「で、お前さんたち何の用でここへ?」
ビッグマム海賊団との戦いを終えたヴェルたちに、ジンベエは尋ねる。
「ジンベエさん、俺たちはオヤジの仇を取るためにも黒ひげ海賊団に挑むつもりです。その際に助力していただきたい。」
ヴェルのそんな切実な声を聞いて、ジンベエは考え込む。
「黒ひげ…、ティーチの力は強大じゃ。ワシがいたところでどうにかなる相手ではなかろうに。」
ジンベエがそう言うと、ヴェルはこめかみに青筋を立ててジンベエに言い返した。
「ジンベエさんからそんな台詞ききたくなかった…。この海の皇は4人で十分なんだ。勝てるかじゃなく、どうであってもやるしかないんだ。白黒つけなきゃいけねえ。」
その強い言葉にジンベエも感じ入る。
「わかった。ワシが間違っておった。ワシも白ひげ海賊団に協力…、いや白ひげ海賊団の仲間に加えてくれ。」
「な、入ってくれるんですか?」
「あぁ、ワシも白ひげのオヤジさんには恩を感じとるし、エースさんが抜けた穴もある程度ワシがおれば埋めれるじゃろう。共に骨を埋める覚悟で戦うわい。」
こうしてジンベエが新たに仲間に加わった。
「もう行くんじゃもん?まだゆっくりとしていってほしいのじゃが…。」
戦いを制してわずか半日後、ジンベエの協力を取り付けるという目的を果たしたヴェルたちはそそくさと魚人島を出ようとしていた。
「ええ、申し訳ないですが我々には果たさねばならない使命があります。魚人島に何かあればいつでもこの電伝虫におかけ下さい。すぐに駆け付けますから。」
「…、わかったんじゃもん。くれぐれも気をつけるんじゃもん。」
ネプチューン王としてはもてなしをしたかったのだが、彼らが行くというのなら止められはしない。申し訳程度に物資の補給に協力し、その旅の安全を祈願した。
「それでは!もし生きれていればまた来ます!」
ヴェルが爽やかにその手を振って魚人島の皆に別れを告げると、ネプチューン王は寂しそうに左大臣に声をかけた。
「何という爽やかな青年だ。だがあの男気や人を惹き付けるような魅力…、若き日の白ひげそっくりじゃもん。」
左大臣もその言葉に頷く。そして、思い出したようにして白ひげに言った。
「そ、そう言えばかの白ひげ海賊団の新しい船長殿は何かモゾモゾ動く袋を懸命に船に運んでおりました。別に彼らを疑うわけではありませんが、人魚などが攫われた可能性がなきにしもあらずなのですが…。」
「まさか、ジンベエもいるのだからそんなことあるわけが…。」
ネプチューン王はそう言うが、
「ね、念の為調べておきます。」
と言って左大臣はその場を去って行った。
結局、特に人魚などの魚人島の住民で不審な失踪をした者はおらず、ヴェルへの人魚の誘拐の疑念は晴れたのだが、どちらにせよとある人物が魚人島から姿を消していた。
〜〜〜〜〜
さて、海中で訓練やとあることをして数日過ごしていたヴェル一行だったが、やっと海面へと出ると、電伝虫がなった。
「プルプルプル、ガチャ」
電伝虫を取ると、マルコの声が聞こえた。
「おう、ヴェルかよい。今どこにいる?」
「あ、マルコさん!今ようやく魚人島から海面に出たとこだよ。ジンベエさんも仲間に引き入れられたし、魚人島をビッグマム海賊団から守れたし、上々の成果だった。」
マルコに成果を報告すると、マルコも嬉しそうにする。何でも、今までマルコはナワバリを奪いにやってきた海賊団を殲滅していたらしい。
「それで周囲に敵がいないことを確認したから、麦わらがいるっていう島に向かおうと思うんだよい。ヴェル、お前も行くか?」
ヴェルは唐突な振りに困惑する。今からマルコは能力を用いて飛んで麦わらのルフィの元へと赴くのだろう。恐らくヴェルにお誘いがかかったのは、彼が唯一同じように飛んで麦わらのルフィの元へ行けるからだろう。
「麦わらのルフィは面白い男なんだよい。お前も気に入ると思うし、お前の戦闘の練習相手に多分ちょうど良いと思うんだよい。」
実のところ、ヴェルもルフィは白ひげに気に入られた男と聞かされていたため、とても興味を持っていた。協力を得られる得られないに拘わらず、ぜひ会っておきたい。
「じゃあ俺も今から向かう。場所はどの辺りだ?」
〜〜〜〜〜
「おりゃー!」
ここは七武海・ハンコックが統治する女ヶ島の北西に位置するルスカイナ島。現在、麦わらのルフィと"冥王"レイリーがともに修行をしていた。
「ルフィ君、少し休憩しようか。」
あり得ないほど大きい怪物ゴリラと戦っていたルフィをレイリーは制してブレークを入れる。今、ルフィはとにかく覇気の鍛錬をしているところで、実戦形式で見聞色、武装色の強化に励む。
