という訳で,本章のラスボスブラック戦です。
贋作VS贋作の頂上決戦。
ゲートから広がりゆく黒の瘴気。その中に蠢く宇宙樹からは既に十分量のエネルギーが溜まっているのか光輝いて,正直ここからじゃあとどれくらいの猶予があるのかが分からない。
シーラス達がけしかけたあの凶悪化の影響を受けた敵達も……俺達と戦わざる負えない状況にする事で一層早くエネルギーを溜めているに違いない。
そう言う意味じゃ,時の界王神様はベストなタイミングで愛美達を転移させてくれた。愛美も含めた世界の人じゃあの宇宙樹から発せられる瘴気に当たるだけで何が影響として現れるのか分かったものじゃない。
それに……
「これで,思いっきり戦える」
今回この世界を巻き込んでしまったのはタイムパトローラーである俺達の責任だ。本来ならこの世界は争いに巻き込まれる事も無く,ただ災厄が降りてくるわけでもなかったのに……力が及ばず巻き込んでしまった。
だけどあのゲートの出現で世界の均衡が崩れ,歪が産まれ……だからこそ時の界王神様の所にあるドラゴンボールでも皆を転移する事が出来た。それがあっただけまだマシなのかもしれない。
「貴様……何をした?」
「なんだ,自称神の癖にその程度の事も分からねえのか?」
煽りを受けたブラックが面白い位怒りを露にする。だけどな……奴がどんな過程を経て人間を憎み,悟空さんの肉体を奪ったのか知らないしここまで来るともう興味もない。
あるのはただ,悟空さんの力を”我が物”と言い張り,悟空さんを騙り,ただ人間を虐殺してきたただの疫病神への怒り。
「どうやら死にたいらしいな,人間!!」
「死ぬのは貴様だ」
誰もいなくなったアメリカのカリフォルニア州に,憎悪の薔薇が吹き荒れる。それを目の前で受けた光輝はキッと眼をブラックへ向け金色の気を纏う。
ゴッドやブルーのように穏やかな気ではなく,荒々しさを前面に押し出した気。超サイヤ人ブルーとは違うもう1つのサイヤ人の究極形態。だがその姿をブラックは嘲笑う。
「ふ……醜い猿の姿か,やはり私こそが至高。神の魂を持つサイヤ人だけに許されたこの超サイヤ人ロゼが,万物を滑る美しさに相応しい」
「口を閉じろ」
超サイヤ人4特有の低い声が,大気を震わせブラックの言葉を遮る。青筋を立てた光輝はもう面を見たくないと言わんばかりに……ブラックにすら反応が出来ないスピードで眼前へ踏み込んでいた。
それに目を大きくしたブラックの顔面へ右ストレートが炸裂した
「ぐぁっ?!」
「貴様がサイヤ人を……語るなあああ!!」
怒りの叫びをあげ,更にブラックへ殴りかかろうとする
「舐めるな!!」
自分の語りを邪魔されたからか,それとも人間に先手を打たれたのが気に入らないのか……すぐさま反撃にピンクの刃を振り下ろす。そのままでは光輝を八つ裂きに出来ると確信し,ブラックは醜悪な笑みをこぼす。
だが,光輝はそれを気を纏った腕一本で止めて見せた。
「なにっ?!」
以前にも光輝が悪の気でそれを跳ね返したことはあった。だが,ブラックはそれを悪の気のおかげと考えていた。だからまさか自力でそれを受け止めたことに驚きを禁じ得なかった。
次の瞬間,ブラックに襲ってきたのは腹部を貫くような一撃だった
「ぐはっ?!」
そのままブラックはビルまで吹き飛ばされ,いくつものビルを突き抜けていく。光輝はそれを見送った後,忌々し気に自分の身体の状態を確認する。
(カンバーとやりあった時の消費がまだ響いてるな)
進化させたブルーに界王拳の上乗せも,暴走を制御したあの姿もそれなりに身体への負担が大きく響いて来るもの。そこに一星龍との短い戦闘のダメージも少なからず存在した。
