Warrior beyond despair   作:レオ2

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おはようございます!
久しぶりの更新、書きかけの奴を見つけてなんか舞い上がって続きを書いてた()。
という訳で、最新話です!


集いし英雄達

 インフィニットワールドで,戦士達は次元の裂け目から感じた莫大な気に一同の動きは思わず止まった。

 

「なんだこの馬鹿でかい気は」

 

 光輝に修業を付けた方の悟空とベジータは,光輝が倒したのとは違うブラックを前にして光輝の世界から感じる甚大な次元をも突き破るほどの気を感じ取り思わず冷や汗を流す。

 

「これは……シーラスめ,宇宙樹を……神たる私に許しを請う事も無く使うとは」

 

 そう言っているブラックも超サイヤ人ロゼの中に凶悪化の影響であろう黒の気が混じっているので彼もある意味宇宙樹の力を貰っているのだが,自分の事は棚に上げてそう呟く。

 隣ではザマスも忌々し気に次元の裂け目を見ている。

 

「おめえら,なんでシーラスの味方をすんだ」

 

 そんな2人にさっきまで戦っていた超サイヤ人ブルーに変身している悟空が疑問だったのか問いかけた。

 別にブラックがもう1人いること自体はそれほど驚くような事ではなく,他の歴史の別のブラックなのは見ていたら分かる。

 だから悟空が気になっているのはなぜシーラスに加担するのかという事。

 ブラックとザマスは悟空とベジータに向き直りニヤリと笑った

 

「簡単な話だ。奴らの計画は全ての次元の破壊と創生」

「であるならば,その創生された世界には破壊神も全王も存在しない」

「俺達は奴らの世界を乗っ取り」

「創生された世界の人間が野蛮に進化しない世界を作るのだ」

 

 つまり,全王もビルスたち破壊神もいない世界で威張り散らかしたいという野望である。人間0計画の延長戦とも言える目的であり,それが彼ら2人がシーラスの誘いに乗った理由だという。

 やっぱり変わる様子もない2人の神に,ベジータは腕を組みながら一刀両断した。

 

「ふんっ,貴様らのその目論見はどの道失敗する」

「なに?」

「——っ?!」

 

 訝し気にしたブラックの隣では,ザマスが大きく眼を見開いて……眼前にはいつの間にか悟空が現れてザマスの頬に強烈な右ストレートがぶっ刺さった。

 ハッとしたブラックが前を見ると,ベジータもブラックの眼前に踏み込んで右フックが放たれていた。

 

「くっ!」

「どれだけ向こうの敵が強かろうと,俺達の誇りと力を受け継いだ奴が負ける訳がないからだ!!」

 

 ベジータの右フックを,寸前に横に飛んで躱そうとしたブラックだったがそれよりも早くベジータの左足の蹴りがブラックの腹部に突き刺さっていた。

 

(フェイント?!)

 

 右フックは囮で本命は強烈な回し蹴り,ブラックの身体はいともたやすくザマスの元に吹き飛ばされ2人は悟空とベジータを睨みつける。

 2人の前に並ぶ最強のサイヤ人達は,自らが鍛え上げた戦士の強さを知っている。それに

 

「おめえらは世界を支配なんて出来ねえ,ここでオラ達がおめえらを倒すからだ!」

「人間如きが戯言を,良いだろう。そこまで世界の終焉を待たずして死にたいというのなら,仇花と散れ!!」

 

 悟空とベジータはある意味宿命とも言える相手と激突した。

 

 

 ★

 

 

 俺がキリトから聞いたアインクラッド第100層ボスの<アンインカネイトラディウス>……以後ラディウスは,かつてのSAOの英雄たちでも一筋縄ではいかない相手だったと聞く。

 それには色々な理由があったらしいが,攻撃力は勿論防御力にも優れ……キリト達を苦戦させた能力の中にマップの地形操作があったと聞いている。

 地面から突如として現れる樹木がプレイヤーを捕らえようとし,問答無用に捕まったら眼から放たれるレーザー砲みたいなもので吹き飛ばされるとか言うクソゲー仕様。

 勿論タイミングを見た強烈な攻撃で怯んだりすることはあるみたいだが,ダメージを受けても聖なる雫的な技で受けたダメージよりもダメージを回復してしまう。

 

「ちょ,ズルいだろお前!!」

 

