今日でカンバーとの決着です。では!
ハーツは余りの衝撃に口を半開きにしたまま彼を見ていた。
超サイヤ人ブルーの蒼色の神の気,そしてそんな神の気が包み込むように邪悪な真っ黒な悪の気が彼の周りには蠢いていた。力を使っているからか,彼には血管が所々浮き上がっていたが,それも彼が深呼吸1つすると落ち着き蒼と黒の瞳でカンバーを見すえた。
「待たせたな,まだこの変化には慣れてないんだ」
「貴様……その力は!」
独り言に近いそれに光輝は答えず,カンバーに向けて踏み込んだ。
「……ッ! 偽物が!!」
流石と言うべきなのか,カンバーは見事に反応し拳をぶつけ合った。その瞬間に火花が飛び散り2人の間に小さな嵐が吹き荒れる。
「俺は……確かに偽物だ。願い玉でサイヤ人になった俺は,お前からすれば贋作でしかないだろう」
そう言いながら膝蹴りを放つ。それを同じ膝で受け止めるカンバーには初めて会った時のような余裕は微塵も無かった。何故なら,今この超サイヤ人3状態でのフルパワーがカンバーにとっての最強形態。
それなのにもかかわらず,その力を持っても押し切れずなんなら
(こいつ……,まだ本気じゃないというのか?!)
光輝の瞳に宿る闘志が,まだこんなものではないと雄弁に語っていた。
「だけど!!」
次の瞬間,蒼黒の気が燃え上がり拮抗が崩れ知らない間にカンバーの頬に光輝の拳が突き刺さっていた。
「ぬぅ?!」
「お前がそう言うのなら受け入れよう,俺は偽物だ。だけど,俺が貰って来たものは全部”本物”だ!!」
愛美,櫂さん達,キリト達,悟空さん,ベジータさん,悟飯さん,悟天さん,トランクスさんにバーダックさん……今まで俺に出会ってくれた全ての人達。
苦い記憶もある。死にたいと思ったこともある。それでも……そんな俺に絆をくれた,愛情をくれた,技をくれた。思い出をくれた。
「そして……”誇り”と”力”を貰った!! それが全て偽物? 否,断じて違う!!」
カンバーの腕のガードをブレイクしながら苛烈に攻め,いつしかカンバーはそれらの攻撃に対応できなくなり始めていた。
「偽物だというのなら言うが良い!! お前が言う”偽物”の力で,俺は”本物”を打ち砕く!!」
「ぐおっ?!」
叫び,強烈なボディブローがカンバーの肉体に突き刺さりカンバーは大きく眼を見開いた。その重さは以前戦った時の比ではなく,もしも超サイヤ人3じゃなかったら一瞬で戦闘不能に追い込まれるレベルの一撃だった。
偽物が,本物を打ち破らんと高めた力……カンバーはサイヤ人の誇りとしてそれを断じて認められなかった。ただ高いプライドだけでその痛みを我慢し,反撃に剛腕を振るった。
「うおおおお!!」
「ふっ!」
それをすれすれで躱すと,同時にがら空きとなった胴めがけて回し蹴りを放ち蹴り飛ばした。カンバーは何とか両足を地面につけブレーキをかけてとまることが出来た。忌々し気に蹴り飛ばした本人を見ると,どこか冷徹な目でカンバーを見据えていた。
「その力を使いこなすというのか……貴様のような贋作が!!」
自分の悪の気を受け,一度は心を破壊したのに……彼はその悪の気を暴走することなく我が物とした。最初そうされた時,悪の気を我が物にした光輝をカンバーは邪悪だと言った。
だが……今は違う。光輝を戦士として認めたからこそ,”サイヤ人”として認める事が出来なかった。
「そうだ! だからこそ,俺はお前に勝てる!!」
「たわけ! 貴様にサイヤ人を語る資格などなし!!」
悪と蒼黒,二つの気は中央で再び激突する。
カンバーの凄まじいパワーのパンチを,光輝は真っ向から打ち返す。弾かれたのはカンバーの拳,体勢が崩れたのを見逃さずそのまま回し蹴りで吹き飛ばす。
岩石を突き抜けたカンバーをそのまま追いかける。ハーツもそれを追いかけた。
「うおおお!!」
吹き飛ばされながらもカンバーは気で作った真っ黒な手を光輝に襲わせる。それを見た光輝は左右の手に気弾を作りぶつけ相殺し,そのままカンバーを追った。
「クソおおおっ!!」
今度は無作為に気弾を放ちまくるが,光輝はあえてそれを避ける事はせずそのまま気弾の嵐を突っ切りカンバーの眼前に現れた。
「これで……決める!!」
そう言った直後,カンバーの頬を更にぶん殴り吹き飛ばした。それを更に追いかけ,今度は上空へと吹き飛ばす。
