東方を無理矢理FGOっぽくしてみた   作:Gasshow

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元々、自己満足で書いていたのですが、コロナによる学生さんの暇潰しになればなーと言う思い半々と、これだけ自由に書いて受け入れられるのか?と言う実験の意味合いを兼ねて投稿します。注意事項が多々あります。

*注意事項

・あくまで『FGOっぽくしてみた』ですので、FGOの設定を反映させていません。独自設定です。

・元々、後ろで息抜きに書いていた自己満足の自慰作品ですので、読者への思いやりがないです。

・上記の目的での投稿なので、学生の春休みが終わるであろう四月終盤には削除する予定です。要望が多ければ、こちらで完成した後に投稿する場合はあるかもしれませんが、基本はないです。

・元々書いていたものにコメントをつけて予約投稿しているだけなので、感想の返信が遅れる場合があります(それはいつもか……)。毎日、十九時に投稿します。

これらが受け付けない方は読まない方がいいかも……。
ホント、駄作なんで。


狂政復讐西界 紅魔郷
全ての始まり


藤丸立香と言う男はどこまでも平凡であった。突出した頭脳も、他を追随させない程の身体能力があるわけでもない。能力的に見れば全てが平凡な男。それが“藤丸立香”と言う存在だった。その証拠に彼は大学生になった今でもその在り方を貫いていた。平凡な学校の平凡な成績を修めている一学生。それが彼の肩書きだった。

 

 そんな彼が夏の長期休暇で実家へ帰り、母親に買い出しを頼まれたことから全ては始まった。立花の自宅から近くのスーパーまではかなりの道のりがあり、車で行かなければ夕飯を作るのに間に合わない。よって立花は取り立ての自動車免許を持って、霧の深い山道を車で下っていた。霧はどこまでも深く、少し先でさえ全く道が分からなかった。ガードレールがあるにはあるが、それを越えてしまえば、崖とも言える程の急斜面を誇る山肌を滑り落ちることになる。そうなれば命は無いに等しかった。それ故に立花は慎重に車を運転していた。危ない対向車が来ていないか、自分はちゃんと決められた車道を走っているのか。周囲に神経を張り巡らせたながら、彼は運転していた。しかしどんなに警戒していても不慮の事故と言うものは唐突に訪れるものだ。

その傍迷惑な訪問は立花の頭上から現れた。始めは地鳴りだった。まるで空き缶の中に入れられて、揺さぶられているかのような恐ろしい揺れ。

 

「っ! 地震!?」

 

立香は思わずそう叫び、急ブレーキを踏む。車体からけたたましい音が鳴り、車は止まった。しかしそれに反比例するように揺れは段々と大きく、おぞましく成長していく。体中からありとあらゆる危険信号が鳴り響き、腹の奥から恐怖心が沸き起こる。鼓動がバクバクと胸を打ち、しかし足はピクリとも動かない。自分にできることはただこの揺れが収まるまで車内でじっとしているだけ、そう立香は判断した。しかしその判断が間違いだったことを彼は次の瞬間に思い知らされた。

 

「……………………え?」

 

そんな間抜けな声が漏れる。そんな気の抜けたような声が飛び出す。それもそのはず。立香はいつの間にか空に投げ出されていた。いや、正確に言うなれば突き落とされと言った方がいいだろう。では何に突き落とされた? 何が原因でこうなった? その答えは立花が目にしたモノが全てを物語っていた。それは土だった。土と岩。大量の土砂が彼と共に地面へと一直線に落ちていっていた。そこで理解する。あの地鳴りは地震ではなく、大規模な土砂崩れだったのだと。そして自分の乗っていた車はそれに押し出され、結果この有り様になった。しかし今、理解したところで全ては後の祭り。今更、自分にできることなど何一つとしてなく、ただ親から借りた乗用車と共にぺしゃんこに潰されるだけ。立香はその運命を受け入れる準備をする間もなく、意識を暗転させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

