オーディナルスケール編です。映画よりも色々キャラ増えてるんで結構違います。
秋葉原DXで俺とお姉ちゃん、キリトにアスナさん、それに風林火山のおじさん達とカガチ・ザ・サムライロードを撃退した夜、俺やお姉ちゃんはキリトとアスナさんが最近解放された22層で一番乗りで購入したあのログハウスに集まっていた。
(俺も47層解放されたらあの家また買いたいな)
アインクラッドでレインが光輝が勝手にどこか行かないようにの監視の意味合いも込めて結婚していた時に光輝とレインは47層にホームを構えていた。その家は和風か洋風かと聞かれたら洋風だ。
光輝の武人的なイメージで言えば和風の方が似合ってるっちゃ似合っているのだが光輝は光輝で洋風の家になんの不満もない。寧ろ思い出の地として今でもよく思い出せる。
そして一応その時はレインと結婚していたので今度は愛美と結婚した時の事を考え始めた
(愛美は和風か洋風どっちがいいのかな? 愛美の住んでた場所はどちらかというと洋風だけど愛美は和風の俺の家を良いなって言ってたし。でも利便性を考えたらやっぱり洋風かな……いやでも最近だと未来部屋ってのもあるよな。AIを搭載した家もいい気がする。出来るなら愛美と触れ合う時間造りたいから自動化できるところはしたいなぁ……)
光輝の思考がSAOから大分子供らしくなった。愛美の事を考えた時だけだが。しかし未来をほぼどうでもいいと思っていたSAO前半期以前の事を考えれば多少妄想癖があったとしてもレインからすれば喜ばしい事である。楓や櫂たちも見てたら同じことを思うだろう。それだけ今の光輝は心に余裕を持っている。それは現状、あの日から守りたいと思った人たちを守り抜いているから生まれる余裕だった。その余裕が崩れた時は……
「えーっ! ユナが来たんですか!?」
「良いな―アスナたち!」
光輝の意識はシリカユウキの大声によって現実に戻ってきた……いやいる場所はALOで仮想世界なのだが。
今は今日のオーディナルスケールについての感想会のようなものだった。面子は光輝、レイン、キリトとアスナ、エギルにクライン、リズベット、シリカ、リーファ、シノン、ユウキだった。
クラインが腕を回しながら言った
「しかし、VRと違って結構動くから体バキバキだぜ」
「戦闘が終わっても光輝君は全然息を切らしてないけどね」
アスナがそう言ったが光輝は肩をすくめながら
「SAOの頃一回倒したやつに息を切らすほど消耗させられたら色んな意味で不味いですし」
本当にソロでボスに挑んでいたあの時の光輝の異常さをしみじみと感じつつVRでもARでも頼りになるのが光輝なんだなと改めて思った面子なのだった。だけれどもユウキはそれには余り興味を持たずボス戦に参加した面子に言った
「良いなぁ! 僕も早くオーディナルスケールしたいよ」
ユウキはまだ退院したと言ってもやはりずっと寝たきりの生活だった弊害で筋肉はまだ年相応には戻らない。少しだけなら車いすなしで歩けるようにはなったのだがオーディナルスケールはまだユウキの担当医である倉橋が許可を出していない。寧ろいつ許可を出してくれるのかも分からない。
エイズが治っただけでも御の字なのは分かっているが早く自由に外を走り回ったり皆と一緒にオーディナルスケールをしたいと思うユウキなのであった。
そんな事を考えていたらシノンがオーディナルスケールの欠点を言った
「オーディナルスケールは移動の時間がかかるから少し面倒よね」
「気にした事なかった」
シノンの言葉に唯一距離という概念がないに等しい光輝が思わず口走った。そんな光輝に面々は微妙な顔を見せる。光輝がその場の空気が微妙になっていることに気が付いた時リズベットが言った
「できればもう少し参加しやすい時間にしてくれないかしらね」
それに反応したのはリーファの向かい側のソファーに座っているクラインだった。
「そんな女性陣の皆さんの為に俺達風林火山が車だしってから、送迎くらいしてやるよ」
「そっちの方が余計に危ないわよ」
「そんな……ユナちゃん」
まあ本当はリズもそんな事を本気で思っている訳ではないが運営側への要望であってクラインに期待していたわけではないから却下なのだ。そして次は今度行われるユナの新国立競技場で行われるファーストライブの話になった。
