では!
暗雲立ち込めるインフィニットワールド,光輝はカンバーに背を向けタイムパトローラーの方の悟空の気を感じ取った。そしてその悟空の所へと向かっている違う悟空とベジータ,そして悟飯と悟天の気も感じ取る。
この1年で気の探査能力も向上していたらしい。
「行くのか?」
ハーツがその背中に問いかけると,彼は頷いた。
「ああ。俺には,俺のするべき戦いがある」
そう言うと,彼は気を纏った。そして次には彼の背中には見慣れた双剣がずっしりとした重みと共に現れた。その剣を優しく触れると,何かを感じたのか微笑んだ後カンバーとハーツに目を向けた。
「もし俺がまだ生きていたら,また戦おう」
「……ふん」
鼻で笑ったカンバーを見た後,光輝は悟空達の後を追い天を飛翔した。それを見届けた2人は何と無しに会話する。
「カンバー,君はどうする?」
「どうもしない」
「彼の心を読んだ。この世界は願い玉によって混沌とした世界……元に戻った時,君が再び彼と戦える可能性は低いだろう」
(さあ,どうする。カンバーよ)
カンバーが出す答えを,ハーツは楽しみそうに待っていたのだった。
★
不味い不味い不味い……非常に不味い。
雑兵どもがまた悟空さんたちの所に集中し始めている。悟空さんとジレンは一星龍を相手に攻めあぐねているようだし,ピッコロさん達も徐々に強くなっていく輩たちに数で押され始めている。
使い捨ての奴らと違ってピッコロさん達は死んでしまったらそれまでの人達。おまけに嫌でも連戦を強いられる。他の所で戦っている俺達側の戦士達はそもそもゲートの場所を知らないからあの防衛戦に参加できない。このままじゃ雑兵たちが誰か1人でも俺の世界か行ったことがない双子の世界とやらに行ってしまう事になる。
凶悪化したフリーザ軍兵だろうと,俺の世界で戦える人間なんていない。俺が弟子でもいたなら違ったのかもしれないがそんなもん作っている時間なんてなかったから無いものねだりだ。
『……ん……くん!』
急いで空を切りながら悟空さん達の所に向かっていたら,ノイズのような声が頭に響いた。その聞き慣れた声はやがて明瞭に脳に響いて来た。
『光輝君! 聞こえる?』
「時の界王神様聞こえます!」
『良かった。世界にほころびが出来たからもしかしてと思ったけど上手くいったわ』
なるほど,俺の世界へのゲートを暗黒神龍で強引に作ったと言う事はそこに綻びが産まれるのは必然。それを利用して通信してきたのか。
「その綻びの事をどこまで知ってますか?!」
時間がない事には変わりがない。俺はスピードを上げながら会話を続ける。
『詳しい事は先にデンデ君から聞いたわ』
それなら都合が良い。
「時の巣のドラゴンボールを使えますか? 叶えて欲しい願いがある!」
それを聞いた時の界王神は息を飲んだが,確かにそれしか時間を稼ぐ方法はないと思ったのか直ぐに準備を始めた。元々この世界を戻す為に集めていたドラゴンボールだが,やはり超ドラゴンボールには敵わないのか願いは受理されなかったらしい。でも光輝のいう願いなら恐らく可能。
というか,出来てもらわなくては困る。
『良いのね,光輝君?』
一時的とはいえ,そんな事をする最終確認。
「世界を守れたら,人間はまた立ち上がれる。だけど戦わないと待っているのは全ての破壊と殺戮だ!!」
その確認にそう言って返した。
全てが終わった時,自分が生きていたらまた再生する道を歩めるようになる……しかし,負けてしまったらそんな事を思う余地も無く,今現存する全ての世界と歴史が崩壊する。
残るのはシーラス達と,彼らの箱庭によって生まれた人間であって人間じゃないなにかしかいなくなる。
『分かったわ。一刻の猶予もないみたいね,直ぐに始めるわ』
「お願いします……俺はこれから悟空さん達の援護に行きます!!」
そう言うと脳内通信は切れるのと同時に,都から戦場の炎が上がっているのが見え向かうとその都の方から凶悪化した敵も光輝へ突撃を噛ましてきていた。
