来た道を
「村長、これは?」
立香はその様子を眺めていた村長を見つけると、彼へと近より声をかけた。
「おお、お主ら帰ってきたのか。怪我は無いか?」
村長は驚いた声をで立香たちを歓迎した。彼は立香たちへどこへ行っていたのか、何をしたのか、そして向かった先で何があったのかは一切聞かなかった。
「はい、お陰様で。ところでこれは何を?」
立香は荷台へ荷物を乗せている村人たちへ目線を送りながら尋ねた。
「なに、この場所が
「避難って……宛はあるんですか?」
立香は尋ねる。
「ああ、実は行き場所のない人間たちを集めて魔族たちに抵抗しておる集団があるのじゃ。そこへ向かおうとしておる」
立香はこの世界にもそんな集団があったことに驚き、「へぇ」と感嘆の息を漏らした。
「前々から誘いは受けておったが、リスクを犯してまでそこへ向かおうと言う気はしなかった。しかし今回の件で逃げ場を無くし、決心が固まった」
村長の言葉を聞き、立香は今からこの村人たちがいつ死んでもおかしくない綱渡りをしようとしていることに気がついた。ここら一帯を歩いて分かったことだが、決してこの世界は不用意に出歩いていい場所ではない。ここに帰ってくるまでも、片手で数えられる回数ではあるが、魔族と戦闘を行った。まだレミリアと二人だったからこの回数で済んではいるが、数十人単位だともっと敵に見つかる回数は多くなる筈だ。
「……レミリア」
立香は隣に立っているレミリアへそっと目配せをした。レミリアは立香の言いたいことを察し、軽く溜め息を吐いた。
「仕方がないわね。それが貴方の意向というなら従ってあげるわ。私としてもその集団に興味が無いわけではないしね」
レミリアはそう言うと、一歩前へ足を運び、村長の前へ移動した。
「ご老人。もし良ければ私たちもその引っ越しに同行してもいいかしら?」
レミリアの言葉を聞いた村長は目を見開かせ、嬉しそうに口を開いた。
「おお、それは願ったり叶ったりじゃ。お主らが居れば移動中、魔族に襲われても心配はいらんからの」
そうして村長はよろしく頼むと言ってレミリアへと手を伸ばす。レミリアがその手を掴もうとしたところでふと、横から野太い声が割り込んだ。
「おい、少し待ってくれ」
声のする方へ顔を向けると、そこにはがたいの良い大きな男がいた。格好は他の村人たちと何の代わりもない、麻布で作られた質素な服装だったが、それを押し退ける髭と身長が存在感を浮き立たせていた。
「村長、俺は反対だぜ」
男はレミリアと村長の側で立ち止まると、ジッとレミリアを睨んだ。
「……ご老人、彼は?」
「こやつは村人の一人じゃ。名をバルド。普段はわしの手伝いをしておる年長者じゃ」
レミリアは品定めするかのようにバルドを上から下まで見渡す。バルドはその視線を不愉快そうにしながらも無視して立香を見下ろした。
「確かにあんたたちは村を救ってくれた。今、俺の命があるのもお前らのお陰かもしれねぇ。しかしそれとこれとは別だ。俺はよくも知らねぇ奴らを信用する程甘くはない。それが吸血鬼ともなれば尚更だ」
確かに、と立香は思わざる負えなかった。自分たちは勝手に村人たちの危機を救っただけであり、そして何よりもまともに話をしたのは村長だけ。更にはその片割れが紅魔館の現主である吸血鬼と同じ種族とあっては心休まりはしないだろう。
「……バルド。お主の気持ちは分からんでもない。しかし彼らがわしらに同行してくれれば道中の危険はぐっと減る。頭数の少なくなったわしらが魔族と会えば一度全滅。村長として危険の少ない道を通るのはわしの義務じゃ。ここはどうか気持ちを納めてはくれんかの?」
村長はバルドの大きさ、存在感に全く怯むことなく彼の目の前へ立ちそう進言する。バルドはしばらく村長を見やったが、ケッと一つ悪態をついて元の場所へと戻っていった。
「すまぬの。バルドは妻と子供を紅魔館のやつらに殺されとる。だから吸血鬼に対して他の者より敏感なのじゃ」
