東方を無理矢理FGOっぽくしてみた   作:Gasshow

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抵抗する者たち

レジスタンスのリーダーをしていた青い髪の娘が立香たちを紅魔館の住人と認識してから、話し合いが始まった。いや、正確には話し合いと言うわけではない。先ずは自分たちが信頼を得るための弁解だ。

何故紅魔館の住人である自分たちがここにいるのか、そして何故このような大事が起こったのか、それをパチュリーは子供でも分かるように優しく丁寧にかいつまんで説明した。その結果二つ分かったことがある。一つは目の前の青髪の娘がチルノと言う名前だと言うこと。

もう一つは彼女が──

 

「なるほどなるほど、つまり……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたいが最強ってことでしょ?」

 

とてつもない馬鹿だと言うことだ。

 

 

「「「「「…………………………」」」」」

 

立香たち一行と、チルノの横に座っていた大妖精が絶句する。しかしそれは仕方のないことだ。パチュリーは“猿でも分かる今回の異変”と言う本を出版してもおかしくない程、丁寧に内容を分解し、時には例え話を用いて誰にでも分かるように説明したはずだった。それなのに返ってきた答えがこれだ。更にたちが悪いのが……

 

「「流石は親分! 痺れます!」」

 

それに完全なる肯定を示す二人の男。そう、立香たちをここまで連れて来た男たちだ。何が流石で、何に痺れるのか皆目検討も着かないが、ともかくこの二人も話の内容を全く理解していない馬鹿だと言うことは理解できた。そしてそんな光景を見て腹が立たない筈のない人物が一人。

もう言うまでもないだろう。何せその人物は、目の前の馬鹿にでも分かるよう頭を働かせ、通常より倍以上の時間を説明に割いたのだ。しかし返ってきた言葉がこれで、追い討ちをかけるようにそれを煽るヤジが二つ。だから家の一つや二つを燃やしても仕方がないかもしれない。

 

「『日符・小さき(ロイヤル)──』」

 

このように。

 

「だ、駄目だよパチュリー!」

 

完全に据わった目で魔導書を開くパチュリーを立香は全力で止めに入った。立香も気持ちは分からなくもないが、もしこれが実行されてしまえば全てが台無しになる。それだけは避けねばならなかった。

そんな時、まるで救世主のような一つの証明が現れる。それはパチュリーの説明が全て無駄ではないと言う証明だ。

 

「え、えっと。ここに至る経緯と要件は分かりました」

 

このどう収拾をつければいいのか分からない空間に終わりをもたらしたのはチルノの横にいる緑髪の娘だった。彼女の一言でパチュリーはピクリと動きを止め、何事もなかったかのように座り直した。立香はいつものパチュリーに戻ったことに安堵し。ほっと小さく息を吐く。

 

「正式な自己紹介がまだでしたね。私は大妖精と言います。そして私の隣にいるのがこの集落のリーダーをしているチルノちゃんです」

 

「そうあたいが最強無敵の──」

 

大妖精と名乗った緑髪の娘は横で一人騒ぐチルノを無視して話を続ける。

 

「この状況、そしてここに来たメンバーを考えると貴方たちが嘘をついているようには見えません。私たちもその……幻想郷に帰りたいですし」

 

「つまり?」

 

「はい、貴方たちに協力したいと思います」

 

どうなることかと思われた交渉がトントン拍子に進んだことに立香は愁眉(しゅうび)を開いた。

大妖精はそんな立香に優しく微笑んだが、次の瞬間には困ったように眉を眉間に寄せる。

 

「協力をするのに不都合はないのですが、具体的に何をすればいいのか私には分かりません。紅魔館を攻め、その……聖杯を回収すればいいのは分かるのですが、この集落の戦力だけではやはり足りないと思います」

 

立香は大妖精の言葉に頷く。いくらここが人間たちの集落と言っても、その数はたかが知れている。しかも相手をするのはワイバーンやスケルトンと言った魔族だ。大妖精の言った通り、戦力が足りているとはお世辞にも言えない。