「これが俺の全てだ! カンバー!!」
それを見送った光輝はブレーキをかけてとまると,両手を広げて自分の気を解放する。吹き飛ばされた体勢が起き上がったカンバーがそれを見ると,両手に巨大な光弾が浮き上がっていた。
その光弾の持ち主の燃え上がる闘志を秘めた眼を見ると……カンバーの中には不思議と憎悪よりも上回った感情があった。
「良いだろう……決着をつけてやる。うおおおお!!」
金と黒が合わさった莫大な気がカンバーを包み込み,一時的にその戦闘力を増幅させる。
「全て消し去ってやる!」
「やってみろ!!」
カンバーを包むように4つの気が現れ,それを集約したカンバーと……二つの巨大な光弾を中央で合体させ腰だめに溜めた光輝の2人は2人の気が付かない内にその口元を笑みに変えていた。
だが,直ぐにその笑みを引っ込めると叫んだ
「ハードデザストルゲイザー!!」
「ファイナル……!!」
放たれるは漆黒の気,迎え撃つのは溢れんばかりに高めた光の気。あのブロリーをも打倒した光輝が使える中で最強クラスの威力を誇る技。
2人の偉大な師匠から受け継いだ必殺技。
「かめはめ……波ぁあああ!!」
瞬間,それを見たカンバーには幻影が見えた。
贋作だと思っていた戦士の背後に立つ,今の彼と同じ姿になっているバトルジャケットを着こんだサイヤ人の王子と,山吹色の道着とその姿を白銀の姿に染めた地球育ちのサイヤ人の姿が。
そう認識した途端,ハードデザストルゲイザーと彼の必殺技がぶつかる寸前彼が纏う気が蒼黒だけじゃなく……さっき見た燃え上がるような真紅の気も吹き荒れて……カンバーは口元を笑みに変えながら──意識が吹き飛んだ。
★
その気を感じた2人は揃いも揃ってニッと微笑んだ。向こうで戦っている1年間共に過ごした戦士の勝利を確信したからだ。
「やったな……光輝」
「フンッ,この位出来て当然だ」
「その割には嬉しそうな顔してっぞ」
「うるさい。それよりも……」
「ああ……やっぞベジータ」
団欒の雰囲気を一瞬にして険しい顔に変え,空で此方を見下ろしている悪魔を見上げる。
今の奴は超サイヤ人4,そしてその超サイヤ人4をシーラス達がダメージエネルギーと洗脳技術によりさらに強化された全ての次元を含めても最強クラスのサイヤ人。
「カカロット……カカロットォ!!」
だが,それを迎え撃つのもまた最強クラスのサイヤ人達。猛き雄叫びで気を増幅させたブロリーを見据えた悟空は反対の静かなる闘気で武空術で浮き上がり……一瞬にしてブロリーの目の前へ現れた。
「——ッ!!」
その余りに静かな挙動からの接近に,今までの悟空とは違う何かを感じたブロリーは大きく眼を見開いた。だが,次の瞬間には雄叫びを上げながら悟空へ殴りかかっていた。
「うおおおお!!」
だが,その拳は空を切る。ブロリーの視界から悟空の姿が消えたのだ。そして次の瞬間には背後から凄まじい衝撃が襲いかかり,ブロリーは地面へと叩きつけられた。
「ぐうっ!?」
しかし,それでもブロリーは直ぐに立ち上がる。だが,そこに再び悟空の姿は無かった。
代わりにベジータが目の前に現れていた。
「時間がない,さっさと終わらせるぞ!!」
今この時も様々な時代と次元が危機に瀕している。今ここでブロリーに割く時間はないと気合を入れ,ブロリーと激突する。
ブロリーの脅威は,その巨大な肉体から放たれる物理的な破壊力と無限にも等しい気の上昇。まさに悪魔を自称するほどの持ち主だ。長引けばジリ貧になってしまうのは眼に見えていた。
「ザコが……ッ!!」
おまけに過去光輝がしたように一気に大ダメージを与えない限り何度でも蘇ってくるタフさも,当時の光輝ももう嫌だと思ってしまう程のものだった。
そしてそれ自体は悟空とベジータも同じだった。だからこそ……
「一気にきめっぞ!!」
ブロリーの前に見失っていた悟空も現れ,悟空とベジータの同時攻撃がブロリーを襲う。
一糸乱れぬ……ではない連携。光輝が言うように2人はお互いが噛み合うような連携攻撃をする事は出来ない。というかしない。だがそれ故に強力な波状攻撃となってブロリーと互角に打ち合う事が出来ていた。
「ぬう!」
