先程まで近くで激闘が繰り広げられていたとは思えない静かさが今光輝がいる草原に広がっている。光輝はその静かさと共に吹く風に身を委ねながらタピオンが起き上がるのを待っていた。
その近くには既に悟飯はいない。
セルを完全に倒した悟飯さんは超サイヤ人4を解き俺達はタピオンさんを寝かせておいた草原まで移動した。単純に廃墟となったあの場所では落ち着いて休めないと思ったからだ。
……ただ悟飯さん,全然疲れてなさそうだけどな。最も悟飯さん達が行っていた調査の裏事情を知って少し不貞腐れたが。
「……じゃあ俺がぬくぬく休んでいる時に皆さんは超ドラゴンボールの調査をしていたわけですね。あわよくばシーラス達を倒すつもりで」
自分でも拗ねていると分かってしまう程の声色でつい言ってしまった。
あー俺もまだガキだな。
「大切な人達と過ごすことも重要だよ。大切な人がいるからこそ力が溢れてくる……そうだろ?」
違う次元では自分が弱かったばかりに大切な家族をフリーザに奪われかけた悟飯だからその大切さは分かる。大切な人達と触れ合い、自分の力がなんのために振るわれるべきなのか?
それを簡単に確かめられる方法でもあるのだ、大切な人と過ごすというのは
俺もそんなのはちゃんと理解している。だから悟飯さんが正論を噛ましているのは身に染みている。だけれども一言くらいあっても良かったんじゃないかなーとか思ってしまう。
……俺が足手まといなのはさっき思い知ったけどさ。魔人ブウを倒したからって皆さんに追いついたとか自惚れていた訳じゃないがあんだけ実力の違いを間近で見せつけられて落ち込まない奴いるのか?
(……だけど、こんなので落ち込んでいたら超えられるものも超えられなくなるよな。おじいちゃん)
圧倒的な力の差を見せつけられて尚超える事を諦めていない。その諦めの悪さが光輝の美点でもあり欠点でもあるだのだろう。
「うっ……う」
そんなうめき声が聞こえ光輝は振り向いた。そこには腕を抑えながら上体を起こしているタピオンがいた。
タピオンは苦痛の表情を見せながらも光輝を見て微笑んだ
「……やったんだな」
「ヒルデガーンは倒せました」
嘘は言っていない。ヒルデガーンを倒したのは正真正銘光輝の力によるものだ。その後のセルは悟飯だが。
「そうか」
「これでタピオンさんは自由です。だけど……また自分を犠牲にするような事はしないでくださいね」
何だかとんでもないブーメランが帰ってきた気がするが気にしない。多分みんながいたら総ツッコミを受ける所だった。
「ああ。また危ない時があったら光輝を頼らせてもらうよ」
それに光輝は頷きつつ立ち上がった。
「行くのか?」
「はい。俺も負けてられないので」
何にとは言わなかったがタピオンは何も聞かずに言った
「そうか……達者でな」
光輝はそれに頷き空を見上げて飛翔した。
『光輝君、二手に分かれよう』
悟飯は単純に時間的効率を考えてそう提案し光輝はそれを受け入れた。生きていたらまた会える。それに近くにいたら甘えてしまうかもしれない。
1人でいた方が強くはなれる。命の保証は下がってしまうが。その位はSAOのソロ時代に知っている。それでも……こんな状況でも強くなる為に1人でこの世界を歩きたかった。
それに
(あんなの見せられたら……うずうずしてられないだろ)
思い出すのは超サイヤ人4となった悟飯の背中、遠い遠いサイヤ人の究極形態。そして未来の悟飯と重ねたあの背中。早く追いつきたい。その内ではダメなのだ。一分一秒でも修業して悟飯やバーダック、タイムパトロールの戦士達と肩を並べて戦いたい。
守られるだけの存在にはなりたくない。
「よーし! やってやる! 絶対に超えてやる!」
そう口元を緩ませながら新たな戦場を探してスピードを上げた
★
地球エリア ヒルデガーンが暴れた廃墟
先程まで激闘が繰り広げられていた廃墟のビルの屋上、気と存在感を完全に消し去り廃墟を勢いよく通り過ぎていく光輝を見届ける存在がいた。
「彼が孫悟空が言っていた僕も知らないすげー奴か」
悟空の口調を真似し面白そうな表情をする。その名はフュー、前タイムパトロールの悟空と戦い撤退をした青年だ。
悟空の情報通りなら彼はこの世界に存在するのは彼一人だけ。それさえ分かれば探すのは簡単だった。フューは色んな戦士を知っている。だからその情報に合わない人を探せばいいだけだからだ。
「確かに、彼は興味深いね」
そう眼鏡をくいっと上げる。光輝が去っていた方向に身体を向けたまま独白を続けた
「それにあの気……あの仮面の男とは真逆だ。だけど……どういう事だろう。気の本質は一緒に感じた」
どこかの探偵のように顎に手をやり考えている。そんなフューの背後に人が現れた気配を感じた
「やあ、お帰り」
背後に現れたのは先程セルに暗黒ドラゴンボールを取りつかせた紅き仮面を付けた男だった。その手には無地の亀仙流の道着を着ている悟空が白目をむいて死んでいた。
「全く……それで何人目だい?」
「この世界に来る前のも合わせれば97人目だ。今回戦ったのは超サイヤ人3までにしかなれんかった」
期待外れだと言いたげな声で悟空を投げ捨てる。フューは肩を竦める。紅き仮面を付けた男は光輝が去っていた方角を見上げた
「それで……いつあの小僧と戦えばいい?」
「まあ待ってよ。流石に今の彼じゃ君に手も足もでないよ。どうせ戦うのなら彼が成長しタイムパトロールと一緒に戦えるくらいに成長してからの方が君にとっても都合がいいだろう?」
「ふん、俺にそれを待つ義理はないんだがな。何なら今貴様が私の相手をしてくれてもいいんだぞ」
フューは首をぶんぶんと振った。
「やめてよ。せっかく君の未来を教えてあげたんだから」
「……あくまでも利害の一致だ。その時が来たら人間の貴様を殺す」
「ハイハイ。まっ、その時までよろしくね」
そういってフューは姿を消した
お疲れ様です。
ヒーローズのストーリー楽しみだなぁ