タイトルでネタバレしていくスタイル。ではGO
薄紅色のオーラ,天に逆立つ薄紅色の髪,漆黒の道着も相まって中二病みたいなイメージがついてきてしまうが悟飯さんが言っていた特徴には合致する。その姿も,俺の知っている超サイヤ人の姿とどれも合わない。
「お前……その姿は」
「ふっ……どうだ美しいだろう? お前らのセンスに合わせるとしたら……ロゼ……超サイヤ人ロゼだ」
ロゼ……フランス語の薔薇って意味だったか。人間を皆殺しにしようとした奴が付けるには最低なネーミングだ。薔薇の花ことば自体は本数で変わるとはいえ基本的に”愛”だとかそう言った意味だ。それを人間を皆殺しにしている奴がなのっているのだからこれを最低と言わずとしてどうする。
頭が割れそうな頭痛が続いているが,こいつだけは俺がやる。悟飯さんを……そして平和の未来を掴むはずだったトランクスさんの世界にやってきた疫病神。
神……? ブラック……? ロゼ……?
悟空さんの肉体を奪わなければ何も出来ないクズが
「名前なんざどうでもいい……貴様は俺がやる」
「ふっ,そんなボロボロの状態でか?」
「我々も舐められたものだな」
2人のザマスが小馬鹿にしたような笑みを浮かべて構える。その2人の隣にいるコートを羽織った男は興味深そうに光輝を見る。
「中々の精神力じゃないか,君の闘志が伝わって来るよ」
こいつは誰だよ
「おっと,自己紹介がまだだったね。俺の名前はハーツ,今は一時的にこの2人と協力関係なんだ。よろしく」
……今の自己紹介のタイミングが完璧だった。偶々かそれとも……心でも読むのか?
「察しが良いじゃないか。俺は人の心を読めるんだよ」
「嫌な能力だな」
色々な意味で,相手の考えが読める反面それは相手の心の闇も知る事になる。人間はそれを隠せるから人づきあいが出来るし関係が築ける。……まあ,そんな隠し事だらけの関係なんてどの道崩壊するような気もするが。そう言った意味ではブラックやザマスは欲に忠実な辺り付き合いやすい人間かもしれない。
光輝の心を読んだのかハーツは苦笑していたが,その内容をブラック達に話すつもりは無いのかだんまりしている。
臨戦態勢に再び入ろうとする光輝だが,未だに反動があり一瞬グラつく。そんな光輝を支えたのはディスポだった。
「おいおい,無理すんじゃねえよ」
その言葉共に光輝に背を向けたまま立ったのは先程まで光輝と交戦をしていた正義の戦士達。灰色の戦士がハーツと言う男を見上げ呟く
「奴は俺がやる。トッポ,ディスポ,お前達は孫悟空の偽物ともう1人を頼めるか」
「……? どうやら君は俺の事を知っているようだね」
ジレンは口を開く手間を考えたのか,かつての宇宙争乱の戦いを心に浮かべた。
宇宙樹の種を育て,自分と孫悟空達の前に立ちふさがったハーツ。宇宙樹の種を取り込み神域に達した金色の輝くハーツの姿,それに相対するはメタモル星人の融合技,フュージョンをした最強の融合戦士。
ハーツはその顛末を見て,少し驚いたようにジレンを見ていた。
「俺も貴様とはもう一度戦いたいと思っていた」
そう言ってジレンは俺との戦いでは見せなかった紅蓮の燃えるような気を纏った。纏った瞬間には周囲に吹き荒れる気の嵐が,俺に向けられている訳でもないのに簡単にダメージを与えてくる。
「——ッ?! マジかよ」
その溢れ出す気は,さっき俺と戦った時よりも遥かに強く本気ではなかったことが伺える。
(超サイヤ人4と蒼赤の力……あれが俺の全ての力だったのにこいつはそれも上回るのか)
ジレンの底知れない強さに戦慄していたら,どうやら敵さん側も予想外だったらしく誰もかれもがジレンに目を向ける。でも,ジレンだけじゃない。俺がきちんと立つことが出来たのを確認したディスポもジレンの隣に並び,”正義の戦士”達が並び立った。
(ていうか,こいつら最初俺を倒そうとしていたのにいつの間にか味方してくれてる)
今更のように思ったが,今はそれが頼もしかったので黙っておくことにする。……でもどの道,俺も戦う事になるな
「む……?」