しかし嘆いていても現状は変わらない。ならばやるべきことは一つだった。

 

「ではこれからそれについての話し合いをしましょう。この現状をどう打破するかのね」

 

パチュリーはそう言った後、ちらりと立香たちをここに案内した男二人に目をやった。それを見ていた大妖精はパチュリーの意図を察したのか、彼等の方を向いて申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「ご、ごめんなさい。少し席を外していただいてもよろしいですか?」

 

“ここからは幻想郷の住人だけで話がしたい。”パチュリーの視線に含まれている意図はそれだった。

 

「「はい、(アネ)さん!」」

 

大妖精のお願いに元気よく快諾(かいだく)する男二人。しかしお願いをした当の本人である大妖精は困ったように目尻を下げた。

 

「えっと……その“(アネ)さん”って呼ぶの。止めて欲しいなぁ……なんて」

 

「「はい、姉さん!」」

 

「で、ですからぁ~」

 

なんと言うか、とんでもない集団に協力を持ちかけてしまったかもしれない。立香はそんな思いを抱き、少しだけ行く先が不安になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立香たちは先ほどまでいた部屋から一つ離れた別の小部屋に案内され、そこで話し合いをすることにした。そこは大きな正方形の机が一つ置いてあり、その一辺に三つの席が(もう)けられていた。まず、チルノが大妖精と横に並んで座り、その左にパチュリーとレミリアが、右に立香とルーミアが座る形となった。

こうして人が座ることにより、あまり広いとは言えない個室が更に狭く感じられた。

 

「では始めましょうか」

 

話し合いの口火をきったのは、いつも通りパチュリーだった。

 

「まず私たちがしておきたいのは戦力の確保。これはどうあっても必要だわ」

 

どのような戦いにおいても戦力は全てにおいての基礎値。相手との戦力差がまず戦いにおいての優劣を判断する。そう言う意味ではどうしても戦力を少しでも確保しておきたいと言うパチュリーの発言は的を得ていた。

 

「戦力って言っても、人間なんてもうほとんどいないよ? ご飯を求めて放浪していた私が言うんだから間違いない」

 

パチュリーの発言に対して自信満々にそう言い放つルーミア。それに立香は苦笑するしかなかった。

しかしそんなルーミアの言葉におずおずと遠慮がちに大妖精は言葉を返す。

 

「あの、人間さんなら実は他にも……」

 

「いるのかしら?」

 

レミリアは尋ねる。

 

「はい、私たちは人間さんたちの生き残りを保護するのが一番の目的で作られた組織ですから。そう言う情報は多く持っています。それに人間さんたちはよく森に隠れてらっしゃるので、妖精である私たちは捜しやすいんです」

 

大妖精の言葉に立香は首を傾げる。つまり彼女は『妖精だから森にいる人間たちは見つけやすい』と言っていることになる。どう言うことだと疑問符を浮かべていた立香に気がついたのか、パチュリーが補足の説明を始める。

 

「妖精は怪異とは全く異なる者よ。何と言えばいいかしら。そうね……“生きた自然現象”とでも言うのかしら。妖精たちは自然そのものであり、ある意味で別の生き物。理解したかしら?」

 

「いや、全然」

 

あまりにあやふやな説明に立香は全力で首を横へと振る。

 

「まあ確かに理解するのは難しいけれど、取りあえずは“自然そのもの”と言う解釈をしていればいいわ。例えばそうね……妖精って体が木っ端微塵に破裂しても死なないのよ」

 

「えっ!?」

 

パチュリーの言葉に立香は目を見張る。

 

「言ったでしょう。自然現象そのものだって。妖精が死んでも自然はなくなってないでしょ。だから死なない。詳しい時間は知らないけれど、数時間後には元通りよ。この世界ではどうなるのか知らないけれどね」

 

パチュリーが一先ず説明を終えると、それに付け加える形で大妖精が付言する。

 