史上初のARアイドルのユナのファーストライブなだけあって抽選確率は相当なものだったらしい。しかしここにいる半分以上の人はその問題は無かった。何故ならキリト達帰還者学校の生徒はユナのそのファーストライブに無料招待されているからだ。しかし舞い上がっている面々とは反対に光輝はレイン以外のライブに余り興味が無かったりする。完全なシスコンである。そして帰還者学校の面々以外がそのライブに行くには抽選に通らなければならない。その抽選に通ればライブチケットを二枚貰える
そしてその抽選に通った幸運の持ち主はここにいた
「あ、私もその抽選に通ったわ」
「良いなーっ!」
シノンがその抽選に通った事にユナのファンであるリーファが食いついた。そしてみっともない大人がここにいた
「ああ、それなら俺も通ったぜ」
「エギルの旦那マジかよ!」
そう叫んだクラインが大人のなのにエギルに泣きつく子供の様に食いつき
「ユナちゃんのチケットくれよー!」
「わ、分かったから離せ!」
レインはこっそり光輝の耳に顔を近づけ言った
「あんな風になっちゃダメだよ」
「う、うん」
光輝以外には今のレインは平常運転しているように見えるが光輝には分かる。レインは少し怒っていることに。その理由も大体見当がつく。光輝はあまり見ないがクラインと美葉が仲良くしているのをよく見ているが故に他の女性……それもARアイドルにこんな風になっているのが少し気に食わないのだ。最も似たような対象には自分の妹もなった事があるがキリトとゆかいな仲間たちに加わってからは割と普通になったりしている。
ユナのコンサートのチケットをゲット出来る事になり上機嫌になっているクラインが光輝に言った
「光輝もまたオーディナルスケールやろうぜ。お前がいたら百人力だ!」
仮想世界よりも現実世界の方が強い光輝にとってオーディナルスケールははっきり言ってただの無双ゲーだ。オーディナルスケールは一応パーティー設定とかはなく個人戦だ。ボス戦でどれだけ活躍するのかがポイントの内訳が決まる。
しかし逆に言えば光輝がクライン達の手助けをしながらポイントを稼げるようにすることは出来る。事実として今日レインは光輝のサポートを受けながら結構貢献していたのでポイントがぐっともらえた。
光輝はSAOの攻略組と合流した後からは割かしサポーターに徹する事が多かったので得意分野とも言える。しかし光輝はクラインに首を振った
「俺はお姉ちゃんの偶にの護衛としてなら行くが多分遊びとしてなら余り行かないぞ」
その答えにクラインが疑問の顔になる。クラインだけではなく他の面子も似たり寄ったりだ。ユウキが不思議そうな表情で聞いてきた
「それはどうしてなの?」
光輝は少し考えをまとめるように虚空を見上げた後普通に言った
「一つは俺が出しゃばりすぎてチート疑惑をかけらるかもしれないから。それで俺がアカウント停止になるのは兎も角お姉ちゃんまで共犯と言う事でそうなったら笑えない」
普通ならこんなことを言われても本当にチートをしているわけではないと分かる。しかし確かに今日も光輝は実力を100万分の1以下に抑えても1ダメージも受けずボスをズタボロにした。なんならソロでもノーダメージクリアは簡単だっただろう。確かにチートを疑われかねない。
そしてレインの護衛としてそんな奴がいたらレインも何かしらのチートをしているのではないかと疑われる。
「ただ、これは余り可能性はないとは思うけどね。普通にプレイしているのを見てたら俺がなんのチートもしていない事は馬鹿じゃない限り分かる」
ただ皆に見えない位の速さを出した時は分からないけどな
と心で付け加える。そして二つ目の理由を隣のレインからの叱責が来ませんようにと祈りながら言った
「もう一つはいつタイムパトロールが来るか分からないから」
その言葉にレインは一瞬ムッとした顔になった。光輝はそれを見ないふりして続けた
「一応非番の日は来ない事になってるけれど……緊急時の時は俺も行かないといけないからな」
悟空達が光輝に期待しているから忘れがちだが光輝や悟空達の他にもタイムパトロールはいる。だから危険度がそんなにないタイムパトロールはそのパトローラーが行くことが多い。