ブロリーは押し切れない事に奥歯を噛みしめて強引に2人に攻撃を当てようと剛腕を振るった。それをベジータはその場から消える事で,悟空は振り払われたギリギリを背中を反らす事で躱す事に成功した。
しかし躱される事など分かっていたのか,はたまた闘争本能なのかすぐさま悟空へ追加の攻撃を振るう。
「カカロット!!」
しかし,悟空はそれらの攻撃を全て完璧に避け続ける。ブロリーの攻撃が遅いわけではない。2mを越える巨体になったとしても,そのスピードは超サイヤ人4に相応しい瞬発性を伴っている。
おまけにブロリーの真骨頂とも言えるパワーもこの世界では上から数えた方が早いまでのパワーであり,一撃一撃がまさに必殺の域に達している。
実際,このブロリーの攻撃を今の光輝が悟空のように避け続けようと思ったら相当無理な動きをしなければならないし,凄まじいパワーの拳が何度も迫ると考えればそれを避け続けるプレッシャーがどんなものなのか考えるだけでも恐ろしいものだ。
「……!」
だが逆に言えばブロリーの攻撃は当たらなければ何も問題は無い。それがどれだけ速かろうと,”当たらなければどうと言う事はない”のだ。そしてこの身勝手の極意は弾かれる度に強く,鋭い攻撃を放つようになる。
だから大きくハンマーのように両手を悟空に叩きつけようとしたブロリーの攻撃を,真正面から受け止めるのではなく直ぐ右に身体をスライドさせるように躱し,膝がブロリーの腹部がぐにゃりと曲がるほどに突き刺さり苦悶の表情を浮かべた。
「ぐおっ?!」
普段のブロリーならこの程度の攻撃などノーガードで受けてもなんら問題がない筈だった。
「ふんっ!」
そこに悟空が追撃とばかりに追撃を加えていく。殴る蹴るといった無駄な動きはなく,的確に急所を捉えて確実にダメージを積み重ねていく。
勿論ブロリーとて何もしない訳じゃない。もはやダメージ覚悟で何度も殴りかかろうとするが,悟空はそれをまるで蜃気楼かのように,本当にそこにいたのかすら分からないほど鮮やかに,滑らかに避けていき何故か気が付いたらブロリーの腹部にはいくつもの打撲痕が出来上がっていた
「——ッ!?」
ブロリーは悟空を掴もうと腕を伸ばしたり,蹴りを入れたりするがどちらも悟空は最小限の動きで避けてしまう。
「うおおおおお」
ブロリーの攻撃を全てギリギリまで引き付け,そして紙一重で躱す事でそのパワーを逆に利用し,攻撃に上乗せしてカウンターとして当てていく。
だがそれでもブロリーは攻撃を止めない。闘争本能のままに悟空を殺そうと襲い掛かる。
「カカロット!!」
「はあっ!」
悟空はブロリーを倒そうと何度も攻撃を仕掛ける。ブロリーはそれを受けながらも反撃する。だがそれを避けられてまた殴られる。一方的に殴ろうとも避けられ,そしてカウンターで殴られたりするのだ。
「く……っ」
その度にブロリーの脳に痛みが走る。身勝手の極意による,相手の急所を狙う攻撃,更には自動的に攻撃を避けるまさに攻防一体の神の御業は……着実にブロリーを追い込み始めていた。
「時間がねえ,一気に決めっぞ!!」
それを好機と見るや,悟空は一瞬で身勝手の熱気を放出した。
「はあああっ!!」
そしてブロリーの攻撃を躱しながら,悟空はさらに気を高めていく。
「な……っ」
その凄まじい気の上昇にブロリーも思わずたじろいだ。だがそれは恐怖ではなく,闘争本能によるものだ。この程度で自分が負けるはずがないという絶対の自信がブロリーにはある。だから怯んだりはしない。
「カカロットオオオ!!」
だからこそ,負けなど認められない。
自分が殺す人間に,負ける訳などないとブロリーは己の赤黒い気を震わせて上空へ飛んだ。
そしてその右手にそれだけで世界を揺るがすエネルギー弾を形成する。それを見た悟空も両手を揃え,腰だめに気を溜める。
「今……楽にしてやる」
そしてブロリーがエネルギー弾を投げるのと,それを見ながら悟空は己の力を両手に集める。
「か……め……は……め……」
「死ねえっ!! カカロット!!」
呪詛の声を聞きながら悟空は気を溜めて睨みつけるようにブロリーを見据え,溜めたその気を解き放った。
「波あああああッ!!」
悟空から放たれたかめはめ波と,ブロリーの巨大なエネルギー激突によって辺り一帯は光に包まれた。
★
