愛美視点と三者視点入り交じってますが光輝の時と同じですのでご了承ください。
あの笠木の世界征服宣言とゲーム宣言から10日後、アメリカのカリフォルニア州のマンションの一室で一家揃ってテレビに張り付いている家族……もっと言えば光輝と同い歳くらいの少女がいた。その少女が見ているテレビは先程まではニュース映像だったのかまたもや笠木にジャックされ笠木と笠木の周辺が映った。ビル等が立ち並んでいるが人1人いない。そんな中唯一テレビに映っている笠木が愉しそうに言った。
『さあ、光輝君は来るかな〜。今の僕の力にどこまで耐えられるかな。いやそもそも来ないかもしれないね〜』
「光輝……」
テレビに張り付いているのは光輝の元同級生で笠木との因縁を持つきっかけとなった少女……古原愛美だった。愛美はアメリカのカリフォルニア州に引っ越していたから笠木の襲撃は回避した。
愛美は引っ越した後光輝の家に何度か電話をした。しかしそのどれもが今は使われていないというアナウンスがされ愛美は困惑した。手紙を送りたかったが電話出来るだろうと考えていたのと光輝が起きず光輝の家族ともかち合わず住所が聞けなかったのだ。だからこの2年間愛美は光輝の事を知る機会が無かった。光輝の事を知ったのは笠木の宣言したゲームの挑戦者の時だ。
愛美は勿論笠木がワシントンで暴れている虐殺していた映像を見た。何度も吐きそうになった。だから·····世界なんてどうでもいい。光輝が来ない事だけを祈っていた。……まあ光輝がいなくても渋谷を包囲するように今の日本の最高戦力はいる。今憲法第9条何て言っている場合ではない。愛美にはあの時の光輝が笠木に勝てるビジョンが浮かばなかった。
勿論2年経ってるのだから強くはなっているかもしれない。だけど·····笠木に対抗するにはドラゴンボールばりの修行するしかない。だが……そんな修行はしないのが普通だ。だから愛美は光輝が来ない事を祈ったのだ。しかしそれは裏切られた
『おや? どうやら来たようだね』
そんな笠木の小馬鹿にしたような声を聞きテレビに向いた。端っこから私と同じ位の小さな影が出てきた後普通に見たかった顔……こんな状況で無ければ喜んではしゃぎたい気持ちになれる顔が出てきた。
「な、んで?」
その言葉と同時にテレビに映っている光輝の姿を見た。蒼い羽織とその下に真っ赤な服を着た光輝。帯は青色、羽織に隠れて微妙に見えずらいけどズボンは黒色だ。そして背中に1本の西洋風な剣がある。それらの姿の出自を知りたい気もするがそんな気分にはなれない。そして分かりにくいが50メートル程離れ光輝は歩みを止めた。
『へぇー、よく来たね。2年ぶりかな? ようこそ、負ける未来しか見えない戦いに』
そんな小馬鹿にしたような声色で笠木は言う。愛美の中でもう見たくないという感情と見届けないとという気持ちがせめぎ合っている。だがそんな愛美の心情は知らず映像は流れる……リアルタイムだから当たり前なのだが。画面の中の光輝は少年らしい声ではなくどこか絞り出すような声で答える。
『戦いは最後までやってみなくちゃ分からない』
何事もやってみなければ分からない。それは愛美にも分かっている。だけど……不安が消える事は無かった。
『はは、そんなのは分かりきってるよ。僕が勝つってね』
なんか……、私が知ってる光輝と雰囲気が違う。私の知ってる光輝はもう少し穏やかな感じがしてたのに今の光輝は怒りの感じが滲み出てる。でも、なんで? 私の事だけならあんな感じになる事はないと思う。確かに光輝なら怒ってくれる。だけど2年前のあの日ぐらいまでしか怒らないはずだ。やっぱり人の命を弄んだから? でもそれだけじゃ。
