SAO 標準時刻 2023年 6月12日
俺はこの日、剣の強化素材を集めに現在の最前線から少し離れて第27層の迷宮区にいた。あれからあの集まり……通称「攻略組」と俺はフロアボス戦とボス戦は早い者勝ちという事にした。
まあ向こうは心底嫌そうだったけどな。だって俺はボスの情報を得るためのクエストしてないから俺の方が早くなっちゃうし。
ボス攻略クエスト……正規版から追加されたクエストだ。これの何が重要なのかと言うと例えば、光輝が倒した第1層のイルファング・ザ・コボルドロードはベータテストの時、体力がラスト1本の赤色になった時、それまで使っていた盾と斧を放り投げ曲刀のタルワールに持ち変える筈だったのだ。
しかし光輝が倒した正規版のコボルドロードはタルワールではなく当時のプレイヤーには使えない「刀」に変更になっていた。
HPが0になる事は現実の”死”。普通のゲームならば「変更とか聞いてねーし」とか笑い話に出来るが今のSAOでは洒落にならない。
しかし決して変更点が分からない訳では無い。それが件のボス攻略のクエストだ。第1層の何処かにそのクエストがある。クエストをクリアすればそのフロアのボスの情報をくれるのだ。
だが第1層の時、全員がベータテストの情報を悪く言えば鵜呑みにしそんなクエストがあるのを知らずにボス戦に向かおうとした。そこで光輝とコボルドロードの戦いを目の当たりにしベータテストと情報が違う事に気がついた。
事実、第1層の光輝と攻略組の喧嘩の後にアルゴがフィールドを駆け回った時にそのボス攻略クエストを発見した。
だからそれ以降はボス攻略の為にそのクエストをクリアを普通のプレイヤーならばする必要がある。だが光輝は色んな意味で普通では無いのでやってない。と言うより面倒臭いと思っている。
まあだから俺は攻略組の指揮を高める意味でもディアベルさんやらヒースクリフさんと相談して偶に意図的にボス戦を譲っている。しかしその時に未だに勧誘してくるし。あんたら俺の通り名知ってるくせに、そんなんやったらあんたらのギルドが内部崩壊するがな。
でも第25層───クォーターボスの時は危うく死者を出す所だったな。あの時キリトが偵察戦も少しガチメンバーで行かないかって言わなかったら危なかったかもしれない。
偵察戦……光輝は意識はあんまりしていないがボスには基本的に攻撃パターンが存在する。文字通りボスが振るう攻撃の方向や威力、範囲等も基本的に同じ行動をするのだ。そして当たり前だがそれらは知っていれば居るほど避けるなりガード出来る。
偵察戦とはその攻撃パターンを探る為に行われるものだ。ボス攻略クエストもそうだが”想定外”等あってはならないのだ。想定外のせいであの世行きなんて誰も嫌だろう。しかしその想定外が起こったのだ。
そして何度か偵察した後、ガチメンバーで行ったが結構早い段階で逃げる人が多かったらしい。コボルドロードの様に武器が変わったのだ。……何か手が生えてきてその手に色んな武器を持って攻撃してきたんだと。偵察戦では基本深追いはしない。そもそも偵察戦で倒せるならば苦労しない。そしてその深追いの所にその攻撃パターン変更があったんだ。
だから一旦ガチメンバーも安全を鑑みて全員退いた。因みにその時に大活躍したのはあの学者さんっぽいヒースクリフさん。
ヒースクリフさんの装備は割とデカ目の盾と片手剣だ。盾でガードしつつ反撃のスタイルをとっている。撤退の時にはヒースクリフさんが全員撤退するまで1人でボスの攻撃を受け止めたのだとか。その時に感じる恐怖は俺には分からない。
まあ俺は有言実行で全然攻撃を喰らわないからその恐ろしさはあまり分かってないだけかもしれないが。
拳銃やフルパワーの笠木のスピードを蒼眼によって慣れてしまった光輝からすれば今の所どのボスも遅い。そしてスピードが早くとも今の所体は追いつける。
「ふう、素材はこれぐらいでいいかな?」
そう俺は額を拭いながら……汗なんてないけど気分的に言った。というか俺もゲーム脳になってきたのは気の所為だろうか? ゲームは愛美がしているのを隣で見てたぐらいだけど。
第25層では俺は攻略組に譲る予定だったが攻略組からSOSを要請された。ディアベルさん曰く確かに攻略は出来るかもしれないが恐らく深く入りすぎたら死人が出る。そう言われたが俺はあまり気は乗らなかった。
