白ひげ海賊団の逆襲 〜落とし前戦争に勝利せよ〜   作:信秀

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経緯

「おい、起きろヴェル!カイドウの手下が攻めてきたぞ!」

 

ヴェルは、大きなその声で目覚める。まだ寝惚け眼だ。だが、

 

「ん…、敵は誰だ?」

 

「懸賞金8億5000万ベリー、旱害のジャックだ。もう敵船が到着してるようだ。」

 

その答えで脳はフル回転し始めた。早害のジャックはカイドウの部下の最高幹部の一人であり、戦闘能力は極めて高い。

 

「すぐ行く。ナスリ、お前は先に行って食い止めてろ!」

 

それを聞いてナスリはすぐに走り去って行く。ナスリはヴェルの部下で懸賞金は9000万ベリー。海軍の少将を倒したこともあり、ヴェルにとっては頼れる一番の部下だ。

 

寝巻きから着替えて剣を持つと、ヴェルは速やかに家から出て空を蹴って戦う音のする方へと向かう。

すると、港から200mほど島へ入ったところに巨大なマンモスがおり、大暴れしていた。

 

「旱害のジャック様に平伏せ!お前ら!!」

 

その脇では何やら危なそうな敵の一団もおり、捕まえた島民を甚(いた)振っている。

 

「許さねぇ…!」

 

ヴェルは咄嗟に怒りを覚え、その一団を攻撃し始めた。上空から空を飛ぶようにして現れた彼を、その一団を率いる白髪でゴーグルを被ったシープスヘッドと呼ばれる男は驚きながらも迎撃する。

シープスヘッドは腕を羊の角のようなものに変形させ、地上に降り立ったヴェルに突っ込んだ。しかし、それを察知したヴェルは、

 

「武装色・硬化!」

 

と武装色の覇気を纏って左腕を硬化させて攻撃を受け止め、右手は拳を振り上げてパンチを繰り出す準備をしていた。だが、それも並大抵のパンチではなさそうだった。

シープスヘッドはそれを感じ取り、冷や汗を流す。

 

「き、貴様のその拳は何だ…!」

 

それにニヤリと笑ったヴェルは答える。

 

「受けてみりゃわかるさ!」

 

ヴェルが、愛する島民を甚振られた怒りを込めて拳をシープスヘッドの羊の頭のように変形させた腕に突き出すと、シープスヘッドはその瞬間猛烈な衝撃をその腕に与えられて吹き飛んだ。

 

「悪魔の実の能力者か…。」

 

その戦いを傍観していたジャックは呟く。白ひげ海賊団の4番隊隊長・"拳聖"のヴェルの実力は確かなようだった。

吹き飛んだシープスヘッドは何人もの味方を巻き込みながら数十メートル行ったところで倒れ込み、完全に戦闘不能状態になっていた。

 

「流石だな、ギフターズでも上位者である奴を一撃で倒すとは。」

 

「お前が…、早害のジャック。」

 

「ほう、俺の名を知っていたか4番隊隊長よヴェル。確かその懸賞金は…、2億6000万ベリー。」

 

対峙して改めて、ヴェルは自身の目の前にいるジャックという男の強さを思い知る。懸賞金で強さの全てをはかることは出来ないものの、ヴェルの懸賞金の3倍以上がその首にかかる相手に勝てる気などしていなかった。

 

睨み合っていると、ジャックはマンモスの状態を解いて通常の人間の状態へと戻る。しかし、それでも170cmほどのヴェルの何倍もの大きさだった。

 

「ところでお前…何の実の能力者だ?えらく戦闘向きな能力と見たが。」

 

「俺はショクショクの実の衝撃人間。自然系(ロギア)だ。」

 

「ほう…、それはつまりどういう能力になるんだ?」

 

ジャックが首を傾げると、その瞬間、ヴェルは足に衝撃を発生させ高速でジャックに突撃し、拳に衝撃を纏わせてジャックを殴りつける。

 

「こういうことだ…!ショクショクの“銃(ピストル)”」

 