最も緊急事態はほとんどの場合ないが。光輝が時の巣に戻る時間もあるので余りこっち側で熱中する訳にはいかないのだ。クラインも光輝の事情に何とも言えない気持ちになり取り合えず言った
「そ、そうか。何か悪いな」
「気にするな。ただ絶対に行かないって訳じゃないから非番の日都合が合えば俺も行くよ」
それが気休めなのはここにいるメンバーには分かった。そんな時、ログハウスのリビングに新たな来訪者が来た。ログインの光と共に現れたのは歌妖精<プーカ>で主にエメラルドの装備に銀髪の少女。光輝はその人物を見て
「あれ、七色さ……」
その言葉に来訪者は光輝をぎろりと睨み光輝は一瞬目を逸らしもう一度言い直した
「七姉ちゃん電話終わったの?」
少女の名は枳殻七色、あのクラウドブレイン事件終了後、父親が行方不明になったので日本にいるレインの母親が引き取り最近日本に引っ越してきたレインの妹だ。
今レインの部屋で光輝とレインは並んでアミュスフィアを被ってALOにログインしている。七色……プレイヤーネームはセブンも今光輝達と並んでログインしている。最初から参加してなかったのはセブンもログインしようとした矢先電話がかかってきて来るのが遅れたのだ。
「ええ。大した電話ではなかったわ。それより皆でなんの話をしていたの?」
それにはアスナが答えた
「ユナの事とか……オーディナルスケールの話をしていたのよ」
オーディナルスケールというワードを聞いたセブンが一瞬眼を見開いたのを光輝は見逃さなかった。レインの家にお邪魔した時に少し話した時はそんな反応しなかったから原因は
(さっきの電話か)
誰から掛かってきた電話なのかは分からないがその電話の相手は分からない。だけど前ALOでやらかしたばっかりの七姉ちゃんにオーディナルスケール関係で何か電話を来るのか? いや、やらかしと言っても七姉ちゃんの頭脳は俺らの中でも飛びぬけているしフルダイブ技術に関しては世界トップレベルだ。
……いやフルダイブ関係に関してはそうかもしれないがARにはそんなに研究してない筈だ。俺がそんなことを考えながら七姉ちゃんを見ていたら目が合った。それを見たからって訳じゃないかもしれないが七姉ちゃんが話しかけて来た
「光輝君、ちょっと良い? 今度のお出かけの予定立てたいのよ」
そんな予定はない。その事は光輝が一番分かっているのでここから自然に離れるための嘘と言う事は普通に分かる。
「うん、良いよ」
「え、私聞いてないよ」
とレインが思わず妹たちに言ったがセブンは飄々として答えた
「私も光輝君との時間は必要だもん。お姉ちゃんはずっと光輝君といた時期があるんだから今回は私に貸してよね」
といってそんな姉を光輝は苦笑いしながらついて行った。ログハウスから出て目の前の庭に二人きりになってから光輝は聞いた
「さっきの電話の事?」
セブンは少し難しそうな顔をして頷いた。
「最近、アインクラッドのボスがオーディナルスケールに出る事は知ってるわよね」
それに光輝は無言で頷いた。それを見たセブンは続けた
「それと同時にちょっとおかしなことも起こってるのよ」
セブンはそう言った後、窓から見える姉を見る。レインはその視線に気がついておらず笑って話をしている。それを見ながらセブンは光輝に言った
「SAOサバイバーからSAOの記憶がなくなる事件が起きてるのよ」
「……マジか」
思わず呟いた光輝にセブンはレインに向けていた視線を光輝に向けて頷いた。
「情報元は?」
「スメラギ君よ。彼も日本に帰ってきて合間を縫ってオーディナルスケールをやってるみたいなんだけどそのつてで知ったみたい」
スメラギさんというのは元七姉ちゃんの助手的な人だ。クラウドブレイン事件終了後、彼も日本に戻ってきてフルダイブの研究をしているらしい。
七姉ちゃんにそれを伝えたのは俺達の仲間は半分以上SAOサバイバーで構成されているからだろう。つまり
「その内俺達の誰かの記憶も無くなるかもしれないと言う事か」
出来るだけ静かに言っているが光輝の声色に若干の怒気が混ざっている。それもその筈で今の光輝が形成されたのは半分以上あのアインクラッドでの思い出のおかげだ。一人でもいいと思っていた自分が間違っていたと気づかせてくれたのは紛れもないあの場所でありそこで得たものはかけがえのない思い出だ。もっともそれは光輝が思っていることであり他の人にとっては違う感じ方もあるが。
