東方を無理矢理FGOっぽくしてみた   作:Gasshow

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魔女の古城

立香とレミリアは魔女に包囲されながら、村人たちと共に、草原を馬車で移動していた。その馬車の最後車、その中の荷台で彼女たちは向き合っていた。そう、先程出会ったパチュリー・ノーレッジと言う魔女に。

どうやら彼女たち魔女は立香たちに敵意が無いらしく、ただ人間の集団が草原を進んでいることをいぶかしんで接触を図っただけのようだった

 

「それで、レミィ。貴方の隣にいるこの男を紹介してもらえないかしら? どうやらこの世界の住人ではないようだけれど」

 

馬車の振動に揺られる中、パチュリーはレミリアへとそう言う。

 

「ええ紹介するわ、パチェ。この男は藤丸立香。私がこの世界に向かおうとする直前で出会って、令呪による契約を結んだ外来人よ。ここまで言えば貴方ならもう分かるでしょ?」

 

パチュリーはちらりと立香の手の甲を見た。

 

「なるほど。ずいぶんと不幸ね、貴方。よりにもよってレミィに捕まるなんて」

 

立香はそれに苦笑で返すしかなかった。

 

「私はパチュリー・ノーレッジ。紅魔館の住人でレミリア・スカーレットの友人よ。もう気づいているでしょうけど種族は魔女、年齢も四百歳くらいかしら? 正確な数字は忘れたわ」

 

外見と実年齢が一致しないことを知るのは、レミリアでも一度経験したことだが、それでも立香は驚かずにいられなかった。一見、十代後半にしか見えない少女が、自分の何十倍も生きていると思うと、その言葉の現実味の無さと、しかし事実なのだろうと認めなければいけない認識力との瀬戸際を曖昧にされ、何か複雑な心境になる。

 

「それでパチェ。貴方はどうしてここに? 私はてっきり、紅魔館のメンバーとして私に敵対する立場なのかと思ったけれど?」

 

「紅魔館へ行ったのね?それなら話が早いわ」

 

立香が気持ちの整理を終えるのを待たずに会話は進んでいく。

 

「レミィ、貴方は疑問に思わなかったかしら? あの美鈴が紅魔館の主導権を握る人物が変わったと言うだけで、あんな簡単に他の人物へ付き従うなんて。あの娘なら、例え館を捨てることになろうが貴方に着いて行ったはずよ」

 

立香はレミリアと美鈴との関係を正確には把握してはいない。ただ館の主と、その館の門を守る門番と言う、言葉で表すことのできる表面的な部分しか知らないのだ。しかしパチュリーがそう言うのなら、二人は単なる主従関係を越えた絆で結ばれているのだろうと、思うのと同時に、ではなぜそんな二人が今回、争うことになってしまったのだろうか? と言う疑問が立香の脳天を突っつく。

 

「恐らく気づいているでしょうけど、今回の事件は何者かによる聖杯を使った記憶模倣世界の作成、および支配。その願いに取り込まれた者たちの一部は、何らかの精神操作とも言うべき影響を受けているのよ」

 

「なるほど。つまり聖杯を使った人物が、聖杯を取り込んだ人物に精神的な錯覚を与えられると言うことね」

 

「ええ。もしくは聖杯に割り当てられた役職に精神が引っ張られているか。聖杯により、美鈴の立場が紅魔館の門番と割り振られた以上、その紅魔館の主に割り振られた何者かに忠誠を誓わなければ、と言う錯覚が働いているのかもしれない。とにかく、いくら私たちが声で説得しようとも、彼女たちの立ち位置が動くことは難しいと言うこと」

 

パチュリーの説明を聞き、そこで立香に一つの疑問が芽生える。

 

「と言うことは、パチュリーさんには聖杯の力が及ばなかった、と言うことですか?」

 

パチュリーは疑問を口にした立香へと視線を移す。彼女の柔らかい声にふさわしい、半分ほど開けられた眠たそうな目に、立香は思わず自分がそこへ吸い込まれてしまうのではないかと幻覚させられる。

 

「レミィのマスターなのでしょう? ならパチュリーでいいわ、敬語も不要よ」

 

