Warrior beyond despair   作:レオ2

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描写不足の所を加筆したりしました。大筋は変わってませんけども前よりは見やすくなったと思います。いじったりする時は6時には出さないんでそれでよろしくです。
どぞ(っ´∀`)っ


小物の最恐編
2人の少年と少女 改


 少年が少女と共に歩いてる。

 少年は短髪で前髪が少しふわっとしている。少年の名前は西沢光輝(にしざわこうき)、何処にでもいる小学1年生である。そんな少年に1度は眼を疑うだろう容姿を持っている少女が光輝に話かける。

 

「ね、明日お星様一緒に見に行こう! 土曜日なんだから」

 

 少女の言葉を聞いた光輝は微妙な顔をする。幾つか理由があるが先ず思った事はもし星を見に行くのなら夜に出かけなければならない。そうすると光輝からしたら怖いのが

 

「愛美のお母さん怒ると怖いから嫌だよ。というか何処まで行く気なんだよ」

 

 光輝自身は怒られた事はないが目の前で愛美が怒られている所を見た事あってその時の事を思い出す。しかし愛美はなんのそのそんな事忘れて指を指す

 

「あのおっきい高台!」

 

 そう言って指さしたのは今2人がいる場所からでも見える高台だった。東京にしては珍しい。だが光輝はそれを聞いても微妙な顔をしたまま首を振った。そして辛辣だが妥当な答えを返す

 

「あそこじゃ見えないでしょ。僕も家族で夜にあそこ行った事あるけど全然見えなかったし」

 

 そう言って光輝が思い出したのはある日父と母が夜の散歩に行くと言って光輝がついて行った時に見た空だった。確かに星は見えたがあまり地上で見るのと変わらないくないか? と思った。しかし少女は強情にも主張し続ける

 

「雲があっただけかもしれないでしょ? ねっ、お願い。一緒に来て! 思い出欲しいの」

 

 と何故か必死に頼んで来る少女に訝しげな視線を向けながらも光輝は首を振った。

 

「思い出ならこれからもいっぱい作れば良いでしょ。明日する必要ないよ」

 

 少女が暗い顔になる。確かに光輝からすればそう思うのは必然だろう。光輝は目の前の少女と別れる事になるなんて微塵も思っていないからだ。そして少女の方もそう思っていた。だが少女の方はそんな事を言える状況では無くなった。だから思い出が欲しいのだ。目の前の光輝との思い出をだ。

 だから知らないとは言え光輝がそんな事を言ってきて理不尽だが徐々に怒りの表情を出しながら言う。

 

「良いでしょ。明日が良いの!」

 

 だけれども光輝にもきちんと否定する理由がある。それは心配性の領域だろう。だが光輝は心配性でも良いと思っている。もしもの事があるよりも遥かにマシだろうと考えているからだ。そしてその心配性の内容が

 

「駄目だ! 子供だけで夜出かけるのは駄目だ! それにもう何年も前から続いている連続無差別殺人事件を知らないわけないでしょ? あれは殆ど夜の間に行われてるんだよ? もし狙われたらどうするんだよ」

 

 そう、今世界のあちこちで発生している連続無差別殺人事件。それが今世紀最大の事件である。何故なら犯人の人相が分からず、狙う人物が無差別殺人って言ってるのだからあたり前だが不確定なのだ。

 更に殺害方法が奇怪すぎるし更に奇妙なのはその無差別殺人犯に殺されたであろう人達の死体である。

 ほぼ皮だけの状態なのである。筋肉など存在せず眼球は瞼の筋肉がなくなり飛び出したりしてるものもあり最早それが本当に人間なのか疑いたくなるほどの変わり様になっているそうだからだ。

 しかし少女は楽観的だ。

 

「でもあれは世界中で起きてるんだよ? そんな都合よく日本、しかもここら辺にいるわけないじゃん。お願い。だから明日が良いの。というか明日じゃないとダメなの!」

 

「なんでそんなに明日に拘るんさ?」

 

 光輝は何故そもそも明日なのかを聞いた。そんなに明日がいいならそれ相応の理由なんだろうなというのもあった。だが少女は顔に影を落とす。そして悩んでいたがそもそも光輝が強情なのだと1人で納得し光輝への怒りが出てくる。

 

「それは…もうわかったわよ! いいもん!光輝が行かないなら勝手に1人で行くもん!」

 

 そう言って少女は帰路を走る。だがそんな少女をはいそうですかとする訳にはいかず慌てて声をかけた。

 

「ちょ、おい!」

 