 俺は今,地上から襲い掛かって来た大量の樹木を空に飛んで躱していた。見た目はあれだ,ナルトさん達の世界にいた初代火影,千手柱間さんの木遁忍術に似ている。

 地上から樹木が襲ってきて俺を拘束しようとして凄まじいまでの数が迫りくる。おまけにそのスピードは樹木だとは思えない位早く,数も多かった。

 

「Aghaaaaaaa!!」

 

 到底日本語とは思えない叫び声を上げ俺を捕まえようと更に樹木が俺に伸びてくる。

 

「チっ! 波ぁあああ!!」

 

 俺はそれを咄嗟にかめはめ波で破壊しようとした。

 

「なにっ?!」

 

 だが樹木が一瞬黎騎の気によってコーティングされたかと思ったら俺のかめはめ波を弾き飛ばしてそのまま俺に迫って来た。

 咄嗟に俺は下降する事でやり過ごす。

 かめはめ波が効かない樹木とかもう何で出来てんだよとか思ってしまうが,正直そんな疑問を呈する暇がないほどの波状攻撃が襲ってくる。

 既に黎騎によって辺り一帯は全て吹き飛んでいて東京の面影なんて殆どない。だからどこから攻撃が来るか自体は分かりやすいが=対処できるという訳ではなかった。

 それ位黎騎の攻撃の数が多い。

 

「くっ」

 

 下降した先で,巨体な姿となった黎騎の巨大な手が迫っているのを見て光輝は咄嗟に更に下降する事で躱した。

 そのまま光輝は縦横無尽に宙を飛び,これでは埒が明かないと思い直した。

 

(先ずは常套句,目つぶしだ)

 

 黎騎がもしも目視で自分を狙っているのだとしたら,先ずは眼を潰して視界を奪うのは常套句だ。ボス戦でも偶にやっていた手法であり大体は光輝かキリトがボスに飛び乗ってぶっ刺していたが,今回は正直黎騎の巨体に近づくことすらも困難だった。

 目が回るほどの樹木の数と,隙あらば黎騎本人が光輝を捕まえようとしてきて剣で眼をぶっ刺すという行為がほぼ不可能だ。

 だから残る手段は……狙撃しかない。

 

(これ,能力が同じならSAOでも俺がソロ攻略出来たか怪しいな)

 

 はっきり言って,こいつは単純な腕力や防御力よりも特殊能力,それも相手に依存しない地形操作が一番厄介だ。俺は武空術で空を飛べるからまだマシなだけで,空を飛ぶことが出来ないSAOやオーディナルスケールじゃ絶対こいつを初見攻略とか無理だろとか俺でも思ってしまった。

 レイドならこの樹木の攻撃もタゲを分散して躱しやすくなり,結果的にダメージを与えやすいサイクルが出来たはずなのに俺は絶賛ソロ攻略中なのでタゲを分散など出来ない。

 これでは狙撃も何もあったものじゃない。

 

「影分身の術!!」

 

 だから俺は先ずは陽動の為に影分身で人数を増やし,タゲを分散する事にした。

 

「Ahaaa!!」

 

 思った通り,黎騎は散らばった俺の影分身20人位を捕らえようと樹木や素手が分身の俺に迫る。俺の方にもまだ攻撃は来ているが,黎騎のあの樹木の攻撃はやっぱり制限在るのか,俺を追っていた時と同じ樹木の数でそれが20等分にタゲが分散されたからかまばらになって結果的に攻撃を避けやすくなった。

 

「よし!!」

 

 樹木を避けながら,俺の腰にはある武器が装着された。量子変換機に突っ込んでいたのは,メタルクウラと戦う前のロボット兵と戦った時に使った「ダークリパルサー」,拳銃型の科学忍具だ。

 直ぐに雷遁の性質変化を加えたストレージをセットし,何人もの俺がいて攻撃が荒くなっている黎騎の眼に狙いを定めた。

 

(頼む俺達!)