そして,消耗しているこちらと違って恐らくブラックに関しては体力消費なんてしていなかっただろうし最初から公平性をかけた戦いなのは百も承知。
「——ッ!」
自分の状態を確認していた光輝へ,ビルを破壊しながら幾つもの気弾が襲い掛かって来る。それを上空へ飛ぶことで躱すと,躱した先にはブラックが先回りをしてナックルハンマーのように叩き落される。
「受けてみよ,我が刃!!」
「チっ!」
ブラックの刃から放たれるピンクの刺突物がいくつも飛んでくる。それを地面へ真っ逆さまになりながらも光輝は気弾を放ち相殺する。刺突物は触れると爆発するものだったらしく,二人の間で爆発が起きまくり近隣のビルは軒並み倒れていく。
地面へ無事に着地した光輝は,背後から迫りくる刃をしゃがむ事で回避しつつその体勢のまま回し蹴りを放つ。
ブラックはそれをバックステップで回避し,二人は中央で激突する。
「貴様……一体これほどのパワーアップを何故この短期間に……!」
「答える義理はないな!!」
だが,直ぐに光輝が主導権を握りいくつかの攻防の果てに吹き飛ばされたのはブラックだった。ブラックは道路まで吹き飛ばされ,難なく着地を決めたがダメージは受けているのか直ぐに膝をついた。
そんなブラックに追撃するように光輝の気弾が襲い掛かる。それをバックステップやバク転で躱し,上を見ると光輝が獰猛な獣のような瞳でブラックを見下ろしていた。
「人間が……神を見下ろすなああ!!」
神は人を見下ろす者,それを信じて疑わないブラックはその人間に下に見られたことに怒りを露にして気を噴き上げ再び光輝に迫る。それを迎え撃つ。
迎撃をしながらも光輝は密かに考えていた。
(やっぱり,どう考えても可笑しい)
デンデが言うには,シーラス達が残していったデータには超ドラゴンボールでシーラスと仮面の男以外の全ての異世界人の来訪を無効にするという願いがあったはずだ。
今回の計画に一体いくつのドラゴンボールが使われたのは知らないが,超ドラゴンボールを使ったという事はその効果は保証されているはず。それなのに,ブラックは難なくあのゲートを通ったとは言え,異世界人であるこいつがどうしてこの世界に来れたのか分からない。
ブラックだけじゃない,この世界かその双子の世界に目掛けていた輩も……シーラスの言う通りならそもそも弾き飛ばされるはず。戦いを挑んでくるのだから迎撃している訳だが……ブラックがこうしてこっちに来てしまった以上あの凶悪化の影響を受けた敵達を野放しにする訳にもいかなくなった。
あの防衛戦を抜けられるほどの力の持ち主なら,正直ブラックとタッグを組まされたらたまったものじゃない。あっちの悟空さん達に任せるしかないけどな。
「神を前に考え事とは無礼者が!」
「残念でした。俺はあんたを神と思ったことはない!」
ブラックの刃が,俺を袈裟斬りにしようと振り下ろされる。それをあえてブラックに距離を詰める事で注意を逸らし,奴の腕を抑えて膝蹴りを噛ます。
鈍い音と共に苦悶の表情を浮かべるブラックをそのまま蹴り上げ,次に奴の頭上に周り叩き落す。奴が突撃した建物は崩壊し煙が立ち上がる
「流石にしぶとい……」
もくもくと立ち上がる煙を見ながら,まだブラックが参っていないことを確認すると流石に焦りが出てくる。こんな事をしている間にも,ブラックは俺でも意味分からないサイヤ人の特性かなんかでパワーを上げる。
痛みが力に,とかなんとか言っていたからダメージ与えすぎても奴をパワーアップさせるだけかもしれない。
「だけど」
このまま長引かせてもこちらが不利になるだけだ。なら,リスク覚悟でブラックごと吹き飛ばす力で決着を図るべきだ。
建物から飛び出て,光輝の前にやって来たブラックは忌々し気に彼を見る。そして……何かに気が付いたのか唐突に薄気味な笑いをする。