その影は上空の煙の中から舞い落ちるように降って来た。もう上半身はボロボロ,長い黒髪に戻った奴は受け身もままならない程のダメージを受けて地面へ落ちて来た。
それを見届けた俺は超サイヤ人ブルーの変身を解くと同時にビックリするくらいに脱力感が襲ってきて俺も地面へ落ちながら膝をついた
「はぁ……はぁ……」
カンバーの悪の気を,超サイヤ人ブルーのまま完璧にコントロールすることはあの精神と時の部屋でベジータさんがやってくれたものを自分のものにしたことだ。
奴が言う”邪悪な力”を飲み干して自分のものにする。”サイヤ人とはなんなのか”を考えるきっかけになった力だった。
「俺の……勝ちだ,カンバー」
この言葉が聴こえているのか分からないが,目の前であおむけに倒れている男に向かってそう言う。男は戦う前よりもなんだか嬉しそうな顔をして空を見上げていた。
そんなカンバーにハーツが近づきながら俺に言ってきた
「見事だ……あの力を使いこなして俺の想像以上の力を見せてくれた」
「……そりゃどうも」
正直,最後のファイナルかめはめ波の時にはカンバーを完全に上回る為に界王拳の一瞬の上乗せなんてやっちまったから体にはがたがき始めている。もしも今ハーツとやりあうのなら……正直あの力を使わないと勝算がない。
「安心してくれ。今君とやりあう気はないよ」
「心読めるの忘れてた。それならありがたいね」
心底思いながら見ていると,カンバーはゆっくりと上体を起こしてその獣のような黒い眼で俺を見据えた。既に戦意を感じず,初めて会った時よりもずっと穏やかに感じた。……まあ,それでカンバーが良い奴に変わったかと言われれば別にそうでもないと思うんだが。
カンバーは俺と視線を合わせ,ゆっくりと口を開いた。
「貴様にとって,”サイヤ人”とはなんだ」
「俺にとってのサイヤ人……」
その問いの意味は今更考えるまでもないだろう。サイヤ人の根源とも言えるこの人は知りたいんだ。自分とそれ以外の,サイヤ人の存在が何なのか。
これで何かが変わる訳でもない。
だけど,俺にとってこの1年間で考え続けた俺の答えを今伝えたい。
「”力”と”誇り”だ」
俺にとって,大事な人達を守るための力の1つ。例え俺がサイヤ人じゃなくて地球人だったとしても,俺は守り抜く”力”できっと戦っていた。少なくとも,笠木と戦った時の俺はまだ地球人だった。
そして今の俺にとっての力の1つがサイヤ人としてのもの。
そのサイヤ人としての存在に誇りを持っていたベジータさんを見て来たからこそ,名前という記号だと思っていたサイヤ人としての誇りを俺は持つことが出来た。
俺の師匠が,サイヤ人の王子が俺をサイヤ人として認めてくれているのならそれが誇りと言わずとして何だというんだ。
「限界を超えて極め続ける力と,己の力を信じ続ける誇りが……俺にとってのサイヤ人だ」
「力……誇り,か」
既に口元の拘束具も外れ,その表情も伺う事が出来るカンバーの言葉を光輝は静かに見ていた。ハーツもカンバーがどのようなことを言うのか興味があるのか彼をじっと見つめている。
だが,カンバーの中でなにか心境の変化があったのかふっと小さな笑みを浮かべて
「ふっ……邪悪なオーラさえ,その力と誇りに変えるとは……見事だ……同胞」
穏やかな顔でそんな事を言われるとは思っていなかったから自分でもわかる位呆けた顔をしてしまったけれど……不思議と同胞と呼ばれたことに嫌悪感は無かった。
こいつを倒す為に躍起になった精神と時の部屋に入った頃の俺なら嫌悪感で沢山だっただろうに,改めて拳を交え,カンバーなりの誇りを垣間見て潔く敗北を認めたこいつにこれ以上何かを言うことなど毛頭なかった。
否,初めて心の底から俺の強さを認めたと分かる台詞に柄にもなくはしゃいでるのかもなと,一言だけ言う事にした。
「……あんたも,間違いなく強かったよ」
不思議とこの瞬間だけ,あれだけ殺し合いをしていた俺達の間に何とも言えない繋がりが出来たのを感じた
お疲れさまでした!
カンバーって自分以上に強い人間は素直に認める人間だと思っているので,最後は光輝と和解しました。
そしてベジータさん,途中からなんかフェードアウトしてしまいましたすいません。
次回も間髪入れずに次の戦場です!
では!