労はないはずだが顔色は疲弊の色に染まっている。

 レインから再びサウザンドレインが放たれる

 愛美はそれを咄嗟に翅をだして上空に躱した。だがそれでもサウザンドレインが愛美に向けて降り注ぐ。

 

(手数が多すぎる。これじゃあ近づけない)

 

 愛美は飛びながらそう分析する。だがそこで疑問に思った。

 

 あれ? でも私はどうしてまだやられてないんだろう? 

 だって確かに技の名前の通りあちこちから剣が飛び出してくるのに私は躱せている。本当に一気に1000本の剣が……そうじゃなくてもまんべん(……)に降って来たら私なんてあっという間にやられているはず……? 

 

(そうか!)

 

 愛美がその事に気が付き再びサウザンドレインを観察する。

 

(やっぱり!)

 

 現実の光輝がこの技を再現するときは比喩なしでまんべんなくするがALOではシステム上それは不可能。

 愛美はレインのサウザンドレインが放たれる時、その剣たちがいくつかグループ化しているのに気が付いた。何本かの剣が一グループとして愛美に向かっていた。だからまんべんなく攻撃されてきた時よりも愛美の被弾率が少ない事に気が付いた。

 

(普通のソードスキルじゃお姉ちゃんには通じない!)

 

 愛美はそれに気が付いた時、瞬時に作戦を立ててレインに向けて飛翔した。レインはその愛美に驚きながらもサウザンドレインを放つ。だが愛美はそれを紙一重で避けていく。

 

「飛行の技術が桁違いに上がってる!」

 

 リーファが思わず叫ぶ。彼女がこの面子の中では一番飛行が上手いからこそ愛美の技術の高さが分かる。それもまだALOを初めて1カ月も経っていない、フルダイブもこのゲームが初めての愛美がその技術を披露しているのに驚愕を禁じ得ない。

 レインは焦らず何度もサウザンドレインを放つ。上、下、正面から順に愛美を襲う。だが愛美は殆ど無意識に、自分の戦闘本能にそれを任せ思考していた

 

(二刀流の防御力はさっき思い知った。それにお姉ちゃんは片手剣のソードスキルを使い手として全部知っているはず)

 

 サウザンドレインによって現れる剣たちを愛美は一つの巨大な弾としてとらえている。そうする事で一本一本の剣を躱すのと認識するのではなく弾として躱す事で攻略法を見出したのだ。だがそれで近づいたとしてもまだ問題がある。レインの二刀流の防御力はサウザンドレインが放たれる前にも思い知った。だからと言って普通のソードスキルを放ってもレインはその防御力に加え同じ片手剣使いとしてソードスキルを網羅しているのは自明だ。SAOから使っているのなら余計に知っているはずだ。

 

(だったら、お姉ちゃんが知らないあれをやるしかない!)

 

 レインに大ダメージを与えようと思ったらレインが全く知らない完全にオリジナルの攻撃をしなければならない。

 愛美が最後のサウザンドレインを躱しレインとの距離を詰めた。幾らかサウザンドレインがかすり愛美のHPは既にレッドゾーンに入っている。だが愛美は今やられる可能性を考えていなかった。いや、捨て身の最後の攻撃

 

(でも……お姉ちゃんに一泡吹かせる!)

 

 愛美の決意と共に愛美の剣が蒼とピンク色の輝きが溢れ出してきた。

 

「何あれ!?」

 

 セブンが思わず叫ぶ。2つの色の輝きをもつソードスキルは片手剣ソードスキルにはない。いや、そもそも2つの色が出るソードスキルがそもそもない。普通(……)のソードスキルにはだ。

 

「やあああああっ!!」

 

 愛美は気合の叫びを上げて剣を振り下ろす。レインはそれを剣をクロスして止める。だが、ソードスキルの威力にレインはその防御が一瞬崩される。

 愛美はその隙を見逃さず、呟いた

 

「フェアリー・ブレイブ・ロザリオ!」

 

 そこから愛美は弾かれたレインの胴体に一閃、初めてレインにまともに攻撃が通った。

 

「——!」

 

 その時レインは愛美の瞳を見た。愛美の瞳はレインを射貫いていてその瞳が光輝の蒼眼の時の眼に重なった。

 だがそこで愛美の攻撃は終わらなかった。そこから愛美が繰り出した技は面々が見たことのない技だった。

 まるで妖精の様に飛び回り剣を繰り出し薙ぎ、突き、一文字の攻撃を組み合わせた連続攻撃、レインはその半分もガード出来なかった。愛美の攻撃が攻撃するたびに早く加速して体が追い付かなくなっていたからだ。レインのHPが先程よりも削れる。レインは愛美の攻撃により態勢を崩した。

 

