幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。 作:馬刺し
8話 幼馴染と第二回イベント準備。
それは、あるネット掲示板にて……
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672名前:名無しの槍使い
おい、お前ら事件だ。
メイプルちゃんがパーティー組んでた。
673名前:名無しの剣使い
kwsk
674名前:名無しの槍使い
二層追加されてから中々メイプルちゃんの姿見なくなったろ?
偶々一層に用事できた時に2人のプレイヤーと歩いてるの見た。
仲良さげだから多分リア友。
675名前:名無しの弓使い
それ俺も見たわ。
3人とも美少女で、メイプルちゃんみたいに装備も整ってたから、既に化けてるかも。
676名前:名無しの大盾使い
極振りじゃないことを祈るしかないな……
677名前:名無しの剣使い
ホントそれな……メイプルちゃんが増えたら手がつけられない。
678名前:名無しの魔法使い
装備は?やっぱ魔法使いとか?
679名前:名無しの槍使い
多分2人とも後衛職じゃない。
青い服を着てる子は、短剣使いっぽいけど、もう1人はわからん。
何かもう……巫女としか言いようがない。
680名前:名無しの大楯使い
巫女!?
……巫女の癖に後衛職じゃないのか?
681名前:名無しの弓使い
何か脇差しみたいなの腰につけてたな。
682名前:名無しの剣使い
まさかの侍スタイル。
まあ、プレイスタイルについては時期にわかるだろ。
メイプルちゃんがいるなら。
683名前:名無しの大楯使い
それもそうか。
第二回イベントに期待、ということにしとくか。
684名前:名無しの槍使い
そうしとくか。
というか同じ大楯としてお前も頑張れ。
また何かあったら言うわ。
685名前:名無しの魔法使い
情報提供ありがとう。
これからも見守るか……
686名前:名無しの弓使い
そうだな。
そうしよう。
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しっかりと、女装が成功していたことをアサギは勿論知らない。
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「……よかったな、賭けは成功だぞ?」
「……そっちこそ」
俺とサリーが、視線を向けた先には、今回のメンテナンスによる各スキルの調整について、と書かれており……俺たちに関係があるのは【悪食】に回数制限がついたことだろう。
いや、ついてなかったこれまでが、おかしいんだけどね?なんなら、ついた後でもチート級のスキルである。
さらに、スキルを得るために、モンスターを利用することが難しくなる、モンスターのAI強化……これは、メイプルの取得した1時間攻撃を受け続けることで得られる【絶対防御】のようなスキルを、簡単に得られなくするためのものであると考えられた。
最後に、防御力貫通攻撃の追加。
武器種によって違いはあるが、3〜5種類の防御力貫通スキルを追加したらしい。
どう考えても、メイプルを狙い撃ちにする調整が多かったのだが、うちの天然娘は……
「あ〜あダメージ受けちゃうのかぁ……まぁ、いっか!」
これで済ませられちゃうので、問題ない。
俺だったら、少しは運営を恨みがましく思ったりすると思うんだが……そんな『たられば』を気にしてもしょうがないか。
「第二回イベントまで残り二週間……有意義に使わないとな」
「そうだね、私も取っておきたいスキルとかあるし……メイプルはどう?」
サリーが俺に同調し、メイプルにそう問いかけると、彼女は大きな声で、重要なことを言い放つ。
「あ!そうだ、イズさんに頼んでた大楯が、完成した、って連絡が来てたんだった」
俺とサリーは2人して目を合わせてから、彼女に当然ながらの質問をしたのだった。
「「えっと……誰?」」
……ところ変わって、イズさんとやらの工房にて
「こんにちは〜!イズさん、大楯が完成したって本当ですか!」
「あら?メイプルちゃん!いらっしゃい……とそっちの2人は?」