 

 影分身たちに狙撃をしやすくなるように動けと念じれば,分身たちはかく乱し隙あらば攻撃を加えて……

 

「チっ!」

 

 分身の1人が黎騎本体に拳を突き立てようとした時,分身をはじくように透明の何かが分身光輝の拳を受け付けなかった。

 

「シールド持ちとかめんどくせーギミックまで完コピしやがって」

 

 そんな悪態に答えるものはなく,片目をつぶって狙いを定めて──雷の弾丸を発射した。

 鉄鋼どころかカッチンコウですら貫くことが出来る光の銃弾,しかし威力自体は光輝の実力に依存する。

 影分身とは言え,光輝の拳を弾いたラディウスの防御は……

 

「クソ,これじゃ無理か……っ!」

 

 狙いは良かった,放たれた弾丸は一筋の閃光となってラディウスの眼球を貫く速度と威力だった。

 だがそれを防ぐのは障壁,光輝も話には聞いていたがそれをコピーされている事に苛立ちが少し溜まる。

 しかし戦いは常に変化する。

 光輝がいた建物の下からラディウスの樹木が飛び出してきて咄嗟に上昇し躱す。

 

「これじゃあイタチごっこで不味い……決定的な一撃が必要だ」

 

 これがもしレイド戦ならば……絶えずスイッチを繰り返しダメージを与え続けて他の人は休んで回復が出来る。

 連続で攻撃して,相手に回復の暇を与えずに倒すのがこいつに対しての攻略法だ。

 そして,それを俺がするには波状攻撃なんて生温い。

 こいつは既に宇宙樹の暴走になってしまった以上,スタミナという概念は恐らくない。

 であるならば,こいつの障壁を超えて,強靭な肉体を消し飛ばす一撃が必要だ。

 だが俺にはこの後,宇宙樹の力を使うシーラスの相手も控えている。

 この樹木に関してもそうだが,現実とVRの違いはあったとしても断言しよう

 

 ──こいつはソロで倒せない! 

 

「——————」

「……っ,させるか!」

 

 他の影分身を消し去り,こちらを見上げた奴は一瞬で周囲の状況を変化させた。

 一見のどかに視える木々達,だが俺は知っている。

 これが奴の回復業だという事を,奴の背後に瞬時に聳え立った樹から雫が1つ落ちると奴に付けた障壁越しの傷すらも回復してしまう。

 永遠のマラソンなんてさせてたまるか。

 飛翔する俺を、奴はどこか嘲笑的に見て──

 

 ──ッ、違う罠だ! 

 

 あたまのサイレンが鳴り響いた瞬間、俺の進行線重なるように、地面から神気を感じる樹木が飛び出た。

 

「まずッ……!」

 

 言い終わる前に、その樹木が俺の身体を捉えた。

 

「がはっ?!」

 

 俺の身体を容易く包み込むように、奴が操る樹木は俺事地面へ叩きつけた。

 あの巻物で見た、千手柱間以上の疑似木遁攻撃は力の限りを尽くして俺を地面へ押さえつける形になった。

 そして、まるでありを見るかのようにラディウスとなった黎騎はその紅き瞳で俺を見下ろした

 

「くそっ、なんて力だよ!」

 

 血反吐を吐きながらも、光輝は何とか樹木を切断し脱出しようと試みるが、まるで初めからここに存在していたかのように拘束する樹木は解けなかった。

 それだけならばまだともかく……

 

「ughhhhh」

 

 もはや人語を話さないラディウスは、赤き瞳に莫大な気を溜め始めたではないか。

 収束するエネルギーは、容易く周囲の状況を一変させる。

 残っていた建物の残骸も、まるで嵐のように空をぐるぐると舞っている。

 今更あんな建物が落下してきた程度で死ぬわけはないが、その前にラディウスが放とうとしている必殺の一撃の方が遥かに不味い。

 

「くっ……はぁあああああ!!!」

 

 気を溜める姿勢をとれやしないが、そんな事を言っている状況ではない。

 全力で気を開放して、抜けた樹木の間から脱出を試みようとする光輝。

 溜まるラディウスの気、抜け出そうとする光輝。

 

「か、界王拳ッ!!」

 

 徐々に樹木が破壊されて行くのを感じた光輝は、最後のダメ押しとして叫んだ。

 瞬間、ラディウスの強大なエネルギー波が放たれ──ッ

 

「——ッ!!」

 

 同時に樹木から抜け出した光輝は出来得る限り、その場から離れた。

 秒間0.2……もっと短かったかもしれない。

 ラディウスの下方から広がった、莫大なエネルギー波は、その衝撃を和らげることも無く逃げようとしていた光輝をも飲み込んだ。

 

 *

 

 顔面を蒼白にしながら、楓は叫んでいた

 