 少女は怒った顔のまま振り返って

 

「何よ! 来てくれないんでしょ!」

 

「当たり前だ、もし狙われたらどうするんだよ!」

 

「そんなのあるわけないじゃん! 心配しすぎ。それに私1人で行くって言ったでしょ!」

 

本当は光輝が拒否した時点で1人で行く必要は無いのだが少女は引くにひけなくなった。

 

「だから狙われたら.」

 

「もーう! うるさい! もうほっといてよ!」

 

「でも.」

 

「もう光輝なんて大嫌い!」

 

 そう少女が半ば反射的に叫んだ言葉を聞いて悲しみの顔になり少し呆然とする光輝。光輝自身は目の前の少女を嫌いになった事なんてない。でも今少女からその言葉を聞いて理解出来なくなったのだ。

 

「え…な…んで?」

 

「なんでって、光輝がお母さんみたいな事言うからでしょ! 何よ今の光輝よりあの時の光輝の方がかっこよかった!」

 

 ふん! と言って少女は帰路についた。

 光輝はそんな少女の背中を悲しいようななんと言うか……そんな喪失感でショックを受けたまま立ち尽くした。

この時、愛美を傷つけてでも行かせないべきだったことに気がついたのは光輝の不覚でもあった。

 

 

 

 ★★★★★

 

 

 少女は少し重たい家の玄関のドアを開けてくぐりながら母親に言った。

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさい。愛美(えみ)

 

「うん」

 

 愛美と呼ばれた少女はリビングをサッと見渡す。この家は3人で過ごしている。そしてその大黒柱たる父親がいないのを見て聞いた

 

「お父さん今日も遅いの?」

 

「うん、お引越し前だからお父さん忙しいのよ」

 

 それを聞いた少女、古原愛美(こはらえみ)は顔に影を落とす。別に父親が遅くなる事じゃない。それ自体は何回かあったからもう気にしていない。愛美が暗い顔をしたのは引っ越しと言うワードを聞いたからだ

 

「そう、だよね」

 

 そして料理中の母が聞いてくる。今の愛美を悩ませている事を

 

「光輝君にちゃんと言った?」

 

 愛美はソファーの上で体育座りして

 

「言える訳、ないじゃん」

 

 悲しみの顔でそう言う。

 そう、古原一家は来週にはお父さんの転勤にあわせアメリカに引越しする事になっているのだ。当たり前だが小学1年生だけ残して行く事なんて出来なかった。

愛美の気持ちも分からんでもないが何も言わずにお別れする方がショックを受けるだろうと母親…美咲は思い慰めるように言った。

 

「でもどっち道言わなきゃだめよ?」

 

「わかってる! わかってるけど.」

 

 愛美の心を憂鬱と後悔が満たしていた。せっかく少しの間だけどなれた友達と離れてしまう。そして何より凄く仲良くしてくれ、恋心を抱いた男の子と離れてしまう心境は小学1年生には辛いだろう。さっきのやり取りを心の中で後悔する。

 

「あんな事言っちゃった。光輝は私の事を心配してくれたのに」

 

 西沢光輝と古原愛美の初めて出会ったのは入学式である。しかしその時から仲良くなった訳では無い。寧ろ何も接点等無かった。何でそんな2人が一緒に遊ぶ程仲良くなったのか。

その出来事、入学してからしばらくたった日光輝が教室に入って見た光景は

 

「がーいじん! がーいじん! がーいじん!」

 

 いかにも自分ガキ大将ですという風貌の男子が愛美の外見を理由に虐めてる所である。

ここで古原愛美の外見を見てみよう。髪は首あたりまででどちらかというとショートに入る。

 顔は当時の1年生、いや学年中の人と比べても将来美人になるだろうなと思わせる顔であった。しかし虐めてる原因なのは髪色と目の色なのである。髪は薄い蒼色、そして眼の色は蒼色である。

 だから男子はそんな愛美を外国人と言って精神的に虐めていた。日本人で日本人だけのクラスにいるのにそんな事を言われたら否定するのが小一ならば普通だろう。愛美自身その容姿にコンプレックスを持っているから余計にだ。

 そして愛美と男子のこんなやり取りはもう何回もされている。男子は自分達と容姿が違う事が気に食わないのかそんな差別発言をしまくっているのだ。愛美は涙目になりながら

 

「外国人じゃ、ないもん」

 

 その声は小さく男子が詰め寄る。

 

「えっ? なんて? ガイジンの言葉なんてわからーない」

 

「うっうっ」

 