しかし別種の問題もある。
「だけど……もしその二つの事が関係しているならオーグマーに人為的かバグかは知らないが欠陥がある事になる。そっち方面でどうにかならないの?」
「無理ね。その事件の二つが結びついているのかは怪しいところ。結果的に見たら関係しているのだけど……まだ証拠としては弱すぎる」
偶々同じタイミングでなくなっただけとと言われたらそれまでだ。物的証拠も何もない。だからオーグマーの開発会社であるカルマ社に強制捜査は出来ない。光輝は少し考えたが結局現状ではその記憶が無くなった人に会った訳でもないし見たわけでもないしどうする事も出来ない。セブンを見るとセブンも光輝を見ていた。気持ち的に光輝の姉になってまだ一週間しか経ってないがセブンの光輝に対する信頼は確かにあった。
「光輝君、可能な時でいいわ。出来る限りオーディナルスケールに参加して情報を集めてくれない?」
その言葉に光輝は苦笑いしながら返す
「俺も一応SAOサバイバーなんだけど?」
無くなるのがSAOの記憶ならSAOサバイバーである光輝自身が動くのは本末転倒なのではないかと思ったのだ。おまけにどういうシークエンスの後に記憶が無くなるのかが分からない状況下で分かっていても調査に向かわせるとは何事だと思ったのだ。普通この場合はSAOサバイバー以外の誰かを参加させるべきなのではとは思った。
しかしセブンは微笑みながら言った
「光輝君がリアルで負ける訳ないでしょ。お姉ちゃんはアイドル活動に精を出してほしいしキリト君はそもそもオーディナルスケールに乗り気じゃないみたいだし他の人達じゃ犠牲になってしまう可能性もある。その点光輝君ならどんなボスが来ても負ける可能性はほとんどないし頭もいいからね」
「褒められた」
と光輝は少し嬉しそうにする。セブンは内心「可愛い」と思いつつも言った
「頼める? 私の方でも出来るだけ調査しとくわ」
「了解。でも……」
そこで言葉を区切った光輝にセブンは疑問の顔になる
「それが罪滅ぼしと思ってるならだれも七姉ちゃんを責めてないと思うけど?」
セブンは一週間前起こったクラウドブレイン事件の首謀者……というより周りの期待にこたえなければならないという強迫観念のようなものでその事件を起こしてしまった。詳細は省くがそれは一歩間違えればセブンを信頼してくれていたファン達、そしてこのALOというゲームも危なかったかもしれない。勿論、セブンに悪気があった訳では無い。しかしその出来事はセブンが罪と考えてしまうのも無理のない事だった。
だから今回、たとえ畑違いでもその記憶がなくなる事件の真相を突き止めたいと思ったのかもしれないと光輝は思ったのだ。
「……そうね。その気持ちがないと言ったら嘘になるわ」
セブンはそう言いながらログハウスにいる人達を見る。皆は笑って談笑している。それを見ながらセブンは言った
「光輝君がSAOでの思い出を大事にするのも分かる気がする。この場所は少ししか一緒にいない私でも暖かく感じる場所だもの」
セブンは殆ど家族愛とは無縁だった。父親は自分の才能にしか目に行かず本当の愛情を受けたことが無かった。しかし日本で枳殻家に引き取られてからはその家族愛をレインやレインの母から沢山享受している。まあまだ光輝はそこまでじゃないが徐々にセブンを頭脳方面の頼れる姉として受け入れている。そして自分の才能を色眼鏡で見るのではなく「セブン」や「七色」として見てくれるこの場所の人達がセブンも好きになっていた。
だからこそセブンは
「皆をそんな目にあわせたくないのよ」
その言葉に光輝は嬉しそうにほほ笑んだのだった
★
先日セブンからの要請があったので光輝は出来る限りオーディナルスケールに赴くことになった。しかしそれは出来る限りの時であってそんな何回も行ける訳では無い……こともない。確かに昼間のボス戦やクエストなら無理の確率が多いが夜はその限りではない。
基本的に非番じゃない日、つまり余り光輝の年で言うのもあれだが勤務日は夜には終わる事が多い。それこそ今起きている事件の首謀者が分かった時とかならもう少し残業していることがあるが基本的にはない。夜はそれぞれ鍛錬や家族の時間とかになっている。