「ふふふ……どうした人間,決着を急いでるのではないか?」
この野郎……腐っても界王神候補に選ばれるだけあって観察眼は優れているようだな。
「貴様,どういう訳か知らんが体力が回復してない状態で俺と戦っていたようだな」
「……ああ。貴様とは違ってずっと立派な誇りを持っているサイヤ人と戦ってから来たからな」
「ふっ,何を馬鹿なことを。俺以上に神の誇りを持っている神はおるまい」
「自分の間違いを認めないのは反抗期のガキと変わらん」
「それは自己紹介か? 神である俺の言葉が正しいに決まっているだろう。もっとも,人間である貴様には理解できないだろうな」
ああいえばこう言う……本格的にこいつを理解なんて出来るはずがないと思った。
カンバーは,最初会った時は頑なに俺を理解しようとしなかった。それでも再戦を経て,奴なりに色々考えて俺を”同胞”と言ってくれるくらいには認め,間違いを認めた。
それはあいつがサイヤ人という事に誇りを持ち,だからこそ俺と激突した。
だけどこいつは違う。こいつは例え敗北した所で反省なんてする由もない。否,反省した所で俺が許さない……絶対に。
「人間は私利私欲に生き,自分の利益の為だけに他者を殺す愚かな生き物だ。貴様もこれまで同じ人間を葬って来ただろう?」
「……」
「貴様は自分が正義とでも思っているのか? 何かを守る為と称し人を殺めて来た……ああ,罪深い。だからこそ,このザマスが人々の希望である孫悟空として人間を滅ぼす事が,罪を浄化する事に繋がるのだ」
何が面白いのか,奴は饒舌に己の行動原理を話す。界王神見習いとして人間を見て来て考えたことを話してきた。成程,それなりに原因はあったようだ。
奴なりに孫悟空を奪った理由もあるのだろう。
──―で?
「正義? 笑わせんな,俺は……一度も自分が正義の味方だなんて思ったことはない」
「……なに?」
「人間が争いを続け,殺しあうのもお前の言う通りだろう。そんなもの,俺が否定したくても色んな歴史が証明している」
「ふ……ふはは! それを認めるのなら,大人しく神の刃を受けるがいい!」
向かってくるブラックを,光輝は超サイヤ人4の変身を解き直ぐにその姿を蒼に染める。ブラックのように逆立った髪に,蒼神の如き神聖さと力強さを纏い,一瞬にしてその両手に愛剣を握りしめる。
「だけどな……!」
叫ぶと同時,ブラックの刃を2本の双剣で受け止め,火花が飛び散る。
「人間を愛せるのも……人間の美しさだ!!」
知っている,孤独だと信じて疑わなかった自分を家族だと言ってくれた人達を。
あの鋼鉄の城で,戦士として名前をくれた大切な仲間達を。
己の忍道を持って,忍術を授けてくれた忍達を。
そして,俺を認めて鍛えてきてくれた師匠達を。
そして待っていてくれた,他の男に見向きもせず自分だけを待ってくれていた愛しの存在を。
今まで出会って来た人達が,俺を強くしてくれていた。愛してくれたからこそ,俺はここにいる事が出来る。
「貴様には分からない! 他者を受け入れず,自分だけしか愛せないナルシストに人間を語る資格はない!!」
怒号をあげながらそのブラックの刃を完璧に弾き,大きく体勢が乱れる。
その隙を見逃さず,光輝は2刀を振るう。刃と剣が火花を幾度も散らす。
苛烈に,だが確かな技を持って光輝の二刀がブラックを抑え込んでいく。ブラックには最初程の余裕も無く,ただただ二刀の圧倒的な手数に押されていく。
「に……人間が!!」
だが,そこは孫悟空の思考と界王神ザマスの思考が合わさった存在。例え僅かな間隙でも確かな隙として死角からの蹴りを放つ。だけども,光輝はその蹴りを目に収めることなく上体を反らす事で躱す。
(貰った!!)