トッポも気が付いたのか明後日の方角へと眼を向けた。まあそりゃあ気づくよな,こんな悪そうで感じようとするだけで悪寒を感じるような気は初めてだ。
奴らもこちらに向かってきてるその気を感じたのか同じ方へと目を向ける。ハーツだけは唯一その気が誰のものなのか分かっているのかニヤリとした笑みを浮かべたままこちらを見ていた。
俺もブラック達の動きに注意しながら見ていると,もう見たことのないような純度の黒の気がこちらに真っすぐ向かってきていた。顔には何かの拘束具の名残なのかマスクが付いていて,黒髪の長髪,肉体は筋肉隆々で見た目はパワータイプのそれはサイヤ人だと察した。奴はブラック達じゃなく,俺達の所に真っすぐ飛んできていた。
「俺と戦ええええええ!!!」
腹の底に伝わるような雄叫びと共に奴の赤黒い気が巨大な手へと変貌しこちらに投げつけられた。
「チっ!!」
いきなりの攻撃に俺は飛んで躱そうと思ったが,先に動いたのはジレンで赤いエネルギー弾をその巨大な手の気に放たれて完璧に相殺する。その場を一歩も動かず,踏ん張った様子もなくあれだけの邪悪な気を相殺するなんて……
ジレンはこちらに目もくれず言い放つ
「光輝と言ったな? お前はここを離れろ,邪魔だ」
……割と容赦なくいってくるよな。けれど言っている事は残念ながら事実だ。でも仙豆を使えばこの戦線に復帰できる。
確かにジレンの実力は底が見えないし,他の2人も俺と戦った時は恐らく本気じゃなかった。そんな3人がいるからこの戦線を離脱するのは賢い選択だ。
(だけど……)
1人は”孫悟空”の肉体を乗っ取り,自分のくだらない欲望の為に人間を皆殺しにしようとする神に,その神と同一人物でありながら不死身の肉体を得ている神,もう1人はよく分からない心を読める男。おまけにその実力も未だに分からない。
それに極めつけは乱戦を起こそうとしている謎のサイヤ人,3人が1人1人を受け持つのなら兎も角誰かは2対1をしなければならない。それでは誰かが負けてしまった時に一気に形成が不利になる。
今やっと頭痛が収まってきた俺では足手纏いかもしれない,けれど
「俺が殺されそうになっても助けなくていい! 俺も戦う!!」
「ちょ,おい!!」
そう言って超サイヤ人に変身し,こちらに突撃を噛ましている黒いサイヤ人をおびき寄せる為に気弾を放って牽制しながら上空に向かった。サイヤ人は俺が同族かと認識したのか,勢いよくこちらに進路を変えて迫ってきた。
(なんつー気だよ!! いくらサイヤ人だとしてもここまで邪悪だと?!)
奴がまとう赤黒い気,まるで光を全てに闇に帰すと言わんばかりに染められた気。戦闘力を表面に出しながらその強さは恐らく俺の超サイヤ人ゴッド……もしかしたら超サイヤ人4も凌駕しているかもしれない。
はっきり言って俺は逃げた方が自分の為でもあった。まだあの3人に任せた方が賢い選択ではあった。それでも……逃げたくなかった。
「行くぞ──ッ!!」
気合を入れるために吼え,奴の眼前に突撃を噛ます。こいつの分厚い胸筋に一撃を入れようと振りかぶる。こいつはそれをガードするまでもないと思ったのか全くのノーガードで受けた。
だけど,そこで異変が起きた
「なにっ?!」
俺の拳が勝手に減速されただけじゃなくて,その気が俺に纏わりつくように入って来る
「いかん!」
どこか遠くでトッポの焦ったような声が聞こえたが,俺の意識はそこまで保っていられなかった
まるで,悪の気に侵食されていくように
★
西の都,カプセルコーポレーションと呼ばれている場所で2人のサイヤ人が弾かれたようにある方向を見上げた。
「ん? おいベジータ,この気は?!」
その言葉にフリーザ軍の戦闘ジャケットに似ているカプセルコーポレション制のバトルジャケットと青のタイツを着ているサイヤ人……ベジータは忌々し気に振り返った。
「カンバーッ?! それにこの気は」
ベジータは自分の後ろを歩いていた山吹色の道着を着ている地球育ちのサイヤ人を見て,2人はそれ以上言葉を交わさず頷いてこの気の持ち主の所まで飛翔した。
「この気はブラック……それにハーツか?」
