他の作品にも生かせたらな…
へ?どゆこと?
俺が虫のエサになるってこと?
唖然としている俺に、少女は近づきながら話し始める。
「ごめんね?私も出来れば人間を食べさせたくないんだぁ。厄介なことになるし。
でも、人間って色々食べるから栄養はいっぱいあるし、見たところあなたは外から来たんでしょ?
だったら見つかる前にやれば問題はないからね」
外から来た?厄介なこと?
とても訳が分からない。だがともかく整理すると、俺は違う場所から来て、その俺を殺す現場を見られたらヤバイって感じ?
まぁそんなのヤバイってのは普通じゃないか?
心の中で突っ込む。
「さて、お話は終わり
もうそろそろ、この子たちの役に立って貰うね」
……
……………え?
役に、立つ?この俺が?
更に呆然としてしまった。すると少女はいささか困惑した顔で、
「え?何で笑ってるの?今から食べられちゃうんだよ?怖くないの?
いや、泣いてるから怖がってはいるのかな…?」
どうやら嬉しさのあまり笑みが溢れていたようだ。
食べられるまで終止無言でいようとしたが、思わず少女の問いに答える。
「うん、すっごく嬉しい」
少女は更に困惑している。
その様子を見ながら俺は話を続ける。
「俺はさ、今まで誰かを幸せに出来なかったんだ。
態度も、表情も、話し方も、何もかも他人に疎まれてたんだ。
だからいつしか、何かに興味を湧かすことも出来なくなっていた。
だっていつも通りの俺でいたら、また周りを不幸にしてしまうからさ。
だから、今自分の愛する虫さんたちの役に立てることに、感動してる。
だからむしろ、食べてほしい。
居場所のない所で何の意味もなく死ぬより、俺を必要としてくれる所で何かの役に立てて死ねるなら、冥利に尽きる」
上手く言葉に出来なかった。だが、
初めてだ。こんなに心情を語ったのは初めてだ。
初めてだ。こんなに安心できたのは初めてだ。
先ほどよりも涙があふれでる。
くそう、人の前で泣くのは恥ずかしい!
余韻を噛みしめていると、少女をそれを見て笑いを堪えている。
だが限界が来たらしく、クスクスと笑いが漏れ出てくる。
俺は不思議に思っていると、少女は指を振った。
すると先ほどまで今にも食らいつこうとしていたムカデが拘束をとき、森の奥へと消えていった。
何が起こったか分からずぼーっとしていると、少女はこちらに話しかけてきた。
「あなた、本当に変わってるね
妖蟲を見ても、命の危機が迫ってもそんな調子で…
面白い人間もいたものだなぁ」
人間という言い回しが気になるものの、俺は話そうとする。
だがその瞬間、体から力が抜ける。
どうやらムカデの毒が回ってきたようだ。
巻きつかれていたから回りが遅くなっていたが、それが解かれた今は血流が元に戻ったため毒の回りが早くなったのか。
そう考えながらその場に倒れ伏せる。
さしもの少女もこれには驚いたようで、こちらに駆け寄ってきた。
何か呼び掛けているようだが、意識が遠のいてきて上手く聞き取れない。
くそっ、確かにあの大きさだったら注入される毒の量もヤバいだろうな。
確かムカデの毒は小動物も殺せるくらいだから、人間より大きかったら…
想像するだけで体が強張る。
かすっただけで良かった~。良くないけど。
少しお気楽思考で考えてる間に、呼吸がしづらくなり、しかも体中の感覚も麻痺してきた。
アナフィラキシーショックかな…こんな感覚なんだなぁ…
そう思いながら意識が薄れていき、そして完全に意識が途絶えた。
…
……ょうぶ………
何か、聞こえる…?
………返事して……………
あれ、声が変わった。違う人かな…?
大丈夫!?