愛美は光輝の雰囲気の変化に戸惑う。勿論画面越しだから少ししか分からないがそれでも十分に分かる変化だ。愛美が光輝の変化が何故なのか分からないのは当たり前だ。愛美はあの2年前のあの後の事は全く知らない。自分がまた日本に戻った時光輝に告白する事しか考えていなかった。そして今その2年前のあの後の事が断片的に分かる会話を始めた
『そういえば絶望は堪能してくれたかい?』
絶望とはなんの事だ? と愛美は思った。全く心当たりはない。
『ああ、癪だが堪能させてもらった。そしてもう2度はない』
『安心してくれたまえ。2度目は確かにない。何故なら君はこの戦いが終わったらご家族の所に行くんだから!』
「え……」
愛美の中で困惑が広がっていく。何故そんな表現になるのか全く分からない。光輝の家族は生きているのでは無いのか? そんな理解不能になっていく感情が愛美を支配する。そして直ぐに言葉の意味を笠木が高々に話した
『そう! 君も君の家族の待つあの世に送ってあげるよ!』
それを聞いた瞬間愛美の頭の中は真っ白になった。何て言ったのか理解出来なかった。そして画面の中の光輝も黙っている。そして愛美は硬直から2、3秒経ち硬直が終わり何とか声を絞り出した
「え、う……そ。光輝の家族って……」
愛美の父と母も驚愕している。だが2人以上に西沢家に行っていた愛美には光輝の家族の事が思い浮かんでいた。
何か何時でもウエルカムでお菓子作りを教えてくれた光輝の母。
昔の日本の話をよくしてくれた祖母。
自分が何度家に行っても暖かくいらっしゃいと言ってくれた光輝の父。
家にいる時や修行の時の光輝の様子を教えてくれた光輝の祖父。
そして……個人的に1番懐いて遠くの公園や映画やプールに光輝と一緒に連れていってくれた姉。今笠木が言ったのはその全員を·····殺したと言ったも同然。愛美はそれを理解した時……ツーと涙が出てきた。そして光輝も少し沈黙し顔を上げ言った。
『生憎だが俺は死なない。1人になるはずだった俺を育ててくれ、そして家族だって言ってくれた人達がいた』
愛美はそれが誰なのか分からない。と言うよりも今光輝が言ってる事すら頭から抜けようとしている。しかし……光輝の決意の言葉とは即座に分かり自分は聞き逃したら駄目と湧き上がる感情を押さえつけ光輝の言葉を聞く。
『俺の家族が死んだ時何度も謝って毎日お見舞いに来てくれた人がいた』
それは決意表明の様に聞こえた。愛美は成長した光輝を見ながらまたあの光輝と遊んだ日々の様に心臓の鼓動を早くする。こんな状況で思うべきではないが自分は本当に光輝の事が好きなんだと再認識する。
光輝は背中にある剣を引き抜いて中段に構える。
『俺の死んだ家族にもそして今の家族にも、この剣を作り俺に託してくれた人にも生きてと願われた!』
だから……だからこそ·····光輝の家族の事実を知った今、のうのうと生きていた自分には光輝の事を好きでいる資格もないと……悟ってしまった。だが……
『そしてまた会おうって言って俺にとっての大切な手紙を置いて言ってくれた人にもまた会うため!』
それが誰の事なのか、愛美には言うまでもなく分かった。分かったからこそ先程の……寂しさの涙とは別の涙が出てきて絞り出しながら言う
「こう、き」
こんな状況で思うべきことでは無いとは分かっている。だけど……自分は光輝の事を好きでいて良いのだと思わせてくれる台詞に愛美の想いは爆発した。
『だから·····俺は貴様を倒す!! 』
『ほざけ!』
そう言い合った瞬間2人の距離はあっという間に縮んだ。そのスピードに放送を見ているものは目を疑った。笠木は兎も角光輝があんなスピードを出せるとは誰も思わなかったのだ。
当たり前だ。そんな2次元並のスピードを出せる存在なんていないと誰もが思っていたのだから。だが事実して光輝はそんなスピードを出し距離を縮めた。そんな2人の手には互いの得物がある。そして2人は凡人には見えないスピードでそれを振るいあっという間に互いの位置を交換した。