「はい、私たちは自分たちの生息している場所の自然そのものが無くならない限り死にはしません。擬似的な死は体験しますけど。私たちはこれを“一回休み”と呼んでいます」

 

一回休みとはまた随分可愛らしい名前だなと立香は内心でどうでもいいことを思い浮かべる。

まるで子供の遊戯のような名付けに、妖精の特性がそのまま現れているようだった。

 

「ちなみにですが、恐らくこの世界で死んでしまった場合は一回休みになることなく死んでしまうと思います」

 

語尾は濁しているが、大妖精は半ば確信しているかのようにそう言った。

 

「そうなの?」

 

「えっと……はい。この世界の自然は確かに自然ではあるんですけど、根本的な部分は違うと言うか……」

 

言葉で説明するのが難しいのか、大妖精は口を開閉して言葉を探す。立香は何とか大妖精の言わんとしている意味を汲もうと彼女の言葉を脳内でで反復するが、何一つとして理解することは叶わない。

説明に苦しむ大妖精と、理解に苦しむ立香。そんな二人を見ていられなくなったのか、レミリアは肩をすくめ口を開いた。

 

「つまりは偽物と言うわけよ。ルーミアがここの人間では空腹を満たせなかったのと同じ理由ね」

 

レミリアから添えられた言葉で立香は納得する。つまりは聖杯により作られた自然の模型では妖精としての特性が十分に働かないと言うことだ。

 

「それでも一応、自然(にせもの)の力を借りて人間さんたちがどこにいるのか何となくは分かるんですよ」

 

「だからまだここに来ていない人間も分かると」

 

「はい」

 

パチュリーの言葉に大妖精は頷きで返す。

ならば戦力の確保は思ったよりも容易かもしれないと、立香は安堵の表情を浮かべるが、それに対してルーミアは思案顔で眉を潜めていた。

 

「ん~でも人間だけをかき集めて本当に勝てるのかー?」

 

そんなルーミアの言葉で立香は気がつく。これから自分たちが相手をしなくていけないのは魔族や魔物と言った強大な力を持つ存在。それに対して脆弱なただの人間だけを集めたとして勝てる見込みはあるのか? と立香は神妙な面持ちで脳内を傾けた。

「ルーミアの言うことは最もね。ただ人間だけを集めても勝てるわけないわ。そこから勝てる要素を少しでも増やしていかないと」

 

パチュリーはそう言ってから、人差し指を一本立てた。

 

「一つは作戦。まあ、これはおいおい考えていきましょう。二つ目は道具よ」

 

「道具?」

 

立香は尋ねる。

 

「ええ。村人たちの装備を見たかしら。あんなのは武器とは言えないわ」

 

そこで立香は魔女の古城へ行く前に起こった村人たちとゾンビとの戦闘を思い出した。一部の人間は剣や槍を持っていたが、大半は薪を割る為の斧や農作物を刈る為の大鎌であった。確かにこれでは多くの人数を揃えたとしても満足な戦いをすることはできないだろう。

 

「じゃあ武器を作ればいいってこと?」

 

「ええ。それも手持ちの武器だけじゃない。集団用の兵器をね。これは私たち魔女が担当するわ」

 

パチュリーの自信あり気な様子を見て、これなら装備の心配は大丈夫そうだと一つ頷いて解決したことを

 

「他には……」

 

立香が何か戦力を向上させられるような要素はないものかと脳内を探っている時、呟くようにそれは発せられた。

 

「……吸血鬼」

 

「ん?」

 

「吸血鬼の力があるわ」

 

そう言ったレミリアに立香は目を向ける。それに対し、レミリアも目線を重ねるように

 

「よく考えてみなさい。紅魔館が魔族を従えているのは吸血鬼の力よ。吸血鬼は魔を従える。恐らくフランは聖杯で力を上げているでしょうけど、私だってもう万全の状態に近い。魔族の百や二百は従えられるわ」

 

「でもどうやって?」

 