俺のミスで誰かが死んだら……そんな事を考え初めは断ろうとした。1人で戦う方が俺のミスは俺の”死”だけでいい。笠木の時は愛美や櫂さん達の命もあったから.はっきり言うのなら怖かった。だけど……それ以上に愛美達が死ぬのが嫌だった。あんな思いするのは俺だけで十分。愛美や咲良には普通に小学校卒業して中学行って高校行って……。……生きて帰るって約束を破ってここにいる俺にはそんな事を言う資格はないか。
閑話休題
だけど向こうのしつこいぐらいのSOSに折れた。代わりに条件出したが。俺は取り敢えず攻撃にしか行かず他の面子のリカバリーはしない。俺はずっと攻撃に行きそしてそのせいで誰かが死んでも俺は責任を持たないといった。そして俺はパーティーを組まないとも。
それで向こうはOKし俺はボス戦に向かった。まあ確かに今までよりかは強かったな手数も結構あったし色んな武器を使ってくるのは聞いていてもちょっとびっくりした。
それでも俺は攻撃は最大の防御というふうに攻めまくりラストアタックボーナスを頂いた。まあ不満気な声もあったがディアベルさん達が宥めてくれて静まった。ありがとう皆。
そしてそこからのボス戦は何時も通りに戻った。まあ向こうはこの機会に乗じてどこかのギルドに入れたそうにしてたが華麗にスルーした。
ギルド……要は組織の事だ。自分気の合った仲間達と組んだり、光輝と共に戦った攻略組の4分の3以上は攻略ギルドに入っている。それ以外は光輝の様に1人のソロが殆どだ。攻略ギルドだけでは無く商業ギルド等もある。
ここでギルドを紹介しよう。
まずディアベルさん率いる《
後衛組は始まりの街にいる怖くて戦えない人やレーティングギリギリの子供達を保護している。そしてその街にいる戦う勇気を持った人達を支援している。あと相談窓口的なやつがあってそこが意外に人気らしい。まあ弱音を吐けるのはいい事だ·····人の事言えねぇな。
そして小規模だが人のいい侍おじさんギルド、クライン率いる《風林火山》。このギルドは少数だけど今ん所はボス戦での死者は出てないらしい。俺も25層の時に会ったが良い人だったな。ぶっちゃけ個人的にギルドに入るならここがいい。まあ入らないけど。でもキリトはよくこことつるんでる。
そして最後にヒースクリフさん率いる《
そして……最後にギルドではないが殆どソロプレイの《ビーター》の俺。このビーターって言うのはチーターとベータテスターの言葉を混ぜたらしい。最初聞いた時は何か苦そうと思った。
それでもこのあだ名で呼ぶ人は何にも知らない人達が多いしそれも含めてもそんなに言われない。だって俺街にはあんまり行かなくなっちゃったもんな。料理スキルなる物とって朝昼晩のご飯はそれで料理してるし材料もモンスター ─皆に言わせればmobらしい─から手に得れられる物しか使ってないし、皆がよく使ってるポーションやら結晶も俺は宝箱やらからゲットしてるし、なんなら転移結晶以外いらないし。だから俺をそう呼ぶのは迷宮区ですれ違う新参者くらいだ。まあ、それでももし次に会った時には何故か謝られたけど。何でだ?
実情はその事を話した新参者にディアベルが優しくそうなる事になった真実を話したりしたのだ。それで謝ったりしたのだ。しかしそれでもビーターと毛嫌いする人はいるが光輝は気にしていない。小学校の時と変わらないからだ。·····精神的に徐々に擦れていっているが。
考えてみれば当たり前だ。確かに学校では大概1人だったが家に帰れば楓や咲良、櫂がいた。しかしこのアインクラッドでは光輝を知っている人間はいない。光輝にとっても全くの未知の世界。光輝はそれでビーターがやりやすいと強がってはいるが小学三年生にそれを我慢しろなんて土台無理な話だ。
何故か謝られた時の事を思い出してたら何か嬉々とした声が聞こえた。曰く隠し扉でしかもその中に宝箱があるんだとさ。しかしそれを取ろうとする側と罠だと言い張る側で別れてるらしい。というか止めてるやつの声聞き覚えあるなと思ってひょこっと覗いて見たらキリトだった。貴方何やってんねん。というか何かギルドマークついてるし。キリト最後見た時は俺と同じソロだったのに。とうとうぼっちは俺だけか。·····まあ良いんだけど。
そう強がる光輝だが状況は動く。
どうやら結局入る事になったらしい。でもこの層は罠が多い事で有名だからお節介だが俺もついてこっと思ったら皆入った瞬間に閉まり始めたからやっぱり罠じゃん! と思いながら全力ダッシュしギリギリ部屋に入れた。キリトの目がぱちくりしてる。面白い。
そう思ってたらもう感動するくらい出るわ出るわモンスターがめちゃ出てきた。嫌ここまで来たら本当に感動する。普通のゲームならストレス発散には良いかもしれない。·····何回も言うけどゲームしてる自覚はない。