「何でも良い!! いつの奴らかによるが,最悪奴ら全てを同時に相手にせねばならん!」
既に2人はこの世界がどういった世界なのか分かっている様である。
「だが,他にも第11宇宙の連中と……この気は一体誰だ!」
これまでの強敵たちの気を感じ,とんでもない乱戦が起きている場所に向かう途中でも戦況を把握する。しかし,その中でも一際2人の気を引いたのはカンバ―の気に振れたと思われる1人の戦士の気。だけどこの気の持ち主を2人は知らない。そして……そのカンバ―の気に当てられた人物の気が……”超サイヤ人ブルー”の自分達と同等か……それ以上の気になっている事が気がかりだった。
「この気は間違いなくサイヤ人だ。だが何だこの戦闘力は! 俺達以外のサイヤ人がこれ程の戦闘力を身に纏う事が出来るだと?!」
自分達が長い年月をかけて辿り着いた境地に振れているこの人物の戦闘力にどこかイライラした表情をしているベジータだが,反対に悟空はワクワクを抑えきれない顔だ。
「かぁーっ!! やっぱ世界は広いぜ!!」
「貴様は何を呑気にしている! ブラックもそうだが,一度にこれだけの敵がいるんだぞ!」
孫悟空の肉体を乗っ取り,神の魂がサイヤ人に宿り超サイヤ人ゴッドを越えた姿になる事が出来るブラック,ブラックと同一人物にも関わらずその不死身の肉体を持つザマス。この2人に2人は結局”勝つ”事が出来なかった。結局最後の決着は全王にしてもらい,自分の未来を失ったトランクスは,自分がもう一人いると言う本人にとっては偽物の世界へと旅立った。
世界を消した全王も許せないが,一番許せなかったのはあの2人に勝ちきれなかった自分の力。
それに2人だけではなく悪のサイヤ人であるカンバ―,重力を自在に操り人の心も読めるハーツ。
「ああ,気を引き締めっぞ!!」
★
戦場では乱戦が起きていた。紅蓮の気を纏うジレンがオールバックだった髪を超サイヤ人の様に逆立たせ,黄金のオーラを纏うハーツに激突。
ザマスをプライドトルーパーズのディスポがスピードで圧倒,トッポが戦場を見極めようと俯瞰する中
「ウがアアアアッ!!!」
獣の叫びを上げ,直線的な動きでブラックに迫る眼を”赤く”発光させた光輝。身に纏う気はカンバ―と同質のそれに変わってしまい,雄叫びを上げる姿は正に邪悪な姿。その光輝を残忍な笑みを浮かべ,その右手を紫の刃に染めて迎撃する。
袈裟斬りで光輝の肉体を斬ろうとするが,その刃をその腕一本で受け止めそのまま強引な拳がブラックに突き刺さる。その衝撃に苦虫を噛みしめたような表情に歪める
「ぐっ?!」
「アがアア!!」
そのままラッシュをが仕掛けられようとしたが,ブラックは先読みしていたのか体勢を整えつつ光輝の肉体にカウンターを合わせた拳がめり込んでいた。
「ふ,神の刃を受けつけんとは不遜な人間よ……醜い姿だな!!」
醜悪な笑みのままブラックはそのまま光輝の肉体にいくつもの拳打が撃ち込み,遠心力のまま光輝は吹き飛んだ。
「ウ……!」
「受けてみろ,我が刃!!」
ブラックの右に煌めく刃がいくつもの閃光に変わり光輝に迫る。しかし,それを光輝は赤黒い気を吹き上がらせ全て相殺する。光輝の戦闘力にブラックは忌々し気に舌打ちをして再び光輝に迫る。
トッポはブラックとの戦いを繰り広げている光輝を愉快そうに見ているカンバ―に注意を払いつつ,観察する
(何という禍々しい姿……しかしこの気配はあのものに似ている)
つい先日戦ったシーラスと彼と共に行動をしていた仮面の男,最初は彼とあの仮面の男に接点があると思って自分達は戦いを挑み,しかしそれ自体は彼の戦いっぷりや技を見て考えを改めた。
だけれど,今カンバ―の気に当てられて変化した彼の力……蒼赤の眼の事も合わさり再び少しの疑念が出てきてしまった。
(しかし,あのものは暴走をしているのにも関わらず我々には攻撃を仕掛けてこない)
この短い観察だが,暴走してしまった光輝はカンバ―を押しのけてブラックというものに向かって行った。元は満身創痍の肉体だったと言うのに,今はあの超サイヤ人4にならずとも,自分達が知っている孫悟空達がなっていた超サイヤ人ブルーに勝るとも劣らない戦闘力を身につけていた。