立香は一瞬、呆けたような表情を見せたが、少しして「分かったよ、パチュリー」とそう笑顔で返す。パチュリーもそれに頷き、薄く笑みを浮かべた。

 

「では疑問に答えるわ。それはNOよ。私にも精神操作が働いた。と言うよりは、精神操作をかけられそうになって、私が反射(レジスト)したと言うべきかしら。こう見えても私は優秀な魔女。幾ら強力だと言っても魔術的な側面が強い聖杯の精神操作なら、全力で挑めば抵抗くらいはできるわ。ただレミィみたいな因果操作はできないから、聖杯に取り込まれると言う未来は避けられなかったけれど」

 

レミリアの友人と言うからに、凄い人物であるのは何となく察していたが、まさかこんな世界を造り出してしまう聖杯の力に対抗できる程の人物だとは思っておらず、立香は大きく目を見開かせた。

 

「それで、パチェ。実はもう一つ聞いておきたいことがあるのだけれど。貴方、聖杯に取り込まれてから今日この日まで何をしていたのかしら?」

 

レミリアは尋ねる。それは立香も聞いておきたいことであった。どうやらパチュリーは、あの魔女たちのリーダー的な立ち位置らしく、ならばどういう経緯で魔女たちを取り仕切るようになったのか、立香としては知っておきたい情報だった。

 

「私が何をしていたのか……確かにそれは重要ね。では話しましょう。私、少し前に精神操作は反射できたけれど、聖杯に取り込まれる未来は変わらないと言ったわよね。だから私も紅魔館のメンバーとして取り込まれたらしく、この世界に現れた際、転移させられた場所は紅魔館だったの。私が住まいとしている紅魔館の大図書館。目覚めた時、私はそこにいたわ」

 

パチュリーは一つ呼吸をして続ける。

 

「それからしばらくは紅魔館のメンバーとして振る舞っていて、何とか解決するための策や準備を進めていたの。でもすぐに私が精神操作を受けていないとばれて、命からがら逃げたしたのよ。それからはこの世界の魔女たちを集め、反撃の機会を伺っていた。そこに私たちの拠点近くをうろついていた集団を見つけて、行ってみれば貴方たちがいたと言うわけ」

 

大雑把(おおざっぱ)な説明ではあるが、立香は大体の内容を把握できた。要はしばらく紅魔館に潜んでいたが、ばれて逃げ仰せ、対抗できる力を蓄えてきたと言うことだ。

突如舞い込んできた仲間に立香が幸先の良さを感じていると、パチュリーがふと何かを感じ取ったのか、終始伏せ気味だった目線を上へと上げた。

 

「もう少しお互いに話が必要でしょうけど、取り敢えずそれは後にしましょう。どうやら私たちの拠点に着いたようだし、そこで話しの続きができるわ」

 

そう。実のところ、この一団は当初、目指していた人間たちの生き残り(レジスタンス)の集落ではなく、パチュリーたち魔女の拠点へと向かっていた。それは安全地帯で一晩過ごせると言う事実と共に、あわよくばそこに留まり続けることが出来るかもしれないと言う期待もあったからだ。

 

「案内するわ。この時代、過激を極めた魔女狩りから逃れるため、魔女たちが幾重にも張った幻覚魔術や、人払いの結界の中に造った安全地帯、『魔女の古城』を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立香が馬車を出てすぐ目の前に飛び込んで来たのは、古ぼけた小さな城だった。構造的には恐らく三階建てで、城と言うよりは横に広い館と言う印象だった。そして城の周りは人間二人分程の高さがある城壁に囲まれており、城の前には何もない広間が広がっていた。憶測ではあるが、本来そこは庭だったのだろう。一部、不自然な盛り上がりがあるが、そこはもう雑草で他の場所とあまり区別のつかない地面となっていた。

村人たちはそこの広間に馬車を止め、一旦足を休めることになった。魔女たちは誰一人、一言も話さずに各々城の中へと消えていった。それは何とも不気味な光景で、この魔女たちがまるでからくり人形のように思えてしまった程だ。

そして残った立香とレミリアも、パチュリーに連れられ城の中にある廊下を三人で歩いていた。これから中断してしまった話の続きをするために、彼女の部屋へと向かうためだ。

 