「光輝! お前なんでここに!?」
光輝は基本最前線にいる事が多い。キリトもその口だが今は訳あってこの階層にいた。光輝はキリトの問に叫びながら返す
「剣の素材を取りに来たんだよ! ってそんなのは今はどうでもいい! そこの奴らは戦えるのか? YESかNOで答えろ!」
キリトが最前線から離れたここにギルドマークを持った人達といる事自体は分かるっちゃ分かる。キリトだって人肌が恋しくなる事はあるだろう。何でこの人達といるのかは知らないが見て見ぬふりするのは俺には出来なかった。それからキリトがこの階層の奴に負けるとは思ってはいないが後ろの奴らに関しては別問題だ。ちらりと見てみると震えてるし。だからこその問でキリトは即答した
「NO!」
「分かった。俺がこいつらを守っとくから遠慮なくやっとけ!」
光輝もキリトに混ざってバッタバッタ倒しに行っても良いのだが……後ろの奴ら……月夜の黒猫団の面々が戦えるのならそうするつもりだった。しかし戦えないのなら別問題。この光輝曰く感動的に出まくっているモンスターの山に戦えない奴らをほっておいて戦いに行くのはナンセンス。戦えない月夜の黒猫団が壊滅するのがオチだ。だから光輝は黒猫団のボディーガードだ。
「光輝……、ありがとう」
そう言ってからのキリトはもうモンスターをバッタバッタ倒して行った。何か見たことも無い技も使ってたな。片手剣の新しいソードスキルかな。今度教えて貰お。
と思ってたらキリトがやり損なった奴が来たから真一文字に斬った。そんなこんなで敵は全滅。後ろの人達は全員無事でしたとさ。そしたらさっきまでぜえぜえ言ってたキリトがこっちに来た。
「光輝……、ありがとな」
「どういたしまして」
そう言って俺は後ろにいる組に顔を向けた。
「で? あんたら何か弁解あるか?」
下手すれば攻略組の重要な戦力のキリトを失う所だったのだ。言っては悪いが今会ったばかりの黒猫団よりもキリトの方が光輝からすれば大事だ。だからこその厳しい問だ。
「光輝……、後は俺に任せてくれないか?」
そうキリトが何か決意した顔で言ってきた。俺は1つため息をついて言う
「はぁ……、今回はキリトに免じといてやる。じゃあなキリト。またどこかで」
「ああ」
そう言って俺はその部屋を後にした。
★★★★★
後の第2クォーターボス戦にて俺は今度は最初から手を組まないかと誘われ前と同じ条件でOKしボス戦に赴いた。そこにいたのはあのギルドマークを持ったキリトだった。
ボス戦が始まる前にキリトに聞いた所、初めは抜けようと思って自分の偽ってたレベルと元ベータテスターって事を教えたらしい。
そして抜けようとしたがリーダーを含む全員に止められたらしい。死の恐怖を味わったあのギルド……《月夜の黒猫団》は今も攻略組を目指しているのだとか。だがキリト曰く目付きは変わったらしい。あれなら大丈夫だろうと。そしてあの時後ろで特に怯えていた女の子は凄く気が強くなりひと味もふた味も見違えるようになった。だけどまだ最前線には行けないレベルだから月夜の黒猫団はキリトに先に最前線で待っててくれと言ったらしい。
そして暗い顔が無くなり清々しい顔になったキリトによって第50層……第2クォーターボスは打ち倒された。
SAO初めてでいきなり月夜の黒猫団何て分からねえしという方用
月夜の黒猫団→原作2巻に登場。高校の部活仲間で皆でSAO買ってLETS冒険!何て思ってた矢先にデスゲーム化。団員はキリトを除いて5人。
キリトが入った経緯はキリトがたまたま低層で危なげだった黒猫団の面々を助けてそれをきっかけにキリトは黒猫団に入った。ただし自分のかけ離れたレベルとベータテスターと言う事は隠した。あくまでも黒猫団レベルだと思わせていた。
原作では光輝達が入った感動的に出るモンスター部屋は結晶無効化空間となっていて(本作も一応そうですが光輝結晶使わないし試した後に光輝が入って来たので光輝は知らない。)キリト1人では黒猫団を守れず全滅。
光輝飛び入り参加で全員生存。
ロストソング編などについて。SAO編の最後は思いついて絶賛書いてる最中というか殆ど書き終わったんですけど書いてみてこの流れならロストソング編もいけるなってなりました。そこで読者の皆さんにアンケートです。個人的には書きたいですけどその形態についてです。
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いや別にやらんでもええわ!