「光輝君!」

 

 脳裏に流される戦い、その戦いの模様は一切分かりやしない。

 けれど、黎騎と呼ばれた青年も敵の親玉に利用されていた事。

 そして、心が折れても尚まだ利用されて、化け物の姿にされて……光輝を圧倒していた。

 

 見せられている映像では、ありとあらゆる残骸が降り注いで、ラディウスが咆哮を上げ……そのラディウスの出鱈目なエネルギー波によって光輝が飲み込まれて行った。

 

「お兄ちゃん……」

 

 咲良が泣きそうな顔でもなお、映像を見続ける。

 映像の……元々自分達がいた地球は世紀末のように成り果てて……そこには地獄があった。

 

「……大丈夫、まだ生きてる」

 

 櫂はその映像の一部分が揺れ、炎の街の一部、瓦礫が崩れ去ったのを見て……楓が悲鳴を上げた

 

「こうきくん……」

 

 シーラスによって見せられる映像の中で、光輝は満身創痍になりながらも地面に剣を突き刺してラディウスを見上げていた。

 額からは血が流れ、至る所に傷を負って、左眼には縦一文字の切り傷が見えていた。

 既にその姿はシャイニングブレイブではなく、ただの通常状態だった。

 

『はぁ……はぁ……流石、アインクラッド第百層ボスを模しただけはある。正直、あのままソロ攻略しようとしても無理だったなこりゃ』

 

 剣を支えにして、口を引き攣らせながらそんな事を言っているがそれが強がりだなんて誰が見ても明らかだった。

 

『けど……はぁ……くっ』

 

 地面から剣を抜き取り、構えをとる。

 そうして気合を入れて金色のオーラを纏おうとしたが……

 

 

『やっぱダメか、超サイヤ人になる体力すらねえ。ついでに言うなら所々折れてるなこれ』

「そんなっ」

 

 直ぐにその気が散っていき、代わりに倒れ込むように膝を折った。

 倒れる事だけは避けたが、もう虫の息だ。

 代わりにラディウスを見上げると、ラディウスは再びその瞳にエネルギーを溜め始めていた。

 天変地異すらも起こしかねない気が、再び高まり始めていく。

 

「も、もう良いから逃げて光輝君!」

 

 このままでは死ぬ、美咲は言うが光輝には当然声は届いていないし、仮に届いたとしてもとる行動は変わらなかっただろう。

 

『それでも、逃げる選択だけは選ばないって決めているんだ俺は!』

 

 そう言って、二振りの剣を構える。

 高まっていくラディウスの気に、背を向けることはせず睨みつける。

 リコレクションブレイブは愚か、超サイヤ人にも界王拳すら使う体力はもう残されていない。

 それでもまだ──

 

 

『俺は、お前とは違う! 最後まで戦う! それが俺をここまで連れてきてくれた、全ての人から貰った楔だから!』

 

 

 叫んだ瞬間、ラディウスの瞳がより鮮明に光が灯って

 

 ──死んじゃう

 

 そう咲良が思った刹那——どこからか、やって来た()()本の剣の嵐が

 

「Aghhhhhhhh?!?」

 

 ラディウスの眼球及び、巨大な体躯へ襲い掛かった。

 流石にそれだけでは致命傷にはなりはしなかったが、ラディウスはその攻撃にたまらず溜めていた気を露散させ光輝でさえ突破が難しいバリアを貼った。

 それを見上げていた光輝は、一瞬何が起こったのか理解するのに時間がかかった。

 

「え……?」

『なっ……サウザンドレイン?! ……ちょ、まさか?!』

 

 どこか、恐れているようにも聞こえる光輝の言葉の後……遥か彼方から数十人ものの流星が空を描いていた。

 その全てが、光輝、そしてラディウスがいる戦場へとやって来る。

 それらの流星一つ一つが、紐解かれるように姿を現して──

 

 

『エンハンス・アーマネント!!』

 

 

 その流星の1人、青い剣士が、その特徴的な氷のような剣を地面へ突き刺しながら叫んだ。

 突き刺された剣を中心に術式の文様が辺り一帯に広がり、次にそこから青い氷の蔓がラディウス目掛けて襲い掛かった。

 ラディウスはそれを躱す事が出来ずに、そのまま氷の牢獄へと幽閉された。

 常人にはあり得ない光景、しかし、光輝はこの光景を自分の業以外で見たことがある。

 そう、アンダーワールドで何度も助けられたこの業こそは、武装完全支配術……剣の記憶の一部を開放する事で使う事が出来る一握りの人間にしか出来ない業だ。

 光輝は、自分の前に降り立ったその剣士を見て大きく眼を見開いた。

 

