鬼滅の刃の世界に転生したけど味方に鬼がいませんでした   作:せとり

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1.転生

 気がついた時には、そこは自分の知っている世界ではなかった。

 いわゆる転生というやつだろう。

 

 100年以上昔の明治時代。

 東北の寒村。

 そこで自分は別人になっていた。

 前世とは縁もゆかりもない土地に、両親から生まれた娘。

 鳥海 明日藍。

 それが今世の名前だった。

 

 

 

 

 鏡に映る自分の姿を見る。

 将来性を感じさせる端正な顔立ちの幼女だ。

 顎を上げて首筋を見ると、黄色い稲妻のような痣があった。

 この痣は生まれつきあったらしい。そして平熱が異常に高い。

 恐らく40度は越している。おかげで冬場はよく湯たんぽ替わりにされる。

 幼児とは思えないほど身体能力が非常に高く、どんなに動いても全く疲れを感じなかった。

 

 どう見ても鬼滅の刃の痣だ。

 生来の痣者。まるで縁壱のようだった。

 実は透き通る世界も入門している。ちょっと集中すると、生物や物体が透けて見えた。

 本当に縁壱みたいだった。

 けれど原作でのチートっぷりを見るに、自分がそこまで特別な者だとは思えない。

 痣者の寿命の例外にはなれず、早死にしそうだ。

 

 痣者関係なく、80まで生きられると思って漠然と生きるよりも、25までしか生きられないと思って集中して生きた方がより充実した人生を送れそうだと思った。

 25歳を過ぎて生きていれば、ボーナスステージだと思って幸運に感謝する。そっちの方がお得な気がする。

 

 ひとまずの目標は、生活水準の向上だ。

 本当に100年後には現代になっているのかと疑うぐらい、この時代の生活は貧しかった。

 まず電気ガス、水道がない。井戸水や薪の生活だ。

 衣食住もひどい。

 ぼろっちい茅葺屋根の家に、使い古したぼろ着を着回し、おかずなんて殆どない雑穀を混ぜたご飯。

 まさに、ザ・貧乏暮らしという感じだった。

 ひもじすぎて涙が出る。

 

 幼児とはいえ痣者の身体能力によって、大人顔負けかそれ以上の力で畑仕事や内職を手伝ったりしているが、焼け石に水だ。

 そもそも東北の農家の収入が低すぎる。ちょっと労働力が増したぐらいで状況が改善できるなら、初めからこんな貧乏暮らしを送ってない。

 こんな村でもそれなりに裕福な暮らしをしている者もいるが、それは代々積み上げられた富と、小作人からの搾取で成り立つものだ。真似できないし真似したいとも思わない。

 

 勉強して働きに出ても、この時代の女性ではまともに稼げないだろう。

 やはり才能を活かして鬼狩りになるべきだ。

 前世では鬼殺隊がブラックすぎると笑っていたが、とんでもない。時代背景を考えれば圧倒的ホワイトだった。

 隊服や刀が支給されて、福利厚生もばっちりで、給料も貰えるとか、今なら頼み込んででも鬼殺隊に入りたかった。

 ばっさばっさと鬼を倒して昇進して、柱になって故郷に錦を持ち帰るんだ。

 家族の暮らしを良くしてやりたい。

 特に弟や妹たちには、ひもじい思いをさせたくなかった。

 

 鬼殺隊に入るべく、思い出しながら呼吸の型の練習をしていた。

 痣の色と形から見て、適正はおそらく雷の呼吸だ。

 なので雷の呼吸を習得したかったのだが、覚えている型が1つしかなかった。

 他の型は獪岳が一通り使っていたはずだけど、全く思い出せなかった。

 霹靂一閃しか使えないなんて、善逸を笑えない。

 

 まだ体は幼いが、戦力は申し分ない。

 日輪刀はないが、十二鬼月とかでもなければ普通に夜明けまで足止めして殺せる気がする。

 問題は、どうやって鬼殺隊に接触するかだった。

 鬼や鬼狩りの伝承があるみたいなので、鬼と鬼殺隊は存在しているのだろうが、実物には会えていない。

 村に留まって待つだけでは遭遇は難しいだろう。

 本気で探すなら、こちらから会いに行くべきだ。

 鬼を追っていけば、自ずと鬼殺隊と見えるだろう。

 

 思い立てば吉日ともいう。

 夜中、家族が寝静まった頃、こっそりと寝床を抜け出して鬼を探しに遠出する。

 自分の足なら、夜中のうちに山一つ越えて戻ってくるぐらいできるだろう。

 今回は麓に下りて、町に向かってみる。

 現代と違って夜は真っ暗だ。光害がなくて星空が綺麗だが、もう見慣れてしまった。

 徒歩なら3時間ほどかかる距離を、体感20分ほどで駆け抜ける。

 もう夜は遅く、町の住人もみんな眠りについていた。灯りは殆ど見られなかった。

 1~2時間ほど街中を歩き回って警備してみたが、鬼の気配はなく、そのまま帰ることにした。

 