光輝はこの夜のフリータイムにALOや最近だとGGOにも顔を出している。GGOではシノンに色々教えてもらって一応ゲーム内だけなら銃を使えるようになった。そんな事はどうでもよく仲間内のグループチャットでクラインが代々木公園でボス戦が来るという情報をゲットし誰か行けないか? という旨のメールが来た。
光輝はALOにログインしようとアミュスフィアを被りかけていたがそれを見て腕時計型マルチデバイスのホロキーボードをだしてチャットの返信を打つ
『俺行くー』
簡潔にそう言って光輝は道着のまま出かけようとしたが思い直しクローゼットに向かう。そして……ファッションセンスは皆無だから蒼色のポロシャツに黒のパンツ、そして黒色のコートを取り出し羽織った。トランクスに一言言った後光輝はレインの実家のリビングに出現した
「わっ! びっくりさせないでよ光輝君」
と言ってきたのはレインとセブンの母親である。
「ご、ごめんなさい。他に出てくるところ思いつかなくて」
この時間にいきなり出てくる非常識さは分かりつつ他に出てくる場所が思いつかなかったのも本当だ。光輝は挨拶もそこそこに家から出て代々木公園に向かった。因みにレインとセブンは家にはいなかった。セブンはオーディナルスケール関係の調査、レインはただのレッスンだ。ただ時間はもう21時になりかけているので光輝もボス戦が終わったら迎えに行こうと思っている。
光輝は空を飛んでる途中でアスナを見かけ人目のつかないところで降りてアスナに声をかけた
「アスナさん!」
「光輝君、こんばんわ」
「こんばんわです」
一緒に歩きながら世間話をする。
光輝とアスナの関係は友達でもあり勉学方面においては先生と生徒である。勿論光輝が生徒だ。なぜそんな事になっているのかというとオフ会の日までに遡る。タイムパトロールの事を話し終えたらアスナがお嬢様だからか直ぐに思いついた質問をしてきたのだ。
「あれ? じゃあ学校は?」
「えーと……」
そこで光輝が一気に気まずそうになったのだ。つまり光輝は学校に行くつもりはないと言う事。光輝の年なら普通は学校に行かなければならない。それなのに光輝は堂々とサボり宣言をした。
だからアスナはSAOでの借りを返す意味を込めて光輝の家庭教師を買って出た。だから割とアスナと光輝には接点があったりする。二人して歩いていたら途中でクライン達風林火山を見つけて近寄った
「クライン、あと一人いないけど?」
アスナが光輝の言葉を聞くと確かによく見るとメンバーが一人いない。
「悪いな、メンバーの1人と連絡が取れないんだ。全員揃ったら行くから先に行っておいてくれ」
それに答えたのは難しそうな顔をしている光輝ではなくアスナだった。
「分かりました。もし遅れたらクラインさん達の分のポイントもゲットしちゃいますね」
「ええ……そりゃねえよ」
と軽口を言い合いアスナは先に向かった。だが光輝は少しだけ残りクラインに聞いた
「クライン、あのおじさんと連絡取れなくなったのは何時からだ?」
光輝が何故そんなことを聞いてくるのか分からないクラインは疑問符を浮かべつつも答えた
「あのカガチ・ザ・サムライロードと戦った日からだ。一応グループの方には連絡はしといたんだがな」
あの日からか。でも戦った直後は何もおかしなことは無かったはずだ。事件と結びつけるのは早計か? だけどタイミングが良すぎる。
「どうしたんだ光輝?」
光輝は少し思考の海に入っていたがクラインの声により戻ってきた。どんなシークエンスで記憶が無くなるのか分からない以上考えていても仕方がない。そう考え最低限の警告だけしておいた
「クライン、気を付けて来いよ」
「お、おう」
光輝はそれだけ言ってアスナを追った。クラインは光輝の警告に訝し気になりながら返事をして光輝を見送った。光輝は考えながらもボス戦の場所にまで来た。
もう既にオーディナルスケールを起動している。光輝はアスナを見つけ近寄る。
「あ、光輝君。クラインさん達と何を話してたの?」
ただの時間つぶしでアスナは聞いてきた。光輝は特に変わらない表情で答えた
「いや、今回のボスはどんなやつかなって少し話してただけです」
そんな事を言ったタイミングで丁度良くボス戦の鐘が鳴り響いた。それと同時に歩道橋から眩い炎が溢れ出し今回のボスが現れた。今回のボスは鳥型のボスモンスター、名前は