体の隅から隅へと走る激痛で目が覚めた。全身の神経が一瞬、膨張したのではないかと疑ってしまう程の痛み。僅かな時間しか感じなかったはずのその痛みが、まだ全身に残っているようで、立花は起き上がりながらも思わず顔をしかめさせる。

 

「…………ここはどこなんだ?」

 

痛みが落ち着いたところで周囲を見渡せば、そこは深い森だった。誰もが息を吐くような、重さすら感じさせる深緑に、夜の暗さが相まってより一層、胸から不安の感情が沸き上がる。しかし折り重なる木々の葉から漏れる月明かりが幻想的で、その不安も徐々に収まりを見せた。そのお陰か、立花はすぐに冷静に状況を判断する思考を取り戻す。

ふと彼は自身の現状を確認する。動機の激しい心臓を(いさ)めようと大きく深呼吸をすると同時に、恐らく自分はあの崖から落っこちたのだろうと推測するが、もしそうなら非常に不味い状況だと立花は再び自分の中に不安が呼び起こったことを感じ取った。

しかし思考を止めればそれこそ自分の中の状況が良くない方向へ傾くと思い、今できる自分の精一杯を考えることとした。地面に胡座(あぐら)をかいて座り込み、ほんの十分程度、頭を捻らせた結果、ここに留まって助けを待つと言う方向へと方針が決定した。それは数日あれば確実に誰かが土砂崩れに気づくし、そして自分がいなくなったことについてはそれ以上の早さで両親が警察に連絡を入れるだろう。もしそうなればタイミング的に自分が土砂崩れに巻き込まれたと察してくれるかもしれない。ここで下手に歩き回るより、そうした方が確実に預かる道がある。そう判断した故に立花はここで待つこととした。ならば無駄に体力を消費しないためにもうとっとと寝てしまうことにする。

 

「よし! なら今日は寝床を作って寝よう」

 

立花は自分を激励するかのように大声でこれから自分がするべきことを叫んだ。その瞬間的だった。激しく(まばゆ)い光が木々をすり抜け、立花の前方を明るく照らした。そのあまりの光量に思わず目を閉じて片手を顔の前にやり、影を作る。その光はすぐに収まりを見せ、再び元の静けさと暗闇をを取り戻す。立花はぼう呆然と立ち尽くす。何があったのか? 何が起きたのか? 彼は頭の中でそれを反復させ、そしてそれを確かめたい好奇心に駆られ、その光が放たれたであろう光源の元へと歩みを進めた。堂々と立ち尽くす木に手を添え、足元に茂る草を踏み倒し、森をひたすらに進んでいく。やがて立花は森を抜けた。

 

「…………ッ!」

 

そしてそこで見た風景に思わず息を飲む。まず目にしたのは大きな湖だった。(ひら)けた場所にポツンと置かれたようにあるなだらかで大きな湖。夜だと言うのにその青々とした鮮やかさが目にしっかりと写し出されている。そしてそれを一層、美しく見せるのが視界の端に映る満月と満天の星々。立花はかつてこれ程までに美しい夜空を見たことがなかった。それはとても神秘的で、そして幻想的なもの。しかし立花が目を奪われたのはその二つのどちらでもない。本来ならばただそのどちらか二つだけを目にすれば、目の焦点をそこへ合わせ、感嘆の息を吐くことだろう。だが今、立花が視点を一点にして見つめているのは一人の少女だった。

少し離れたここからでも分かる幼児を証明する背丈の少女。西洋風の独特な服装を見に纏い、肩まで伸びた紫色の髪が風に揺られ(なび)いている。そして彼女の背からはその丈と同じ程の大きさがあるコウモリのような羽が生えていた。そんな少女の横顔は幼さがありながらも男ならば誰もが魅了させるような美しさと妖艶さと、濃艶(のうえん)さがあった。まるで男の望む女性を体現したかのような──そんな少女が立花の目の前に現れたのだ。その美しい湖畔(こはん)(きら)めく夜空でさえ、その少女を着飾るための一つの衣装に過ぎないようだった。

