幻想の園に螢は舞う   作:螢司教

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今回もやり過ぎてしまった…



紅魔の狂気①

狂気。

それは誰からも恐れられるものであり、誰でも持っている代物である。

普段は隠れていても、ふとしたきっかけで簡単に出てきてしまう。

孤独、正義、悲哀…

本当に要因は様々だ。

 

 

狂気にまみれたものは、自分が狂気にまみれていると分からない。

ただ目の前にある見える欲するものを、必死に自分のものにせんと動くのみ。

だが手にすることはない。

欲するものは自分の中にあり、現実のその場には無いからだ。

 

 

狂気は自分の欲するものが手に入らぬ時、精神が限界を迎えると現れる、欲望による産物だ。

自分の大切なものが失われた時も、それが自分がずっと欲しており、手を離したくないから…………

 

 

手を、離したくない………?

 

 

…………あれ?……何故だろう。

この感覚は、以前にも感じたことがある。

 

 

 

 

…何か、大切なもののような…

…思い、だせない………?

 

 

 

 

 

 

 

 

……あぁ、死にたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

……感覚が、戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に……………

 

 

 

 

 

徐々に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に…………!!

 

 

 

 

 

身体が自由に動かせるようになり、青年は飛び起きる。

(……何だ、今のは

忘れたい、が、忘れてはいけないもののはずだ!)

不快な感覚が身体中を駆け巡る。

 

 

 

 

(それなのに、それなのに!)

思い出せずにいる自分に、憤りを感じる。

 

 

 

 

(…何故思い出せない?)

そこで青年は気づく。

 

 

 

 

 

 

「記憶が、無くなっているのか……?」

 

 

 

 

 

 

「あれ?何で人間がここにいるの?」

声がする方を向くと、そこには紅い服を纏う吸血鬼がいた。

つい先程自分を殺した少女は、あどけない顔で話している。

吸血鬼にとって人を殺すのは普通なのか、それとも自分がしたことを覚えていないのか。

どちらにしろ恐怖であることには変わりない。

 

 

「あ!もしかして今日のご飯かな…?

でも咲夜来なかったし…う~ん……」

何やら恐ろしいことを言っているのが聞こえてくる。

彼女が疑問に思っている間に、青年はゆっくりと後退りをしながら扉へと向かう。

フランが記憶を思い出すまで、すぐに逃げれるようにするためだ。

 

 

そのまま逃げようとも考えたが、監視がいると厄介なことになりそうなのでやめておく。

ゆっくりと、ゆっくりと……

たまに後ろを振り返り、扉との距離を確認する。

あと数歩、あと数歩だ…

そして扉との距離が縮まってきた。

よし!あと一歩…!

 

 

 

「お兄さん、何してるのー?」

扉に近付くことに夢中になりすぎて、フランの様子を伺うのを忘れていた。

とんだヘマを、やらかしてしまった。

 

 

「もー、逃げようとしてたでしょ?

だめだよ、フランのご飯なんだから」

可愛く叱りつけながら、フランはこちらに近付いてくる。

軽い足取りだが、最早悪魔の一歩にしか見えない。

そしてフランは青年の前に辿り着き、ズボンの裾を掴んでグイグイと下に引っ張る。

どうやらしゃがめ、ということらしい。

 

 

抗ったら何をされるか分からないので、抵抗はしない。

指示に従いその場にしゃがむと、フランは青年の顔を掴み目線を合わせてくる。

そのつぶらな瞳からは異様なものが感じ取れる。

まるで何人もの人がその瞳を通じてこちらを見るような…

 

 

「お肌つやつやだ~!血行が良いんだね!

とっても美味しそう…!」

その小さな手で顔や首をぺたぺた触ってくる。

発言から、仕草から、自分の死が近付いてくるのが分かる。

今までは突然で一気に訪れる死だったから、まだ恐怖を感じることなく死ねたが。

 

 

だが今回は違う。

急に血を吸われる訳でもなく、急に喉を噛み砕かれる訳でもない。

今からはじっくりと、じっくりとした死を味わうのだ。

突然の予期せぬ死ではなく、目視できる確定された死。

恐怖の度合いが一気に変わってくる。

 

 

身体の状態を確認し終えたフランは、満足そうに食事を始めようとする。

「それじゃあ、いただきまーす!」

そしてフランの牙が喉に突き刺さらんとしたとき、青年はフランの顔と自身の首の間に手を挟み、すんでのところで食事を止める。

そして自分の死を食い止めるためにも、フランに向かって必死に問いかける。

「…フランちゃん、何も覚えていないのかい?」

 

 

だがそれを聞いても彼女は不思議そうに首を横に振る。

先程まで共に遊んでいたではないかと問うても、ひたすら首を振っている。

それどころかフランは不機嫌になってきている。

彼女からしたら、せっかくの食事が妨げられているのだ。

 

 

だが青年はひたすら問いかけ、食事を妨害し続ける。

いくら今不機嫌であろうと、先程のことを思い出せば丸く収まると考えたためだ。

しかし先にフランの怒りが最大まで溜まったらしく、眼光に殺意が満ちる。

「あーもう!!しつこい!!

