佳境に入ってまする。
あの日から少しの月日が流れた。
俺は悟飯さんとトランクスさんと別れを告げ,またこの世界を旅していた。無限に広がる世界,いくつもの時空が融合した世界,そんな意味を越えてこの世界を俺は「インフィニットワールド」と名付けた。
俺しか使ってないけどな。と言う訳で俺は2,3日周期恒例の1人会議を始めた。偶にこうしないと自分が置かれている状況を忘れてしまうからな。
「さて,正直このままドラゴンボールを集めたとして,この後はどうしようか」
目の前にある究極ドラゴンボール達を見て唸る。まだ数は足りないがこのままいけば無事に集まるだろう。でも集めてもシーラス達の件が解決する訳じゃない。この世界を元の歴史に戻したとしてもそれでシーラス達が捕まる訳じゃない。それに俺にはまだ不可解だと思う事がある。
「どう考えてもあれヤバい匂いしかしないんだよな」
言いながら上空を見ると,そこにはうっすらと木の根元のようなものが広がっている。まるでこの世界を地面にして生えているみたいに,今の所俺の身体にも何ともないから放っておいているが,あんなものどの歴史でも見たことが無い。なら考えられるのはシーラス達が仕掛けた物だろう。
あれのことも含めてこの件を早く解決した方が良いのだろう。
「俺ももっと強くならないと,超サイヤ人ゴッドも超サイヤ人4もまだ使いこなせていないんだから」
俺がこの世界に来て
俺に愛はあるのかとかなんとか言って襲ってきた第二宇宙の戦士達もいた。まああれはあれで愛美の事を忘れないための眠気覚ましになったからいいのだが,他には悟空さんのお孫さんとかとも戦う羽目になって色々あったな。
「色んな時代の戦士達,羽休めする時間もそうないのは残念だな」
絶対にこの世界を終わらせたら有給使ってやると思いながら気を探る。どういう訳かこっちに凄い勢いで来る気が3つあるからだ。そのどれもが気は抑えているが巨大な気を隠し持っているのは分かる。
でも気の感じは別に悪者って訳じゃない。だから本来は恐らく戦う必要のない戦士達。それでも何故かこちらに真っすぐ向かってくる。何かの事情でこちらの気を探り当て向かってきていることが考えられる理由だ。俺もこの世界で強敵を倒しまくっているからそれなりに有名になってしまったのかなと現実逃避をしておく。
「……来た」
凄まじいスピードで此方に向かってきた3人組を見ると少し気が抜けてしまった。理由としては3人ともサッカーのチームユニフォームの様に赤と黒のタイツのような衣服を着ているからだ。メビウスとかに出た防衛隊の方がカッコいいと思うぞ。あとちょっとタイツはナルトさんの世界にいたガイさんやリーさん,それにベジータさんとちょっと被る。
……まあそんな事よりもがたいの良い巨漢の男がこちらの姿を認め,舐めるようにじっくり見てくる。この時点で少し嫌な予感がするからドラゴンボールを腰の巾着にいれておく。
「見つけたぞ,邪悪な者よ!」
3人の中で一番の巨体の髭のおじさんがいきなり意味の分からない事を言ってきた。確かに人を何人も殺しているから邪悪かもしれないが心は正義側にいるつもりだぞ。
「お前を倒し,この世界を救うのは我々プライドトルーパーズだ!」
「——ッ?!」
だけどその横にいたウサギの耳みたいな奴は俺の知っている人に似ていた。破壊神ビルスさんにそっくりな奴も意味の分からん事を言ってきた。
でもそれ以上に気になるのは真ん中で仁王立ちして俺を見ている灰色の男。
(こいつ……ただもんじゃない)
これ程近距離に来てるからこそ,その身に纏っている気を感じる事が出来る。今まであって来たどんな人よりも強い気を感じる。悟空さん達の本気を引き出したことが無いから何とも言えないが,恐らく悟空さん達と同等。
正直,この3人を同時に相手にしたくない。
