Warrior beyond despair   作:レオ2

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おはようございます!
続きでございます。といっても物語殆ど進みません。
RPGとかのラスボス戦の前に仲間達に話しかけてこれまでの話をしようみたいな話が2,3話続きます。

では!


ヒーロー失格

 人っ子一人存在しない荒廃した世界,その中心に鎮座する巨大な宇宙樹の根の麓に現れた仮面の男をシーラスは迎えた。

 

「何故奴を逃がした」

 

 先程の光輝ならば,今の仮面の男の敵などではない。それなのに仮面の男はみすみす自分達の計画を阻止できる光輝を逃がすような真似をした事に苛立ちを隠そうともせず問いかける。

 それに仮面の男は唾を吐き捨てるように答えた

 

「あんな奴を倒した所でなんの自慢にもならん。どうせ計画はもう達成しているようなもの,蟻一匹放っておいたところで奴らに未来は変えられん」

 

 光輝が名付けたインフィニットワールドでの,時の界王神陣営の戦士達との全面戦争。放棄するのなら他の世界に伸ばしつつある宇宙樹で全く無関係な世界を破壊するという脅しと共に宣戦布告をした。

 しかし,時の界王神の陣営にこの世界に辿り着ける存在はその光輝だけで,その光輝に負けない自信が仮面の男にはある。

 

「奴らは俺達の箱庭でエネルギーを与えるだけの存在だ」

 

 インフィニットワールドには倒す標的がいなくなった凶悪化した敵達が蠢いている。それに宇宙樹もブラックに貸したエネルギーのせいで完成まで少し遠のいてしまったけれど,全面戦争が起こればすぐにエネルギーが溜まることだろう。

 どうあがいてもこちらの勝利しか見えないのだから光輝1人放っておいたところで構わないというのが男の論。

 

「その言葉の責任,しっかりととってもらうぞ」

「当然だ。……理想の世界の為に……誰も傷つかない世界の為にな」

 

 次に会った時,今度こそフルパワーの光輝を真正面から殺し世界への復讐を果たす。

 完全に光輝達に勝利してこそ,新たな世界を作るのにも興が乗るというものだ。

 

「貴様も,へまをするなよ」

「無論だ」

 

 そう答えたシーラスの言葉を背に,仮面の男はどこかへと飛び立った。

 

 

 ★

 

 

 仮面の男の宣戦布告,本当に最後の戦い。奴らが宇宙樹のエネルギーとシーラスの洗脳技術で凶悪化した一星龍率いる敵達とシーラスと仮面の男との最終決戦に向けて俺達は最後の確認を行っていた。……のだが

 

「光輝君,あなたは今から戦いまでお休みよ」

「え……いや俺も混ざりますよ」

 

 今この場に集まった……シーラス達の野望,それを聞いた上で一緒に計画を止めてくれるために集まった戦士の中で時の界王神様に名指しで休暇を言い渡された俺は不満全開でそう言った。

 

「あなたに伝える作戦はシンプルだからよ。……必ず,あの男とシーラスを倒して帰ってくることなんだから」

 

 あの2人は俺と,双子の宇宙を陣とって布陣を築いている。いつの間にかゲートを改良されていたらしく,シーラスが待つもう1つの宇宙……時の界王神様曰く時の狭間に近い異空間になりつつあるらしい。

 だから俺の世界にあるゲートを通じてでしかシーラスの元にはたどり着けない……けど,その前に立ちはだかるのは仮面の男。

 確かに俺がする事はここにいる人達に比べてシンプル……ただ2人を倒す事だ。

 

「光輝,時の界王神様の言う通りおめえは休んで来い」

「悟空さん……」

 

 その言葉に顔を上げて悟空さんを見て,他にも周りにいる戦士達に目を向ける。

 本当はタイムパトローラーの仕事であるはずのこの全ての世界の危機に,見過ごせないという理由で集まってくれた人達。

 タイムパトローラーのベジータさん,悟飯さん,悟天さんにトランクスさん,バーダックさん。それに最初に会った悟天さんとトランクスさん,未来の悟飯さんにトランクスさん,プライドトルーパーズにヒット,ピッコロさんにベビーと一緒に戦った悟空さん達一行,キャベにカリフラ,ケールの第六宇宙のサイヤ人達にタピオンさんまで。

 他にも,俺があの世界で出会った戦士達が俺を見て微笑むなり好戦的な笑みを浮かべるなりして眼で「言う事聞いとけ」と言われたように感じた。

 ……なんなら,何故かその沢山の戦士の中にハーツとカンバーがいるのもビックリするんだが。後で聞いたら宇宙樹を使おうとする奴らを許せないと,カンバーは強い奴と戦えるなら何でもいいという理由で俺達の味方になってくれた。

 

「光輝君」

 

