幻想の園に螢は舞う   作:螢司教

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うー☆


お遊戯(命懸け)が始まった

カツーン………

 

 

カツーン……………

 

 

地下へと続く階段を降りる度に、靴音が周囲に鳴り渡る。

ただ、いくら歩いても鳴り止むことは無く、新しく鳴る靴音は暗闇に飲まれていく。

それを聞きながら、今青年は咲夜の案内のもと、レミリアの妹君の部屋に向かっている。

 

 

しかし蝋燭一本の灯りで、こんなにも明るくなることがあるのだろうか。

そう言わしめるほどに周囲は暗い。

もし暗闇の中に誰かが佇んでいても、恐らく気付かない、いや気付けないだろう。

 

 

ただ咲夜はここにも慣れているのかスタスタと進んでいく。

一方青年は周りに興味を示しながら咲夜に付いていく。(本当は恐怖心を紛らわせるためだが…)

 

 

「しかし、レミリア様の妹君は、なぜこのような地下に?

たとえ太陽が出ている時間帯でも、紅魔館内はレミリア様でも行動できるのでしょう。

であれば、妹様もこんな地下にいる必要が無いのでは?」

青年はふとした疑問を抱く。

地下室に連れられる前に紅魔館の内装を見渡したが、吸血鬼であるレミリアも自由に行動できるほどに日光対策ができていた。

だのに同じ吸血鬼である妹君はなぜ地下にいるのか。

 

 

「…妹様は吸血鬼の中でも太陽に弱い方なのよ。

もし日光に当たってしまわれたら、レミリア様よりも症状がひどくなる恐れがある。

だからこそ、日光が完全に遮断できる地下室にいらっしゃるのよ」

質問に対し、咲夜は丁寧に返す。

ただ、咲夜が一瞬言葉に詰まったのは気のせいであろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、ここよ」

長々と階段を降り、やっと妹君の部屋の前に到着する。

その扉は鉄製であり、重々しい雰囲気を醸し出している。

しかも周りがレンガで出来ている所為か、監獄の入り口にも見えなくもない。

 

 

「では、私は他の仕事があるから先に行くわね。

時間になったら迎えに来るわ。

くれぐれも粗相のないようにね」

咲夜は青年に忠告し、階段を上って行った。

 

 

青年はレミリアに、妹と3時間ほど遊んでほしいと頼んでいた。

その頼みごとに青年は安心していたが、いざ扉の前に立つと体が強張っていた。

何か、扉の向こうに禍々しいものでもいるかのようなイメージが思い浮かび、ノックもできない。

だがそれも、この暗闇が原因であろうと心を奮わせ、扉にノックし部屋に入る。

 

 

扉を開けると急に明るくなったために目がくらむ。

視界が戻るとそこには広々とした空間が広がっていた。

壁と床と天井は、濃さが若干違えど明るい紅色が基調とされており、部屋全体を彩っている。

ベッドなどの寝具やタンス、テーブルなど必要なものは揃っているが、やや歪な形になっている。

床には玩具や千切れた枕、そしてナイフ(!?)がところどころに点在していた。

 

 

そしてベッドの上に人影が見える。

どうやら座っているようだ。

向こうもこちらに気づいたのか、ベッドを降りこちらを観察する。

姉とは違い髪は金色で、長い髪を片方だけに纏めている。

また衣服も、部屋と同じ明るい紅色で、子供らしい雰囲気が出ている。

背部にあしらう翼は一般的な形をしておらず、翼の骨格から虹色の結晶がぶら下がっている、何とも歪な形をしていた。

笑顔を向けると、向こうも少し安心したのかこちらに何者か訊ねてくる。

 

 

「…お兄さん、だぁれ?」

レミリアのように子供の姿をしているが、どうやら彼女は外見通りの精神状態のようだ。

かわいらしい声の質問に柔らかい雰囲気が流れるが、青年はそれに流されず礼儀正しく自己紹介をする。

「お初にお目にかかります、お嬢様。

貴女様の姉上から頼まれ、ここに来ました。

名前を、??????????と申します」

 

 

それを聞くと、彼女はなぜか恥ずかし気に挨拶を返す。

「は、初めまして、お兄さん。

私は、フランドール・スカーレットと申します。

い、以後もよろしくお願いします」

ぎこちない自己紹介とお辞儀とともに、彼女の挨拶が終わる。

だがぎこちないといえど、幼いながらに作法はしっかりとしていたので、青年は感心していた。

 

 

「…ね、ねぇ」

少しの沈黙の間を破りフランドールがこちらに何かを問いかける。

「お、お兄さんは、御姉様から何を頼まれたの?」

どうやら青年が、レミリアから頼まれた内容が気になっているようだ。

青年はそれに答える。

「貴女様の遊び相手になるよう命じられました」

「遊び…相手?

……ホント!?」

 

 

"遊び相手"というワードに反応し、フランドールは目を輝かせながら青年の前まで歩み寄ってくる。

「お兄さんが遊んでくれる!

お兄さんが遊んでくれる!!