「……何の事だ。俺を倒した所で何も変わらんぞ」
「とぼける気か! 貴様を倒せばこの世界を終わらせられる!」
「なに……?!」
お前らとは今初対面なんだが,すんごい失礼な事言われる。
「とぼけんじゃねえ!! シーラスって奴が言ってたぜ? お前を倒せば世界が元に戻るとな!」
情報の1つとしてシーラスの名前が出たのは一瞬動揺したが,意味不明だ。俺を倒した所で何も変わりはしない。というか,そもそもシーラスからの情報なんて嘘っぱちではあるだろ。……嫌々んなことよりも
「ざけんな!」
「悪は滅するのみ」
「はあっ!?」
なにがどうしてそうなった。お互い冷静に話し合えばきっと誤解は解ける……気がしないな。見た所なんか正義の味方って奴みたいだし……じゃあ人の話も聞けよと思った俺は絶対に悪くない。
だけど,でか物とビルスさんのそっくりさんは既に臨戦態勢だ
「ジレン,お前は奴の動きを見ていろ」
「先ずは俺達が相手だ!!」
「だから,俺にはあんたらと戦う理由がないんだよ!!」
「問答無用!!」
「なっ!?」
言い放ったでか物が,その身に宿る力を解放した。
マグマのように吹き上がった気が俺の身体に打ち付けてくる。その気は恐らくあのベジータさんに寄生したベビーとも張り合えるほどの力だ。
「なんて気だ!!」
「行くぞ邪悪なるものよ!!」
凄まじいスピードで突っ込んできたでか物を咄嗟に飛んで躱した。というか図体がデカいくせしてなんてスピードだよ。だけど,正直ここで受けに回ったら俺がやられる。あいつに対応する為に右の拳を握ろうとした。
だけど,その先にはビルスさんのそっくりさんが殴る準備をして待っていた
(読まれた?!)
「おせえよ!!」
光輝の頬に超速の拳が迫ったが,それをギリギリ首をひねる事で躱す。
けれども,次に迫って来た蹴りをガードする事は出来ずに吹き飛ばされる。その余りに早すぎるスピードに瞠目する。単純なスピードなら今まで出会ってきた敵よりも数段早かった。
つまりこの人物はまさに異次元のスピードを出す事が出来る,ならば考えられるのは
(違う! 俺の動きを見てから追って来たんだ!)
吹き飛ばされながら光輝はその手に手裏剣を出しビルスのそっくりさんに投げつける。
しかし,それを光輝ですら霞んだ速さで躱されると,頭上には再び現れてハンマーナックルで光輝を地面に叩き落とした。
落とされた先にはでか物の男が待ち構えている。
「チっ!!」
咄嗟に腰だめに気を溜めて下に放つ。
光輝としてはいつもの様にしただけだが,その技を見たでか物の男は驚いたように眼を見開いた。
「その技は……!」
驚きながらも,かめはめ波を片手で弾き飛ばしたのは流石だろう。
けれども,今のはただの陽動だ。額に指を当てた光輝がするのは瞬間移動,今この戦いを傍観しているジレンと言われていた男の背後に行こうとしていた。
「させねえよ!!」
「くっ!」
だけども,それを察知したビルスのそっくりさんが先程の超速で光輝に追いつき,強烈な蹴りで吹き飛ばした。
成すすべもなく近くの岩山に激突した光輝は,今の攻防を分析していた。
(なんてスピードだ。今の俺でも霞むなんて)
正直,灰色の男が控えているこの状況で超サイヤ人4にはなりたくない。
仙豆はあるが大事な時にとっておきたい……それが今のなのかもしれないが,まだ相手の能力も分からない状況では同じことを繰り返す事になってしまう。
「瞬間移動する前に追いつくなんて……」
叩き落した後はでか物に任せようとしていたのにもかかわらず,瞬間移動しようとした一瞬で俺に追いつくなんて普通の芸当じゃない。
ビルスさん程の恐ろしさは感じないが,それでも強い。さて,どうするかね
「貴様,先程の技は孫悟空が使っていた技か?」
けれども,そこで聞こえて来たのは馴染みのある名前。悟空の名前が飛び込んできた光輝は少し驚き思わず頷いた。