吸血鬼が間属を従えられることを立香は分かっていた。しかし、どうやればその魔族たちを集められるのか。その手段を立香は知らない。

 

「死体が多くある場所にいけばいいわ。そこならスケルトンやらゾンビやらを従えられるでしょう。滅びてしまった町やら村を巡ればおおかたは集められるはずよ」

 

それを聞いた立香はなるほど、と呟いてこくりと頷く。

 

「大体やることが決まったわね」

 

話し合いが一段落した所でパチュリーはそう言い、指を三本立てる。

 

「一つはまだここに来ていない人間たちの勧誘。二つ目は武器制作。三つ目は魔族たちの確保。これらが整い次第、紅魔館へ攻撃を仕掛けましょう」

パチュリーがこれからの方針をまとめて話し終えた所で、大妖精はパンと手のひらを叩き、思い付いたように口を開いた。

 

「では話し合いも終わりましたし。とりあえず今晩はここに泊まっていかれてはどうですか?」

 

立香はどうする?とレミリアへ問いかけの視線を向ける。それに対してレミリアは小さく頷く。

 

「いいんじゃない?」

 

「そうね、古城へは魔法を使えば一瞬で飛べるんだけど、折角だからそうしましょうか」

 

「えっ!?そうなの?」

 

さらっと流されたパチュリーの言葉に対し、立香は反射的にそう叫んだ。

 

「ええ、自分の作った工房に飛ぶくらいわけはないわ。だから帰りは楽々よ」

 

パチュリーのそんな言葉を聞いて立香は思った。やっぱりパチュリーは便利だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の集落に一晩泊まることになってしばらく。夕食を食べ終え、各々が個々に与えられた部屋で自分の時間を過ごす中、立香は集落の端にある平地に寝転がっていた。平地と言ってもそれほど大きなスペースではなく、ただ周囲に何もない平々凡々とした場所だった。周囲に障害物はなく、風も吹いていない。立香の他にあるのは小さく声を発する虫たちの鳴き声だけだった。

しかしそんな立香を訪れる小さな人影か一つ現れる。

 

「あら、ここにいたの」

 

その人影の持ち主は立香の側に立つと、一言そう言って彼の真横に腰を降ろした。

 

「よく見つけれたね、レミリア」

 

立香は横たわっていた体を起き上がらせ、レミリアと同じように地面へと座る。

並ぶ形で座ることになった二人は、そのままお互いに視線を交わす訳でもなく、どこか空虚を見るように目の前の地面を呆然と見つめていた。

 

「貴方とは令呪で繋がっているのだから、見つけること自体はさほど難しくないわ」

 

そう言えばそうだったね、と立香は小さく返事をして優しく口許を結ませた。

 

「星が見えるわけではないでしょうに」

 

「うん。でも綺麗だよ」

 

立香はそう言って下げていた目線を上へと向ける。視界ほとんどが樹木の枝や木の葉に覆われていたが、その隙間から入る月明かりが、まるで淡い太陽の光のように地面へと差し込んでいた。

 

「それで、レミリアは何でここに? 多分、用があって来たんだろうけど」

 

ふと今気がついたのか立香はレミリアへとそう問いかける。

ここ数日で多少なりとも知り得たレミリアの性格から、立香はレミリアがただ気まぐれで自分の元を訪れたのではないかと言う考えが念頭に過ったが、それは次の瞬間あっさりと否定される。

 

「一つ言っておきたいことがあったのよ。いえ、釘を差しに来たと言った方がいいかしら?」

 

レミリアの言葉に立香は首を傾げる。咄嗟に思い付く限り、思い当たることがなかったからだ。

そんな立香を顔の向きは変えず、横目でそれを目視したレミリアは悪戯気に口角を上げた。

 

「心当たりはないみたいね。あんなに堂々と浮気しといて」

 

「う、浮気!?」

 

立香は大きく目を見開き、反射的にレミリアの方へと顔を向けた。

 

「ええ、今日の出来事を思い出してみなさい」

 