『おまっ……ユージオ?!』

 

 ユージオは眼だけを光輝へ見返し、微笑みながら答えた。

 

『僕だけじゃないよ』

 

 その言葉に、光輝は上の流星を見上げた。

 暗雲を切裂くように、彼、彼女達は降り立っていく。

 

『な、なんで皆っ?!』

 

 ここに来るわけがない、そう思っていた光輝は理解不能な光景に戸惑いの声を上げる。

 光輝が見上げる先で、何人ものVRMMOプレイヤー達が現れていたからだ。

 

『ユージオナイスだぜ!』

『そのまま少し持たせてくれ!』

 

 現れたのは(クライン)と、あの最前線を支え続けてくれた商人(エギル)

 侍は流星として降り立ちながら、辺り一帯の炎や樹木の残骸を切り払うかのよう腰をかがめた。

 

『光輝伏せておけ! いっくぜ!!』

 

 右に帯刀した刀が、あの世界とそん色ないカラーに染まり……その瞬間、周囲の自然エネルギーが刀へと収束し──一気に360度に振りぬいた。

 光輝は咄嗟に頭を下げることで、その斬撃と一緒に起きる嵐を躱した。

 そして、次に顔を上げた時燃え盛っていた炎や樹木が切り払われて氷漬けのラディウスが見上げやすくなった。

 そのゲームならばいざ知らず、リアルでそんなことが出来る人間が限られている事を知っている光輝は自分の前に降り立った2人に顔を向けた。

 侍は、ラディウスの神気を受けて武者震いするかのように微笑み刀を肩へ置く。

 商人はその巨大な斧を地面へ突き刺した。

 そんな彼らに続くように、ギルド風林火山の面々も降り立った。

 

『旋風……っ、なんでクラインがソードスキルを使ってんだよ!』

 

 映像の中の光輝が、意味が分からないと言いたげに額から血を流しながら叫ぶ。

 旋風は、あの世界(アインクラッド)で刀スキルの熟練度をそれなりに上げ続けたものだけが出来る刀の上位ソードスキル。

 あのイルファング・ザ・コボルドロードが得意とする業だ。

 光輝もやろうと思えば再現は出来るが、今のライトエフェクトと言い……完全にあの世界にいる時のような姿を幻視した。

 クラインは光輝の叫びに呆れた眼で振り返った。

 

『光輝にだけは言われたかねえな』

『もっともだな。それに、これだけで驚いてもらっちゃ困る』

 

 同様にエギルが言うと、光輝はハッと上を見上げた。

 ラディウスを囲むように、残りの流星たちが降り立った。

 青い騎士(ディアベル)と、その腹心(キバオウ)。そして後ろに連なったのは、今は無きあのデスゲームを最後まで戦い抜いた何人かのプレイヤー達と、月夜の黒猫団の面々。

 彼等はクラインによって切り払われた樹木の上を陣取った。

 

『青龍騎士団、戦場に到着!』

『A隊、B隊はシュミレーション通りフォーメンションを組むんや! 相手はあの光輝はんを追い詰めた奴や、油断するなよ!』

『ディアベルさん、キバオウさん……サチさん達まで?!』

 

 流石と言うべきなのか、あの頃と変わらない……否、あの頃以上の指揮であっという間に彼等はラディウスを中心にフォーメンションを組んでいた。

 あの頃を彷彿とさせる、変わったようで変わらない最前線を走り続けたギルドの姿がそこにはあった。

 

『おーい! 光輝君!!』

『こーうき!!』

 

 ディアベルたちに唖然としていると、また背後から声がかかり振り向くと2つの流星が降り立っていた。

 ALOでのシルフとしての姿、剣姫と謳われたスピードホリック、リーファと絶剣と呼ばれたユウキ。

 その2人が降り立って、光輝はハッとしてラディウスの向こう側。

 建物が無惨に破壊された跡に目を凝らすと

 

『シノンさん……、GGOの人達も?!』

 