立花が少女の姿に我を忘れていると、ふとそのたどだとしい横顔がくるりと回り、彼女の持つ二つの眼球がふとこちらを見た。

 

その瞬間だった──

 

 

 

「うわっ!」

 

 

先程まで離れた位置にいた少女がまるで瞬間移動したかのように、一瞬で目の前に現れたのだ。立花はあまりにも唐突な出来事に腰を抜かし、後ろへと倒れこんだ。

 

「君は……」

 

驚きの表情のまま座り固まる立香をその少女は見下ろし、ポツリと呟く。そして一人納得がいったように喉元をうねらせた。

 

「…………なるほど。外来人と言う訳ね。まさかこんなタイミングで迷い込んでくるなんて。余程運が悪いのかしら」

 

立香の思考が立ち直っていない頭に、追い討ちを掛けるような意味の分からない言葉。一人置き去りにされた彼を放って少女は丁度いいわ、と呟き立花に手を伸ばした。

 

「立ちなさい」

 

「えっ?」

 

「立ちなさいと言っているのよ」

 

立香は状況が掴めないながらも、おずおずと言った風にこちらに伸ばされている少女の小さな手を握った。

 

「うおっ!」

 

するとこの小さな体からどこにこんな力があるのかと思うような強引さで、強制的に体を吊り上げられ立たされる。少女はそんな立花を見て満足そうに頷いた後、そっと彼の胸元に右手を添えた。その瞬間だった。頭に謎の言葉がこだまし、響く。立花の知らない言葉の羅列が、脳内の全神経を伝って充満していくのが分かった。それは彼女の手のひらを通して、文字が流れ込んで来ているようだった。

 

「…………なんだ……これ?」

 

立香は今まで体験したことのないような現象に困惑し、思わずそんな言葉が漏れる。

 

「拒まず受け入れなさい。そして恐れずに頭の中にあるその言葉をそのまま口にしなさい」

 

立香は訳の分からない怒濤(どとう)の展開に頭が書き乱される。つい数日間前がもう忘れられない程、昔の時のような錯覚を覚える。今までの記憶全てが少女から受け渡される文字で犯されているようだった。

 

 

「…………素に銀と鉄──」

 

だからなのか、いつの間にか立花は口を開いていた。

 

 

「礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ──」

 

 

今まで溜め込んでいた言葉が脳神経を通し、肺に送られ、空気をエネルギーに舌から滑り落ちるのを感じた。

 

  

 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 

一度口にすればそれは止まることなく続けられた。

 

 

 「────Anfang(セット)

 

 

自分の意識とは関係なく。

 

 

 「────告げる!」

 

しかし、不快感などは何一つと感じない。

 

 「────告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  我が意思の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

何故か安心感すらあるその言葉は──。

 

 「誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く

 

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

これからの立花の全てを変える言葉だった。

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

突如、手の甲に熱さが宿る。激痛にすら思えるその熱さは、まるで焼けた鉄製の刻印を押されているかのような鋭いものだった。立香は思わず膝を着き、異常の起こったその場所に目をやった。

 

「何だ……これ?」

 

そこで見た自身の手、その甲には真紅の奇妙な印が刻まれていた。立香はまるでタトゥーのようだと、それを逆の左手で擦ってみたが、それが取れる気配は微塵もなかった。

 

「どうやら成功したみたいね」

 

その声でハッと我に返る。

 

「えっと……」

 

立香はこの現象を生み出した人物が何者なのか尋ねようとしたが、それは覆い被さるような彼女の言葉によって(さえぎ)られる。

 

「説明は後よ、取り敢えず私に着いてきなさい」

 

少女は膝を着いていた立香の手首を捻る持ち、早歩きで湖の畔に向かっていく。

 

「うわ! ちょっと!」

 