急に大きくなった声に驚き、直ぐ様起き上がる。
先ほどの暗闇ではなく、周りには灯りがあったので目が眩んだ。
「ここは…どこだ?」
すると横から急に声を掛けられる。
「良かった~、目が覚めました? どうやら大丈夫そうですね」
声の方に顔を向けると、そこにはウサギの耳を着けた女性が座っていた。
彼女は俺の安否を確認すると、部屋の入り口から顔を出して
「お師匠さま~!意識が戻られました~!」
と誰かを呼んだ。
不思議そうにしていると、ウサギ耳の女性はこちらに顔を向け、
「驚きましたよ~!心音が止まったので…あ、もう少し待っててくださいね」
と伝えた。
その後すぐに、また新たな人が入ってきた。
「お師匠さま、お疲れ様です」
どうやらこの女性が彼女の師匠のようだ。
変わった服をしており、真ん中を境目に赤と青に分かれている。
きちんと手入れされているのであろう綺麗で腰元までかかる長い白髪は後ろで三つ編みにしてまとめてある。
小さい帽子もかぶっており、そこには赤十字のマークが縫い付けてある。
どうやら医者のようだ。
その医者はウサギ耳の女性に向かって頷き、その後こちらに話しかける。
「大丈夫かしら? 良かったわね、結構危ない状態だったのよ?
何か気になる所は無い?」
落ち着いた口調で医者は問いかける。
俺は起きたすぐからする頭痛と気だるさを訴えた。
「それは貴方の体が頑張った証拠よ。
血清を打ったけど既にアナフィラキシーショックが起こってて…」
「それで俺の体に免疫抑制剤と気管支拡張剤を打って、免疫の過剰反応を抑えて且つ呼吸出来るようにした。
その免疫の暴走と毒の後遺症で頭痛と気だるさが起きている、という訳ですね?」
面白い話だったので、話を遮って続きを話してしまった。
医者と彼女の弟子は驚いた顔をする。
あ、あちゃー、マズイことしたかな?
「す、すんません」
俺は二人に向かって謝った。
「い、いや良いのよ。そんなに詳しいから驚いたのよ
むしろ感心するわ」
医者が感嘆を漏らしていると、弟子の方も質問してくる。
「い、いったいどこでそんな知識を得たのですか!?
もしかしてあなたも?」
興奮気味で迫ってきたが、医者がそれを止める。
「こらこら、病人に質問は控えなさい」
弟子はハッとし、こちらに謝罪する。
「ご、ごめんなさい」
「い、いや、大丈夫っす」
ギャグめいたやり取りをしている内に疑問がわいてきた。
「そういえば、俺は何でここに?
もしかして、緑の髪した女の子が?」
俺は医者に質問する。
「えぇ、そうよ。
とても慌てた様子で来るから何事かと思えば、あなたが大変だって聞いてね。
彼女についていって魔法の森へ行ったら、あなたが倒れてたのよ」
魔法の森?変な名前だなぁ。
そんなことを思いつつ、話の続きを聞く。
「最初は焦ったわ。何せ呼吸が止まっていたから。
でも、ちゃんと生きてて良かったわ」
おう、マジか…
じゃあこの人達がいなかったら俺はあのままお陀仏だった訳だ。
俺は彼女達にお礼を言った。
「そんなことが…遅れましたが、ありがとうございます!」
「いいのよ。私もこれが仕事なんだから。」
医者は笑顔で応じる。
かっこいいなぁ…
あ、そうだ。忘れてた!
俺はまた医者に質問する。
「あの、すみません。先生……」
「おっと、先生は堅苦しいからやめてちょうだい」
医者は一旦俺の話を制止して自己紹介を始める。
「私は、八意 永琳。気軽に永琳と呼んでちょうだい。そして私を師匠と呼ぶこの子は…」
「鈴仙・優雲華院・イナバと申します!
私のことはイナバと呼んでくださいね!」
自己紹介が終わり、俺は話を続ける。
「ありがとうございます、永琳先生、イナバさん。
で聞きたいことがあるのですが、緑の髪の少女がどこにいるのか教えて頂きたいのですが…」
永琳達は思い出したという顔をし、質問に答える。
「あぁ、彼女は疲れたのかここの居間で寝てるわ。
連れてこようかしら?」
「いや、そこに連れていってくれれば……っつ!」
蒲団を退け立とうとしたが、右足に激痛を感じこけてしまった。
「あぁっ!ダメですよ!