「何故お前がその技を使える」
「そんなの……悟空さんに教えてもらったからに決まっているだろ」
かめはめ波に限らず,光輝の使う技はオリジナルソードスキル以外は誰かから貰ったものが多い。
色んな人を師匠に持つ者の特権とも言えるが,愛美の世界ではただのハイブリッド戦士と言われている。
「ふむ……」
そう言ってでか物の男は光輝を舐め回すようにじっくりと観察し始めた。
でか物の男の横にジレンが並び立ち,でか物の男に頷いた。
それで何かを察したでか物も頷き,ビルスのそっくりさんと再び光輝の方に向いた
「しかし,お前は力の大会に姿を現さなかった。何故だ?」
「……さあ,なんでだろうな」
タイムパトロールの事を言うか,言ったとしてどれだけの効果があるか頭の中で考えた結果,とぼける事にした。最悪どこかにマーキングした飛雷神の所に飛ぶことにする。
「とぼける気か」
「……」
「良いだろう……ならば貴様を破壊しこの世界を救って見せる!!」
正義の味方……か。
ふと元の世界での自分の評価を思い出した。愛美の世界で光輝は英雄だったりヒーローだったり,悟空に倣って
アンチもいるが少数派で,殆どの人が光輝を英雄として称えている。
SAOの時も光の勇者と称えられた。本当ならキリトが解放の英雄と呼ばれるようになるのに,意識してなかったとはいえ歴史を変えてしまった。
そうやって色んな世界で所謂ヒーローと言われて来ても,光輝自身はその呼び名は好きではなかった。
「ふっ!」
気を解放し,超サイヤ人ゴッドに変身する。
メラメラと燃え上がる気が我が身に集約する。
「超サイヤ人ゴッド……か」
英雄……それはきっと悟空さんやベジータさん達みたいな人の事を言うのであって,俺には当てはまらない。
紆余曲折はあれどあの人達は自分の世界を守り切った。ドラゴンボールはあっても,何度も地球の危機を,時空の危機を救ってきた。それでも今もこの時に進化している。
一度は戦う事を諦め,大事な人を守れなかった俺とは違う。
……きっとこんな所がベジータさんの癇に障るのだろうな
だけど英雄と呼び名は好きじゃないが,あの城で皆に付けてもらったこの呼び名は大好きだ
「俺は蒼赤の戦士……西沢光輝!! 心してかかってこい!!」
俺のアイデンティティとも言える蒼赤の装備,背中の重みでそれらを体現したこの呼び名こそが俺にとって大事なもので決して消えないものだ。
例え悪に見えたとしても,本当の自分を見ていてくれる人がいる。
ビーターだった俺が,皆のおかげで『戦士』と呼んでくれたように。
「私は第11宇宙,プライドトルーパーズの自由の戦士! トッポ!」
「同じく,超速の戦士ディスポ!!」
何故かさっきとは違ってきちんと名乗りをあげた2人の正義の味方は同じ構えを取る。
俺も気をあげて構えを取る。
駆けだすのは同時
「「行くぞ!」」
3人は中央でぶつかりあう。
トッポとディスポに弾かれた光輝は螺旋を描きながら上昇し,気弾を放つ。それらを2人は縦横無尽に躱す。
(ディスポは兎も角,トッポとかいう奴も見た目に比べて早い)
牽制した光輝は瞬時に印を組んで影分身を出し,本体がトッポ,分身がディスポに迫った。
「ふっ──!!」
「甘い!!」
トッポが光輝の蹴りを完璧にブロッキングしてその大きな腕で掴もうとしてくる。それを見た光輝は直ぐに足を引き回避する。
しかし,それはトッポも読んでいたのかすかさず拳が迫って来る。
その剛拳をまともに食らえばダメージを貰うのは必須なので手をクロスしてガードする。
「ちっ!」
それでも尚パワーが凄まじく簡単に吹き飛ばされる。
一回転して空中で止まりながらもトッポに迫りながら今度は目にも止まらぬラッシュを仕掛ける。トッポが自分の手を捕まえられないように速さを重視したラッシュ。