画面越しでは見えにくいが光輝は特に顔を変えず笠木はニヤニヤしながら勝ち誇った顔をしている。そんな時何処からか金属音がした。だが光輝は気にせず振り向きながら動いた。接近し笠木に向けガチめな剣を上段に振り下ろす。
笠木は手にあるナイフで止め反撃しようと思って構えた。だがガードした筈なのに笠木は思いっきり顔面ごと斬りつけられた。血が思いっきり出るが光輝は気にせずに今度は左から横に一閃、それで血が更に出るが光輝は止まる事を知らずに更なる斬撃を食らわした。
『グハッ!』
『はっ!』
光輝は容赦なく斬りつける。何なら隙あらば腕を斬ろうともしている。だが笠木は何とか隙を見つけ激痛に駆られながらも後退した。光輝はそれを追わず構えながら息を整える。返り血が幾らか浴びているが光輝はそんなもん気にしていない。そして笠木は自分の状態を見て叫んだ。
『な、なんでお前の攻撃だけ当たるんだ! 僕は確かにその剣に合わせ攻撃したはずだ!』
笠木は最初光輝の剣を弾き滅多斬りにして光輝の生命エネルギーを取ろうとした。普通の自分ならば出来ないが今自分は様々な人間のパワーを得たのだから出来ると思った。
だが結果は位置を交換しただけだ。ならばと以前と同じく斬撃戦の中で奪おうと思ったが何故か自分が滅多斬りにされていたのだ。叫ばずにはいられない。
『いや、お前の目は節穴か。自分の物をよく見てみろよ』
そう言われ私も笠木のナイフを見た、そして確かにナイフはあった。あったのだが持つ所を除きなくなっていた。じゃあさっきの金属音はナイフが折られて地面に落ちた音か。
『な?! 貴様どんなイカサマを使った!』
自分はイカサマの中のイカサマをしている癖に自分の事は棚に上げ吠える。だが光輝は皮肉げな笑みを浮かべながら少し馬鹿にしてるようなトーンで話した。
『なんでだよ。相手の使ってるものを壊そうと思うのは普通だろ。それに10日も時間あったんだからナイフの対策ぐらい普通にできるわ。ナイフを折る練習は結構したからな。それよりも俺からも1ついいか?』
普通に光輝は気になった事があるから聞く。
『ふっ、いいだろう! 低脳の君の為に答えてあげよう!』
愛美はいちいちそんな物言いをする笠木にムカついてるが光輝は特に気にもせず答える
『お前なんでピンピンしてる?』
そう言われ愛美も気がついた。何回も斬りつけられ血が出ていたのに笠木は2本の足でしっかりと立ち光輝と会話をしている。と言うより顔面の傷が無くなって行っている。そんな現象等誰も知らない。
『そこに気がつくとは流石だね! 僕も答えてもらったから僕も答えてあげよう! 僕はね身体にでっかい穴とか空かない限り、そう、君が今僕を傷つけたくらいの傷なら再生できるんだよ! そして、ついでにもう1つ教えてあげよう!』
そう言って笠木はナイフを捨て右腕を光輝に向けた。そこには機械があり発射口みたいなものがあった。愛美はドラゴンボールのフリーザ軍の下級兵士やアプール達が使っていた機械を思い浮かべた。
『これはね、集めたエネルギーを相手に向けて撃つものさ!』
その瞬間その発射口が光ったと思うのと同時に光輝がいた場所が爆発し煙に包まれた。その速さに誰もが唖然となった。愛美も……
「光輝!」
煙が黙々と立ち込める。そんな煙が晴れるのがもどかしかった。だがここにいる自分にはどうしようもない。そして煙の中から出てこない光輝に愛美の不安は増えていく。
(まさか……今ので……)
だがそれを否定したのは皮肉にも笠木だった。
『流石だね〜! 今のを避けるとは』
「え」
そう言うのと同時に煙は殆ど無くなりいたのは剣を持ってピンピンしている光輝だ。
(あれを……避けたの?)