しかし,反らしたという事は上体を晒してしまうということだ。その好機を見逃すブラックの筈がなく,醜悪な笑みを浮かべながら右の刃を煌めかせる。
たったの一度でも切裂くことが出来れば,オリジナルの孫悟空でさえ戦闘不能に追い込めるもの。勝利を確信したブラックだったが……数瞬の内に下から迫りくる違和感に頭が警鐘を鳴らしたと同時
「——がっ?!」
跳ね上がった顎が,下から蹴られたのだと理解するのに時間はかからなかった。考えてみれば光輝からしたら自然な動きであり,例えこれでヒットしなくとも相手を退かせる事が出来る一手だというのに,ブラックは内心焦ってしまいチャンスだと斬りつけようとした瞬間にこのざまだった。
「アインクラッド流体術奥義——弦月」
実体はただの後方に宙回転をしながら相手を蹴り上げるだけの技だが,アインクラッドではこれが体術のソードスキルとして定義されていた。なら,光輝にとってはこの動きも今までの経験から培ってきた”技”だ。
そして……
「おのれ……! ッ……!」
ブラックが次に眼にしたのは,光輝の二刀にチリチリと迸る雷鳴だ。もちろん,自然現象ではなく光輝が流す千鳥による防御不可の──忍術の師でもあるうちはサスケから授かった”技”だ。
その能力は,防御不可の雷鳴を授けるだけではなく術者の肉体を活性化させ凄まじいまでのスピードを生み出す事にある。
千鳥の甲高い鳴り響くような音共にブラックの眼前に踏み込んだ。
「早いッ!」
直ぐに迎撃を,そう思っても光輝の方が遥かに速く,直感としてこの剣を迎撃してはいけないと焦りただ全力で二刀を避ける事に集中する。
(反撃の隙が……無いだと?!)
攻撃の速度ははっきり言って超サイヤ人4だった光輝の方が速い。しかしその動きにはまるで無駄がなく,相手の攻撃を崩し反撃するというザマスとしての戦闘方法も千鳥が邪魔をする。
剣が届くよりも前に身体に打撃を加えようとしても,こちらが接近しようとした時には凄まじいスピードで一定の距離を保たれ剣が襲い掛かる。
「……ッ!」
ブラックの横を通り過ぎた剣によって,ブラックの頬に切り傷が現れる。それも一つや二つじゃなく,幾つもの傷跡が出来上がっていく。それはブラックにとって……否,ザマスにとって許される事ではなかった。
ザマスにとって神とはなににも代えがたい至高の存在であり,神が人間を見下ろす事はあっても見下ろされるのには我慢ならないしましてや,人間相手に血を流すなどあり得ない事だ。
「に……人間風情があああ!!」
「なにっ?!」
それがザマス,ブラックにとっての怒りとなり強引に気を放出し光輝との距離を強引に取った。光輝も流石にいきなり膨れ上がった気に無理に踏ん張っていたら一瞬で距離を詰められるため攻撃を止めた。だけども,光輝が驚いたのはそこではない。
「ブラック……貴様」
ブラックは,超サイヤ人ロゼ特有の薄紅色の気だけではなく……凶悪化の影響を受けたであろう証明となる黒の気を纏ったのだ。
それに伴ってブラックの気が爆発的に上昇している。
「許さんぞ……貴様は……貴様だけは!」
怒り……サイヤ人の力の源,そしてそれに伴って現れたシーラスによる凶悪化の気。二つの相乗効果でブラックはこの一瞬で凄まじいまでの力を解き放った。
近くにシーラス達の気はない,ということは……
(ブラックは腐っても界王神見習いだ。そんな奴を相手に真正面から黒の気をやるんじゃなくて……何かしらのきっかけでこれが誘発するようになっていたとしたら?!)