「まだ武装色を纏い切れていないし、見聞色の質も上げなくては。無意識下でも見聞色を発動させなくては見聞色を習得できているとは言えないからな。」
レイリーはルフィにそう指摘する。修行を始めて1ヶ月。まだルフィの戦闘能力は上がりきってはいない。
「レイリー、俺は今までのギア2とかに覇気を纏ってみたらいいんじゃないかと思うんだけど、どうかな。」
「うむ、良い考えだとは思うが…、そんなことしたら体が保たんぞ。」
「じゃあ覇気の量を増やせばいい。どうすれば覇気は増えるんだ?」
そんなことを話して今後の方針を議論していると、
「ッ、ルフィ君、今の感じ取ったか?」
とレイリーが問う。
「あっ、俺も今感じた。この感じ…、強い奴らが二人近づいてきてる。」
ルフィもそう返答する。空を飛んで近づくというところから、ルフィは黄猿ではないかと考えるが、レイリーはそれを否定する。
「いや、良かったな。一人は君の知り合いだ。だがもう一人は…、誰だろうか。」
より性能の良い見聞色を持つレイリーはその二人を読み取る。そんなことを言い合っている内に、その二人はルスカイナ島に到着し、着地した。
「おー、お前は白ひげ海賊団の奴だよなー!あの時は助かったよ!」
ルフィはマルコを見ると、駆け寄ってそう言う。
「あぁ、良いってことよい。お前もエースの死を乗り越えられて何よりだ。」
「うん。俺には仲間がいる。アイツらのためにも俺はもっともっと強くならねぇといけないんだ。」
拳を握りしめてルフィはそう話す。マルコはエースを失って気絶していたルフィを心配していたのだが、元気そうにしている彼を見て一安心した。
「隣にいるのは誰だ?」
そうルフィが訊くと、
「あぁ、はじめまして。俺は白ひげ海賊団の船長になったヴェルと言います。よろしく。」
とヴェルが手を差し出した。差し出された手を握ってルフィもよろしくと感じ良さそうに言う。が、その二人の目にははっきりとした対抗意識が芽生えていた。
「用件は急ぐべきものだが、まずはお前ら戦ってみろよい。お互い良い相手になると思うよい。アンタ、レイリーだな。この二人を戦わせてもいいかよい?」
マルコがレイリーに尋ねると、レイリーも、
「中々この島にいると人と戦うことはないだろう。良い経験になるからやらせてもらおう。」
と答え、出会って2分で二人は合戦することとなった。
「強ぇってわかってんだからはじめから全開だ。」
ルフィはそう言うと“ギア2”を発動する。すると、体から蒸気を発して体の赤みが増した。
「な、何をしたんだ?」
ヴェルが困惑した様子を見せると、ルフィは、
「俺はゴムゴムの実を食べたゴム人間。このギア2は全身がゴムなのを活かして、体の一部をポンプのようにして血管の血流を上げて身体能力を上げてるんだ。」
と言い切り、剃を用いて素早く移動し、ヴェルの背後に回り込み、
「ゴムゴムの“ジェットピストル”!」
と攻撃を打ち込む。間一髪でヴェルは空中にバク宙をして逃れ、空中で反転してルフィの方を向くと、指に纏衝をし、
「“衝弾”」
という纏衝した衝撃を銃のように撃ち出す技を繰り出した。まさか衝撃を飛ばす能力を持つとは思わなかったルフィもこの攻撃を数発受けて吹き飛ばされる。覇気を纏ったその攻撃に大なり小なりのダメージを受けたようだ。
「ルフィ君、見聞色の覇気がまだ機能していないぞ!」
レイリーはルフィにそう警告する。ルフィはそれに頷き、起き上がってヴェルの方を見る。どうやらヴェルは遠距離攻撃が得意なのだろうと分析したルフィは、近距離からのアプローチを試みる。
「剃、ゴムゴムの“ジェットバズーカ”!」
再び剃をしてヴェルに近づいたルフィは今度は正面からジェットバズーカを打ち込む。これに対してヴェルも、
「ショクショクの“バズーカ”!」
と対抗し、攻撃がぶつかり合った。ゴムの伸び縮みの力を乗せたルフィのバズーカと、衝撃の力を乗せたヴェルのバズーカは双方凄まじい威力を誇っていたが、勝利したのはヴェルの方だった。
「うわっ!!」
ヴェルの両手から放出された衝撃によって吹き飛ばされたルフィだったが、そこへヴェルは畳み掛ける。
「纏衝、“衝弾機関銃”」
ヴェルは右手を広げてルフィの方へと突き出すと、その掌に円を描くように32個の小さな衝弾が並び、それが次々と発射されていく。発射されたところには次々と弾が補充されていき、まるでそれは機関銃のようだった。
吹き飛ばされたルフィは慌てて跳ね起きてギア2のスピードを駆使してかわしていく。ただ、ほぼ無尽蔵に機関銃のように攻撃できるヴェルに対して、ルフィは逃げているだけ。ジリ貧であった。
