紅魔館、レミリアの部屋にて…
人間がフランの部屋に行ってから1時間半ほど経つ。
しかし紅茶を飲み、本を読んでいるだけでこんなにも経っていたとは。
余程本に夢中になっていたのか、何か気がかりなことでもあるのか。
レミリアは大して進んでいない本を机の上に置き、溜息をつく。
「…咲夜」
「はい、いかがいたしましたか?」
どこからか咲夜が現れ、レミリアの指示を待つ。
だが、命じられたのは指示ではなかった。
「人間を迎えに行くのは、私に任せて貰えないかしら?」
咲夜は驚いた顔をする。
だがレミリアの眼差しを見、意思を悟る。
「…かしこまりました」
そして瞬く間に、咲夜はどこかに消えていった。
咲夜がいなくなり、自分しかおらぬ部屋で、レミリアは目を閉じる。
眠い訳ではない。ただ、考え事をするために。
あの人間が、大して役に立たなかった後を考えるために。
だが考え事をする内に、他のことが思い浮かんでくる。
(紅魔館の主が、情けないことだわ………)
妹一人、救ってやれないなんて。
◆
………
…………………
………………!
(…戻ったぁ!!)
復活が完了し、青年は起き上がる。
場所は勿論、恐怖でしかないフランの部屋だ。
夢ではないのかと若干絶望しながらも、直ぐ様周囲の状況を確認する。
フランはどうやらまだ泣いており、こちらに気付いてないようだ。
今のところは襲われそうにないので、そのまま考え事をする。
先程見た、フランの状態についてだ。
ある時は無垢な子供のようで、またある時は狂ったようで…
1時間ほどだろうか、その間だけでも3,4の面が見られた。
だがどれにも共通する点を、青年は見いだす。
感情的であったということ、そしてまだ子供染みていることだ。
まずは感情的であることについて、整理をする。
最初、自分と遊んでいた時はまさに喜びや楽しさを体現したかのようであった。
次に自分を殺した時には、怒りに包まれていたように感じた。
そして最後、自分が死ぬ前に見た悲しみに暮れている様子だ。
感情表現がオーバーすぎるのか?
そう考えたが、それだけでは妥当性がない。
『もう………ひとりにしないで……………』
フランが最後に言った言葉を、青年は思い出す。
この言葉にも、手がかりが隠されているはずだ。
その情報とフランの子供染みた行動と照らし合わせる。
フランは先程からレミリアを探しているようだ。
しかし彼女がいないと、駄々をこねるように物(今回は青年)に当たり、強烈な不安を感じている節があった。
まるで留守番を頼まれ、一人という状況に始めて遭遇した子供のように。
つまり……
「……あなた、どこから来たの?」
考えている内に、フランがこちらに気付いたようだ。
目に光がない。
どうやらいきなりヤバイ状態のようだ。
恐らくこの後殺しにかかってくるだろう。
だがフランの謎についてまだ解けてないため、行動や言動を注意して観察する。
彼女はゆっくりこちらに近付いてくる。
一歩、一歩、一歩…………
一言も発さず歩いてくるだけで、場に緊張感が走る。
青年もそれに合わせ後退りをするが、そんな事せずとも背中は部屋の端についている。
すぐに逃げれるようにと位置取りをしたのが、まさか自分の命取りになるとは。
「…なにやってんだ俺…!」
青年は自分の不甲斐なさに落胆した。
遂にフランの猛攻が始まる。
しかし今回はいきなり吹き飛ばすようなことはしてこず、文字通り力で吹き飛ばそうとしてくる。
ジャンプし、頭を狙った手刀を、青年は避ける。
が、壁を貫いた手刀は青年の首を狙い迫ってきた。
しかし青年はすんでのところでかわせず、そのまま首を切断される。
視界がアクロバティックになりながら、たまに自分の身体が見える。
吹き飛んだ頭部がべちゃっと音を立て、地面に着地する。
視界は既にぼやけているが、司令塔を無くした自分の身体がびくびくと、各所が芋虫のように痙攣しながら倒れていくのが確認できた。
倒れたあとも、陸に上げられた魚のように跳ねている。
まぁ魚のように美味しそうには見えないが………
(………よく映画とか、アニメで見たなぁ…………………)
そんな呑気な感想を思い浮かべながら、青年の意識は消えていった。
◆
(……あれ、お兄さんは?)
先程まで遊んでいた人間がいなくなったことに気付く。
辺りを見回しても、周りには首が取れたりして壊れた人形しかない。
……何で??
何で、何で???????
何でいつもこうなるの??????
結局フランはひとりぼっちになっちゃうの?
トラウマが甦ったような恐怖感が、フランを包む。
………どうして?
…………フランはいつも………
いい子に、してるのに…………………
どうして、どうして?????????
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!!!!!!!!!!!!!
どうして、なの?