立香は無理やり手を引かれ、彼女に引きずられるよう、その後を着いていく。バランスを崩しながらも、なんとか少女が立ち止まるまで着いて来ることのできた立花は、次いでここに何があるのかと周囲を見渡した。

さして変わった箇所などないように思えるその風景。しかし、湖の水面(みなも)に視線を向けた時、その本来ならあり得ない現象に立花は驚きで両目を見開かせた。

 

「紅い月?」

 

そう、その水面に写し出されていた月は紅く染まっていたのだ。立香は思わず空を見上げ、自身の頭上に浮かぶ月を見直すが、しかしその月は黄金のように輝く、自分のよく知る色の月が浮かんでいるだけだった。

ならばどうして湖上で揺らめくこの月だけが紅いのか。立花は自身の知る常識や知識を総動員するが、当然のように得られるものは何一つとしてなかった。ならここへ連れてきた張本人ならば何か知っているかもしれないと、ふと立花はあの少女がいるであろう位置へと首を向けた。

 

その当の本人である少女は真剣な面持ちで紅い月を見据えていた。何かを考えているような、何かを吟味しているような、そんな顔中の表情筋を引き締めた鋭い目で彼女は紅い月に視線を送り続けていた。その緊迫した少女の様子に立花はかけようとしていた声をを思わず引っ込めてしまう。彼女は自分をここまで連れてきて何をさせようと言うのだろうか? ただその思考だけが立花の頭を巡り続けた。

そんな疑問が(よぎ)る中、少女は一歩、湖の前へと歩み出た。その様子で、その雰囲気で、立花は今から少女がしようとしている行動を察してしまった。

 

「えっと……もしかしてここに飛び込むつもり?」

 

立花はまさかと思いながらもそう尋ねた。

 

「ええ、そうよ」

 

それに対し、少女は何の変化も見せずにあっさりと返答する。立香は自分の読みが当たったことに驚きながらも、動揺のままにまた違った疑問をぶつけた。

 

「いや、でも何で湖なんかに……」

 

歯切れの悪い言葉に、少女は立香の方を向いて不機嫌そうに目を細めた。

 

「なに? 文句でもあるのかしら?」

 

「いや、文句というよりは……」

 

意味が分からないと言うか何と言うか。そんな言葉を立香は口を閉じ、喉の中へと押し戻す。立花からすれば、自分がどこにいてどういう状況にあるか分からず、いきなり知らない人物の意味不明な言動に振り回されている。そんな現状で彼がこうなるのは仕方がないことだった。しかし目の前の少女は立花の意思など知らないとばかりに、彼の手を取り、湖の方へと引っ張った。

 

「いいから、黙って貴方も着いてきなさい」

 

「うおっ!」

 

その言葉と共に立花は水面へと投げ出された。いや、違う。水中だと思っていたそこは、全く違う場所だった。そこは白い光源のなかだった。辺りを見回しても白一色。全てが白に染まりきっていた。立香は予想とは違った状態に晒されたことに驚きと混乱が脳内を駆け巡る。そしてそれが収まるのを待つことなく。周囲の白光はより強さを増し、立香を含め、全てを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば広い草原に立っていた。視界の端には地平線が見えており、それを阻害するものなど一つもない。空は青々しい地面とは対極に、曇りがかった景色が広がり、全てを灰色に染め上げていた。立香はそんな光景をただボケッと眺めることしかできなかった。しかしそれは唐突に終わりを迎える。

 

「…………仮想現実? いえ、聖杯の造り出した異世界とでも言うべきかしら」

 

それはふと隣に聞き覚えのある声が聞こえてきたからだ。視線を右下に下げれば、そこには自分をここに連れてきたであろう張本人が、少し前までの自分と同じように、この光景を見渡していた。

 

「…………あの」

 

立香は僅かに躊躇(ちゅうちょ)した後、思いきって声をかけてみた。少女は無言で立花を見上げ、そのパッチリとした目で彼を見た。

 

「……そうね、貴方にも状況説明が必要よね」

 