光輝のボディーブローがブラックに迫る。それをブラックは右にいなし,逆にカウンターを合わせるように光輝の頬に拳をぶつけた。鈍い音と共に光輝の顔が仰け反った
「むっ!」
だけど,光輝はそれを仰け反りだけで済まし強引な体勢から蹴りを放つ。ブラックはそれを右の拳を引いて顔の横に合わせる事でブロックする。その威力に歯を食いしばるが,それよりも先程までは直線的だった動きが徐々に自分に対応する動きに変わって行っていることが気になった。
ブラックですらあのカンバ―というサイヤ人は厄介だと考えるもので,黒髪の状態で脅威だと感じた。”戦闘狂”,それを素で感じさせる奴は本当の意味での狂戦士で感じたのは奴が初めてだ。その狂気に当てられた人間が意識を保つ出来る事は不可能だと思っていた。しかし,目の前の戦士はその暴走を続けても尚倒れない。
本来,先程までの直線的な動きの光輝程度ならいくら超サイヤ人ブルーに匹敵すると言ってもブラックの敵ではない。直線的故に読むのは簡単だしこの刃であっさり殺せるはずだった。しかし戦闘を始めて数分の現状でも殺せていない。暴走によって増した力もそうだが
(この人間……もしや暴走を克服しつつあるのか)
蹴りを払って右手に刃を煌めかせて斬ろうとするが,それをどこからか飛んできた剣によって阻まれる。
「なにっ?!」
剣を振り払い,光輝との距離を詰めようとするがその前に光輝の上空にいくつもの剣や斧,短剣に細剣や槍が現れているのを見てブラックは勢いよく後退した。
「……サウザンドレイン」
離れる瞬間,光輝の口から技名と思われる言葉が呟かれ待機状態になっていた武器の嵐がブラックに放たれた。
「なんと!」
降り注がれる武器の1つ1つが光輝にとってのエンシェントウェポン級の強度を誇る。しかし,ただ降り注がれるだけの武器だけならブラックとて容易く反応が可能。
「貴様の切り札がそれか,見損なったぞ人間!!」
バックステップやバク転で武器全てを完璧に見切りながら幾つかの気弾を放つ。それによって光輝の技の妨害をして,隙を見せた瞬間に瞬間移動で彼の背後に周り串裂きにしてやろうとか言う算段だ。
「うおおおおおッ!!」
だがその気弾を咆哮するだけで光輝はかき消し,代わりにクナイを召喚しブラックの背後に放った。ブラックはそのクナイは体勢を下げる事で躱した。
「終わりだ,人間!!」
言いながら光輝の元へと瞬間移動する為に上空を見ると,先程までいたはずの光輝の姿が見えなかった。
「なにっ?!」
そこでブラックの集中が一瞬乱れ,決定的なチャンスが到来した。彼の背後に飛雷神の術で現れ,翠色の瞳に黒の瞳孔,そして赤黒い気を纏った光輝が右手に煌めく刃でブラックの胴体を突き刺さんと突き出していた
「ッ! 人間が!!」
気が付いた時にブラックも刃を煌めかせ,光輝に袈裟斬りを放つ。お互いのスピードは互角,このままではどちらかが重症……よくて相打ちになる……瞬間だった。
2人ともが吹き飛ぶような威力で放たれた邪悪な気弾,2人はそれに反応してお互いの剣を引っ込めて後退した。
「貴様,真剣勝負に水を差すとはいい度胸だな!!」
ブラックが気弾を放った人物,カンバーに向くとカンバ―はブラックに興味が無いのか光輝の方に向き,嗤う
「ハハハッ!! 貴様その力を使いこなすとは,やはりサイヤ人の本質は邪悪さよ!!」
ブラックが光輝に向くと,先程までの暴走していた赤黒い気ではなく超サイヤ人特有の金色のオーラに,彼の身体を纏うように赤黒い気へと変化していた。
ただし血管は浮き上がり,大分無理をしているのが見て取れる
「黙れ,何が本質だ」
戦闘民族サイヤ人……長い歴史の中で幾度もの侵略をして数多の星を奪ってきた民族。恐らく,それだけを聞いていた俺ならば嫌悪した存在。
だけど俺は知っている。”孫悟空”という優しいサイヤ人の存在を,”ベジータ”という己の過去と向き合った誇り高いサイヤ人の王子を。
サイヤ人の本質が貴様のような邪悪さ……?