そう言う事情があったのかと立香は納得する。自分たちが着いていく方が利点の多いことは頭で納得しているが、心では納得していないのだろう。それであの態度になったのかと、立香は合点した。
「だが、これはバルドだけの話ではない。村人のの殆どがお主らを怖がっとる。だからそれを頭に入れた上でこれから言動には気を使ってほしいのじゃ」
立香はふと荷台の準備をしている村人たちを横目で見た。そこには子供たちは勿論のこと、大人の女性や男衆でさえも怯えた目でこちらを見ていた。
「分かりました、村長」
同行を願い出たのは少し早計だったかなと立香はこの先感じるであろう息苦しさを予感し、僅かに憂鬱な気分となった。そしてそんな立香の様子をレミリアは相変わらず呆れた様子で見つめるのだった。
立香たちが同行を願い出て数時間後、村人たちの移動は始まった。移動の形としては、村長を先頭に馬に引かせた七台の荷台を一列で進むものだ。それぞれの荷台には雨が降っても大丈夫なように一台一台キッチリとした麻布の壁と屋根が取り付けられていた。そして前方の三台には荷物が、後方の四台には人を乗せるスペースが設けられていた。そしてその周囲を男たちが取り囲むようにして移動する。立香たちには一番最後の荷台が割り当てられた。当然、二人っきりだ。恐らくそうして姿を隠していないと村人たちに怖がられてしまうだろうと言う配慮だと言うこは言うまでもない。
「何か、凄く悪いことしてしまったね」
立香は馬車の震動に揺られながら、対面に座るレミリアへとそう言った。それは数限りある荷台を二人だけで占領してしまっている故の言葉だった。
「仕方がないじゃない。どうやら村人たちは私たちを──いえ、私を随分と怖がっているようだし。こうして気持ちだけでも隔離しておかないと、引っ越しどころではないのよ、きっと」
レミリアは目を瞑りながら澄まし顔でそう言う。
「そうだけど……辛くないの?」
それはレミリアが村人たちに恐れられていることについて彼女自身がどう思っているのか? と言う質問だった。
「何が辛いのかしら? 貴方は知らないでしょうけど、怪異にとって恐れられることは喜ばしいことよ。怪異は基本的に人間たちの恐怖から生まれる。だから人間たちに恐れられることは私たちにとってちょっとしたデザートを食べていることと同義なのよ」
「へぇ、そうなんだ」
立香は知らなかったと軽い頷きを見せる。その様子を片目だけ開けて眺めていたレミリアは唐突に立ち上がり、胡座をかいている立香の膝を頭に寝転がった。
「私は少し寝るわ。森を抜けたから馬車の振動もそこまで酷いものではなくなったし、今なら休息も取れるでしょう」
立香は仕方がないと言った風にレミリアの頭から帽子をどけ、彼女の頭を優しく撫でる。レミリアもそれをどうこう言うことなく、目を閉じた。
レミリアはあの美鈴に負けた夜以来、立香に対する態度を軟化させた。前ならきっと勝手に頭を触るなと手を払われていたが、今ではそんなことなく、立香に対し多少の融通は効くようになっていたのだ。何がレミリアをそうさせたのか、立香に思い当たる節はないが、こうしてレミリアとの距離を縮められたことに、彼は嬉しさを感じていた。
立香はレミリアの頭を撫でながら、ふと数時間前のことを思い出す。それは立香とレミリアが目覚め、村へと戻り始めた時のことだ。
『貴方が多少は使えることが分かったから、ふ菓子から駄菓子に呼び方を変えてあげる。光栄に思うことね』
まだ“駄菓子”のレベルではあるが、レミリアからの信頼を勝ち取ったと思えばそれは立香にとって喜ばしいことだった。
立香は膝の上で寝息を立てるレミリアを見て、優しく微笑み、そっと自分も目を閉じた。
「魔物だ! 魔物が出たぞ!」