少女はそう言い、自身の顎に手を添えた。さて、どこから説明しようかしらと呟いているが、立香からすれば何もかもが自分の理解の範疇を越えており、一から百まで全てを説明して貰いたいと言うのが正直な話だった。

しかしここで横槍を入れるのはまた話をややこしくするのではないかと思い、立花は少女が話始めるのを待った。そうして立花が大人しく待っていると、ふと少女は何かを思い出したようにハッとして唇を開いた。

 

「その前に、貴方が私と出会うに(いた)った経緯について教えてちょうだい」

 

「経緯?」

 

立香は聞き返す。

 

「ええ。その方が教える側である私の整理もつくわ」

 

それもそうかと立花は自分が土砂崩れに巻き込まれたことと、気がついたら森の中にいたこと。そして激しい光の光源へと向かったらいつの間にかこうなっていたことを説明した。立花の話を聞き終えた少女は理解したと言ったように、その小さい首で頷きを見せた。

 

「なるほど。だいたい分かったわ。では貴方の疑問を私が全て解消して聞かせてあげましょう」

 

それから彼女は立花を改めて見据え話を始めた。

 

「まず貴方が土砂崩れに巻き込まれて、たどり着いた森──と言うよりは世界ね。そこは幻想郷と呼ばれる世界よ」

 

「幻想郷?」

 

立花は初めて聞くその単語に疑問符を浮かべる。

 

「そう、幻想郷。そこには言わば怪異の住む世界。例えば座敷わらしや天狗、河童と言ったそう言った化け物たちの住む世界ね。ほら、私もそう。吸血鬼よ」

 

そう言って少女は振り向いて立花に自身の羽をよく見えるようにした。立花は信じられない気持ちが胸の中に溢れ出ていたが、しかし目の前に証拠があるのだから納得する他なかった。少女は少女で受け入れの早い立花に上から目線で説明することに機嫌を良くしたのか、段々と饒舌(じょうぜつ)になっていった。

 

「昔、世界には怪異と呼ばれる存在が多くいたの。しかしそれは人間たちの文化文明が発展して行くなかで徐々に力を失っていった。例えば“金縛り”を元に生まれた妖怪。昔は、怪異の仕業だと信じられていたけど、最近では“睡眠麻痺”と言う現象により引き起こされることが人間たちによって証明された。そうなれば彼らの力は弱まり、そして最後には消えてしまうの」

 

なるほど。と立花は納得する。怪異の仕業だと思われていた現象が、ただの自然の摂理だと分かれば妖怪そのものの存在理由が消えてしまう。つまり世界から抹消されると言うことになるのだ。

 

「そんな風に自分たちの消滅を(うれ)いた幾人かの大妖怪たちが、大結界で隔離した小さな世界を作り、そこに人間たちを住まわせ、自分たちの力が衰えないようにしたの。それが先程まで私たちがいた幻想郷。人間の発展を怪異が調整しているから、妖怪の力が衰えることはない」

 

つまり人間ごと世界の一部を切り取って、別世界とし、そこで人間を発展させないようにする。そうすれば怪異たちは消滅しないことになる。随分と大がかりなことをしたなと立花はその行動力を称賛しながらも、僅かに呆れた。

 

「人間と怪異が共存しながらも実質的には人間が支配される世界。貴方はたまたま外の世界から幻想郷に迷い込んでしまったのよ」

 

立花は一応、納得したがその瞬間、少女の言葉に引っ掛かりを覚えた。

 

「……ん? 先程までいた世界?」

 

その口振りだとまるでここが幻想郷でないと言っているようではないかと反射的にそんな考えが浮かぶ。すると少女はニヤリと僅かに口角を持ち上げる。それはまるで、大人にもなって実行したいたずらが成功したような、薄く重さのないものだった。

 

「貴方の疑問は的を獲ているわ。そう、ここは幻想郷ではない。先程、私と貴方は湖に飛び込んだでしょう? それで幻想郷からここへ移動したのよ」

 

