幻想の園に螢は舞う   作:螢司教

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久しぶりの投稿!!


深淵の狂気から

…何で?

何でなの??

 

 

疑問、疑問、疑問。

疑問ばかりが思い浮かぶ。

 

 

壊れない……

壊れてくれない……!!!

 

 

鬱憤、鬱憤、鬱憤。

頭に浮かぶのは、鬱憤ばかり。

 

 

言い付けを守ってたら、良いことが起こるんじゃないの?

言い付けを守ってたら、遊んでくれるんじゃないの?!

 

 

御姉様!

御姉様!!

 

 

一緒に遊んでよ!!

フランのお部屋で、一緒に遊んでよ!!!!!

 

 

ただ御姉様と遊びたいだけなのに。

どうせなら一緒にいるだけでもいいのに。

ずっと良い子にしてたのに。

 

 

……もう、誰でもいいから…

フラン、ワガママ言わないから………

誰か、フランと一緒に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………もう、嫌だ。

 

 

 

少し戻った理性が、闇に霧散していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォン……!!

 

 

絶え間なく破壊音が鳴り響く。

不気味ながらも上品であった地下室は、もはや廃墟の如く荒れ果てている。

約2時間と少し経ったぐらいで、これ程までに変容させるとは。

流石の能力と身体能力と言えよう。

 

 

「ぐぅぅぅぅ!!!!!!!」

怒りに任せながら、フランは拳を浴びせにかかる。

青年は勿論、拳を捌きながら時間を稼ぐ。

 

 

しかし腹に迫る拳を捌ききれず、青年はまともに喰らってしまった。

「っぐぶぇ…」

腹を貫き、腹腔に少女の手が紛れ込む。

しかし少女は臓物の一つや二つを握り潰したりはせず、青年の顔面に強烈な一撃をお見舞いする。

 

 

ペキョっという軽い音の後に、ゴキュアっと鈍い音が続く。

青年の顔面は勿論陥没し、それだけでなく頭部全体も砕け散る。

勢いのまま倒れた青年の身体に、フランは容赦なく『禁忌 レーヴァテイン』を炸裂。

身体のほとんどが塵と化す。

 

 

だが運よく残った腕から、青年の再生能力が発動。

元のまま身体が復活し、全感覚も取り戻す。

その様を見ていたフランはふらつきながらも、直ぐ様青年との距離を詰める。

 

 

(よし、もう少しか…?)

フランが一瞬ふらついたのを確認した彼は、より気合を入れる。

実はこの時点で、青年は既に10回以上命を落としている。

身体を吹き飛ばされたり、半分に引き裂かれたり…

それらが原因でか、青年も体力に限界が来ていた。

 

 

(いくら復活能力でも、体力は回復しない、それどころか消費するのか…)

どうやら死なぬからと言って、安心は出来ないそうだ。

いや、もしかしたら体力が尽きたら復活できないのかもしれない。

いまだ謎の多い自身の能力に、少し恐怖を覚える。

 

 

だからこそ青年は、身体に喝を入れる。

空元気でも、無いよりかはましであろう。

そして再度襲いかかるフランの猛攻を、後退しながらも何とか凌ぐ。

 

 

しかし突然、身体が宙に浮く。

もしやフランの隠していた他の能力かと思ったが、答えは単純。

 

 

 

ただ自分が、瓦礫に足をひっかけただけだったのだ。

 

 

だがそれも命取り。

フランは青年の足を掴み、力任せに地面に何度も叩きつける。

ベチョ、ベチョと水音が部屋に響くにつれ、人間の形を失っていく。

肉塊から骨があらゆる部位から露出している様は、まるで子供が適当に作った粘土のよう。

そして止めを刺すためか、最後に目一杯壁に叩きつけられ、青年は完全な肉塊と成り果てた。

 

 

「ぐぅぅぅぅ…

フゥウゥゥゥ………!」

しかしフランの怒りは収まらない。

いや、これを怒りと呼んでいいのか?

そう言わしめるほど、彼女はひたすらに暴れ続ける。

その様はまさに、狂気に取りつかれているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館、大広間にて…

 

約束の時刻まで、あと45分。

自室から移動したレミリアは、大広間の二階席で読書をしていた。

約束の時刻になったら、某死なずの人間とここで話したいと考えているためだ。

…が先程から地下から微かに音がする。

まぁフランが暴れているのであろうが、少しばかり違和感を感じる。

 

 

長すぎる。

大抵は4~5分程度で終わるのだが、今回は20分以上続いている。

もしや、某死なずの人間がフランの逆鱗に触れてしまったのか。

…やはり彼に任せたのは失敗であったかと、些か失望する。

 

 

あの時感じた希望が、徐々に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー……ハァー…………」

意識が戻ると、部屋の中央に座り込んでいるフランが見えた。

ようやく疲れが身体に効いてきたのであろう、息は荒く、身体中に汗が滴っている。

 

 

だが今のフランは、違うことに苦しんでいるようにも見える。

いや、思い返せば何かに捕らわれたように苦しむ姿を度々見ていた。

だが、もう少しでそれも終わらせることが出来よう。

青年は確信する。

 