 近くにいた未来の悟飯さんが俺の肩を叩き言った

 

「父さんや時の界王神様の言う通り,光輝君は大切な人達に会ってきたらいい。君はその人達を守るために強くなったんだろう?」

 

 俺が強くなってきた理由,そんなものは未来永劫変わらない。失いたくないから戦ってきた。だからこそ,悟飯さんは俺にその成果を見て来いと言ってくれたんだ。

 

「……分かりました。じゃあ,皆さんまた後で」

 

 その言葉に,俺は素直にうなずくことにした。皆に挨拶した後,俺は時の巣から出て先ずは愛美たちの所に向かう事にした。保護区に突入すると色んな人が不安そうに佇んでいたりしていたけれど,今の状況を話したりなんてしてたら時間が無くなってしまうので直行で飛んだ。

 見慣れないマンションに愛美とご両親の気を感じ,他の人間に見つからないようにインターホンを押す。そうしたらインターホンに出るよりも先に勢いよくドアが開け放たれ,なんか肩だしファッションして少し彼氏としては気が気でならない格好になっている愛美が出て来た。

 

「光輝……」

「えっと……ただ」

 

 いま……と続けようとしたらその前に愛美が俺に飛び込んできて咄嗟に受け止めた。彼女の柔らかい肌が直に伝わるのもあってなんか恥ずかしくなってしまうけれど,それも腕の中で震える彼女を見たらそんな事を思う余裕は無くなった。

 開けられたドアの先を見たら弘樹さんと美咲さんが凄い神妙な顔で見てきてつい眼で挨拶する。

 

「無事で……良かった……」

 

 力強く抱きしめてくる彼女の背に腕を回して,とんとんと落ち着けるように叩く。まあ,しばらく会えないなんて言ってそれきりだったのだからよく幻滅されなかったなと自分でも思う。

 

「大丈夫だよ,俺は……ここにいるから」

「うん……ッ」

 

 そう言って愛美はまた身体を俺に押し付けて,俺の存在を確かめようとする。俺は彼女を放っておいた罰として,しばらくそのままにしていた。

 

「……弘樹さん,美咲さん,事情をお話します。俺に捕まってください」

 

 取り合えず愛美は問答無用でくっついているから良いが,両親はまだ俺に触れていないのでそう言うと2人とも大人しく触れてくれて俺は3人と一緒に瞬間移動で櫂さん達の所へやって来た。

 

「光輝君!」

 

 家の中で楓さん憔悴したようにテーブルに突っ伏していたけれど,俺を見た瞬間に顔を綻ばせた。隣には櫂さんや,偶々一緒にいたのか光定さん夫婦もいて丁度いいと思った。

 

「光輝君……あの仮面の男が言っていた全面戦争って……」

「そのままの意味です。奴らは……新しい宇宙を創るための最後の仕上げとして,俺達を抹殺してダメージエネルギーを集めるのが奴らの言う全面戦争……次元大戦らしいです」

 

 そう言って,愛美を抱きしめたまま今までの経緯を話す。

 シーラス達の目的,その為の手段としての宇宙樹,そしてこちらの戦士達と戦ってダメージエネルギーを吸収し,双子の宇宙全てのリソースを使って,全ての次元と宇宙を破壊して新たな宇宙を創り,悪が存在しない世界を作るというジェネシス計画の全貌。

 

「なんか……もう,凄いとしか言えないわね」

 

 全てを聞き終えた美咲が嘆息しながら呟く。全ての話が次元違い過ぎていてそんな感想しか浮かばない。既に自分達一般人程度では何もできない事も悟ってしまっている。

 櫂は光輝の顔を伺いながら問いかける。

 

「光輝君も……行くんだよね」

 

 今更……本当に今更聞くまでもない質問なのは分かっている。それでも……問いかける事に意味がある。光輝の覚悟を,この眼で見るために。彼は愛美を抱きしめながら,力強く頷いた。

 

「当然。この戦いに終止符を打てるのは俺だけ,俺がやらなきゃ誰がやるんですか」

 

 仮に一星龍たちを悟空達が倒せたとしても,それでは何の解決もならない。全てを解決するには光輝が仮面の男とシーラスを倒し,宇宙樹を根本から消し去る必要がある。

 宇宙樹を消すのは正直やり方が分からないが,これも光輝にしか行けない場所にある以上光輝がやるしかない。

 

「今までは……きっとこの時の為にあった」

 

 SAOの世界にいたことも,タイムパトローラーとして戦ってきた事も全てがこの時の為にあったものだと,今ならそう思える。

 ……だけど,そんな彼の覚悟を聞いても震える女の子。

 

 

「いか……ないで」

 

 

 そんな心細い声が,胸の中から聞こえてきて柄にもなくドキッとしてしまう。愛美は俺の胸に身体を預けて顔を覗かせないまま呟いた。

 