フランはお腹が空いてるの!!!

お手てを退けて!!!」

 

 

青年はそのフランの怒りをよそに、姿勢を崩さずにいた。

遂にフランが広げた手を上げてきた。恐らく張り手が飛んでくるのだろう。

だが安直な一撃であれば、互いにダメージの無いように受け流しができる。

そして青年が流しをしやすいように手の向きを変えるが、フランは何もしてこない。

その代わりにフランは怒号を発した。

 

 

「~~~~!!!!!もういい加減にしてよ!!!!!!」

広げていた手を、フランがぎゅっと握りしめる。

すると首を庇っていた青年の腕が。

 

 

 

 

 

 

 

バラバラに吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

突然の出来事に、青年は固まる。

一瞬赤い霧が見えた後、上腕から先が無くなっていた。

そして何が起こったのかを確認する間もなく、痛みが全身に駆け巡る。

「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

内臓を食われた時とは違う激しい痛みに耐えきれず、絶叫する。

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

言葉も出ない。口から出てくるのは。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

果てしなく続く間抜けで、醜い声だけだ。

 

 

「ごくっ……ごくっ………おいひっ………ごくごくっ……」

青年の絶叫をものともせず、フランは腕から吹き出る血を直に飲んでいた。

その姿に上品さはなく、感情むき出しで食事を楽しんでいる。

「ぷはっ。お兄さんの血、結構美味しい♪

もっと、もっと!!」

 

 

するとフランは青年の腕の断面に牙を突き立て、さらに吸血してくる。

「あ!?あ!!!っがぁぁぁあああああ!!!????」

筋肉の位置がずれ、牙が腕の中にかき分け入ってくる感覚がする。

同時に身体が冷えてきながらも、痛みが引くことはない。

しかし青年はひたすら痛みをごまかそうと叫び続ける。

「……あ~もう

ちょっとうるさいな~~~………」

 

 

そう言うとフランは急に青年の唇と自身の唇を重ねる。

口内に別の生き物が入ったような感触がし、青年の口の中をひたすら探る。

そして青年の舌を発見した瞬間、フランはそれを自分の口に無理矢理入れさせる。

一見濃厚な接吻のようであるが、それは一時の事。

フランは青年の舌を容赦なく噛みちぎった。

 

 

「が!?ばっばぶぼ……!!?………………… !!!!!????????」

青年の絶叫の音色が一瞬変化し、そして止まる。。

舌が千切られたことで、舌根が収縮し気道を閉じ呼吸を阻害させる。

それに加え舌からは血が溢れ、微かな呼吸も許さない。

 

 

息が出来ぬ苦しみ、身体中に走る痛み、死への恐怖。

それら3つが身体中にこびりつき、離れない。

生き地獄とはこのことかと、青年は悟る。

 

 

一方フランは、噛みちぎった青年の舌に残る血液を吸い終わり、今まさに青年から吸血をしようとする。

どうやら腕よりも口からの出血がひどいことに気付いたのか、口を開けながら青年の顔に近付いてくる。

青年の血液で真っ赤に染まった歯が迫ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…が、フランはすんでのところで停止した。

しかし青年の意識は既に消えかかっている。

出血も、ほとんど無くなっている。

最早フランがこれ以上手を出さなくとも、彼の命は尽きるだろう。

 

 

もう何の感情も湧いてこない。

これ以上は抵抗しても無駄なので、青年は命尽きるまでフランの様子を伺うことにした。

…今、胸元あたりにぽたぽたと何か液体が零れ落ちている感覚がする。

そしてフランが離れていくにつれ、何かが落ちる場所が下肢の方向へ移っていく。

 

 

 

もういいかと青年が目を閉じようとした瞬間、少女の口元が動くのを確認した。

何かを喋っているのだろう、青年は他の感覚を遮断し、聴力を出来る限り敏感にした。

 

 

 

 

 

 

「………で………えさま……………そん……………の?……」

 

 

意識が消えかかっているせいか、断片的にしか聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………とり……………やだ……………………だよ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

どんどん意識が薄れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………か…………てよ…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうほとんど聞こえない。だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう……ひとりにしないで……………」

 

 

 

泣きじゃくる声が聞こえたのを最後に、青年の意識が途絶えた。




さて今回はどうでしたか?

前回に予告させていただきましたが、残酷な描写ではなく残酷すぎる描写になってしまいました。

もしこういう描写が苦手だよ…という人は、次の話も出てきてしまうのでご了承下さいm(__)m


なに?ちょっとえっちっちな箇所があった?
はて何のことや((殴

ち、違うんだリグル!これには訳が……
グベェ>(゜Д゜(((殴(^ω^ リグル)<リグルン・ジャッジメントォ!




フランちゃんの異常行動…
その原因が分かり始めてきましたね…!


最後らへん、フランちゃんは何と言っていたのでしょうか…?
想像しながら次の話に進んでいただけると楽しいと思いますよ~♪



さて今回は二本一気に行きますのでここら辺で!
それでは、またすぐにっ!!
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