身体中に何とも言えぬ感情が込み上げてくる。
イライラしてるようにも感じるし、寂しいような気持ちもする。
分からない。
分からないよぉ…………
自分の感情を、押さえられなくなってくる。
どこからともなく怒りが沸き上がってき、もう歯止めが効かない。
憤怒に身を任せ、壁を力いっぱい殴り付ける。
殴った箇所は勿論穴が空く。
「ハァーーーーッ、ハァーーーーッ…………………」
息を荒げ、鬱憤を晴らそうとした瞬間。
視界の端に、人間の姿が見えた。
ちょうど、いいところに。
フランはその青年に、殺意を向ける。
◆
…こんな最悪なことってあるか。
生き返ったばかりの青年は今、早速フランから殺意を向けられている。
目には光がなく、最早狂気に取りつかれているようだ。
そして青年がフランの行動を先読みしようとしたが、彼女は早速攻撃を仕掛けてきた。
勿論青年はそれらをいなし、かわしていく。
ちょうど後ろには開けた空間しかなく、時間稼ぎにはちょうどいい。
(しかし、復活したのは身体の方か…)
攻撃をいなしながら、青年はふと自分の能力について考える。
少しフランの後ろを見ると、本来そこにあるはずの青年の首無しの身体がない。
そして復活地点は頭が落ちた場所。
(つまり身体がバラバラになった時は、頭部がある場所で復活するわけか
…我ながらなかなか酷い状況を想像したもんだよ)
考えている内に、フランの攻撃が激しくなってくる。
威力は桁違いであろうが、安直であるのが救いか。
青年はいなすことのみに意識を集中させる。
すると突然フランは手を止め、右手を開く。
それを見た青年は直ぐ様距離を取る。
手を開き、閉じる行為をすると、身体が吹き飛ぶことを身をもって体感したからだ。
恐らく彼女の能力であろうが、青年は調べたいこともあったために中途半端な距離を取り、右足を出す。
そして開かれた少女の手が、閉じる。
瞬間青年の頭部が弾け飛んだ。
力を失い、残った身体は床に崩れ落ちる。
「ハァーーーー……ハァーーーー……………」
ちょうどストレスがうまく発散できたのか、フランはその場に座り込んだ。
「…………グゥウゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
するとフランは突如自分の頭をかきむしる。
そして腕、足、顔を次々とかきむしっていき、身体中に痛々しい傷が出来ていく。
激しい自傷に、痛みを感じる様子もない。
元々吸血鬼に痛覚が無いのか、はたまた痛みを感じないほど荒れているのか。
しかし流石は吸血鬼、みるみると傷は治っていく。
そしてきれいに傷が治ったフランは、虚空を見つめる。
そこに希望を見出だしているかのように…
「………ょおっし!!!!」
重い雰囲気の中に、急に明るい声が響き渡る。
声のする方を向けば、本来頭部が無いはずの青年がぴんぴんと立っている。
それを見るやいなや、フランは再度手を広げる。
余程怒りに怒っているのか、敵意むき出しの表情だ。
青年は距離を取り壁際まで到達、先程と同じように右足を前に出す。
そしてフランの手は閉じる。
当然青年の身体の一部は吹き飛んだ………
だが吹き飛んだのは、青年の右足のつま先であった。
えげつない痛みではあるが、上腕をまるまる吹き飛ばされる痛みよりかは幾分かましであった。
(…よし、分かった!
フランの能力が!!!
何もかもが!!!!!!)
青年は頭部を吹き飛ばされた時から推理を始めていた。
フランの能力には不可解な点が多かったため、彼は自らの身体を以て、吹き飛ばされる瞬間の感覚をしっかりと記憶していたのだ。
死なない身体だからこそ、持てる利点。
それに加え、青年の死に対する恐怖の克服が功を奏したとも言えよう。
頭部が吹き飛ぶ瞬間、青年は奇妙な感覚を捉えた。
頭内部の中心から外側に向けてエネルギーが移動していく感覚……
この感覚が、まるで核心を突かれた物体が形を無くしていくように思えた瞬間、謎が解けていった。
フランはただ手を広げ、閉じているわけではなかったのだ。
彼女は何らかの力で対象の核心を手に移動させ、それを握りつぶすことで核心を破壊。
そうして対象の破壊を行っていたのだ。
そしてフランの部屋に散らばる不自然な壊れ方をしている人形も、恐らくこの能力で行われたものであろう。
つまり核心がある物体であるのならどんなものでも破壊できる。
ありとあらゆるものを破壊できる能力。
これほど末恐ろしいものがあっていいのか。
しかし青年はその能力の弱点も見出だしていた。
それは、[距離]
最初、中途半端な距離を取った場合は、恐らくフランが狙ったであろう場所が吹き飛んだ。
だが先程十分すぎる距離を取り右足を少し出すと、右足のつま先だけが吹き飛んだ。
そこから推測すると、恐らくフランの能力の有効範囲は半径5~6m。
つまりそれ以上の距離を離せれば大丈夫であると判断した。
彼女の能力と状態を理解した青年は、フランと向き合う。
彼女の眼差しは怒りとともに、他の感情が混ざっているようにも見えた。
それを見た青年は、今自分がせねばならぬことを思い浮かべる。
どうも、先程ぶりです!
フランちゃんのお話ですが、あと1~2話くらいかかっちゃうかもしれません…(^^;
なかなか恋愛展開にならず、申し訳ないです…m(__)m
さて、もうそろそろ主人公が動き始めますよ……!
善意からか、それとも……?
ちなみにフランちゃんのお部屋ですが、広さは半径5~6m以上あります。(正確には直径17m)
当初は直径8mほどと、元からやや広めだったのですが、過去荒れていた際に暴れまくったおかげで広くなっちゃいました!って感じですね
吸血鬼の力の強さが分かる…
そういえば、冒頭の咲夜さんの時止め描写ですが、どうだったでしょうか?
どのようにすればかっこよく描けるのか悩んだのですが、中々上手くいきませんでした…(T_T)
上手く伝わっていたら幸いであります…!
レミィが暗い雰囲気を漂わす!
フランの狂気の謎も解けていく!!
フランとレミィの間に、一体何が!?
次回!青年、死す!!
デュエルスタンバイはしませんが、ここら辺で!
そいじゃ、また!!