「違うッ!!」
瞬間,光輝が纏っていた赤黒い気すらも金色に染まり始め,それは徐々に赤く流動的な気へと変化する。
「その赤髪……貴様も!」
赤髪……超サイヤ人ゴッドに何かしらの反応を示すカンバーだったが,とうの光輝はそれ所ではなかった。自分を侵食してきたこの気がまた暴走を起こすかもしれない。
それを抑えるのにも精一杯だった。
「邪悪なのは貴様だけの在り方だ!! サイヤ人全員が,お前みたいな奴だなんて思うんじゃねえ!!」
あくまでもそれほど邪悪だと思っているのはカンバーだけ,そう言い放つ光輝。
「フハ八ッ!! 邪悪さを失ったマヌケなど,サイヤ人の誇りを失った下郎よ」
しかし光輝の言葉を無視したカンバ―はその髪を金色に染める。それを見た光輝が歯を食いしばる。分かってはいたが,どうやらカンバーも超サイヤ人になる事が出来る。
それも,恐らく普通の超サイヤ人とは格別の変身として。
「貴様をズタズタにしてくれる! 俺と戦ええええ!!」
超サイヤ人の気の中に赤黒い気を混ぜた姿に変えたカンバーは1つの嵐となって光輝に迫った。彼が迫る刹那,光輝の頭にベビーとの戦いで再び分かれた師匠が脳裏に浮かぶ
(ベジータさん)
サイヤ人の誇り,どんな時でも,どんな状況でも相手に背を向けることなく立ち向かう”強さ”。そこにこいつの言う邪悪さは必要ない。
あるのはただ,”戦い続ける事”。
そこに正義も悪もない。戦う理由がそれを決定づけるだけだ。だとしたら,俺が選ぶのは
「俺が戦うのはこの世界を……大切な人達が笑っていられる世界を守る為だ!! 本当の誇りを忘れた貴様に負ける訳にはいかない!!」
己の中から溢れ出しそうな悪の気を自分の気でねじ伏せて赤い神の気を纏い,構えを取る。いつもの悟空さんに近い構えじゃなくて,ベジータさんの構え。サイヤ人の王家に代々伝わる構えだ。
赤と黒の気を奮い立たせ,サイヤ人が振るってきた巨大な拳に俺の拳をぶつける。それによって衝撃波が広がり,波紋が広がる
拳の押し合いをしている中でもこいつは愉快そうな笑みを隠そうともせず叫ぶ
「悪の気をわが物にした貴様もまた邪悪よ!」
カンバーの言う悪の気,それを身に纏い使いこなす事が出来る人間は少なくとも善ではないと言い張るカンバー。
しかし光輝とてそんな事は分かっている。自分がやっている事は少なくとも善ではないと言う事くらいは。手段が殺しである以上はそんなのは自明の理だ。だけど,目の前のサイヤ人と同じではないと断じる事は出来る。
「だから……そんなのは貴様の勝手な押し付けだ!!」
拳を引くと同時に,カンバーと光輝の打撃が一種の嵐となってその場に吹き荒れる。図体がデカいわりにカンバーのスピードは凄まじく,またパワーは言わずもがな。
「人間め,神を無視するとはいい度胸だ!」
だがその2人の乱撃戦に加わろうとする神影が1つ,自分を無視して戦いを繰り広げる2人をいっぺんに消し去ろうと薄紅色のかめはめ波を作るブラック。
そんなブラックの目の前に立ちはだかる1人の戦士
「貴様の相手は私だ!」
自由の戦士,トッポ。プライドトルーパーズのリーダーである彼は,光輝のサイヤ人としての矜持を守るための戦いを邪魔させまいとブラックの前に立ちはだかる。
ブラックは忌々し気に彼を睨む
「正義の戦士だと? 神の道を阻むとは,愚か者め!」
「貴様のような神はあってはならん! 孫悟空の偽物を騙る貴様を許しはせん!!」
言いながらトッポは光球を作り出しブラックに放つ。それをブラックはかめはめ波を放ち相殺,その爆発によって周囲は煙に包まれるがトッポはその中を臆せず突っ込んでいく。
巨体に見合うパワーを持った拳がブラックの鼻筋に放たれるが,ブラックはそれを頭を下げて躱すのと同時にトッポに踏み込み,右に刃を煌めかせる。それをトッポはジャンプして躱しつつブラックの背後を取る。それに反応したブラックは左の裏拳を放つ。