立花は混乱してきた頭を建て直そうと目元を指で軽く押さえ、そしてため息と共に火照った脳の熱を吐き出した。そこで立花は一つの疑問を持つ。ここが幻想郷と言う場所ではないとするとここは──

 

「ここはどこなのか」

 

立花の思考を読んでいたかのように、少女は先行してそう言った。それから彼女は立花の周囲をゆっくりと、彼の全身を見るように穏やかに周り始めた。

 

「ここはどこ? 幻想郷ではない。なら外の世界?いいえ、違うわ。そうね……ここで簡単に、一言で簡素に、さらっと答えを言うのは簡単だけれど、でもその前に貴方には幻想郷での私の立ち位置を知ってもらう必要があるわ」

 

「立ち位置?」

 

立花は聞き返す。

 

「ええ。この私が幻想郷でどう言った存在なのか」

 

少女はそこで立花の周囲を回ることを止め、彼の真正面に立った。

 

「大した肩書きはないわ。私はね、紅魔館と言う大きな屋敷の主なのよ。もっと分かりやすく言えば幻想郷における勢力図の一角を(にな)っているの」

 

立花はそのことに対して疑念を浮かべることはなかった。確かに普通ならば、こんな幼い少女が大きな館の主で、怪異たちの世界である魔境のような場所有数の勢力を持っているなどヘソが茶を沸かすレベルの話だが、目の前の少女はそんな見た目など意に介さないような威厳と、力強さと、権威があった。恐怖さえ覚える彼女の美しい見た目も相まって、立花は終始、彼女に気圧され気味だった。

 

「まあとにかくね、そんな私だから一つや二つは強力な──そうね、魔具とでも言うのかしら? まあとにかく、強い魔法の道具を持っていたのよ。その道具の名前は『()()』」

 

「……何だか凄そうな名前だね」

 

「ええ。事実、かなり便利な代物よ。それは言うなれば魔力の貯蔵庫のようなものなの。魔力を貯めておける強大な倉庫。それが『聖杯』の力」

 

立花には魔力と言う概念はいまいち分からなかったのだが、とにかくなんとなく凄い物だと言うのは理解した。

 

「その溜め込んだ魔力が今回、何者かに使われたようね。『聖杯』の魔力を使えば願望器の真似事くらいはできるもの。その結果がこの仮想世界。言うなれば“幻想郷の特異点”とでも言うべきかしら。どうやらここは『聖杯』の魔力によって作られたみたいね。誰が何の為に、なぜこんな世界を創ったのかは分からないのだけれど」

 

彼女はそう言うと、瞳を細くし、身体中に怒気をまとわせた。

 

「とにかく私の道具が勝手に使われたことは事実。そうなれば取り戻さなくてはならない。それに放っておいたら何かしら、ろくでもないことが起こるのは目に見えているわ。だからこうしてここに飛び込んだのよ。聖杯の力が感知できたあの紅い月に」

 

なるほど。自分が巻き込まれた経緯は分かった。要は誰かに自分の持っていた『聖杯』と呼ばれる協力な道具を勝手に使われ、それを取り返すためにここに来たと言うことだ。しかしそうなるとどうしても気になることができてしまう。それは今、立花がここにいる根本的なものだ。

 

「じゃあ何で俺を連れてきたの?」

 

立花は間髪入れずに尋ねる。

 

「おやつ」

 

「…………え?」

 

「おやつよおやつ」

 

「……おやつって、あのおやつ!?」

 

立花は予想の斜め上過ぎる回答に対してそうリアクションするしかなかった。

 

「ええ、そのおやつよ。あの聖杯の起こした光に巻き込まれて紅魔館ごとこの世界に取り込まれそうになった時、力を使って抵抗したの。だから私の魔力は今、ほぼ空。それを補う為に私と貴方とで契約を交わしたの」

 

契約と聞いて、立花は一瞬何の事だと疑問符を浮かべるが、ふとここに来るまで前に行われた出来事を思い出し自身の手の甲を見た。

 