場所の外から発せられた叫び声で立香とレミリアは目を覚ました。立香は寝起きで思考が定まらないながらも、荷台の後方へ這って移動し、麻布の仕切りを手で退けると、顔だけを外へと出した。暗闇でよく見えないが、武器を持った大人たちが先頭の方へと大急ぎで向かっているのだけは理解した。立香は尋常ではない外の様子に何かあると察し、より大きく荷台から身体を乗り出す。
「何かありましたか!?」
立香は後ろで武器を構えている男の村人へと声を張って尋ねた。男は立香の声にビクリと方を震わせたものの、次の瞬間にはその問に答えるべく後ろへ振り返った。
「ま、魔物だ! 魔物が現れた!」
立香はついに来たかと外へと乗り出していた身体を荷台へと引っ込ませ、荷台の中へと戻る。
「レミリア、いける?」
「もちろんよ。しっかり休息も取れたし、準備運動がてらにはなるでしょう」
立香はぐっと背伸びをするレミリアへ頷くと、勢いよく荷台の外へと飛び出した。レミリアもその後へと続き、立香の後ろへ低空飛行しながら着いていく。完全に停止した荷台をどんどん抜いていき、戦いの雄叫びを頼りに目的の場所へと進む。するとそこには全身を変色させ、気味の悪い動きをしながら襲いかかる人形の生物と戦う村人たちの姿があった。
「あれは……ゾンビ?」
「ええ、ゾンビね。スケルトンと違って普通の人間でもまだ余裕を持って倒せる種族ではあるけど、いかんせん数が多いわね」
レミリアの言った通り、目に見えるだけで、ゾンビの数は戦っている村人たちの倍はいる。今はまだ戦力が拮抗しているが、後から後から現れるゾンビたちを相手にしていれば、必ず息切れが訪れる。早くどうにかしないと。そう思った立香は、いざ戦闘を行おうとレミリアへ声をかけようとしたところで、彼女から待ったがかかった。
「駄菓子、折角だから練習よ。私に戦闘の指示を出しなさい」
「えっ、指示を?」
思いもしていなかったレミリアの言葉に、立香は戸惑いを口にした。
「そうよ、戦闘を行っている私より後ろで見ている貴方の方が周囲をよく見渡せる。あのワイバーンの巣を通った時のことを思い出しなさい。ただそれが空中戦でなくなっただけ。次に私がどの敵を倒せばいいのか、どのタイミングでどれくらい大きな規模の攻撃をすればいいのか、貴方が指示を出すの。理解したかしら?」
レミリアはそう言いながら数歩だけ立香の先を行き、それから首を回して後ろを振り返った。
「ただ勘違いしないことね。貴方が私を使っているのではないわ。私が貴方を使っているの。基本的に私は人間を使えない種族だと思っている。これで貴方が使える人間かどうか試してあげるわ」
相変わらず高慢な物言いだが、立香はそんなレミリアの態度に引っ掛かりすら覚えなかった。それは自分がレミリアの戦闘に指示を出すことを許された嬉しさが潤滑油となっていたからだ。これはただ単に彼女が敗北したことで生まれた改善策なのかもしれない。しかし、少なくとも自分を信頼してくれなければ口にしなかった提案。立香はそのことが嬉しくて、思わず身震いする。それから頬を両手で挟むように叩き、気合いを入れた。
「……分かった!」
立香はレミリアの提案を了承し、そして戦闘をしている村人たちを見渡す。状況は悪くない。基本的に知能が無いと思われるゾンビたちに対して、村人たちはしっかりと連携が取れており、今のところはさして問題がないように思える。しかし個々の戦闘力や、頭数では完全に負けてしまっており、更には村人たちが戦いに不馴れなことも端から見ているだけで分かる。悪くはない、ただ決して安心できるような場面ではなかった。
「レミリア、殲滅スピードよりこちらの被害が少なくなるように立ち回ろう。まずは数で負けている村人たちを助ける!」
「了解したわ、
そうして彼らの戦闘は始まった。
その男はつい最近、スケルトンに母親を殺された男だった。魔族が、怪異が憎くて憎くて仕方がなく、その憎悪を源にゾンビと戦っていた。しかしふと自分が三体のゾンビをに囲まれていることに気がついた。そして唐突に自身の命、その終わりが見えたのだ。思考が現実に戻される。憎悪と言う麻薬が切れる。身体が自分の意思に関係なく震え出す。男はもう駄目だと絶望の表情を浮かべ、腰を抜かした。そんな彼にゾンビたちは手を振り上げ、もう数秒後にはその命が刈られようとしたそんな時……。