 そこにいたのは、銃の世界を陣取る猛者たちの姿。

 超人的な視力でそれを認めた光輝の視線に、シノンは気がつき不敵な笑みを浮かべて頷いた。

 

『……っ』

『文句だけは受け付けないからね僕ら』

 

 何かを言おうとした光輝の先手を打つかのように、ユウキがジト目でインターセプトする。

 

『い、いやでも何で皆っ!』

 

 それでも、彼彼女らを守るためにこの戦場に立っているのに、どうしてその彼彼女達が……そもそもどうやってあのゲートを突破したのか。

 一気にいろんなことが起こり過ぎて、流石の光輝も状況の整理が追い付かなかった。

 追いつけるわけがなかった。

 彼等も、追いつかせるつもりはなかった訳だが。

 

『そりゃ、光輝お前を助ける為だよ!」

 

 そして、今度は光輝を守るかのように囲むように残りの流星が降り立った。

 ALOやGGOではなく、成長した今でも愛用しているブラックコートをなびかせて。

 背中には、相も変わらないあの二刀を携えていた。

 その隣に寄り添うように、血盟騎士団の、そして整合騎士団正装を身に着けた彼女も降り立つ。

 

『キリト、アスナさん、アリスさん……それに』

 

 リズ、シリカも降り立つ。

 そして遅れて、先程ラディウスのエネルギー波を反らす為の攻撃……元祖サウザンドレインを放った張本人もまた赤いバトルドレスを翻しながら光輝の前にひらりと着地した。

 

『お、お姉ちゃん』

『ちょっとー、私も忘れて貰っちゃ困るんだけどぉ!』

 

 と、同時に鼠色の髪を持つもう1人の姉も不貞腐れたように降り立った。

 隣にはスメラギもやって来ていた。

 

『七姉ちゃん……え、いやほんとになんでッ!』

『ユウキちゃんも言ったけど、文句は受け付けないよ』

 

 ピシャリとレインは弟を窘めた。

 だけど、こんな土壇場で彼女達がいる意味が分からなくて、守るべきものが戦場にいることに、光輝は酷く狼狽する。

 両親が、祖父母が、未来の悟飯が、死んだときの事を思い出してしまう。

 ましてや、敵は光輝ですら勝てるとは言い切れない。

 否、現実だけを見るのなら敗北していた程の強さを持つ。

 そんな敵を前に、彼らが束になっても敵うとは思えていなかった。

 

 ──彼らがリアルのままなら、当然の反応だっただろう

 

『だ、だからって……っ』

 

 叫ぼうとした光輝が、前のめりに倒れかける。

 激戦連戦続きで、終いにはラディウスの強烈な一撃を受けた後なのだ。

 その絶大なダメージは自然回復を待つにははるかに深刻過ぎた。

 そんな光輝の身体を、最後に降り立った影が支えた。

 

『っ……え……は?』

 

 その影の装備を、意匠を、光輝は見た覚えがある。

 だって、彼女が初めてALOに遊んだ時に女性陣からプレゼントされていたそれは、蒼眼を突かなくても脳裏に鮮明に焼き付いていた。

 震える瞳で見上げた先、彼女は痛々しく自分を見つめていた。

 

『え……み』

 

 愛美は一瞬眼を見開くと、直ぐに笑みを浮かべた。

 

『お待たせ、光輝』

 

 自分を証明するかのように、愛美はその身体で光輝を包んだ。

 レインたちが来てしまった時点で、まさかと思う気持ちもあった。

 それでも、実際に来てしまったら……彼女達の気持ちが痛いほど伝わっても、叫びだしたくなる。

 ”なんでここに来たんだ”って。

 しかし──

 

『……ッ』

 

 光輝は、愛美の抱擁を通して何かを感じたかのように大きく眼を見開いた。

 

『うん、そうだよね。光輝はきっと、怒るって皆分かってた。私達が死んじゃったらって……怖かったんだよね?』

 

 諭すように、愛美はぎこちなく()()()手で光輝を撫でた。

 自分達を守るために戦って、戦って、知らない場所でもどこでも戦って……彼は世界を背負った。

 小さな肩に、いくつもの戦士達の想いを乗せて。

 それがとんでもない重みであることを、ここにいる全員が理解していた。

 だからこそ──ここに集った。

 

『愛美……その身体、まさかッ』

 