光輝はブラックのペースを崩す為に煽りとも取れる事をしまくっていた。確かにただの人間であれば聞く耳を持たなかったであろう言葉だっただろう。
だけども光輝は違った,精神と時の部屋での修行において底上げされた実力はブラックをも凌駕しえるものだった。だからこそブラック自身も煽りに怒り,向かってくる算段だった。
「……そのきっかけは”怒り”か」
しかし,光輝はそれが間違った選択だと思い直した。
本来のブラックなら,例え追い抜かれたとてその怒りを純粋なパワーに変える事が出来ただろう。
「う……がああああ!!」
だがどうやらシーラスは既にブラックに,”怒り”に伴って発現する凶悪化を施されていたらしい。つまりブラックは初めからシーラスの使い捨ての駒だという事。
一体どのタイミングでシーラスに凶悪化を施されたのか知らないが,人間に利用される哀れな神を眼に収める。黒い稲妻が迸り,筋肉もより膨張して血管まで浮き上がっているのを見るとどうやら相当無理をしているらしい。
そりゃそうだ……こいつはもう既に,命と引き換えにその潜在能力を引き出しているのだから。
「ふ……ふはは! 素晴らしい,力が沸き上がって来るぞ! 見ろ,神である俺が貴様のように怒りを抱くことで俺は未踏の高みへと昇る事が出来たのだ」
おまけに……こいつはどうやら自分に施された影響を知らないようだ。
まあ俺も今の今まで気が付かなかった位小さなものだったし,完璧だと自負している輩に自分の身体の異常など分かるはずもない。理性は保っているようだが,奴の場合は理性を保った方が強いとシーラスは考えただけだろうな。
つまり,一星龍のように使いこなしている訳ではない。
「……っ」
だけど……正直力を見誤っていた。このままやれば勝てる算段だった。もしかしたら次はシーラス達との決戦になるかもしれなかった。だからこそ相手よりも少し上の力で戦い,パワーアップを遅らせ,煽りを受けて取り乱す瞬間にケリをつけるつもりだったのに……。
「やべえな,そんな余裕なくなった」
少なくとも……奴から感じる気だけで言えば,俺のブルーを進化させた姿以上の気だ。だけども今の体力じゃ進化させたブルーはおろか,今の普通のブルーの界王拳も使えば直ぐにバテが来てしまう。
もし援軍がいるのなら,こんな事を考えなくてもいいんだが……ブラックがあのゲートを通れた理由が分かった。否,シーラスの軍勢があのゲートを通れる理由が分かった。
「願いは”シーラスの影響を受けた者以外”を,弾くようにしたっていうのが一番理屈が通るよな」
それならシーラスの凶悪化を密かに受けていたブラックも,凶悪化した敵達がゲート目掛けているのにも納得がいく。どうせシーラスにゲートに行って世界を破壊して俺の心をへし折れとでも言われたんだろう。
そしてこの仮説が正しいのなら,当然シーラス達の影響を受けていない悟空さん達は援軍に来ることが出来ない。だけど,俺がこっちに来る直前に邪魔してきたザマスが来ていないって事は奴はピッコロさん達に足止めされている可能性がある。
「覚悟は良いな,人間!」
鬼のような赤い瞳が俺を捕らえた瞬間,奴の姿は俺の背後にあった
(速い!)
奴の刃を,何とか身体を反らす事で躱した。だが次の瞬間にはさっきまでとは比にならない稲妻のような蹴りが襲って来た。
「ぐぁ!」
それをガードする前に俺の脇腹に直撃し,空を吹き飛ぶ。その痛みに顔をしかめていると奴の刃から放たれた刺突物が襲い掛かって来る。
「チっ!」
いつの間にか海上に吹き飛ばされていた俺はそのまま海に足をつけ,バク転やバックステップでその刺突物を躱す。
着弾地点で爆発を起こしていく刺突物の威力も,さっきまでとは段違いの破壊力を誇っていてあれを地上でぶつけさせていたらあっと言う間にアメリカは荒野にされていただろう。
癪だが,海に吹っ飛ばしてくれて助かった。
「調子に乗るな……ッ!」
だがそれとこれとは別だ。
まだ脇腹がジンジンと痛むが,その痛みを押さえつけて海を裂きながら迫りくるブラックの拳を首を捻ることで避ける。次に迫りくる蹴りを,ジャンプで躱しながら持っていた剣を投げつける。
「それしき!」
だけどそれを自分の刃で振り払い,牙をむき出しに俺へ迫る。
「風遁・空斬り!!」
奴の進行方向へ右手の剣から風の刃を空間に留める。
「馬鹿め,間違えたな!!」
そうだ,そのまま俺のところまで来い。風の刃がお前にでっかい傷をやってくれるだろうよ。マヌケに俺が意味のない剣戟をしたと思ってそのまま来い!!