山吹色の亀仙流道着を着ているが,まったく亀仙流じゃない存在。
「ブウか……,邪魔だああ!!」
違う世界で悟飯を吸収し,まさに究極の魔人となったブウが凶悪化の影響を受け流すはずのない汗を拭きだしながら狂ったように気弾を放って来た。
それを超サイヤ人ゴッドに変身しながら弾き,お返しとばかりに強烈なエネルギー波を放ち光輝は防衛戦に参加した。
★
アメリカ,否アメリカだけでなく全ての国でその超常現象は起きていた。
突然空の切れ目が更に大きくなったと思うと黒い稲妻が迸り,そこから暗雲と瘴気が世界中に広がり始めていた。例外はなく,日本もアメリカも,ロシアも……生きとし生ける全ての人間達の上には不吉な予感を感じさせる暗雲が立ち込めていた。
「あ……あ……」
その余りに嫌な予感しか感じさせない現象に唖然として愛美は空を見上げていた。既にスマホのネットニュースでも大きく取り上げられ,専門機関が調査をするなどと言っているがそれが意味のない事だと愛美だけが知っている。
元よりただの人ではあれをどうすることなど到底不可能。
どうやら衛星との連絡も絶たれてしまったらしく,既にスマホを使ったやり取りには怪しい部分が出来始めていた。
「なに……あれ」
愛美の脳裏にはこれに近しい場面が思い浮かんでいた。
ドラゴンボールによって溜まったマイナスエネルギーが解き放った邪悪龍……その長である一星龍が破壊する為に世界中に解き放ったあの暗雲によく似ていた。
光輝と再会する前なら,そんなバカなと思っていた事なのだろうが今はそれが現実であることを知っている。まさに次元を隔てているからこそ知らなかっただけで……きっと一星龍も存在する。
だけれど何故そんな似たような事が今起きてしまうのか,分からなかった。
「スマホも繋がらないし……」
出先だった愛美は両親に連絡をとろうと試みたが,やはり通じず周りでも連絡を取り合っている人々を見るとやはりスマホは使えないらしく困惑の声が上がっていた。
「取り合えず一回帰ろう。お母さんたちと合流しないと」
そう思った矢先,背中にゾワリとした感触が駆け上った。今困惑が大きくなっているはずのこの場所で,空から降りかかる冷徹な殺気。ALOにいるモンスターたちとは比較にすらならない程の感覚が上から襲ってきていた。
そう……俗にいう”嫌な予感”だ。
まさか……そんな事が,そう心で否定しようと思ってもそれをする事は出来なかった。
ざわざわと周囲の人達もそれに気が付いたのか,空を見上げて指をさす。恐る恐る,愛美も上空を見るとさっきまで裂け目だった所の目の前にそれはいた。
「う……そ」
呆然と呟く位,あり得ない存在がそこにはいた。
髪を四方八方に伸ばし,漆黒の道着とその左耳には遠目で分かりずらいが界王神の神具であるはずのポタラがあった。だが人々が驚いたのはそこではなく彼の顔だろう。
「悟……空?」
ドラゴンボールの主人公,孫悟空に瓜二つの姿がそこにはあった。
だけど愛美は直ぐに違う時が付く。悟空ではなく,あの恰好をしているのは最近のテレビシリーズに出て来た1人だけ。
「ゴクウ……ブラック」
ブラックは既に以前つけられた傷を全快させており,醜悪な笑みでアメリカを見下ろしていた。
「ほう……孫悟空達の世界とはまた違う世界,という訳か」
悟空達の世界に比べると風景が違い,また飛ぶ車などがない点からみてもここが悟空達の世界とはまた違う世界なのは簡単に見て取れる。
神である自分が知らない世界があったとは驚きだが,これでこそ戦闘に夢中な悟空達の眼をかいくぐりわざわざやって来たかいがあったという物。
ブラックは不思議とこれを見ている人間達に聞こえるように言い放った。
「ふふ……聞け人間ども,私の名は孫悟空……これより,貴様達人間への審判を行う!」
嫌な予感がした愛美は咄嗟にブラックから離れるように走りだし──アメリカに1つの閃光が迸った。
お疲れさまでした!
そう言えば戦ってなかったなと思い雑に出した悟飯吸収ブウ…果たして,光輝に敵うのかどうか…。
では!