 光輝がそう言った直後、彼の左腕から光が灯った。

 思わず愛美に身体を離してもらい、左腕を見ると時の界王神からここに赴く前に貰ったメビウスブレスが燦燦と輝いていた。

 そのブレスに光輝が触れると、流れ込むように情報が頭へと来た。

 

(これは……中継器だったのか)

 

 光輝が得た情報から、彼女の……否彼女達が選んだ選択を理解した。

 愛美はしてやったりと、初めて光輝を出し抜いた事が嬉しく見惚れる笑顔で

 

『正解! 要は、私達が死ななかったら良いんでしょ?』

『それは……その身体、もしかして人造人間?!』

 

 肌触りが、感触が、時の巣で戦いに参加すると言ってきてくれたガンマ達を思い出させた。

 それに、よくよく感じてみれば戦場では相変わらず自分と出鱈目なラディウスの気しか感じられない。

 つまり、ここにいる他の人間だと思っていたのは人間じゃない事に。

 

『うん! 時の界王神様から提案された、私達だから出来る戦い方だよ』

『まさか無機物だからゲートを突破したって?!』

『うーん、それは賭けだったけれどね』

 

 アスナがやんわりと綱渡りをした事を明かしたが、それを突っ込んでいる余裕はなかった。

 なぜなら、氷の牢獄に閉じ込められていたラディウスが、愛美の姿を認めた瞬間に狼狽したような声をあげ

 

『Ughhhhhhhhhh!!』

 

 氷をも貫通するほどの叫びと、気の高まりに牢獄に罅が入る。

 ユージオの額に汗が流れる。いや汗は出ないがリアルなら間違いなく汗が噴き出ていた。

 

『くっ!』

『ユージオ、もう少しだけ持たせてくれ!』

 

 キリトが叫んでいる裏で、光輝は愛美に支えられながら立ち上がる。

 そんな事を聞いている余裕なんて無いのに、つい問いかける。

 

『本物の愛美達は、今頃マシンを被って寝ているのか?』

『うん。でもただのアミュスフィアじゃないんだよ』

『ブルマさんの技術もここまで来るともはや神の領域だよ』

 

 彼女達が、フルダイブマシンでアバターに憑依してここまで来た事は想像に難くなかった。

 そう、この左腕にあるメビウスブレスとナイトブレスこそが次元移動装置と……彼女達をこの世界に呼び込むための道標だったのだと気がついた。

 最初から時の界王神は、彼女達を援軍として寄こすつもりだったのだと遅かれ理解したのだ。

 ただ、光輝の理解には誤解が1つ残っている。

 

『マシンはブルマさんだけど、ボディは違うよ』

『え……? もしかして、ガンマを作った人か?』

『大正解!』

 

 なるほどなぁと、光輝は腑に落ちていた。

 どうしてガンマがいきなり現れたのか、彼らと戦っていないのに、力を貸してくれるのかが不思議だったけれど最初からこちら側の人間だったのかと納得した。

 フルダイブ技術と、無機物から作られる人造人間の技術。世界をクロスさせたかのような、天才二人がいないと出来ない芸当だ。

 

 そして、光輝はラディウスを見上げた。

 ラディウスは以前として牢獄をうち破らんとしているが、牢獄も簡単には砕けない。

 それ所か、氷の牢獄から溢れる気の煌めきがさらに強くなっているようだ。

 どんな技術で武装完全支配術やソードスキルを模したのかが気になる所だが

 

『愛美、少し離れて』

『……うん』

 

 そう言って、光輝は右の剣……ウォーリア・ビヨンド・ディスペアーを掲げた。

 

『サンキューユージオ』

 

 瞬間、剣が光輝の気に呼応して煉獄の如き赤に染まる。

 

『エンハンス・アーマネント!!』

 

 氷の粒子が、光輝に引き寄せられるかのように集まりだす。

 途中でそれらは炎の気に変わり、光輝を包み込むと傷が、骨が、気が回復を始めた。

 ラディウスから漏れ出た気は、腐っても宇宙樹の気。

 そして宇宙樹の気は神気を帯び、ただ人が持つ気とも一線を画す。

 回復力もまた、けた違いだった。

 

『よし、やっぱりな』

 

 顔色が戻った光輝は、剣を下ろすと同時に牢獄の罅がさらに大きくなった。

 

『もうそろそろ限界だ! 皆戦闘準備を!』

 