 帰路の途中、林で狸を見つけた。

 肉。タンパク質。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

 一瞬で距離を詰めて、首を掴んで延髄をねじ切り、瞬く間に絶命させた。

 悲鳴を上げさせることすらない早業だった。痛みすら感じる間もなかっただろう。

 

「明日は狸鍋かな」

 

 狸を片手に、鼻歌を歌いながら家に帰る。

 こうしてついでに獲物を狩っていけば、夜中に家を抜け出す言い訳になるし、実利もある。鬼探しは長続きしそうだった。

 

 

 

 

 夜のパトロールを始めて1か月。

 いまだに鬼も鬼殺隊も発見できていなかった。

 もしかして鬼なんていないのでは? なんて気さえしてきた。

 もはや鬼探しというよりも狩りに出かけているだけだ。

 お陰で肉が食べれて嬉しい。もっと早くからこうしていればよかった。

 

 その日は山一つを越えて遠くの集落を回っていた。

 山道を軽快に走っていると、遠くから悲鳴が聞こえたような気がした。立ち止まって耳を澄ますと、今度は助けを呼ぶ男の声が、小さいながらもはっきりと聞こえた。

 

『化け物め! くるな! 誰か助けてくれ!』

 

 切羽詰まった声だ。急いで駆けつけるべく全力で走った。

 行く手を遮る木々や藪を最小限の動きでかわし、ぐんぐん景色が流れていく。自分でも驚くほどの速度だった。

 やがて集落の外れの民家が見えた。

 野外を裸足で血相を変えて走る男と、それを追う異様な気配の人――いや、鬼だろう――を見つけた。

 鬼と思われる男の手は血に染まり、民家からは強烈な血の気配が感じられて、仮にあいつが人だろうと手加減は不要だと知った。

 

 逃げる男と風のようにすれ違い、鬼の手足を鉈の背面で打ち据えた。

 肉がつぶれ、骨が砕ける感触がした。

 一応人だった場合を考えて峰打ちしたが、人間だったら確実に再起不能だろう。

 人殺しの犯罪者に慈悲はない。

 

「がああ! なんだ?! 手足が!」

 

 鬼は顔から倒れこみ、口に入った土を吐き出しながら叫んだ。

 何が起きたのか分かっていないようだ。

 透かして鬼の手足を見ると、徐々に再生していた。鬼で確定だ。

 そうと分かれば、もはや容赦は不要だ。

 

「くそ、ガキ! お前の仕業か?!」

 

 鬼がこちらを睨みつけながら地面をはいつくばって体を起こす。

 何も答えないでいると、鬼は恐れを隠すように激高した。

 

「なんとかいえやオラぁ!」

 

 再生を速めていた右手で土を掬い、思いっきり投げつけてくる。

 しかしその行動は、準備段階のうちからはっきりと見えていた。

 飛び散った砂を目くらましにして接近して、すれ違いざまに首を落とし、そのまま背後に回って一息で6連撃。鬼はバラバラの肉塊になった。

 どうやら大した鬼ではなさそうだ。

 まだ夜明けまで時間があるが、余裕で足止めできそうだった。

 

 これだけ実力差があるのに殺しきれないなんて、鬼という生き物は本当に不思議だ。

 時間を撒き戻すように肉体が再生されていく様は感嘆を覚える。

 こんな存在を生み出す善意の医者っていったい何者だったんだ。

 鬼の力をこの目で見ると、とても信じがたい光景で、理外の力を感じた。自分も人のことは言えないが。

 

 無心で鬼の足止めをしていると、逃げた男が様子を見に帰ってきて、バラバラになっている鬼を見て腰を抜かしていた。

 自分も化け物の一種に見えたのか、声をかけるが怖がられて、制止もむなしく大声を出して集落の方へ行ってしまった。

 男に叩き起こされた村人たちが起きてきて、松明や提灯を片手に遠巻きから様子を窺っていた。

 逃げた男の家族と思われる死体も民家から発見されて、大騒ぎだ。

 さて、どう収拾をつけたものか。

 鬼狩りの人が来て事態を収めてくれないかなと思うもそんな都合のいいことは起こらず、鬼の足止めをしながら村人の対応をすることになったのだった。

 

 

 




まだ半分もかけてないけど勢いで投稿します。
5万字ぐらいの予定だし流石にエタらんやろ!(楽観)
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