 涙を堪えてる愛美。そんな光景が光輝が来た時からしばらく続いた。その間誰も止めようとはしなかった。ガキ大将みたいな風貌なだけあってがたいが良いだけじゃなく親が空手をやってる家庭なので強さも普通の1年生では止められない。

 だから自分達が矢面に立ちたくないというそんな自己保身である。しかしまあ、だからって小学1年生に立ち向かえって言うのは酷な話である。

光輝はそんな光景を見ながら愛美といじめてるやつの所に向かいゆっくりと口を開け声を発した

 

「なあ」

 

「あっ? なんだよ?」

 

「邪魔」

 

 教室の空気が凍った。クラスメイトは基本的に寡黙の光輝がいじめっ子の男にそんな事を言うとは思わなかったのだ。クラスメイトはその様子をビクビクしながら、或いは面白そうと遠回しに思い見守る。

 だがいじめてる方はそれを聞いて一気に不快な顔をして凄みを利かせて光輝に詰め寄り言った。

 

「回れよ」

 

「やだ」

 

「なんでだよ」

 

「ここが近道だから」

 

 光輝の席は愛美の後ろであるから愛美の席の隣を通るのが近道っちゃ近道である。

 しかしそんなのは男子にとっては関係ない。この歳でそんなガキ大将の素質を身につけられるあたり違う意味で凄い。親から武道のやる意味を聞かなかったのか? と光輝はこの時思った

 

「知るか! いいから回れ!」

 

「嫌だ、面倒くさい」

 

「俺に逆らったってどうなっても知らねーぞ」

 

 にやにやとそう言ってくる。暗に逆らったら痛い目見るぞと言ってるのと同義である。しかし光輝は相手の目を見て

 

「そんな事元々知らねーし興味がないから早くどいて」

 

 そして男子は怒りの顔になった。光輝自身はこんな1人の男子が愛美に差別発言している光景を見るのは初めてだ。だけどやっている事に怒りを感じたし男子が空手をやっているのは知っていた。知っていたからこそ怒った。武道は誰かを追い詰める為にするものでは無い。それを光輝は祖父のおかげでよく知っているからだ。

 そして愛美がいじめられているのが見るに耐えなかったからだ。人間が一人一人違うのなんて当たり前だ。だから光輝は愛美の事は「可愛い同級生」だと思っているしそれ以上も以下もない。少なくとも本当に愛美が外国人だとしても光輝は気にしない。

 

「は!? そんなに痛い目を見たいんだなあ! 

 

 拳を硬く振り上げその拳は光輝の顔面に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 届いた

 

 

 光輝が殴られた事により頬に痣を作りながら少し吹っ飛び尻もちついた。

 男子は笑う

 

「ハハハハ! だっせ! あんな事言ってクソ弱いじゃねぇか! 俺に逆らうからそうなるんだよ!」

 

「ほーう? 誰に逆らうとそうなるんだ?」

 

 その第三者の言葉を聞いた男子は一瞬でその動きを止めた。教室の入口に立ちながらそう言うのはこのクラスの担任である新井という男だ。

機械のように入口に目を見せる男子。そして驚愕しながらも何とか口を開いた

 

「せ、先生いつから」

 

「西沢と一緒に来た。今まで手を出さなかったのは西沢が待ってと言ったからだ。決定的な場面を押さえないとお前は知らんぷりすると言ったからな」

 

 そうして先生·····新井はここに来るまでの事を思い出した。

 

 ★★★★★

 

 いきなり職員室のドアが開けられ1人の少年が顔を出す。

 俺のクラスの西沢光輝だ。

 周りの先生方が怒ろうと詰め寄る

 

「君もうちょっとゆっくり……」

 

「そんなのは今どうでも良いんです! 怒られるのは後でされますから新井先生いますか?」

 

 焦った顔でそう言うから只事では無いと職員室の誰もが思った。

 少し注目を浴びながら俺の生徒の元まで向かう

 

「どうしたんだ?」

 

「村田が古原さんを見た目で虐めてる」

 

 これを聞いて俺は疑った、何故なら俺が知ってる限りはそんな事するようなやつじゃないと思ったからだ。

しかしそれは後に村田が他の生徒を脅して裏の顔を知られないようにしてたり自分の前では猫を被ってただけと知ったが。当時の俺は恥ずかしい事に知らなかったので西沢に優しく言った

 

「でもね、西沢君、彼はそんな事する子じゃないと思うけどな」

 

「じゃあ一緒に来て! 自分の目で見たら良いでしょ」

 