愛美には先程の攻撃は光った所までしか見えなかった。放送を見ている人達も何が起こったのか分かった人なんて1000人いたら良い方だろう。分かれば良いだけで避けるのもセットならば出来る人間は限られる。
『まあ拳銃よりかは遅かったからな』
ちょっと何言ってるのかがわからなかった。なんで光輝が拳銃のスピード知ってるの? いや、そもそも拳銃持ってる人と戦った事があるのだろうか?
愛美が知らないのは当然だ。愛美の引っ越した後の出来事だしアメリカのニュースにあったとしても少年と言う事しか報道されていない。だがそんな愛美や世界の人達をほっとき光輝は剣を担ぎ少し好戦的な笑みを浮かべながら話す
『それにしても、なるほどな。再生か。だったら好都合だ』
『なに?』
光輝はそう言いながら剣を背中の鞘に入れリストバンドと脚に着いていた重りを外しその4つの重りを左右2つづつ持ちながら叫んだ
『それって、お前を永遠に殴れるって事だろ!! 』
そう言ってさっきの4つの物を1つずつ投げつけた。そして最後の1つを投げると同時に駆け出した。投げた物自体は避けられた。が、避けたと同時に聞こえたドスンとという凄い音と共にビビったのか笠木は思わず振り返った。そしてそれが重りが地面に落ちた音がしたと気がついた時にはもう顔を殴られてた。
『がっ·····!』
顔が凹みそれが光輝の拳の威力を伝える。だがそんな凹みで光輝が手を止める事はなく更なる連撃をぶつけようとしたが体勢を取り直した笠木が吠えた
『はぁ!』
『舐めるな!』
そう言って笠木は大振りな一撃を光輝に浴びせようと思ったらしいが、光輝の姿が霞んだと思ったと同時に笠木は大振りな一撃を避けられ、そう思ってたらいきなり笠木の左から光輝が出てきて脇腹を殴って吹っ飛ばした。
「な、にあれ? 一瞬光輝が消えた」
本当に霞んだ様にしか見えなかった。いきなり消えたと思えばいきなり現れたのだ。唖然とするのは当然だ。そして笠木にも追えなかったのか口元を拭いながら声を荒らげる。
『はぁはぁ、貴様ッ! どんな手品をつかった!』
自分に予測できない事が起これば笠木は怒り出す。だが光輝に言わせれば笠木にブチ切れる資格はないと思っている。
『いや、ただ単に一瞬で移動して吹っ飛ばしただけじゃん。それよりも自分の心配をするんだな。今のに反応出来ないんならお前に勝ち目はない。お前の再生能力は確かに傷は直せるんだろう、だけど逆にいえば傷だけだ。体力までは治らない』
笠木の真似をして小馬鹿にしたように光輝は話す。話す内容がいちいちぶっ飛んでいるがそんなの誰も気にしない。それほど状況が右往左往しているのだ。と言うより光輝はまだ息を切らしていない。だが笠木は何故か口元をにたァと歪ませ
『く! クク、ハハハハハ!』
そう追い詰められてるのに逆に何故か笑い出した始末。
『何がおかしい』
全く関係な人からしてみれば光輝が優勢なのにいきなり笑いだした変なおじさんだ。
『いや、何。これを使う事になるとは思わなかったんだよ』
そう言って取り出したのは真っ黒なりんごだった。そしてその瞬間光輝の脳裏にあの日の記憶の一部が浮かんできた。祖父との戦い、その最中何かをむしゃっと食べた様な音……それが目の前のりんごだとするならば……
『これはね、僕が集めた全てのエネルギーを詰めたりんごなんだよ』
そう聞いた光輝は人外のスピードを持って距離を詰めようとした。光輝に戦いを楽しむ余裕等ない。食べられた時、この形勢がどうなるのか全く分からない。だからこそ早急に動いた。だが笠木は言ったら直ぐそのりんごをむしゃっと食べた。
シャリ!