ジャックはそれを片腕でそれを受け止めようとするが、拳がジャックに接触するとすぐに纏った衝撃のボールのようなものが弾け、ジャックは吹き飛ばされた。が、その体が宙を舞うことはなく、足は地についたままであった。

 

20mほど吹き飛ばされたジャックだったが、ニヤリと笑って、

 

「ふん、思ったよりも弱いな。白ひげのそれとは比べ物にならん。」

 

と言って次はこちらの番だとばかりに左足を前に出して右へと体をひねり、右腕を握ってヴェルをもう一度カッと見てから、思い切り踏み切って右拳を猛スピードで繰り出した。

最早ヴェルは武装色の覇気を纏う余裕もなくもろにそれを顔に受けてしまう。一方でジャックは武装色の覇気を纏っており、自然系の能力者であるヴェルですら大ダメージを負わされた。

殴られた衝撃に関しては殴られて咄嗟に右手で衝撃を放つ『放衝』を行ったのである程度相殺され、ジャックから5mほど離れた場所に倒れ込んだ。

 

「問題はその覇気の弱さ、そして能力に頼り過ぎた戦い方だな。お前のところの3番隊隊長、"ダイヤモンド"ジョズとは戦ったことがあるが、奴は強かったぞ。まあ苦戦しただけで勝ちはしたがな。」

 

倒れ込んだヴェルを上から足で踏みつけ、ジャックは勝ち誇ったようにそう言う。だが、ヴェルは吐血していてそれどころではなく、立ち上がることも出来ない。

 

悔しそうにそれをナスリも見ているが、加勢に行っても無駄だと悟る。それほどに彼我の実力差は巨大であった。

 

 

「くそったれがっ!!」

 

ようやく痛みが引いてきたヴェルは足が接触するジャックに衝撃を連続で当てる。ヴェルの衝撃は溜めれば溜めるほど強くなるが、溜めていない一撃ではジャックの足をどけるには至らない。しかし、連続で当てれば話は別で、すぐにジャックの体は下から突き上げられて宙を舞い、後方に一回転して体勢を戻した。

 

「ハァ…、おいジャック…、ここからが勝負だ。」

 

ヴェルは体力を削られながらも戦意をもう一度燃え上がらせ、ジャックに挑んだ。ジャックは確かに強いが、スピードにおいてはヴェルに利があると思われた。それ故に常に動き回りながらヒットアンドアウェイを続ければ負けることはない。

ヴェルは足で『放衝』して近寄り、さらに足に衝撃を纏う『纏衝』をしてジャックに蹴りかかる。

 

「ショクショクの“斧”!」

 

ジャックにはその攻撃はほぼ効いていないように見えたが、お構いなくヴェルはヒットアンドアウェイを続けていく。

 

そうして数十分それを繰り返し、100以上の攻撃をジャックにクリーンヒットさせた。が、一向にジャックにダメージは見えない。かすかにジャックは口から出したことぐらいしか変化はない。

 

「いいか、お前の攻撃は速いが弱い、軽い。こんな攻撃を百受けようが、俺が一度お前を殴るほうがずっと良いダメージになるんだぜ。」

 

ジャックは痺れを切らしたとばかりに動き始めると、ヴェルに殴りかかる。それをヴェルは『放衝』してかわす。確かに読みどおりヴェルの方が速かった。だが、常にヴェルは放衝しているわけではなく、放衝しては止まって放衝しては止まってを繰り返す。百戦錬磨のジャックはこの止まっているタイミングを狙って攻撃を仕掛けてきた。

 

「グハッ。」

 

止まる位置を読まれて腹を殴られたヴェルは、今度は逆方向から放衝する余裕もなく吹き飛ばされて腹を抱える。今にも死にそうな苦悶の表情でジャックを見る。その時のジャックはより巨大に見えた。

 

「とはいえ、俺とここまで戦えて俺に血を流させる奴は滅多にいない。どうだ若いの、百獣海賊団に来ないか?お前なら真打ち、いやその中でも優秀な飛び六胞に入れるぞ。」

 

「グッ…、こ、断る。」

 

「それじゃ、仕方ねえな。」

 