御姉様、ありがとう!!!」

余程嬉しいのか、青年には目もくれず、少女はその場ではしゃぎまくる。

 

 

「じゃあ、何して遊ぼっか~…」

少女は頭を抱えて悩み始める。

少女の提案を待っている青年を、フランドールがちらりと定期的に見る。

一緒に遊び内容を考えろ、ということなのだろう。

青年も少し悩むが、ちょうど足元に人形があったので、人形遊びはどうかと持ちかけた。

すると少女はとびきりの笑顔で賛同した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

「失礼します」

ノックをし、咲夜はレミリアの部屋に入る。

レミリアは読書をしていたその手を止め、咲夜に質問する。

「死なずの人間と共に来た妖怪は?」

「はい、蛍の妖怪は小悪魔様とともにお話ししておられます。

こちらを怪しむ気配はまったくありませんでした。」

「そう…

なら面倒も起きなさそうね」

 

 

レミリアは安堵の溜息をつきながら、お茶を一口すする。

咲夜も静かに頷き、それに同意する。

だがレミリアの目には不安の色が宿っている。

 

 

 

「…これでフランも、少しは落ち着いてくれるかしら…?」

 

 

 

その眼差しは、カップの中に残っている紅茶に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、フランドールと青年はにこやかに遊戯を楽しんでいた。

純粋無垢な笑顔に、青年も思わず笑顔になる。

「フランちゃんは、ネコの人形さんが好きなんだねぇ」

「うん!!フラン、ネコさん大好きだよ!!」

フランは指を丸めながら「にゃんにゃん♪」とネコの真似をする。

 

 

なお青年が今敬語も無しに喋っているのはフランが許可したからである。

どうも彼女にとっては礼儀作法など堅苦しいのが気にくわないらしく、敬語も封じられ、あだ名で呼ぶように言われたのだ。

ちなみに最初は身分の問題などがあるため断ったのだが、うるうるした目で懇願されては断る術もない。

 

 

結果なんの気兼ね無く遊んでいる。

フランもとても楽しいらしく、背中の羽がピョコピョコと動いている。

「お兄さんお兄さん!

今度はお馬さんごっこしたい!!

お兄さんがお馬~!」

「ははっ、元気いっぱいだなぁ」

青年は四つん這いになり、その上にフランが乗る。

その様はまるで妹の遊びに付き合う兄のようだ。

 

 

「そういえば、フランちゃんはお姉さんと仲良いの?」

ふと気になったので、青年はフランに質問する。

「うん!とぉっても仲良しだよ!!

フランも御姉様大好きだもん!!!」

どうやら余程好きらしく、背中でフランがはしゃいでいる。

「へぇ~、じゃあお姉さんのどんなとこが好きなんだい?」

さらに青年は質問する。

 

 

「ん~っとね、綺麗なところと、優しいところ!!!

あと、かっこいいとこも好き!!

それとね~…」

はしゃぎすぎて言葉に詰まったのか、少し黙りこむ。

それを待っていると、何やら掴まっている手が次第に強くなっていく。

吸血鬼の力は強いので、勿論青年も傷みを感じ始めてくる。

「ふ、フランちゃん、ちょっと痛いかな…」

フランに力を弱めるよう頼むが、反応は無し。

むしろ強くなっていく。

 

 

「フランちゃ~ん、聞こえて…」

青年が背中の方を見やると、そこには先程とは違うフランがいた。

焦点が定まっていない目は見開かれ、何かをブツブツ呟いてる。

「ふ、フランちゃん?」

この状態が心配になった青年は、フランに向かって呼び掛ける。

どうやら呼び掛けに気付いたようで、彼女は正気が無さげな目を合わせてくる。

 

 

 

 

「……あなた、誰?」

 

 

 

 

謎の言葉に、青年は理解が追い付いていない。

「あなた、誰なの?

御姉様は?御姉様はどこ??」

フランは声を震わせながらこちらに問いかける。

何故かは分からないが、取り乱しているようだ。

 

 

「だ、大丈夫だよ。ちゃんとお姉さんは上にいるから」

「御姉様はどこ!!!!!

どこなの!!!!!!!!」

なだめようとするが、もはや耳に入っていないらしい。

「フランちゃん、落ち着い…」

「早く!!

御姉様に!!!!

合わせてよ!!!!!!!」

駄々をこねる子供のように、フランは青年の背中に手をバンバン叩きつけてくる。

その威力は半端なく、青年は思わず息を漏らす。

 

 

暫くの間青年の背中を叩いていたが、フランは急にそれを止める。

だが怒りは収まりきらないようで、声を漏らしながら息を漏らしている。

「フー……フー…………」

少し落ち着いたと思った青年は、まだ残る痛みに耐えながらフランの安否を確認する。

「…だ、大丈夫、かい…?」

しかし反応は無し。

その代わりに、光輝く翼の結晶を揺らしながら宙に浮き始める。

 

 

一定の高さまで到達・停止すると、フランは開いた右手を上げる。

一体何をするのだろうか。

青年がそう考えていると、フランは口を開ける。

「……何で、御姉様に会わせてくれないの???」

高い所にいるためよく見えないが、その顔には涙が伝っているように見える。

 

 

 

 

「…消えちゃえ」

 

 

 

少女がその言葉を発した瞬間、青年の体は爆散した。




さて、今回はどうでしたでしょうか?

まぁ終わり方がちょっとあれですが…(微笑)
最後の文章からも推測できるかもしれませんが、次回はちょっぴりおグロくなってしまうかもしれません。

ご了承下さい…!


ついに出てきたぜ、妹様!!
姉様も出てきてうーうー☆パーティーだ!!!(作者の頭のネジが外れた瞬間)


フランちゃん、かわいいですよね(*´ω`*)
私の中の1位は勿論リグルですが、フランちゃんも結構気に入っております(笑)

きゅっとしてドカーン!!


ちなみにフランちゃんが挨拶をする時に恥ずかしがっていましたが、理由は
「御姉様みたいにかっこよく、上手く出来ないよ~!!」
…とのことです。

御姉様、尊敬されてて羨ましいッス!!(笑)


さて、フランちゃん相手に青年は何回生き返ることになるのか!?
予想しながら次回を楽しみにしててください!(笑)

今回はこれくらいにして、次回に会いましょう‼
それではっ!

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