「ザ・ストーム・グリフォン」
とアスナがつぶやいた。このボスはアスナたち攻略組が倒したボスなので光輝は知らない。
(SAOのボスモンスター、か)
そう厳し気な表情をしていると戦場が見渡せる場所にピンク色の光が現れそこからユナが出て来た。
「皆準備は良い? 戦闘開始だよ!」
それと同時にユナの曲のBGMが流れ始めた。光輝はユナを見てふと思いあのランキング2位のプレイヤーを探す。肉眼で見える範囲にはいないことを見たら今度は襲ってくるストームグリフォンをさらっとあしらいながら近くに気を探る。あの秋葉原の戦いのときに気を覚えておいたのだ。そうすると彼はこっちではなくむしろクライン達がいる方にいた、
「なんでだ? ボス戦はこっちでやってるのに」
別にナンバー2が怪しいと思っているわけではない。単純に勘としか言えない。少し考え事でボーっとしてた光輝にアスナが叫ぶ
「光輝君タゲされてるわ!」
光輝がそれを聞き飛んでいるグリフォンを見ると確かに光輝一人の場所に落雷攻撃を発動しようとしていた。光輝は剣を持ち直したと同時に落雷攻撃が光輝に降り注いだ。
オーグマーが作り出す映像だと分かっていてもその大規模攻撃には
「光輝君!」
叫ばずにはいられなかった。グリフォンが放った落雷攻撃は光輝がいた場所に降り注ぎ煙に包まれた。アスナが緊張した面持ちでそこを見ていたら……彼を心配した自分が馬鹿だなと言う事がよく分かった。
煙が晴れた時、そこに光輝はいなかった。グリフォンもそれを見て処理速度がオーバーしたのか思わずあたりを見るがどこにも光輝はいなかった。それに他の参加者たちもそれに動揺し周りを見るが光輝はいなかった。地上にいないと言う事は
(上!)
アスナが上、つまり上空を見ると同時にグリフォンがもの凄い勢いで落とされてきた。
それに驚くのと同時に光輝も上からアスナの隣に降ってきた。特に苦労もしてなさげな顔で降りて来た光輝に何とも言えない表情で言った
「光輝君、相変わらずぶっ飛んでるわね」
アスナは長年光輝と付き合いがあるからか何が起こったのか普通に分かった。落雷の瞬間、光輝はただのジャンプで落雷を躱すのと同時にグリフォンの上空に現れ剣で叩き落としたのだ。
この世界の人間基準では人間離れしている身体能力に唖然とするものはいた。だが、光輝の事を知っている人はどこか納得してしまう人もいた。それはSAOの映像を見た人やSAO全記録に載ってたのを見たからとか理由は様々だ。光輝はアスナの言葉を聞き至極真面目に返す
「俺よりぶっ飛んでいる人は山ほどいますよ。だからあの人達を超えるために俺は戦い続けたい」
一種の戦闘狂のような事を言っているが光輝は至極真面目だ。光輝は一瞬悟空達タイムパトロールの背中を思い浮かべた。今は届かないその背中に追いつきたい、先行く背中は遠いかもしれないがだからこそ何回も限界を超えさせてくれる。
完全にバトル漫画の世界に入っている光輝にアスナはもう何も言わなかった。その代わり光輝の行動に唖然としていた他のプレイヤーが群がってグリフォンに攻撃を仕掛けているのを見る、そしてグリフォンがかつて攻略組を苦しめた大規模攻撃の予兆を起こしているのを見て光輝に言った
「光輝君、久しぶりに私の指示を聞いて!」
「了解」
アスナは手短に話した後他のプレイヤーにも作戦を伝えに行った。タンクには大規模攻撃のタゲをとってもらい、その後グリフォンは逃げようとするので遠距離攻撃手段を持っている人達には羽を狙ってもらい近接武器を持っている人達には最後のアタックを頼む。そのアスナのてきぱきさに光輝は真面目に感心していた。
(血盟騎士団副団長、閃光の名は廃れてないな)
アスナに言ったらきっと否定するかもしれないので心の中で光輝は続けた。光輝は最後のアタックがもし失敗してしまった場合のリカバリー役を頼まれた。元々ポイントとかランキングとかに興味はないのでアスナにポイントが集まりやすくするのに抵抗は無かった。寧ろ勉学方面でお世話になってるのでそのくらい何の問題もなかった。
光輝はタンクの人達が自らの盾をならしわざとタゲを取るのを見ながらクライン達の気を探った。この短時間に何かあるとは思えないが念のためだ。だが……
(なんでだ? おじさん達の気が少なくなってる!?)