 

そしてフランに近付こうとした時、足で瓦礫を蹴飛ばしてしまう。

その音に気がついたフランは、疲れなど無いかのようにこちらに走って向かってくる。

予想だにしない行動だったので、青年は横に避ける。

すると青年が先程まで居た壁に、大きなクレーターが出来る。

 

 

それほどの力を出しておきながらも、フランは執拗に青年を追いかける。

一息つけると安心していた青年の身体が、悲鳴を上げながらフランの連撃を捌き始める。

 

 

…いや、少しはましか。

フランの一撃一撃は遅くなっており、しかも手数も少なくなっている。

すぐに反撃できそうなほど隙も出来ている。

 

 

「ハァー………ッハァー…………ッ」

呼吸音が大きくなってきている。

「どうして…………どうして………………!」

耳を澄ませば、フランの呟きも聞こえてくる。

それほどに余裕が無くなっているのだろう。

 

 

(もう、楽にしてあげねば。)

青年はフランの一撃を通常より強く捌く。

急に強く捌かれたため、フランは大きな隙を見せる。

その瞬間、青年は両の手をフランに伸ばし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま胸に抱き寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………え…………」

フランは少し間抜けな声を漏らす。

「フランちゃん、もう大丈夫」

青年はフランに語りかける。

 

 

だがその返事は、腹に向かっての拳であった。

「離せ………!離して………!!!」

何度も何度も、食らわせてくる。

そして吸血鬼の腕力もあってか、内臓に大きなダメージが入り、青年は口から血を流し始める。

 

 

「離せってばぁ!!!!!!」

そしてフランはより力の込めた拳で殴り付ける。

その拳は簡単に青年の腹を貫く。

 

 

だが青年はフランを離さない。

どんなに苦しかろうが、どんなに痛かろうが。

腹の内部に走る激痛に耐えながら、青年はフランに話しかける。

 

 

「もう、大丈夫だよ

フランちゃんは、これからも、一人じゃないんだ」

痛みに耐えながら話しているためか、変に途切れ途切れになってしまった。

 

 

「フランちゃんは、ただ誰かと一緒に、遊びたかっただけなんだよね

一人になるのが、怖かっただけ、なんだよね

でもフランちゃんは、優しい子だから、みんなを、お姉さんを、心配させたく、なかったから、一人で頑張ってたんだよね」

「………」

フランがそっと、残った腕で青年の身体を抱き寄せてきた。

 

 

「…………あれ……どうして………?」

フランに理性が戻り始めている。

ただ無意識に抱き寄せていたのか、自分でも困惑している。

しかし少ししてから、青年の肩に顔をうずめてきた。

 

 

「……辛かった、よね

苦しかった、よね」

うんうんと首を縦に振っているのが、感触で分かる。

背中を掴む手も強くなってくる。

 

 

「…だけど、もう一人にならなくても、いいんだ」

「…ほんとに?」

フランが初めて言葉を返す。

 

 

「…御姉様は、フランを一人ぼっちにしてきた……

貴方も、そうするで…」

「それは違うよ」

悲観的なことを言うフランを、青年は否定する。

 

 

「お姉さんはね、フランちゃんのことを、とても心配していたよ?

でもお姉さんはね、館にいる全員のことを、見なくちゃいけないんだ。

そんな、忙しいことばかりしてても、お姉さんはフランちゃんのために、出来ること全部やってたんだよ

だから俺も、ここにいるんだ」

フランは反論もせず、ただ話を聞いていた。

 

 

「…フランちゃんは、お姉さんにとって、宝物なんだよ」

肩がじんわりと濡れてくる。

青年はそれに気付くと、フランの頭を優しく撫でる。

 

 

「フランは、もう、一人ぼっちじゃないの…??」

泣きじゃくりながら、フランは問いかける。

「…あぁ」

青年は優しい声でそうだと言う。

 

 

 

「これからも、ずっと、フランちゃんは一人じゃないよ」

 

 

その言葉を聞くと、フランは大声を上げて泣き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に遊びたかった。

 

一緒にお話したかった。

 

 

でも皆すぐに行っちゃうから。

 

 

 

皆大変そうだったから。

 

 

 

 

 

 

皆を困らせたくなかったから。

 

 

 

 

 

 

ワガママを言わないようにした。

 

 

 

 

 

 

いっぱい我慢もしたよ。

 

 

 

 

 

 

だってフランは良い子なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

御姉様は皆を困らせたらダメって言ってたから。

 

 

 

 

 

一人ぼっちは寂しかった。

 

一人ぼっちは苦しかった。

 

 

 

 

 

でもずっと頑張ってた。

 

 

 

 

 

一人ぼっちでも、ずっと頑張ったよ。

 

 

 

 

 

だってフランは良い子なんだから。

 

 

 

 

 

 

御姉様もいっぱい頑張ってるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でも、ずっと頑張ってるのに。

 

 

ずっと良い子にしてるのに。

 

 

誰も褒めてくれない。

 

 

 

 

 

 

良い子だねって言ってくれない。

 

 

 

 

 