「……ッ!」
だがブラックは,途中で光輝が放った刃の空間に違和感を感じたのか咄嗟にその場所に刃を振り下ろし空間が弾けブラックも後退せざるを得ない反発の力が起きた。
光輝は直ぐに投げた剣を流れるようなイメージで自らに引き寄せ二刀になるとそのままブラックへ肉薄する。
「ふふっ!」
ブラックも薄紅色と黒の気を纏いながら激突する。お互いの剣が火花を散らし,一撃でも貰えば戦闘続行が不可能になるほどの剣舞が海の上で行われる。
正に一進一退,どちらかが守りに入れば一気に均衡が崩れる程の剣の戦いだ。
「素晴らしい,どんどん俺のパワーが上がっていく。これが……神!!」
それでも余裕があったのはブラックの方だった。自らの不自然に上がる戦闘力を何とも思わず,ただ追い詰められていた状況をひっくり返している現状に酔っているようだ。
そしてその余裕に違わぬ強さを持っている。
「ここだ!」
「ガハッ!」
数瞬の隙で,ブラックの膝蹴りが光輝の腹部に突き刺さる。
「死ね!!」
「——ッ!」
そんな決定的な隙を見逃すブラックではなく,そのまま刃を蹲る光輝に振り下ろす。光輝は横に転がるように避ける。それでも脇腹へブラックの刃が掠り,血が噴き出していく。
そのまま羽織の一部も千切れたが,そんなものに構っている余裕もなく,光輝は避けた先に先回りしていたブラックに海へ叩き落される。
「ぐっ!」
昔なんかあの仮面野郎に対して水面に叩きつけた事はあったが,それを自分がされるとは思わなかった。思いっきり水面に叩きつけられ,深海にまで吹き飛ばされた。
だけど痛みを堪えてすぐさま海上に上がると……
「貴様ッ!」
ブラックはその両手を天に掲げ,巨大なエネルギーを蓄えていた。そのエネルギーの出所を見ると,どこか神々しく光る上空の宇宙樹から送られているように見える。
「シーラスの野郎!!」
今の宇宙樹をコントロール出来るのはシーラス位だ。シーラスは元々この世界ともう1つの世界に眼をつけていた。ならこの世界を見る術も何か持っていて,それでブラックが俺を追い詰めているから力を貸そうという魂胆だろう。
おまけに,ブラックが使っているのは色が邪悪さに蠢いているがあれは間違いなく……
「元気玉か」
もっとも,奴が集めている元気はこの星の人間達じゃない。そもそも別の所にいるから気を無理やり取られる事なんて無いだろう。あるとしたらこの星の自然物の元気だけ。
今頃……凄い業腹だが奴の元気に無理やり分けられた森とかの自然物は枯れたりしてしまっているだろう。奴が少しずつ集めるだなんてことはしない。
前のブラックなら兎も角,今の見境がなくなって神としての矜持しかないブラックにはこの星が無くなろうともどうでも良いと思っているはずだ。
そして奴はシーラスによって宇宙樹に蓄えられた巨大なエネルギーを我が物として扱っている。
「ふざけんじゃねえぞクソ野郎」
元気玉は邪気がないと作れないって制約があったはずだ。
いくら悟空さんの肉体を奪ったからと言って,魂が邪悪なら作れるはずがないのに……奴の凶悪化はその理屈さえもねじ伏せるというのか。
「この素晴らしいパワーで,愚かな人間ごと全て消す!!」
「くっ!」
光輝は剣をしまい,次にブルーを進化させた姿へ変身し腰だめに気を溜める
「か……め……」
「人間が,その諦めの悪さは実に不愉快だ」
貴様には分からんだろうよ。己の考えを,理解されないと他者を切り捨て,他者の力で傲慢に振りかざす災厄をへらへらと起こすだけのクズに。
諦める?
そんな選択肢は最初からない。何故なら俺は……諦めない英雄たちの姿を見てここまで来たんだから。
「は……め……!!」
「終わりだぁああああ!!」
醜い笑みを浮かべ,勝利を確信したかのように叫び……
「波ぁああああ!!」
光輝から放たれる最大パワーのかめはめ波と,ブラックの宇宙樹から集めた元気玉が激突し……巨大なエネルギー弾が海上へ着地した
──光輝!
意識が無くなってしまう寸前……光輝の脳裏にその声が聞こえた
お疲れさまでした!
ブラック,宇宙樹ブーストを受けた元気玉です。もとは悟空の肉体だから知識としては持っているだろうし,ゲームのセルみたいに自然物から強制的にもらえる事は出来ていたので使いました。
尚,発動までのインターバル短すぎる()。
因みにですけど,光輝は元気玉使えません。悟空みたいに誰かが殺された時に”怒り”ではなく”憎しみ”が溢れる時点で純度100%正義って訳でもないからです。
凶悪化したブラックのイメージは,最近ゼノバース2で発表された極悪化をイメージしてます。
では!