ポケモンチャンプル ~この世界が「Pokémon」だとぼくだけが知っている~ 作:黒兎可
「はじめまして! ポケットモンスターの世界へようこそ!」
過疎化がすすむここ
そして時々、町の子供たちを集めて、ポケモンについていろいろと教えてくれるのだ。
大木戸博士――――みんなからはポケモン博士としたわれている。
なんでも、有名なポケモン研究者であるらしい。
ポケモンとは何か、と言われると、いろいろと説明が難しい。
一言で言うと、たくさん存在する普通の動物とは別な何かだ。
ええっと、たしか博士の言ってる通りだと……、たくさんの謎を秘めた生き物、と昔は説明していたけど、ぼくや幼馴染の子供たちが大きくなるにしたがって、もうちょっと難しい説明になっていった。
共通する生態として、身の危険を感じたりすると体を小さくして物陰に隠れたり、あるいは天敵から逃げたり、身を隠す習性をもつこと。
異なる外見や種族に見えても、お互いの鳴き声である程度のコミュニケーションを取り合っている生態であること。
おおむね人間に近い知性を持つこと。
だいたいこのあたりがポケモンの分類要素になっている。
この最初の習性を利用して、開発されたモンスターボールという道具に捕獲する。このせいもあってなのか、学名は携帯獣。
このポケモンを捕獲して、育成したりする職業を俗にポケモントレーナーと言う。
専業のトレーナーの場合は一部お金を国が負担してくれたりするのだけど、基本的には何かしらの職と兼業している場合が多かったりする。
もっとも、博士の前に集まる子供たちはどう考えても専業のトレーナー 一択が夢だろう。
ちなみに関東地方で観測されてるポケモンは、約150種類くらいらしい。
そんなポケモンのうち、何種類かを研究所の人や、博士が見せてくれていた。
「では、はじめに君のことを教えてくれ」
「あ、はい! ぼくは――――」
ああして、初めて出てくる子は博士から名前を聞かれるのだ。
ここでの名乗りは、実質子供グループにおけるその後の呼び名につながっていく。
本名を名乗ることもあれば、トレーナーカードに登録したい名前を名乗ることもある。
とにかく、あれは一種の通過儀礼。あれを突破することで、子供たちはトレーナーの世界に足を踏み入れるのだ。
「よぉレッド、なっつかしぃなあアレ」
「あ、グリーン」
そんな青空教室――――大木戸研究所の手前で開かれる、子供向け教室を見ているぼくに、幼馴染のグリーンは声をかけてきた。
グリーン、本名は
苗字は違うけど、大木戸博士の孫だ。
なんだかツンツンはねた髪が特徴的で、目つきとかは博士と似てる。
「オーキドのじいさん、よく飽きもせずにやってるよなぁ。オレだったら三日もつづけられねーぜ」
「極端だよグリーン。というか、自分のおじいちゃんをそういう呼び方するのどうなのかな……」
「お前もいいこちゃんぶってんじゃねーよ、アーホ」
「なんでぼく、今悪口言われたのかな……」
あと、なんだかいつも口が悪い。僕に限らず同世代に対するあたりが強い。
そのことでよく、姉の
ちょっと前に見たスタンドバイミーだったかの映画の影響かな……? いや、その前からずっと口は悪かったっけ。
「だってよー。無駄じゃねーの? あんなに教えたって、みんなオレより絶対弱いもん」
グリーンはなんというか、こう、自信過剰というか何というか。
すごく自分の力を信じてる性格って言うと、前向きに聞こえるかな。
「そういう言い方、良くないよ」
「うるせー。お前だってオレより絶対弱いもん」
「あんまり酷いと菜々美さんに言いつけてやる」
「え!? ……ふ、ふん、別に怖くねーからな! でも言ったらぶん殴るぞ!」
「脅し方がちょっとアニメとかの下っ端っぽすぎる……」
「なんだとー!」
ぼくとグリーンは幼馴染。
家も隣で、小さいころから一緒に遊んだりして育っていった。
もちろん、ああいう風な大木戸博士の青空教室にも出席して、小学校が終わった後はいつも一緒に勉強したりしていた。
だから、まぁ、彼からするとライバルと言えばライバルなのだろう。