「わかった、わかった」

 

 ヤケに必死なのを見て「はいはい」みたいな感じで俺は返事をした。どの道もう教室には行くつもりだったから良いだろうと思ったのだ。

そして2人で職員室を出てその途中で西沢君が

 

「先生、古原さんが虐められてるのを見ても取りあえず止めないで、僕が最初に行きます。あいつの裏の顔をまず見せてやりますよ」

 

 そんな事を言った。私は同意しかねた。仮に本当ならば西沢君が酷い目にあってしまうと考えたのだ。その前に俺が止めれば良いのだが。しかし彼に押し切られてしまう。西沢君は私が初めて見る焦った表情を見せていた。

 

「あいつは根本的に直さないとダメなんです! あんなのが癖になってしまったら古原さんが可哀想だから」

 

 そうさっきの愛美の泣いてる表情を思い出す。あの顔を見た時、光輝の心臓が抉られるような感覚になった。愛美の事は「可愛い…」とか思って眼で偶に追った位。所謂一目惚れだ。最も光輝自身は認めないだろうが。でも…だからこそ見た目なんかでいじめられて泣いている愛美をほっとけなかったのだ。

新井はそれが分かった訳では無いが光輝の悲しげな表情を見た時、光輝の言ってるいる事が本当何だと漠然と分かってきた。

 

「わかった、でも無理はするなよ? やばいと思ったら止めるからな」

 

 正直先生としてはどうかと思うが西沢の言っている事が本当なら自分が来た瞬間にまた猫を被るかもしれないと思い西沢の案に乗った。

 

「はい」

 

 と西沢は返事をして教室に早歩きする。しかしその慌てようは今まで見せた事がない。小一の割には何時もしっかりしている俺は思う。基本は寡黙な子だが頭は良いし恐らくあのクラスの中では1番古原の事を大事に思っているだろう。でなければ自分がいじめられるリスクを考えてまで俺の所に来ないだろう。

そしてとうとう着いた教室の入口で

 

「うっ…うっ」

 

 古原が泣いてた、そして

 

「ガイジンが泣いてやんの。笑えるな!」

 

 そう言って笑ってる村田の顔が見えた。その瞬間、胸の中がとんでもない怒りと自分の情けなさが渦巻いた。私は作戦も忘れ思わず出ようと思ったが西沢に止められた。

 

「あいつはまだ全部の顔を見せてないから僕が行きます」

 

 私の返事を待たずに教室に入り

 

「なあ」

 

 今に至る

 

 ★★★★★

 

 村田は光輝を指差しながら吠える。

 

「こ、これはこいつが悪いんです! こいつが俺の邪魔をするから」

 

仮にそうだとしても今尻もちをついて頬に軽い痣を作っている光輝と村田、どちらが悪いかなんて一目瞭然だ。

 

「ほう、なんの邪魔をされたのかな?」

 

「そ、それは…」

 

 どんどん墓穴をほっていく村田。最早詰みである。性懲りも無く否定しようとする村田や周りをほっといて先生は古原さんに話しかける。

 

「古原さん、すまないが西沢君を保健室へ連れて行ってくれるかな?」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「お礼なら西沢君に言って」

 

「えっ…?」

 

「彼がいなかったら私はここに来ていなかっただろうから、それと」

 

 先生が愛美に向けて頭を下げた。他人事ながら綺麗な礼だと思う。俺は一体何に感心しているんだろうか?

 

「すまなかった! 気づいてやれなくて。本当に申し訳ない!」

 

 新井は謝った。自分の知らない間にいじめられそれに気づかず挙句の果てに村田の真の姿にすら気がつかなったのだ。元々正義感があったのでこうなってしまうのは当然の様な気もする。

 

「は、はい」

 

 そして愛美は思わずそう返す。いや、誰だって先生に腰を90度に折られて謝られたらそうなってしまうだろう。光輝もなる。新井は頭を下げるのを止めてお願いした

 

「じゃあ、西沢君の事をお願いするね」

 

「は、はい」

 

 愛美は光輝の元に行き初めて父親以外の異性と話した

 

「じゃあ、その、行こっ?」

 

「えっ…う、うん」

 

 光輝は初めて話しかけられた愛美の容姿やら美貌に心臓がドキドキしながらも頷き立ち上がる。そして少し遠い保健室まで2人は歩き出した。

 

 

 

 

 




これからも加筆したりするのでした場合はタイトルの横に改と書くので分かる思います。
(*´∇`)ノ ではでは~これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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