「…………えっ?」
次の瞬間には彼を囲っていたゾンビたちが細切れとなって地面へと落下した。唐突に引き離された自分の“死”に呆然とするしかない村人。そんな彼がふと上を見上げる。そこで見たのは深紅の槍を持ち、毅然と立つ幼い少女の姿だった。
──綺麗だ。
男はそう思った。闇に浮かぶ二つの瞳と禍々しい槍がそれぞれ紅色に光り、揺らめく様は幻想的に思えた。本来なら憎悪と畏怖の対象である背中から生えるコウモリの羽が、今は天使の羽のような尊いものにすら感じる。男は少女に見惚れていたが、しかしまた彼女は現れた時と同じように、消えるような速さでその姿を消した。男はその事に対して驚くことすらできず、ただ周囲の戦闘音を他人事に聞き流すことしかできなかった。
立香とレミリアが戦闘を始めてから数分。ゾンビたちは一気にその数を減らし、今ではもう一方的なまでの戦力差となっていた。立香の的確な指示により、軽い怪我人こそはいるものの、死者、重傷者は誰一人として出していなかった。
「すげぇ……もう戦況がひっくり返った」
村人の誰かがそう呟く。そう、それほどまでに立香とレミリアが参戦してから状況は有利になった。そうしてあまりにも上手くいって舞い上がっていたからだろう。立香は後ろから忍び寄る人影に全く気づけなかった。
「ッ! 駄菓子、後ろよ!」
遠くから気配を察知したレミリアは立香へとそう叫ぶ。立香はハッとして後ろを振り向いた。そこには今にも襲いかからんとしているゾンビが一体、立香の背後で身構えていた。突然のことに思考が停止し、身体が硬直する立香。レミリアは近くにいたゾンビを腕の払いで弾き飛ばし、手に持った槍を構えた。しかしその瞬間察する。
──僅か一秒だけ間に合わない。
しかしそう思ってもレミリアには槍を投げる以外に最善の手段はない。そしてレミリアは己を恥じた。戦闘に夢中で彼に近づく危険に気づくのが遅れたことを。しかしただレミリアは慣れていなかったのだ。人を気にかけて戦うことに。今までレミリアが戦ってきたのは自分一人だけで解決する戦闘。自分だけを気にしていればよかった戦闘。だからいつもの癖でレミリアは立香に指示は出されているものの、その司令塔を守ると言う概念をあまり意識できていなかったのだ。
しかし今さら気づいても遅かった。刻一刻と、立香へと死の手が伸びる。しかしそれは一人の男の手により断ち切られた。
「ふん!」
ぶおんと音を鳴らした剣が空気と共にゾンビの胴体を切り裂く。身体が二つに分断されたゾンビがそれでもしつこく立香の方へと手を伸ばす。しかし更にそのゾンビの頭上に容赦ない一裂きが舞い降りた。そうしてやっとゾンビはやっと活動を停止させた。
「バ、バルドさん!」
立香は驚きながら、自身の身を守った男の名前を呼ぶ。
「気をつけろ、坊主。まだ戦闘は終わっちゃいねぇぞ」
「はい、ありがとうございます!」
立香はバルドの背中へ感謝の言葉を送り、大きく安堵の息を吐いた。バルド立香に背を向け、戦場へと戻りながら手を振りそれに答える。たまたまの偶然かもしれないが、自分たちを認めていなかった彼がこうして守ってくれたことを立香は素直に嬉しく感じていた。
「大丈夫かしら?」
いつの間にか立香のすぐ側まで戻っていたレミリアがそう彼に問いかける。
「うん、ごめん。もう油断しない。気を引き締めるよ」
立香は戦場を見据えながら、握りしめた拳に力を入れる。今度こそ、この戦いを終わらせる為に。
ゾンビたちに無事、勝利した村人たちは、見晴らしの良い草原で夜営をすることにした。太陽の沈まないこの世界が夜なのかどうかは分からないが、しかし村人たちからすれば今が夜と言う時間帯になっているらしいのだ。そうして立香とレミリアは村長に呼び出され、とある薪の前で暖をとっているところだった。二人を呼び出した村長と、そしてバルドと共に。