「契約……契約ってこれ?」

 

立花の目に映るのは何の模様か分からない、赤で描かれた赤いマーク。立花の思い当たる節とと言えばこれしかなかった。

 

「そう、これよこれ。それは大昔にシュバインオーグとか言う老害が怪異を使い魔にする為に開発した契約術。人間側は使い魔に魔力を送り、そして“令呪”と呼ばれる三回の絶対命令権で使い魔を抑制する。分かりやすく言えば、貴方は私に魔力──外の世界で言えば生命力を私に与え続け、貴方はその代わり私を使い魔とした。その手の令呪と呼ばれる三回の絶対命令権を有してね」

 

つまり、自分は彼女に力を与え続け、彼女の養分となる。対して自分は彼女に三回だけの強制的な命令できる権利を得たということだろう。立花はそう解釈した。

立花は本当にこんなもので命令なんてできるのだろうか? と思いながらまじまじと自身の甲に刻まれた令呪を見る。そんなことをしていると、説明をした張本人である少女が立花を睨み付けながら彼に近づく。そうして威圧を纏ったまま傲慢な様子で口を開いた。

 

「でも勘違いしては駄目よ。貴方はあくまでおやつ。どう間違っても自分が上だとは思わないことね。私の力があれば貴方が令呪を使う前にその首を刈り取ることもできるのだから」

 

それは暗に、お前の命は自分が握っていると言っているようなものだった。実際にそうなのだろう。少女からすれば、立花はたまたま舞い込んで来た餌のようなもの。彼が生きているのは少女の気まぐれ。ただそれだけでしかないのだ。立花は改めて自身の現象を理解し、何か些細な切っ掛けで自分の命が散るのだと察した。彼の頬にうっすらと冷や汗が(にじ)み出る。

 

「貴方が私の都合によって、この理不尽に巻き込まれたことは諦めなさい。運命が貴方を導いて、私がしたいようにした。ただそれだけのことなのだから」

 

余りにも身勝手で、自分勝手な言葉。自分のしたいようにして、他人の都合など知りはしない。そんな彼女の有り様は正に幼い子供で、我が儘な女王のようだった。

 

「私の名前はレミリア・スカーレット。紅い悪魔にして紅魔館の主」

 

少女は名を名乗る。自身の冠するその大きな名を。

二人はここで初めて出会ったのだ。

 

「さあ、貴方の名前を教えてちょうだい──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご主人様(マスター)

 

 

レミリア(彼女)は皮肉った口調と微笑みで俺にそっと手を差し伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 




独自設定ですので、ざっくりとした用語解説を載せます。

『外来人』
我々のいる世界から幻想郷に来た人々のこと。

『聖杯』
Fateと違い、今作では魔力、霊力、妖力と言ったあらゆる力をほぼ無尽蔵に貯蔵できる物となっている(普通にぶっ壊れ)。聖杯については多く設定があるのだが、ネタバレになるので取り敢えずはこれだけに。

『キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』
Fateでは第二魔法すら使用できる人外の化け物であるが、ややこしくなるので今作では昔の凄い魔法使い程度に設定している。令呪契約システムを考案したと言う設定。

『令呪』
マスターが持つサーヴァントに対する絶対命令権。基本的には三画(三回)の命令が許されており、一回の命令につき手の平の紋様が減っていく。Fateでは間桐臓硯が考案しているのだが、この物語ではシュバインオーグがこの令呪契約システムを全て制作したことになっている。またFateでは聖杯からの魔力によって作られているが、今作では立花自身の魔力だけで作られている為、Fateのような大魔術的応用はきかない。令呪の効果そのものが催眠や洗脳に近いものとなっている。

『サーヴァント』
Fateを知らない人は使い魔みたいなものだとおもってもらえればいい。マスターと令呪による契約で繋がっており、今作では力の弱まったレミリアが立香から力を補う為の契約でレミリアがサーヴァントと言う形になっている。
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