傷は結構深いので、安静にしないと!」
イナバが慌ててこちらに駆け寄ってくる。
お、おかしいなぁ?あまり痛みを感じなかったからかすっただけかと…
深く切れたから、アドレナリンが大量に放出されてあまり痛みを感じなかったのかな?
「私が連れてくるから、あなたは安静にしてなさい。
イナバ、傷口が開いてないか診てあげなさい。」
永琳はそう言い残し、部屋を出ていった。
そしてすぐにイナバは俺の右足を確認する。
「よいしょっと。痛いかもしれませんが、我慢してください」
包帯が外れていく。イナバは傷口を見、そして
「…えっ?」
何かに驚いたような声を漏らした。
気になって何があったか聞こうと思ったその時、永琳が少女を連れて部屋に戻ってきた。
「あ!人間~!」
少女は嬉しそうな表情で駆け寄ってくる。
スキンシップが激しく、小さな体躯で俺の上半身に抱きつく。
「良かった~!良かったよぅ~!」
俺の胸に顔をうずめながら言う。
胸元が湿ってきた。嬉しすぎて泣いているのであろうか。
「あぁ、もう大丈夫だ。
永琳達とキミのお陰で助かったんだ」
俺は永琳の方を見る。
永琳は笑顔で応じた。するとイナバが永琳と話し始めたので、視線を少女に戻した。
いつの間にか少女はこちらに顔を向けていた。
「本当に良かった…死んじゃってたら、友達になれなかった…」
泣きじゃくりながら少女は言う。
俺と友達になりたいのか…
……ふふ、悪くないな。
そう思いながら少女に語りかける。
「心配してくれてたのか?ありがとう。
さて、キミの名前は…?」
少女はあっと声を漏らし、自己紹介をする。
「私は、リグル・ナイトバグ!
よろしくね!」
「よろしく。じゃあリグルと呼ばせてもらうよ。」
少女はかわいらしい笑顔で続ける。
「それじゃあ、あなたの名前は?」
「俺か?俺の名前は…」
自分の名前を言おうとした瞬間、永琳が真剣な表情でこちらに来、俺の側にしゃがむ。
あまりにも真剣な顔をしていた為、俺とリグルは互いに口をつぐむ。
「ちょっとごめんね」
そう言うと、永琳は俺の右足を診る。
すると永琳は、先ほどのイナバと同じように驚いた表情を見せた。
「あなた、本当に人間よね?」
永琳は奇妙な質問をする。
「勿論ですよ。俺は純度百パーセントの人間です」
「そう、よね…」
永琳は困惑した様子で考え込む。
何があったかのかを確認するため、俺は自分の右足を見る。
「………は?…」
俺も永琳達と同じリアクションをしてしまった。
傷口が再生していってるのだ。
「な、何だ。これ…?」
思わず俺は動揺してしまう。
「あらあら、何やら困っている様子ねぇ?」
後ろから艶かしい声が聞こえてきた。
俺が小さくひゃっと声を出し体が跳ねるほど驚くのを見て面白かったのか、声の主はクスクスと笑う。
俺を除く場にいる全員が一気に声の聞こえた方を見やる。
俺も遅れて後ろを見ると、無数の目が覗く謎の割れ目状の空間から妖艶な雰囲気を醸し出す女性の上半身が出ていた。
金髪で、背中の中腹あたりまで伸びた髪をリボンでくくりいくつかの束にしている。
大胆にもその豊かな胸の谷間が見える首もとの広い紫色のワンピースを着ている。
首もととスカートの裾にはフリルが付いており、可愛らしさを強調している。
一番特徴的なのは、フリルのやわらかくしたつばのふんわりした帽子で、真ん中に細いリボンがしてある。
何が何なんだ、全く!
俺はさらに混乱する。
すると彼女はこの状況を楽しそうに見ながら口を開く。
「何が起こったのか、教えてあげましょうか?」
本当かどうか怪しいが、どうやら原因を知っているようだ。
あぁもう!こうなったら聞くしかない!
俺は半信半疑ながらも彼女に聞いた。
すると彼女は小さく笑いながら真実を伝える。
「ふふ、かわいい反応ばかり見せてくれるわね少年。
えぇ、今教えてあげるわ。
少年、あなたはね、」
ー一回、死んじゃってるのよー
感想もお待ちしております!