「フンッ!」
それを掌で受け止め,燃え上がる気でブラックのパワーを上回らんと膨れ上がる。
「人間がこれ程のパワーを持つとは……だが究極サイヤ人の肉体を持つこの私には敵わない!」
狂気の笑みを浮かべ,ブラックもまた薄紅色のオーラを吹き上がらせる。
炎とロゼの色,二つの巨大な気が大地を揺るがし気の波状が広がる。
「それは孫悟空の肉体とでも言うのか!」
「その通りだ! この肉体は孫悟空の身体を超ドラゴンボールで入れ替え,魂はザマスのものだ!!」
「何だとッ?!」
ブラックの言葉に青筋を立て,更に己の気を燃え上がらせる。
「貴様,孫悟空を乗っ取るだけではなく孫悟空を騙るとは……断じて許さない!!」
確かに,初めて出会った時の孫悟空は自分の戦いたいという欲を優先した結果力の大会という全宇宙存亡をかけたサバイバルに発展した。
だから最初は彼の事を嫌悪していた。たった1人の欲の為に自分達の宇宙が消えるかもしれない事態になったのだからそれは当然ではある。
しかし,こと戦いにおいての一種の真摯さをトッポは孫悟空から感じていた。卑怯な手を嫌い,どんな時も真正面から他の宇宙との戦いを繰り広げていた。そしてその強さは,天使が使う事が出来る神の御業”身勝手の極意”にまで辿り着いた。自分を見つめなおし,自分という殻を破る事で到達する神の御業。それは武道を極めるものの極致。
だから今では孫悟空の事をそれなりに見直していた。その孫悟空を,他人が乗っ取り挙句孫悟空を名乗るなど,自分が認めた人間を汚す行為をトッポは許せなかった
「くっ!」
トッポの気がブラックの気を上回り,力比べの均衡が崩れる。地面が裂け,体勢を崩したブラックの腹部に強烈な拳が突き刺さり大きくくの字に曲がる。隙を見逃すまいと更なる追撃の拳骨がブラックの肉体に突き刺さる。
「ぐああああっ!!」
その威力に一瞬白目を向き,ブラックはその身を吹き飛ばされた。近くの岩場に激突し,黙々と煙が立ち上がる。
それを見ていたもう1人のザマスが驚愕を禁じ得ないようで,ディスポが目の前にいるのにも関わらず思考する。
「ブラックを押しのけるパワーを持つ人間だと」
「リーダーを舐めんじゃねえ!!」
「くッ!」
ディスポの方に向き直るが,ディスポスピードの方が遥かに速くザマスはその速度に対応出来ない。
「ッ! 人間風情が!!」
「お前を神という奴もいないぜ!!」
ディスポのスピードは更に引きあがり完全にザマスは後手に回る。不死身ゆえに倒されることはないが,倒す事も出来ない。
本来ザマスの戦闘スタイルは相手の攻撃を受け流し,的確に反撃をする柔の動きを基準としたもの。不死身ゆえに今はブラックの戦闘力と合わせた完膚なきまでのコンビネーションが前提の戦闘スタイル。そのブラックもトッポとの相手に簡単に離れることは出来ずザマスは本来の戦闘スタイルを出来ず,またディスポのスピードの凄まじさも相まって完全に相性が悪かった。
「フンッ!」
そしてまた別の所では,紅蓮の気を纏うジレンを押さえつけようと超ハーツへと変身したハーツが重力を増大させるが。ジレンはその予兆を見切りディスポに迫るとも劣らない速度でハーツの背後を取る。その速度にハーツは笑みを浮かべ振り返りながら蹴りを放つ。
凄まじい衝撃波があたりを揺らすが,ジレンは微妙だにせずにその蹴りを受け止めていた。代わりにその瞳が光りハーツにいくつもの拳打の跡が浮き上がり身体ごと吹き飛んだ
「くッ,見えない攻撃か……やるじゃないか」
口元の血を拭いながら心底嬉しそうにし,黄金のオーラを吹き上がらせながら気弾を放つ。その気弾をジレンはその場で身体を少しだけ動かすと言う最小限の動きで躱し,お返しとばかりにいくつかの気弾を放つ。
ハーツは再び気弾を放ちぶつけてかき消す。2人は相対したまま向かい合う