御姉様も全然遊びに来てくれない。

 

 

 

 

 

 

ちょっと嫌な気分。

 

 

 

 

 

 

だけど文句は言わないよ。

 

 

 

 

 

 

だってフランは良い子なんだから。

 

 

 

 

 

 

フランが悪いだけだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でもこの人間は、お兄様は。

 

 

フランを褒めてくれた。

 

 

優しい子って言ってくれた。

 

 

 

嬉しかった。

 

とても嬉しかった。

 

まるで御姉様に褒めてもらった時みたいに。

 

 

 

頭を撫でてもらった時なんて。

 

 

 

ぴょんぴょんしたくなっちゃうくらい嬉しかった。

 

 

 

ぎゅってしてくれた時なんて。

 

 

 

きゃーって言っちゃうくらい嬉しかった。

 

 

 

 

でも何でだろう。

 

 

 

涙が止まらなくなっちゃった。

 

 

 

早く、早く泣き止まなくちゃ。

 

 

 

良い子は泣かないんだから。

 

 

 

でもお兄様はずっとぎゅってしてくれた。

 

 

撫で撫でもしてくれた。

 

 

怒ったりもしなかった。

 

 

 

ただただずっと、フランの一番近くにいてくれてた。

 

 

良い子じゃなくても良いんだよって、言ってくれてるみたいに。

 

 

 

 

お兄様がぎゅってしてる時は、

 

 

まるで御姉様と一緒にいるみたいに。

 

 

温かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだフランは泣きじゃくっている。

よほど我慢していたのだろう。

青年はただ、フランの頭を撫でていた。

フランに安らぎを与えるためにも。

 

 

だが、その時は長くは続かなかった。

急に身体中に痺れが走り、頭がくらくらする。

そういえば、いまだ腹を貫かれたままであった。

微量だが長い間出血したおかげで、軽い失血状態になっているのだ。

「……?

お兄様…?」

 

 

フランが異変に気付き、慌てた拍子に腹に刺さった手を抜く。

勿論栓が外れ、噴き出すように血と臓物が飛び出る。

青年の症状は勿論悪化し、抱き寄せていた手が力無くほどける。

 

 

「お、お兄様?」

フランが震えた声で青年に声をかける。

だが彼には返事をする余裕もない。

ついには身体を支える余裕も無くなり、フランに倒れこむ形になる。

 

 

「イヤ!!!お兄様!!お兄様!!!!死んじゃダメ!!!!!」

フランが必死に叫んで青年の身体を揺らすが、既に手遅れ。

青年の意識はほとんど無くなっている。

 

 

そこにちょうど、ドアを開けるような音が聞こえた。

もう聴覚もほとんど途切れているが、誰かが来たことだけは分かった。

後はもう、大丈夫だろう。

そしてついに青年の意識が消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

…………?

 

 

 

 

……………こ……

 

 

ここは………?

 

 

断片的に、色んな風景が見える。

 

今は誰かの部屋の中で、男性らしき人物がそこに座っている。

しかしどこかで見たことがあるような…

 

ガチャリ。

ドアが開き、誰かが入ってくる。

何故か影がかかって顔やらは見えないが、シルエット的に女性のようだ。

 

誰だか分からないが、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる。

きっと、自分ととても仲良かった人のような。

 

 

「……………」

「………………!」

今度はその二人が楽しそうに話している光景だ。

楽しそうと言っても騒がしい訳ではなく、なんと言うか穏やかな楽しさだ。

見ているだけでも微笑ましくなるその光景に、心が落ち着く。

だが奇妙な現象が起こる。

 

 

 

「大好きだよ」

 

 

女性側が口を動かした時、自分の耳元で女性が言ったであろう言葉が聞こえた。

何が何やら分からなかったが、その声は心の安らぐ、聞き覚えのある声だった。

瞬間以前感じたような不快感が襲ってきた。

罪悪感のような、悲壮感のような。

色んな負の感情が入り乱れているようであった。

 

 

(これは……!?

何なんだ…………!!)

 

頭にその言葉をが出てきた瞬間、意識と映像が消えた。

 

ただ不快感だけを残して。




どうも、螢司教です!!

今回はちょっと重めになってしまいました…


フランちゃんの抱えた闇。
それは孤独の影響と良い子でいるために起こったものでした。
ただ自分の欲求を抑えつけ、ひたすらに良い子になろうとする…

そうして狂気に侵されていったと考えると、フランちゃんはちゃんと心根の優しい『良い子』だったのでしょうね…


ちなみに次回でも若干触れますが、フランちゃんが全然遊びに来てくれないと言ってたのは、実は間違い。
確かに回数は少ないですが、それでもおぜう達は、週3日はフランと遊ぶようにしていました。
では何故フランちゃんはあんなことを言っていたのか…
それは次回までのお楽しみにさせていただきます(笑)


最後に映った謎の風景。
それは彼の『何』なんでしょうか…


次回!リグル、久しぶりの登場!
全然出せなくてごめんね…次回はいっぱい喋らせるからね…!(T_T)

それでは次回で会いましょう!!
コメントもお待ちしております~m(__)m
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