「なんで……なんで光輝ばっかり辛い眼にあわないといけないの。今まで沢山頑張ったのに……何で全部光輝が背負わないといけないの」

 

 愛美とて,こんな言葉が我儘でしかないのは分かっている。だけど,ブラックに殺されたと思った時,そして仮面の男に殺されると思った時心の底から”戦ってほしくない”と思ってしまった。

 光輝の説明で,この戦いの希望が光輝にあると分かっても……全ての命の重みを,なんで光輝が持たないといけないのかと……運命が憎くて仕方がない。シーラスにも,仮面の男にも……何があったのか知らない。だけど自分の大切な人を傷つけて,自分達の理想郷を作るという計画に勝手に色んな世界を巻き込んで許せない。許せるわけがなかった。

 

「良いじゃん! 今まで頑張った来たんだから!!」

 

 そう叫ぶ愛美に応える言葉を,俺は探した。彼女が言っている事は心からの心配なのは分かっている。きっと行ってほしくないのも本音で,俺が不安にさせてしまっていた。

 なまじ,悟空さん達の強さを知っているからこその言葉でもある。例え悟空さん達が俺達の世界に干渉できないと知っていても,気持ちはまた別の問題なんだ。

 戦争に息子を送り出す母親も,今の愛美のような気持だったりするのかなとか考えたけれど……現実逃避をしていても仕方がない。俺は俺なりの言葉を愛美にぶつけるしかない。

 

「愛美,俺は全部を背負うつもりなんてないよ」

「……うそ」

「嘘じゃない。俺がこの戦いに行くのは……俺の大切な人達がいるこの世界を守るためだ。正直,それ以外の人間を命賭けてまで守ろうとは俺は思っていない」

 

 救える以上は救うけどな,そう困った様な笑みで光輝は言う。

 救える力がありながら救わないのは傲慢だとかなんとか言う人間もいるかもしれないが,光輝は既にそんな考えを持っていない。彼が笠木やそれ以降の敵と戦ってきたのは戦わないと愛美や櫂たちが死んでしまうからだ。

 

「結果的に大多数を守ったように見えるだけで,俺は大事なものしか守らない。それが今回は”世界”ってだけなんだ」

 

 腑抜けというのならそう言えばいい。俺の考え方は多分ヒーローとしては失格だろう,だけど自分の大事なものを守れない人間に,何かを守れるとは俺は思えない。自分の大切なものを守ってから初めて他者を大事に出来るって,俺は思っている。

 だから俺は今回も愛美たちを守るために,シーラス達との戦うだけ。そこに全ての世界を守るという意識は実際はそれほどない。

 

「世界を守るために産まれた……そんなカッコいいセリフなんて言えないけど,それでも俺は,俺の大事な人達の為に戦う」

 

 俺にとって分かり切った答えだ。こんな答えが,愛美の望むものなのかは分からない。それでも俺は正直に話す事しか出来ない。愛美は顔だけ上げて俺の事を見上げてくる。

 そして一瞬眼を伏せ,言ってきた

 

「そんなんだから……かっこよくて困る」

「そりゃどうも。ちゃんと約束する,俺は死なないし,生きて帰って……」

 

 言葉を続けようとしたら愛美が指で俺の口元を抑えて来た。

 

「フラグだから……そんなの言わなくていい。分かり切ってる事は省略するのが普通でしょ?」

「……そうだな」

 

 そうして愛美は俺から少し離れ,しょうがないと言った感じに微笑んだ。

 

「これが……本当に最後だからね」

「……ああ」

 

 本当はもう少し,皆と一緒にいたい気持ちは山々だけど俺には他にも行くところがある。

 

「少し,お姉ちゃんやキリト達にも会って来る」

「うん。いってらっしゃい」

 

 本当は光輝といたい愛美も,今光輝が自分達に会いに来てくれた理由を察しているからこそ送り出す。この時間は光輝にとって決意と覚悟を確かめるための時間……今まで自分が守ってきたものを見て,己の存在を確かめる事が,今の光輝には必要なのだと愛美にも分かっていた。

 

「ありがとう,少し行ってくる」

 

 そう言うと腕時計型デバイスを取り出し,次元を飛んだ。さっきまで光輝がいた所を,愛美は寂しそうに見つめていたのだった




お疲れさまでした!

タイトルのヒーロー失格はネガティブな意味ではなく,光輝にとっての戦う意味が”全てを守りたい”というものではなく”大事なものを守りたい”なので光輝の根底にある救えるものを救って来たウルトラマンが彼にとってのヒーローであり,それが出来ない自分は間違ってもヒーローではないという考えからです。


因みに光輝にとっての悟空やナルトとかはヒーローはヒーローでも英雄と書いてヒーローなので別枠です。

では!
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