ポケモントレーナーを目指す子供として。
「とにかく、ぜってー負けないからな!」
「ぼくもグリーンには負けたくないね」
不敵に笑う指さしてくるグリーンの手を下におろして、ぼくも微笑みを返す。
……まぁグリーンが純粋にトレーナーのライバルとしてぼくを見てるのと違って、ぼくの場合はちょっとした私怨の方が大きい。
大木戸博士の前での名乗りで、本当はイサム――本名が
ちなみに「オレとお前はライバルなんだから、ついになってた方が格好良いだろ!」とか、そんなことを後で言われた。
イサムって呼び名かっこいいから、そのまま定着させたかったんだけど……。
でも残念なことに、ぼくの呼び名はレッドで定着してしまった。
トレーナーカードの登録のときにどうにかしたいとは思っているのだけど、果たしてその通りになってくれるのかどうか……。なんかまた勝手にレッドで登録しやがってくれそうな気がしてる。
まぁ友達としてグリーンは嫌いじゃないけど、そのあたりのことは今でもちょっと根に持っているのだった。
「で、何の用だよレッド」
「ナナミさんからお使いで隣の
「……なんで、お前に頼むんだよ姉ちゃん」
「グリーンが御菓子いっぱい買ってきて、目的の木の実を買ってこなかったからじゃない? 前に」
「う゛、うるせー! 勝手にもってけ!」
そんなことを言いながら、研究室に走っていって、入り口からスプレーをぶつけてくるグリーン。物をなげちゃいけないって、だからそういうことをするから菜々美さんに叱られるんだって……。
ちなみに、こういうのを反面教師というらしい。菜々美さんから教わった。
とにもかくにも、関東道一番道路、真白町の北方向のくさむらに向かう。
森やら段差やらがはげしくて、基本的にポケモンを利用しない交通は徒歩とか自転車が基本だ。
なのでぼくらみたいに、ポケモンをもっていない子供が移動するときは、大人のトレーナーとかポケモンよけの道具が必須となる。
虫よけスプレーもその一種。このあたりの草むらくらいのポケモンが寄り付かない薬らしい。
とりあえずしゅーって身にかけて、僕は北へ向けて前進した。
※ ※ ※
「これは……?」
菜々美さんのお使い帰り。いつも通り一番道路を歩いていると、ふと、何かの道具を見つける。
それは赤い板みたいなもので、がちゃり、と開くことができる。
大木戸博士のところで見た覚えがあるような……。
ゲーム機みたいな外見だけど、とりあえず動かしてみる。
「んん……?」
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×図鑑
×手持ちポケモン
〇道具
×トレーナーカード
〇レポート
×コンフィグ
終了
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こんな感じの画面表示。
×になってるところは使えないみたいだけど、〇のところは動かせるらしい。
もっとも「道具」のところは「手持ちの道具と個数を登録してください」と出てくるので、そのあたりは放置しておく。
気になるのは、レポート。
「なんだろ、レポートって……。何についての記録なんだろ……」
警察に届け出るのが一番なんだろうけど、このときの僕はなんとなく、好奇心に振り回されていた。
そして、おそらくこれまでの九年の人生で最低最悪の選択をしてしまう。
レポートの項目は「レポートを記録する」と「レポートを確認する」、あと「レポートを削除する」の三つ。
レポートを確認する、を選択すると「はじめから」「つづきから」となる。
「うーん…………」
迷いながらも、とりあえず僕は「はじめから」を選択した。
そこには、一人のトレーナーの記録がされていた。
はじめは大木戸博士からポケモン図鑑をもらい、旅に出る純粋な若者だった。
ジムバッジは七つ。そして最後の一つを目指している途中。
でもある時を境に、図鑑の持ち主だろう誰かは、マフィアにつかまったらしい。
「何、これ、」
そこからは、ちょっと正気を疑う世界だった。