そこでルフィは剃をして上空へと跳躍し、“ジェットガトリング”を繰り出す。その超速で繰り出される拳とヴェルの衝撃が再びぶつかり合った。
そのぶつかる際に生じる衝撃音は島中に響き渡り、先程ルフィが倒し損ねた巨大な怪物ゴリラまで乱入しようとしてきていた。
「チッ、ここは覇王色で…。」
レイリーが覇王色の覇気でそのゴリラを追い返そうとしたその時、青い炎を纏ったマルコがゴリラへと飛んでいき、武装色を纏って思い切り頭を蹴った。
「ウホッ!?」
新手の相手にいきなり蹴られたゴリラは地面に組み伏せられ、ルフィがあんなに苦戦した相手は一瞬でマルコに倒された。
一方で、ガトリング対決も決着が着きつつあった。いかにルフィが速く腕を回転させても、やはりヴェルが次々と発射する衝弾には追い付かない。一撃の威力はルフィの拳が勝るのだが、拳はヴェルに肉薄するも届かず、次第にルフィはまたもや押されていくことになった。
そんな応酬を見て、レイリーは最早勝負は決したようなものだと考え、
「お互いもう良いだろう。」
と声をかけ、この模擬戦は終了した。
勝利したものの、ヴェルはまだ自身の戦闘は改善の余地が多くあることに気付かされた。例えばルフィの最初の一撃。避けてあのまま遠距離戦に持ち込んでルフィを怯ませたから良かったものの、近距離戦に持ち込まれていたら危うかった。足から放衝した場合のスピードはヴェルが上回っていたが、基礎的な身体能力は完全にルフィが上回っていたのだ。
(身体能力の強化が必要だ…。)
まずヴェルはそう考えたのだった。
「で、君たちは何のために来たのかな。」
戦いの後、ジンベエと同じようにレイリーも二人に尋ねてきた。
「あーそうだったよい。ヴェル、話してくれ。」
マルコも忘れていたようで、思い出したようにヴェルに話を振った。
「我々白ひげ海賊団は、黒ひげ海賊団に対して、オヤジやエースの件で報復戦争を起こそうとしています。ルフィ君に対してはそれに助力してほしい。」
真剣な表情で語るヴェルを裏腹に、レイリーは微妙な顔をして、
「確かに黒ひげは大きな悪の芽だと思うし、白ひげやエースを死に追いやった人物だ。ルフィ君としても許せないだろう。だがあまりにも時期尚早だ。ルフィ君の修行も完了していないし、それに加勢しても利益はない。」
とルフィを止めようとした。が、ルフィはその言葉を無視してヴェルに歩み寄る。そして、
「おい、ヴェルって言ったな。お前にとってエースはどんな奴だった?」
と尋ねる。ヴェルはそれに嬉しそうに答えた。
「アイツは同い年でアイツが船に乗ってしばらく経ってからは親友だったんだ。その後、黒ひげことティーチが俺の前任だった元4番隊隊長のサッチさんを殺すと、アイツは誰よりも怒った。俺もサッチさんの部下だったから激怒したものだけどね。
それでも俺は実力不足だったし、ティーチを追おうとは言えなかった。だがエースはそれをオヤジの前で言ってのけたんだ。俺はその時心からエースを尊敬したね。まとめると、エースは俺の親友であり尊敬できる奴だった。」
その答えにルフィは深く頷いて、
「アイツ、良い奴だよな!いいぞ、俺も協力する。エースの仇は何が何でも取りてぇんだ!」
と言い放った。
「待てルフィ君、それでは修行はどうするんだ?」
レイリーは相変わらず乗り気ではないが、
「レイリーさん、我々も一年間戦力を蓄えるつもりです。どれだけの期間修行するつもりかは知りませんが、それだけあればある程度納得行く修行が出来ると思いますが、いかがでしょう?」
とヴェルがダメ押しすると、渋々といった様子でそれを了承した。かくして白ひげ海賊団は強力な助っ人を新たに獲得したのだった。
「もう行くのか?もう少し一緒に戦おうぜ。」
その場で共に食事をした後、帰ろうとするヴェルたちにルフィは名残惜しそうにそう言った。
「俺は仲間を海上で待機させてるからもう行くよ。また決戦の際には電伝虫に連絡するからその電伝虫を逃がすなよ!」
ヴェルはそんなルフィにそう別れを告げた。
「お前には負けちゃいけねえ、そんな気がする。」
別れ際、ルフィが重い口を開くと、ヴェルも、
「あぁ、何だか何かお互い背負ってるような気がするな。」
と応じた。レイリーにはこの光景がかつてのロジャーと白ひげに近いものに映っていた。
「じゃあまた会おう!」
そう約束する二人の声に、レイリーはかつてを思い出してつい涙をためてしまったのだった。
多分そろそろ捏造設定盛りだくさんになってくると思います。(戦闘の仕方が明らかになってないキャラの戦闘を描くため)
なるべくそれっぽいのを目指してみますので、何か納得できない点があれば何なりと。