「む!」
その凄まじさにトッポは眼を見開く。
しかし,重さを捨てたラッシュではダメージを与えられない。トッポも数回の攻撃でその軽さを見てダメージ覚悟で光輝の腕を掴む
「しまっ!」
「ジャスティス・クラッシュ!!」
腕を掴んだ彼はそのまま光輝の肩を外した
「うがあああ!」
今までになかった攻撃に呻き声をあげ,必死に歯を食いしばって耐える
(関節技?! でかい癖になんて器用な)
骨をへし折る事は光輝にも出来るが,関節技は練習したこともないので身をもって喰らった時の対処法は分からなかった。
けれど,それは普通の人間の場合だ。痛みを我慢し,片手で印を組む
「なにっ?!」
千鳥のさえずりの様に”チチチチチッ……”と音と共に光輝を中心に雷鳴が迸りトッポを襲った。トッポは咄嗟に光輝の拘束を解き緊急脱出する。
光輝も離れたのを確認すれば直ぐに後退して,外された関節を強引に戻す。
「ッ,……いてえな」
関節技……俺がもしまだおじいちゃんに習っていたのならもしかしたら身に着けていたかもしれない技だ。日本の武道も一応嗜んでいたおじいちゃんなら知っていた可能性はある。まあ,当時まだ6歳の俺に教えるのは早いと思っていたから知っていたとしても教えていなかったと思うがな。
けれど,向こうも俺の技には意外性があってみたいで驚きを表していた。
「このような技を持っていたとは……」
「パワーじゃ勝てない敵に勝つには搦め手も必要だったもので」
トッポがチラリと影分身とディスポを見ると,千鳥を纏った光輝とディスポが超速を越えた速度で激突していた。
ゴッドの赤,千鳥の雷鳴を纏いようやく追いつくことが出来るスピードに舌を巻く。
(正直,影分身を出し続けながらこいつらの相手は厳しいな)
パワーのトッポ,スピードのディスポ……同レベルのこの2人を1人で相手をするにはやはりこの2人を分断させるしかなかった。
ディスポの超スピードのからくりも分身の光輝が見つけてくれると期待し,目の前の相手に挑むしかない。それでも勝てる保証がないのが現状だ,何故なら
(こいつら本気じゃない)
「その通りだ」
心の内を読まれたのかトッポが厳かに告げた。
「早く本気を出さねば死ぬことになるぞ」
そこで分身光輝の経験が本体光輝に還元されてきた。凄まじい乱撃戦とスピード勝負の経験。けれど,それだけで充分だった。
分身の情報が来たと言う事は
「へっ,俺を相手に分身だけとは舐められたものだぜ」
背後に腕を組んで現れたディスポがいう。
(……成程な)
分身光輝から得られた情報に頷く。
このままではやられてしまうのがオチだけど,手がない訳じゃないと思った。
でもこの2人の実力もそうだが,こちらを腕を組み観察しているジレンの実力も未知数だ。
けれどもやるしかないのだろう。
「お望み通り見せてやる,俺の本気を!! 正義の味方が変身の邪魔なんてしねえよな!!」
気合一閃,神の気ではなくサイヤ人としての気を全開にした
「「なにッ?!」」
先程までのシンプルな超サイヤ人ではなく,金色のオーラを纏う光輝に驚きを隠せない。
自分達の世界で見た悟空やベジータの姿とは違うからというのもあるが,神の気でもないのに甚大な気を高めている光輝に驚いたのだ。
「はああああっ!!」
猛々しい雄叫びがトッポ達を照らす。
その光の中から現れたのは,赤い体毛に黒髪へと戻った光輝の姿
「……行くぜ」
低く呟かれた言葉が聞こえた瞬間,2人には見えないスピードで迫っていた
お疲れさまです。
見てもらった通り11宇宙の3人は力の大会後なのである程度性格柔らかくなっていますし,光輝が善悪どちらかは察しています。その上で戦っているのはなんででしょう(すっとぼけ)。
因みに作者は11宇宙の面子は割かし好きです。
次回,VS正義の戦士クライマックス。