「今回も助かった。我々だけではかなりギリギリの戦いだった」
村長は座りながら対面にいる立香へと頭を下げる。
「いえいえ、お役に立てて何よりです。それに今回は自分も助けられたので」
立香は身体を少し横へずらし、バルドの正面を位置取り、頭を下げた。
「バルドさん、ありがとうございました。あそこでバルドさんが助けてくれなかったらと思うとゾッとします」
「いいってことだ。あそこにたまたま俺がいただけ。それより出発前はあんなこと言って悪かったな。やっぱり俺たちだけじゃこの先、進んで行けそうにない。同行感謝してるぜ。村人たちにも何とかお前たちを受け入れられるよう言ってみる」
「本当ですか!? ありがとうございます」
立香は喜色満面で礼を言う。どうやらバルドは先程の戦闘で立香たちを認めたようで、素直に自身の過ちを謝罪した。こうして彼らが意識や認識の擦り合わせを終え、話題は今後の話へと移行する。
「さて、まだ旅は始まったばかりじゃ。このペースだとこれから目的地まで3日以上は掛かる。それまでは気は抜けん」
その言葉を聞いたレミリアが忘れていたものを思い出すように尋ねた。
「そう言えば目的地は一体どんな場所なのかしら? 人の集まりだと聞いてはいるけれど、まさか町でもあるなんて言わないでしょう?」
「ああ、目的地は山の中腹だ。俺たちと同じように、木々を隠れ蓑として使っているんだろう。位置を正確に示した地図でもないと、なかなか見つけられない場所だ」
村長は懐から折り畳まれた地図を広げてレミリアへと手渡した。立香もレミリアの近くへと行き、それを横から見る。村長の言った通り、目的地は山の中腹にあり、ここを進むとなると馬車を乗り捨てる必要があるかもしれない。レミリアは一頻り地図を眺めた後、それを村長に返した。そしてその時だった。
「…………村長、村人たちを馬車の中へ戻しなさい」
レミリアの突然の言葉に村長はどうした? と言わんばかりの表情を浮かべる。
「魔力が感じられるわ。それもそこそこ大きなものが幾つも」
レミリアの言葉を聞いた村長は勢い良く立ち上がり、周囲に聞こえるよう大声を発する。
「敵襲じゃ! 皆、準備せよ!」
それを合図に、周囲から忙しない足音が響く。バルドさんも立ち上がり、馬車の一つへと駆け出した。
「……レミリア、僕たちも」
準備をしよう。立香がそう言いかけたところで彼女からそれを中断させられるように口を挟んだ。
「いえ、もうそうしている時間もないわ」
レミリアがそう言った時、ゾワリと立香の背筋に危険信号が走った。大きく目を見開かせ、焦ったように周囲を見渡した。立香の目に映ったのは黒いコートを羽織り、大きな三角帽子を深くかぶった集団が、大巻ながらに周囲を囲んでいる状況だった。その分かりやすいシルエットから立香は自分たちを囲んでいる集団の正体を看破する。
「ま、魔女!?」
立香の知識にある、幼い頃から聞いていたお
そうして村人たちも立香も動けない中、魔女たちの集団が横へと割れた。人二人分程の隙間が空き、そこから一つの人影が現れる。
「まさか貴方がいるなんて、思いもしなかったわ」
それは恐らく魔女だった。
「この一年、貴方を探したけれど、終には見つけることはできなかったもの」
周囲の魔女たちとは違い、一見そうは見えない格好をしていた。
「久しぶりね……いえ、貴方にとってはそうではないのかしら」
長い紫髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服と帽子を身に纏った垂れ目の少女。
「レミィ」
それでもその風体は紛れもない魔女だった。
・以下小ネタ
立香?「いけ、レミリア! でんこうせっかだ!」
レミリア(何!? その指示!)