「素晴らしい強さだジレン! だが何故だ? これ程の力を持ちながら何故神にへりくだる?」
打倒全王……それがハーツの目的であり戦う理由だ。ジレンの強さは彼でも息を飲み敵に回すのは惜しいと考えている。
「俺と一緒に来ないかジレン,共に人間の手で全王を倒そうではないか」
「断る」
短い言葉,ハーツは不思議そうな眼でジレンを見る。そして彼の心の内を読む。感じた事は彼は別に神への反逆など考えていない事,それよりも大事なのは自分の宇宙を守る事。
「君は面白いな」
さて,どうしたものかとハーツが考えるのと同時に各地で戦っている中で気が何故か一瞬で無くなった人物が現れたのでそちらの方を見ると,黒い稲妻を纏いながらも黒髪に戻り,肩で息をしている光輝だった
「はぁ……はぁ……」
「どうした下郎,この程度で終わりか?」
「く……そ」
元もと力を底に着いた状態からのあの強引なパワーアップ,それは光輝自身の肉体をも追い込むほどのもので本来悪の気に晒されたものは自我を失い暴れまわるだけになる。それをどういう訳か自我を取り戻し,それを短時間だけでも使う事が出来た光輝が異常ではあるとハーツは思っていた。
それでも,悪の気の反動を受けても尚カンバーに立ち向かおうとするその姿はハーツとて美しいと感じた。少なくとも,自分の力ではなく超ドラゴンボールを使って人間0計画など行おうとしているブラックやザマスよりも尊敬に値すると思った。
「素晴らしい精神力だ,カンバーのあの気をくらい暴走しないだけでも素晴らしいのに,それでも敵わないカンバーに立ち向かう……ああそうだ。それこそが人間の美しさ」
ジレンという敵を前にして,それでも光輝に感嘆するハーツ。自分が戦った時のハーツとの若干の違いにジレンは眉を顰める。
「死にぞこないが……くたばれえええ!!」
懸命に構えを取る満身創痍の光輝にとどめを刺そうとエネルギーを溜めるカンバー,光輝自身は自分が殺されそうになっても助けなくても良いと言っていた。しかし,それは自分の信条に反する為に動くかと考えたジレンだが,そんな考えは目の前のハーツに簡単にバレてしまう。”助ける”という選択肢を心に思い浮かべただけで彼が妨害してくるのは自明。
しかし,そこでハーツを見ると彼が手をかざしていたのはジレンではなくカンバーだった。
「何っ?!」
その行動に驚きを露にしていたら,そのとうのハーツも驚きその手に溜めていたエネルギーを引っ込めた。ジレンがそれを何故かと思考した時,光輝とカンバーの間に3つの気が割り込み,その内の1つがカンバーを吹き飛ばした。ジレンが光輝の方を見ると,膝を付いていた光輝の前に3人の戦士が現れていた。
3人内の1人,赤い羽織に四方八方に広がっている髪にその背中には見覚えのない棒のような武器……だがその姿は間違いなく
「お前は……孫悟空!!」
ジレンが呟くと,悟空……タイムパトローラーである孫悟空・ゼノはジレンに目を向けニッと笑った
おつかれさまです。
光輝,雑に悪の気を制御し始める(未完成)。原典では悪の気はぶっちゃけ大した意味もなくただの強化素材なのですが折角何で本作品では少し使わせてもらいます。
プライドトルーパーズってやっぱ普通に強い気がするんですよね。トッポはトッポで戦略眼優れているしディスポは相手の相性が悪かっただけだからザマス当たりなら完封出来るだろうっていう。
そしてハーツとジレン,多分皆さん大体アニメの方を見ていると思いますけれど僕の作品では僕に都合のいい媒体を使うので2人の力関係は漫画版の方準拠です笑。つまりジレン>ハーツですね。
そしてハーツさん,意外に光輝に友好的です。ジレンから自分の結末を見たからこその思考の変化か…?因みに作者はハーツとカンバー好きです!
問題です,ブラックと光輝の共通点はなんでしょう
ではでは