水色の長髪を持つ、おっとりとした雰囲気の美人さんが、そこにはいた。
どうやらイズさんとやらは、メイプルがフレンド登録をしてもらっている生産職のプレイヤーのようだ。
「えっと……メイプルとパーティーを組んでるサリーです。それと、コレがアサギで、同じパーティーメンバーです」
「おい、自己紹介ぐらい、俺でもできるぞ?コレとか扱い雑すぎない?」
「……俺?」
サリーに抗議したところ、俺の一人称に思うところがあったのか……イズさんはコテンと、首を傾げる。
なにそれ可愛い……というか、サリーさん爪先踏まないで死んじゃう。死なないけど。
「ああ、ええと……諸事情でこんな装備してますけど、一応男です。面倒ごとが嫌なんで、聞かれなきゃ答えないんですけどね」
異常なのはともかく、メイプルとサリーという美少女たちとパーティーを組む男プレイヤーがいる……なんて噂が立てば、冗談抜きに闇討ちされかねない。
俺が女装を許容している理由には、そういう面のことを考えたから、ということもあった。
「あら……そう、似合ってていいと思うわよ?」
少し興味深そうな顔をして、こちらを見てきた後、イズさんは笑顔でそう言ってくる。
興味深げにこちらを見ていたイズさんの表情と、昔、女装用の衣装を片手に、にじり寄ってきた幼馴染たちの表情が重なるのだが、変なこと考えてないよな?この人。
「……そう褒められると、少し複雑な気分になるんですけどね……メイプル、大楯はいいのか?」
なんとか苦笑いを浮かべて、返事を返す。多少強引だったが、話を切り上げるためにメイプルに声をかけた。
メイプルが、受け取った純白の大楯に『白雪』という名前をつけているのを眺めながら、イズさんには深く関わりすぎないようにしよう……と俺は密かに決心をするのだった。
◇◆◇
近くのカフェ的な店に移動した俺たちは、これから先の行動について、話し合いを行った……といっても、ブレインはサリー。補佐として俺が話し相手になっているだけで、メイプルはただ、美味しそうにクレープを食べていただけだったのだが。
「それじゃ、整理するぞ。第二回イベントは、二週間後。時間加速機能を使って、現実では2時間、体感では七日間を戦い続けることになる。パーティー単位での参加……探索系のイベントで、全部で300枚存在する銀のメダルを、10枚獲得できれば、イベント終了後に、金のメダル1枚と交換できる。前回順位が10位以内のプレイヤーには既に、金のメダルを1枚所持している。ダンジョン探索や、メダルを所持しているプレイヤーをキルすることで、銀のメダルは得ることができる。装備品に関してのロストはなし。また、ダンジョンではイベント限定の装備やアイテムを入手することもできる……とまあ、基本的なイベントの情報はこんなもんだ。オッケー?」
「もちろん」
「う、うん。多分大丈夫!」
大丈夫だよな、メイプル?
ルール無視とかは流石にしないとは思うが、既に常識は無視した後なので、少し怖い。
「こっからが本題、最初の一週間は各自で必要な道具、スキル、装備を整えることにする……メイプルは、採掘とか遠距離移動とか、DEXやAGIが必要な用事ができたら、どっちかに声をかけること。そんで、その次の一週間は、連携の強化やPSを高めるってことでいいか?」
「「りょーかい!!」」
今度は、しっかりと2人の声が揃う。
士気は上々、俺たちの目標はメダル30枚。
そして、金メダルの防衛である。
◇◆◇
時間は恐ろしいほど、早く過ぎ去っていき……新たなスキルや装備を含む秘策を、それぞれが隠した状態で、イベントの当日を迎えることとなった。
なんで、隠してるかって?
そりゃ、ゲームなんだし"面白い"を最優先して、やって行こうと3人で、決めていたからである。
基本的な動作の連携は行なってあるので、必要時に応じて、それぞれが切り札を使っていくことになりそうだ。
かく言う俺も、大量の秘策を仕込んできた1人である。生粋のゲーマーであるサリーも、こう言うノリは好きだろうし、メイプルは存在自体がビックリ箱のようなものだ。
とにかく楽しい祭りになることは間違いない。
「さてと……そろそろ時間だな」
イベント開始地点である広場へ向かう、俺の足取りは、いつにも増して軽かった気がした。