最初に会った時よりも明らかに気が減っていた。それも風林火山全員だ。どう考えてもおかしい。そして最初に感じてたナンバー2の気も近くにあった。いや、あったというよりもう離れて行っている。それも常人には到底出しえないスピードで。
「キッ!」
光輝はそれを認識した時、グリフォンも見た。グリフォンはアタック組の攻撃だけでは仕留めきれず辺りを突進していた。そしてアスナの前まで突進していた。光輝は他の眼があるのも無視しアスナの隣に立ち言った
「合わせて!」
「え、ええ!」
言うが同時に二人はそれぞれの剣を突進してきたグリフォンの口にぶっ刺しグリフォンはその勢いのまま二人の間を通り抜け……爆散した。アスナが一息つこうと剣を直そうとしたら光輝がもの凄い形相でアスナに言った
「アスナさん! クライン達の所に救急車をお願いします!」
いきなりそんな事を言われたらアスナじゃなくても混乱する。アスナもいきなりそんな事を言った光輝に驚き以外何者でもない顔で見て思わず聞き返す
「えっ!? ちょどうして!?」
「クライン達の所まで来たら分かる! 俺は先に行ってます!」
アスナにそれ以上の追及を許さず光輝はボス戦報酬には目もくれずその場から消えた。アスナははっとし周りを見ると周りは何が起こっているんだという顔でアスナを見ていた。
アスナはユナを回避しながら急いで光輝を追った。元々そんなに離れていた訳じゃないのですぐに追いついた。そこで見た光景は……
「え?」
アスナが見た光景は風林火山の面々が明らかな外傷を負い地に伏している状態だった。光輝を見るとクラインに手を当て神秘的な薄緑色の光を出していた。アスナが来たことを確認した光輝は惨状を見たの見て
「救急車、早く!」
「わ、分かったわ!」
何があったのかを聞こうとはせずアスナは迅速に救急車を呼んだ。そして呼び終えたアスナは光輝に聞いた
「これはどういう事?」
「分からない。グリフォンのとどめを刺す前にクライン達が遅いと思って気を探ったらこうなってるのが分かった」
光輝はそう言って他の倒れている風林火山の面子を見る
「他の皆もよく見たら外傷がある。完全に悪意のあるやつがやりやがった。それにクラインに関しては骨が折れている」
「……うそ」
「骨折は俺でも治せねえ。他の人の介護をお願いします」
口調が安定していない。アスナは光輝が猛烈に怒っているのを感じた。よく考えたら光輝が怒っているのをアスナは初めて見たかもしれない。レッドギルド掃討戦ではさっさと終わらすみたいな感じが強かったし茅場には怒りというよりも若干感謝の表情も見えた。だが今はそれらの時とは違う光輝を初めてみた
アスナも気絶している他のメンバーを介護していたら救急車のサイレンが聞こえて来た。それを聞いた光輝は立ち上がりアスナに言った
「俺がいると色々ややこしくなるんで後はお任せしたもいいですか?」
「え、ええ。分かったわ」
アスナの返事を聞いた光輝は夜空に向けて飛翔した。あのナンバー2を探すのは簡単だが万一の事もあるのでレインの迎えに行ったのだ。光輝は飛翔しながらも考えた
(クソ! 俺がもっと早くクライン達の気を探ってたら……いや、多少怪しくても影分身を置いていくべきだった)
あれをやった奴が狙ってやったのかは分からないが調査していたのにこのざまな事に光輝は奥歯をかみしめる。最悪の場合風林火山の面々は……
自分の無力さに拳を握りしめながら光輝はレインの迎えに行くのだった
お疲れ様です。
ユウキ登場。書いてた通りまだユウキの体が全開じゃないのでオーディナルスケールには不参加です。だけれどもそれは逆に言えば仮想世界なら大丈夫ということである。
ではでは