「やあああああっ!!」

 

 愛美の気合の入った最後の突きがレインの腹部に突き刺さり、蒼とピンク色の光が十字型に溢れ出し爆発した。煙が吹き荒れる。

 

「今の……マザーズ・ロザリオ? でも……」

 

 アスナが驚愕の声を出しユウキを見るとどこか誇ったような顔になっている。だがまだ戦いは終わっていない。それを後回しにして場面を見る。煙に包まれレインの存在が見えない。

 

「なっ!?」

 

 だが愛美は驚愕の声を出した。煙の中から赤色の光が溢れ出していた。愛美は直ぐに防御態勢を取ったがレインの片手剣4連撃、<バーチカルスクエア>の最後の一撃によって思いっきり弾かれてしまった。

 

(でも技後硬直が……嘘!)

 

 愛美はレインの技後硬直を狙おうとした。何とか態勢を取り直そうとした時、レインの右の剣が赤く煌めき真っ赤な炎が溢れ出していた。レインの十八番、バーチカルスクエアからのヴォーパル・ストライクのスキルコネクトだ。

 そしてレインはその剣で愛美を貫かんと突き出した

 愛美は咄嗟に眼を閉じ、自分が貫ぬいた場面を想像した。愛美の背中を駆け抜けるように爆風が吹き荒れた。

 

 だけど……私は貫かれた感じはしなかった。恐る恐る眼を開けてみると私の腹部すれすれで剣は止まっていた。ちらりとHPゲージを見るともうほとんどなかった。勝負は決した。

 

「はぁ……リザイン」

 

 余り言いたくない言葉だがここで駄々をこねる方がダサいと思った。私がそれを宣言したことでファンファーレが鳴り響きお姉ちゃんの勝利を知らせる。

 ……ただ悔しかった

 

「お疲れ様」

 

「ユウキさん」

 

 寄って来たユウキさんを見た後お姉ちゃんの方を向いた。お姉ちゃんは自分の剣達を鞘に納めていた。そして納め終わったら私をまっすぐに見て来た。

 私もお姉ちゃんを見返す。そうしている間に他の皆さんもやって来る。だけど皆さんもお姉ちゃんの答えを待っていた。……結果だけ見るなら私は置いて行かれても文句は言えない。でも……私の覚悟は全力で示した。

 

「……はぁ」

 

 お姉ちゃんはどこか諦めたようにため息をついた。そしてどこか悲し気な……しょうがないみたいな表情で言ってきた

 

「……危なくなったら逃げる事、約束出来る?」

 

 主語が抜けているが愛美にはそれが分かった。先程あった悔しさが抜けて逆に嬉しさが込み上げてくる。だから嬉しそうな顔で大げさともいえる程頷いた

 

「約束します!」

 

 レインはそれを聞き周りに向いた。キリト達はレインが見て来たことの意味を瞬時に悟りみんなして頷いた。

 

「愛美ちゃんも……光輝君を一緒に助けに行こ?」

 

 それがレインが今の決闘で出した答えだった。愛美は少し眼に涙を出しながら首を縦に振った。

 

 ★

 

 愛美はレインとの決闘の後、30分ほどお話をした後現実に戻って来た。愛美にはまだ問題がある。少し天井を見上げボーっとした後体を起こした。

 そして鏡で自分の姿を見て特に何もないと見て勇気をだしてリビングに踏み出した。リビングでは両親が団欒していた。

 あの日から愛美はまともに両親と話していない。だけれども……そういう訳には行かない。自分を大事に育ててくれたからこそ言わなければならない。

 

「お父さん、お母さん」

 

 愛美はただそれだけを言った。だがその声はどこか決意に満ちていた。それが分かったのだろう、両親はどこかやめてくれと言いたげな顔で愛美を見て来た。

 だが愛美の決意は変わらない。今までもこれからも……光輝の為に一歩を踏み出した

 




お疲れ様です。

「フェアリー・ブレイブ・ロザリオ」、愛美の11連撃オリジナルソードスキル。ユウキの協力の元会得した。マザーズロザリオとの違いは攻撃方法が違う。マザーズロザリオは基本的に突きが主体の攻撃だけどこっちは突き以外の攻撃を織り交ぜているが故に初見で見切るのは厳しい。
マザーズロザリオは突きが主体の攻撃なのでスピードはあるけれど光輝があっさりと躱し切れるほど躱せやすい弱点を極力なくした技。

…あれ?一週間でこれ作る愛美って大概やばくないか?ま、まあ光輝の彼女だから…多分大丈夫。

本当は決闘後の会話でフラグ立てようかと思ったけど長すぎて却下した。
次回、ヒルデガーン再開です。多分割と直ぐに出せます。
アンケート今日の12時に締め切ります。
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