動揺しながらも頭を働かせ、立香は今日の出来事を振り返る。古城での出来事、そしてそこから外へ出でこの集落へたどり着くまでの出来事。そうして何度も今日と言う日を頭の中で繰り返していく。そこでふと今まで通り抜けていた“心当たり”の網に一つの出来事が引っ掛かった。

 

「……まさかルーミアのこと?」

 

それは今日、正式に契約を結んだもう一人のサーヴァントのこと。命を助け、その責任を取る形で令呪で繋がることとなった常闇の妖怪のことだった。

レミリアは立香の答えに言葉や仕草で肯定するでもなくただ半目で睨むように彼を見つめるだけだった。しかしそれが最早、肯定を意味していることは誰の目から見ても明らかだった。

 

「でもあれは仕方なく……」

 

立香は焦った様子でレミリアが納得するような言葉を探すが、冷静を失った頭ではその答えを導き出せるはずもなく、開いては閉じてを繰り返し、体の奥で()った言葉を何度も喉から出し入れさせる。

レミリアはそんな立香の様子をおかしく思ったのか、くすりと綻ぶような笑みを浮かべる。それから今まで回すことのなかった首を横へと回し、立香を顔の正面で捕らえる。

 

「私だって頭では理解しているわ。でも事実は事実よ。貴方は浮気者で私は被害者。それは変わらないわ。ねえ色男さん」

 

レミリアにそう言われ、立香は困ったように苦笑し、頬をかく。

 

「ただの人間である貴方が、夜の王である私と契約しておいて、まさか他の怪異と契約するなんて、私を侮蔑しているとしか思えないわ」

 

レミリアは一度言葉を切ると、自分の顔をグッと立香へと寄せる。

 

「いいかしら?貴方と最初に契約したのはこの私。それを忘れて、あの“ルーミア(まっくろくろすけ)”ばかりにかまけることがないように」

 

立香はそこで理解した。ここに着た理由である“釘を差す”とレミリアが言った意味を。

どうやらルーミアとの契約はプライドの高いレミリアを刺激してしまったようだ、と立香はこの状態を作り出した原因に納得した。

そして、そこでようやく返すべき言葉を見つける。あれだけ探しても見つからなかった言葉が、今は何の苦労も見せずに目の前にあった。立香はそれに手を伸ばし、迷うことなく掴んだ。何故ならそれは嘘偽りのない彼の本心なのだから。

 

「大丈夫。レミリアを蔑ろにするわけないよ。だってレミリアは俺が最初に契約を結んだ相棒(サーヴァント)なんだから」

 

立香はそう言ってニッと無邪気な笑みを浮かべる。混じり気のない、心から生まれた素直な思いを言葉に乗せて立香は笑う。

レミリアはそれを見て満足気に表情を変え、立香に向けていた顔を再び正面へと戻す。

それから口を開いた。

 

「貴方は私のモノよ。それを今一度、頭に刻んでおきなさい。そうしたら──」

 

それに続く言葉を彼女は立香へと発する。その言葉はどう言う意図があるのか。どこまでが本心か分からなかった。しかし、ただどこか暖かみのある言葉なのは間違いがなかった。そんな不確かで掴み所のない彼女の言葉はこんなものだった。

 

 

 

──私も貴方のモノになってあげる。

 

 

 

立香は放心したようにポカンと軽く口を開けてレミリアを見つめる。両目もその間抜けに開かれた口と同調するように丸く形を変えていた。

レミリアはそんな立香の顔を一頻り眺めた後、満足したのかすっと静かにその場で立ち上がった。

 

「もう寝るわ。お休みなさい」

 

そして就寝の挨拶をその場に置いて、集落の方へと足を向ける。

 

「え? うん、お休み」

 

反射的にそう返したものの、立香の顔は未だ間抜けさが微塵も抜けきっていなかった。

 

 

 

 

静かで穏やかなそんな夜。差し込む月明かりがその場に留まり、地面を淡く照らし続けた。それはきっと太陽が空に昇るまで続けられるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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