ジャックは一応百獣海賊団に誘い、断られるや否やすぐにヴェルを殺しにかかる。ゆっくりと近付き、抜刀し、異常な方向に曲がった刀を振りかぶり、ヴェルの首を狙った。

住民、そして白ひげ海賊団の船員たちは、唯一四皇の最高幹部たるジャックを抑える可能性のあったヴェルの死を恐れた。彼が死んだら確実にこの島は陥落する。誰もが彼の死を確信したその時、運はヴェルに味方した。

 

「何もするな、"早害"ジャック。」

 

その声とともに現れたのは四皇、赤髪海賊団の副船長、ベン・ベックマン。手に持った長銃でジャックの頭を狙う。

 

「ベックマンか。それだけじゃねえな、赤髪海賊団が揃ってやがる。一体何の用だ?」

 

すると、ベン・ベックマンの後ろからシャンクスが出て来る。

 

「ようジャック、久しぶりだな。ところでお前、今回の白ひげ海賊団のナワバリ侵略はお前一人が送り出されたのか?」

 

「…。そうだが、何か問題でもあるのか?」

 

「いや、問題はない。聞きたかっただけだ。さてジャック、お前に残された選択肢は二つ。ここで死ぬかとっととワノ国にでも帰るかだ。選べ。」

 

ジャックの部下たちはその発言を聞いて怯え、ジャックの元へと駆け寄り、

 

「ジャック様、どうしましょう。ここは一旦退くべきかと…。」

 

と具申するが、ジャックは傲慢に、

 

「退くだと?俺を誰だと思ってやがる。俺は、百獣海賊団の一人。早害のジャックだ。」

 

と言い放ち、ベン・ベックマンへ突撃する。ベックマンは面倒くさそうにジャックを長銃で迎撃する構えを見せた。

ジャックは手に持った刀をベックマンに向かって振り落とすと、ベックマンはそれを華麗にしゃがんで避けて、そのまま長銃でジャックの胸辺りを撃った。

 

「グッ…、やるな。」

 

ジャックはその勢いで少し後退する。一発撃っただけなのだが、ジャックの胸には7発の弾の痕が残っている。

 

「厄介な能力だ、ベックマン…。大して効いちゃいねえがお前一人でも倒すのがやっとだろうにその後ろにゃバケモノもいやがるな。」

 

やっと現実を直視したジャックはシャンクスの強さや、その他の海賊団の船員の戦闘力を加味すると流石に自分でも敗北を免れないことを悟る。

 

「チッ、退いてやるよ。覚えとけよ赤髪…!」

 

ジャックはそんな捨て台詞を残して島をズケズケと去っていく。それを唖然とした様子で眺めていたヴェルに、シャンクスは問いかける。

 

「さあお前にも選んでもらおう。共に来て頂上戦争を終わらせに行くか、それともここに留まるか。」

 

それに対するヴェルの答えはすでに決まっていた。

 

「俺も連れて行ってくれ。」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「それでそこからは早かった。赤髪の船に乗り込んだかと思えば、あっという間にマリンフォード近海にいたわけだ。マルコさん、赤髪が何かの実の能力者であることは間違いないと思います。」

 

ここまで彼が来た経緯を話し終えると、マルコとビスタは黙り込む。以前から百獣海賊団は白ひげ海賊団のナワバリを狙い続けていた。老いたとは言え、以前ジャックを軽く倒してしまったような強大な力を持った白ひげの存命中ですら、そのナワバリを狙う百獣海賊団。今後はより活発に狙ってくるに違いない。

 

「まずはオヤジたちを弔ったら、ナワバリの守りを固める必要がありそうだな。」

 

ビスタが重々しい表情でそう言うと、マルコもそれに頷いた。

 

 

マリンフォードから帰還した白ひげ海賊団は死んでしまった白ひげやエースを始めとした正規船員200人を埋葬した。1600人のうち200人が死ぬというのは相当な痛手であった。




ちなみに週二のペースで投稿したい願望は人一倍あります。
あと、纏衝のイメージは白ひげのグラグラの実とほぼ同一です。ただし、白ひげは空間にヒビを入れるのに対してこれは大きな衝撃を放つという能力になります。
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