 ユージオのひねり出したような言葉に、各々戦闘準備を取り始めた。

 キリト達もまた同じ。

 彼ら、彼女達の背中を光輝は眩しく見つめていた。

 普段は、自分が彼等の前に立っていた。それが今は、時の界王神とどんなやり取りがあったのか分からないけれど皆ここに集まっていた。

 ALO出身も、GGO出身も、そしてSAOの出身も…全ての世界から、自分を助けるためにやって来てくれた英雄達。

 そうして、ポツンと呟いた。

 

『なんで……って言っても、帰ってくれるわけじゃないよな』

 

 それに答えたのは同じく二刀を構えていたレイン。

 

『当たり前でしょ。この時の為に、光輝君を助けたいから……私達はここまで来た!』

『今更水臭い事は無しですよ、光輝。貴方から受けた数々の借りは今日ここで返します』

 

 レインの言葉を引き継ぐように、アリスも笑った。

 彼女もまた、あのアンダーワールドで光輝に助けられていた人間だ。

 光輝が、仲間がここにいる意味を分かっているからこそ……あと皆頑固なのも知っている。

 数瞬、彼は沈黙し、やがて困った人達を見るかのように力なく微笑み……メビウスブレスに触れ情報を流した。

 

『『──ッ』』

 

 流れてきた情報は、メビウスブレスから発せられるネットワークを通じてここに集った攻略組の面々へこれまでのラディウスの攻撃パターンを漏れなく伝えた。

 

『正直、皆がその姿になっても……倒れられるのは凄く怖い』

 

 メビウスブレスから手を離し、左手にもう一振りを持つ。

 そして、再び赤眼蒼眼になり……直ぐにそれは金色の光を放つ。

 静かにシャイニングブレイブに変身したのだ。

 

『それでも、俺だけじゃあいつの目を覚まさせてやることは出来ない』

 

 それは悔しいほどの本音だろう。

 宇宙樹に取り込まれた黎騎の事で、一番に怒っていたのは光輝なのだから。

 だからこそ、シーラスを一泡吹かせる意味も込めて

 

 

『だから、みんなの力を貸してくれ!』

 

 

 その言葉を、誰もが嬉しそうに受け取った

 

 

『『ああっ!』』

『当然だ!』

『やっとそれが言えるようになったかこの野郎!』

 

 

 クラインが悪態じみに言うが、口の端は笑っていた。

 この言葉こそが、彼が光輝の口から欲しかった言葉なのだから。

 そして、それとほぼ同時。

 

『Ughhhhhhhhh!』

『来るぞ!』

 

 ラディウスが、氷の牢獄を粉砕した。

 煌めく粒子を、うざったそうに払いのける。

 そして、仲間に囲まれている光輝を見て嘆くように咆哮を上げる。

 その視線を受けても尚、光輝の目は揺るがない。二振りの剣を握りしめ、攻略組に叫んだ。

 

 

『総力戦だ、勝つぞ皆!』

 

 

 あの世界では最後の戦いはソロだった。

 その後の戦いも、大体がソロだ。

 それでも、今この時は違った。

 光輝の号令に叫び返した英雄達が、一斉に飛翔した! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




映画見てる限り、ラディウスってソロじゃ絶対攻略ムリだと思います()。

という訳で、キリト達が参戦です!
いや最初はトキトキの力を借りてとかにしようかと思ったんですが、そうこうしている内に時がたちヒーローに憧れているヘド博士が登場し、こっちの方がキリト達らしいなと思い路線変更しました!

光輝が時の界王神から授かったメビウスナイトブレスは、次元移動装置であると同時に時の巣から出立した攻略組の面々をあの地球に送るための道標でもありました。
なんで光輝以外お断りゲートを突破したのかというと、光輝の言うようにネットワークと人造人間(ガンマ)達の技術を用いて作られた無機物のアバターなのでそりゃ通れるよねという暴論。
ベースはガンマ達の為、パワースピードは彼らとほぼ同じです。
ただし戦闘技術は個々人に依存します。
因みにヘド博士は、彼らのアバターや装備を作っている時が一番わくわくしたとかなんとか。ソードスキルのからくりとかは次回出します。

でもよく考えたら基本戦闘力ガンマ達とほぼ=の存在が1レイド以上やって来るってえぐすぎるよな。
でもまあ、宇宙樹エネルギーあるやつ相手なら良いだろ()。

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