「ねぇ、パチュリー。あの魔女たち、何か凄い無口だったんだけど、大丈夫なの?」

 

無言で廊下を歩いていた立香だったが、魔女たちと出会ってから長い間気になっていたことを思わず口にした。

 

「彼女たちも警戒しているのよ。言ったでしょ。本来この時代、ヨーロッパは魔女狩りの最盛期を迎えていた。国の軍隊からそこらにいるただの村人まで、魔女を見つけ次第殺していたのよ。この世界がどこの土地をモデルに創られた世界かは分からないけれど、もし魔女狩りの盛んだったドイツの風習も混じっているならば、彼女たちが見せたあの態度は当然のものよ」

 

「パチュリーもこの世界がどこを基準にして再現されているか分からないの?」

 

「分からないことはないけれど、全ては分かってないの。この世界は恐らく、体験でなく知識で創られた世界。風景画を描くのでも、実際に見て絵を描くのと、ただどんな場所なのか聞いて絵を描くのとでは違いが出てくるでしょ? だからその当時を正確に模倣できていないのよここは」

 

なるほど、と立香は納得した。ではこの世界を創った張本人は、レミリアたちと違い、実際に西洋に住んでいたわけではないと言うことになる。本や話、またふとした印象で西洋を再現したのだろう。

 

「あとは魔女って元々内気な性格が多いのよ。本来はああやって集団を成す種族ではないの。部屋に引き込もって研究を続けるのが主なライフワークよ。私も含めてね」

 

立香は現代で言う数学者みたいな感じだろうか、とそんな少し的外れなことを思った。

 

「さて、話をしているうちに着いたわ。ここが私の部屋よ」

 

長い廊下の突き当たり。そこには途中途中で見かけた他のものよりも、一回り大きな扉が張り付けられていた。何の装飾もない、質素な木製の扉だ。パチュリーはグッと両手でその扉を押し開ける。木々を力一杯、ねじ曲げたような乾いた音が、廊下に反響した。そうしてゆっくり慎重に押し広げられたその先。そこには知識があった。昔より人々が一枚一枚、知識を形にして残してきたその積み重ね──本。それを詰め込んだ縦長の棚が壁を埋め尽くすようにして並んでいた。部屋はさして大きくはないが、それでも部屋の壁をこれだけ本棚が覆えば、その数はきっと相当なものだろう。更にはそれでも収まりきれなかった本が、床や、部屋の中央にある四角いテーブルの上にまで平積みされていた。その光景はお世辞にも整っているとは言い難かった。

 

「貴方らしい部屋ね、パチェ」

 

「それは誉め言葉として受け取っておくわ」

 

呆れながらもレミリアは少し嬉しそうにして、部屋の中へと進んでいった。立香もそれに続く。

 

「さあ、かけてちょうだい」

 

大きな四角いテーブルには四つの椅子があり、レミリアとパチュリーは対面するように座った。立香はレミリアの隣へと腰かける。

しかしそこで思いもよらない事態が判明する。いや、もしかすると誰かは、この部屋の惨状を目にした時に薄々感じ取っていたかもしれない。この机に積まれた、山やビルをも感じさせる平積みされた本たちのせいで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対面するお互いの顔が全く見えないと言うことに。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

レミリアたちはパチュリーの顔が、パチュリーはレミリアたちの顔が、本の側面に支配される。第三者から見ればあまりに滑稽なこの光景に、立香たちは時が止まったように誰一人動けないでいた。そうしてしばらく続いたこの情けない現状だが、それは立香の提案によって動き出した。

 

「…………あのさ、部屋の片付けから始めない?」

 

あまりに正当なこの提案、しかしそれに対し──

 

「…………私、片付けできないのよ」

 

パチュリーは戦力外の名乗りを上げ──

 

「…………ふ菓子、私は疲れたわ」

 

レミリアは我が儘を言う。

 

ここに来て初めて、立香は令呪の使用を本気で考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・以下小ネタ

レミリア&パチュリー「フレーフレー立夏!頑張れ頑張れ立香!」

立香(やっぱり令呪を使おう)
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