そんな歯ごたえの良い音が聞こえたのと同時に光輝は拳をぶつけた。だがビクともせず笠木がにたっと笑った瞬間に立て続けにめちゃくちゃな事が起きた。1つは笠木から真っ黒なバーナーのようなものが吹き上がった。そしてその勢いに光輝は吹き飛ばされた。光輝は上手く着地してキッと笠木を見る。
『くっ!』
『ははっ……! 何て……なんとういう力·····!! 素晴らしい!! これが人間が至る事が出来る境地! それも……俺だけの力だ! ふははは……っ!』
そんなことを言う。その力は笠木の力ではない。光輝の家族や沢山の犠牲があって初めて得られているものだ。だが笠木は自分が殺し自分で技術を作り自分が使ってるのだから自分だけの力と言う暴論である。だがそんなツッコミをする前に笠木が掻き消えた。次の瞬間には光輝が長い道路の上で吹っ飛んでいた。
『くっ……!』
光輝は何とか着地して迎撃体勢になった。だがそれよりも笠木が早く動く。
『おら! さっきのお返しだ!』
そう言って何度も攻撃を仕掛けてる。どれも早すぎて目が追いつかない。だけど光輝も動いてガードしてる所を見ると光輝には見えてるのかも。でもまた光輝が吹き飛ばされた。そして何かが光ったと同時に光輝が着地した場所に煙が上がった。さっきの機械の攻撃だ。光輝はもう後ろに飛んで躱してたがまた攻撃される。
『なっ!!』
驚愕しながらも避けたのは流石だろう。そしてキッと上を見た。暗黒の翼を生やしながら高笑いをして浮かんでいる笠木を見る為に
『ふ、ははは! まさか飛べるとは僕も思ってなかったよ! 背中がモゾモゾしていたからエネルギーを翼に変換してみた! だがまだ上手く飛べないから更に上へは上がれないみたいだ。残念。まあ、いい。君を殺したらまた研究しよう。その前に君を生け捕りにしなければならないがな』
それを聞いても光輝は特に反応を示さず笠木をぶん殴る為に動く。笠木は迎撃する。だが空中にいるというアドバンテージは光輝の想像以上にあった。せめて翼を折れば何とかなるかもしれないがエネルギー体で作っているならば折っても意味が無い。幾千のやり取りの後光輝は地面に吹き飛ばされ着地した。そして笠木は愉悦の表情を全面に出しながら話す
そこから語られるはおぞましい笠木の計画。所々言葉の意味は分からなかったが笠木が言っている時点で悪い事なのは確定だ。そして……そんな内容で愛美が正気を保てるはずがなく軽い恐慌状態になっている。頭の中で嫌だという警鐘が鳴り響く。ネットの掲示板ももう駄目だと諦めになっている。嫌、世界の誰もがもう勝てる道筋がないと思っている。それくらい力が離れている。しかし……そんな警鐘や不安を光輝が怒号と共に消した
『黙れ!』
そう言って顔をあげた光輝の目は綺麗な赤色と蒼色だった。それが愛美が知っている光輝では無いという証左、余程高性能なカメラを使っているのか光輝の眼がよく見えている。そして……光輝を知っていたからこそ思う当然の反応をする
「なに? あの眼」
愛美の両親も唖然としている。いや、世界中の人々は唖然としているだろう。眼が変わる現象など3次元ならいざ知らず現実で起きるとは誰も思わない。この変化を知っているのは櫂や楓、光定に一部の光輝の見張りにいた看護師達、光定から聞いていた総理やほんの一部のトップだけである。そんな事情を知らない世界の人達を置いといて光輝は消えた。霞んだ瞬間すら見えず次の瞬間空中にいた笠木の目の前に一瞬で現れ地面へ殴り飛ばした。笠木と光輝はそれぞれ着地をして相対した。
『チッ! あまり使いたくなかったんだけどな。まあ·····皆を悲しめるよりもずっとマシだから良いか』
……そうどこかしょうがないみたいな声を出しながらその双眼を笠木に向ける。笠木は漸くショックから立ち直り慌てて問いただした。だがその答えは色々辛辣だった