どういう方法なのかはわからないけど、図鑑の持ち主はミュウというポケモンを作ろうとしていたらしい。
組織的にそういうことをやっていたのか、大量の水ポケモンが、あるいはエスパーポケモンが、それらを何らかの手段でミュウに変換しようとしていたらしい。
しかし、すべてが成功するわけじゃない。
というか、成功した事例はないように見える。
メタモン、DNA変質、選択異常、バグ――――。よくわからない単語が、レポートに踊る。
やがてだんだんと、このレポートを書いている誰かの文章がおかしくなっていく。
接続詞とか、文字のつながりとか、変換とかがおかしなことになっていく。
自力で製造することができなくなった誰かは、マフィアは、自らが逃してしまった最強のポケモンを探す、という風な文章がぎりぎり読み取れ。
そして文末は、明らかに、これを読んでいる誰かに――――ぼくにあてた文章だった。
――――このレポートも終わりは近い。
「――――」
震えるぼくは、しかし、何かに導かれるように後ろを振り向いた。
そこには、ヒト型のようでヒト型でないシルエットがゆらめいていて、全身から紫の光を鈍く放つその何かは、明らかにぼくなんて一瞬で蹴散らしてしまえそうな姿をしていて。
震える手は、何か、ぼくの意志に反して機械を動かし。
いつのまにか「〇」になっていた「図鑑」の項目を開いて――――。
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No.000
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いくと゛、゛�つ゛、サエ゛でぽっし゛゛a?ならかわ゛、゛゛てえがンカ゛、にな゛゛゛てし゛゛゛�゛、゛゛
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図鑑の内容は、明らかに壊れていた。
いかれていた。
いや、違う、これは違う。
表示がいかれているんじゃない。
データがいかれているわけでもない。
これは「おかしい」けれど「正しい挙動」。
眼前の何かの目が光る。
映像が見える。
多くのトレーナーが、黒い服を着たトレーナーが。
建物に出入りしたり、あるいはバトルしたり。
あるいは道具を使ったり、あるいは何かの道具を選んだり。
あるいは遺伝子が、あるいはえあも。
選んだポケモンがてなきあすれあ嗚呼エラ女いnこmkのために。
あwfだならミュウあw3dヴぉあえランボパンううぇいかmwこw。
あれ? あおかしsにあ。
bおくわなにw0knがえtrnだろうc09。
『――――ミロ』
目の前の何かが、絶えず何かの映像を僕に流し込む。
やめてくれと、言いたかったけれど。
でも、それを言い出すこともできず、ただたぼくはそれをみききして。
そしてきづいてしまった。
これが せいかい なのだと。
これは ひと が やっても おかしい こと では ないの だと。
ふるえる ぼくの ては レポート を けした。
『――――ソウダ、ソレデイイ。ソンナキロク、ミルヒツヨウハナイ』
めのまえ の ミュウツー は そらに とびあがった。
すがたは もう みえない。
「は……、はは……」
どうしてこんなことが起こるのだろう。どうしてこんな現実的じゃないことがおこるんだろう。どうしてそんな生き物を生き物とも思わないことができるんだろう。
答えは一つ。
これは、 ポケモン だから。
ポケモンは ゲーム だから。
このせかい は ゲーム の せかい だから。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは――――――――!」
※ ※ ※
ぼくは レッド。
ポケモン トレーナーを めざす 9さい の おとこのこ だ。
SANチェック・・・失敗
正気度喪失ロール 3D100・・・236
発狂・永久的な狂気
1D10 * 3 で3種類付属(※判定表は非公開)
・・・失語症、幻覚あるいは妄想、不信