『それにしても……神になるだって? 笑わせるな。人から無理やり奪った力がなければ何も出来ないのによくそんな事が言えるな。お前はただの泥棒だ! 人から幸せを……家族を奪いその上にある仮想の玉座にふんぞり返る事しか出来ない泥棒の王だ!』
的をいてる。当たり前だ。光輝自身がその被害者なのだから。笠木のやってきた事を否定する。それは自己中心的に生きていた笠木には耐えられない。案の定憤怒の顔に8歳の少年相手になる。大人げないったらありゃしない。だがそんなもんは今戦いの場にいる2人には関係ない。
『決着をつけよう。もうてめぇの顔すら見たくない。貴様との因縁も今日ここで終わらせる!』
そう言った瞬間に2人は真ん中で激突した。目視不能の打撃の応酬が続く。愛美には分からないが最初は互角だった。……だが·····光輝は蒼眼により笠木の動きに慣れていきリーチが短いのを逆に利用し笠木の腹部に強烈な拳が突き刺さった。
笠木は腐っても研究者だ。だから痛みには慣れていない。それ故に出来る決定的な隙が出来て光輝は強烈な蹴りを食らわし笠木はよろける。光輝が言った通り再生は出来ても体力や痛みまでは消えない。そもそも笠木は攻撃を食らう予定など無かったのだ。
だが今は拮抗状態……いや、ほんの若干光輝が優勢になった。それが……笠木には許せなかった。笠木は無理やり光輝と距離を飛び再び上空に行きあの機械をセットし光弾を連射し始めた。光輝は最初はバク転で華麗に避けて行ったが数が多く全ては避けきれない。所々に光弾が当たり光輝はとうとう爆発による煙に包まれた。だが笠木は止まらない。
「光輝!」
『はは! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね! もう生け捕りなんか必要ない!』
「そんな、そんなの卑怯だよ!」
そう愛美は叫んだ。だが光輝が笠木に言った通り卑怯もラッキョウもない。しかしこの戦いを見ている者達は愛美と同じ感想が大半だろう。
『ハハハハハ! 僕が、僕が最強なんだ!』
そう言ってペース配分を考えずに連射しまくる。あの機械に予め繋がれているエネルギータンクの中から取り出しそれを光弾として発射する。
だがそのタンクにあるエネルギー量は最初は少なかった。しかしある事で大幅に増えた。アメリカ襲撃時に回収しまくったエネルギーだ。
光輝や櫂達は50人分と1番最初は見積もっていたが今はそんな比では無い。20万全員がエネルギー源になった訳ではないがそれでも途方もない人のエネルギーが蓄えられている。自分の肉体が耐えられない分のエネルギーはこの光弾装置に入れたのだ。流石天才。憎たらしい程無駄がない。そしてその光弾の雨が光輝や光輝の周りに降り注ぐ
「もう、もうやめて……」
まだ撃ち続けられる光弾の雨に愛美は涙を流し縋るように言った。そして奥歯を噛み締め届かないと分かっていても眼を閉じながら叫んだ
「光輝!! 」
そう言った瞬間黄金の光が笠木に向けて迸られた。そしてその中から何かが光と共に笠木に向かった。その神速のスピードに本人以外の誰もが眼を見開いた。
『なっ!?』
そして笠木の後ろまで黄金の光が行った瞬間笠木が色々な所から攻撃されたように不規則な体の動きをして叩き落とされた。
『がハ·····ッ!』
その黄金の光を纏った者は空から落ちる事なくゆっくりと振り返り笠木を上から目線で見る。それと同時に足元の黄金の膜みたいなものがゆっくりと剥がれていき誰もが吸い付くようにその全貌を見届けようとする。
そして全ての膜が取れた時光のオーラを纏い瞳孔が金色と薄い黒が混ざり瞳孔の外側が金色の眼になり道着がボロボロな光輝がいた
お疲れ様ですm(*_ _)m