幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。   作:馬刺し

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全力で書いたつもりです。
気に入ってくれることを祈ります。


10話 幼馴染と苦手なアレ。

「さてと、各々利益のある拾い物ができたところで、再出発といくか」

 

 ゴブリンの主との闘いを終え、少しの間休憩をとっていて俺たちだったが、メダルを多く回収するためには、休憩ばかりもしていられない。

 そう思い、二人に声をかけたのだが、メイプルが何やら複雑そうな顔をしていることに気がつく。

 

「……どうした、メイプル?腹でも壊したか?」

 

 もちろん、そんなことではないのはわかっている。

 メイプルも俺が場を和ませるために、わざわざそんな聞き方をしたことに気付いているのか、苦笑しながら首を横に振っている。

 

「……あっくんだけ、メダル貰えてなかったから、いいのかなって思っただけ」

 

 メイプルの言葉を聞いて、少し驚いた。

 それと同時に、どこか納得している自分もいるので、少し複雑な気分だ。

 時々、この子は本当に優しい子なんだ、ということを思い知らされる。

 

「あー、まぁ……そうだな。サリー、俺が言っても納得しないだろうから、代わりに言ってくれ」

 

 同じようにメイプルのことを慈しむような目で、見守っていたサリーにそう前置きを入れて、聞いてみる。

 

「今回、一番得したの誰?」

 

 メイプルが、その質問を聞いた瞬間キョトンとしたような表情を浮かべる。何をそんな迷うことが……とでも思っているのだろう。

 しょうがないなぁ、なんてことを言いたげな顔をしたサリーが即答した。

 

「アサギに決まってるでしょ、ラッキーだったね……ピッタリな武器が落ちて」

 

「え……?」

 

 メイプルは、報酬の取り分けの際……アサギが先に剣を確保していったのは、気を遣ったから、そう思っていた。

 だけど、真実は違う。

 本当に欲しかったから、すぐさま取りに行ったのだ。

 

 ゴブリンキングサーベル

 

 STR+75 【損傷加速】

 

 壊れやすいが、破壊力は大きい。

 そんな"使い捨て"の剣。

 

 普通の剣使いが使えば、手入れは面倒で、肝心なところで壊れてしまうような危険性を持つ武器。

 しかし、俺に渡れば"決め弾"と化す。

 

 そんな剣の能力値を知らなかったメイプルは、しばらくの間『気を遣って損した』に類する言葉をブツブツと呟き続けていたが、照れ隠しにしか見えない。

 

 思いやりが空回りすると恥ずかしいよね!わかる、わかる!

 あ、ちょっと待って、蹴らないで!?そういうのはサリーの担当でしょうが……STR 0だからいいけどさ。

 

 ボス部屋の中にあったゴブリンの玉座の裏に、戦闘中は存在しなかった魔法陣が出現していて、そこに乗ることで、俺たちは草原へと戻ることができた。

 

 未だに"不機嫌です"アピールをしながら、AGI 0の足で、歩いていく彼女の後ろ姿を見る。

 その光景があまりにも微笑ましくて、俺とサリーはニヤケが止まらなくなってしまった。

 その後、二人してニヤニヤしていた様子を見られて、更に彼女は不機嫌になってしまうのだが………移動のペースを上げる際、アサギにおんぶをされただけで、メイプルは機嫌を治してしまったため、サリーが『チョロインすぎる』と思ってしまったのも、仕方のないことだった。

 

 その様子を、第二回イベントの見所として運営が放送しており……参加していなかったプレイヤー達が次々と尊死していく『メイプルちゃん、チョロイン百合事件』がメイプル伝説として、新たに名を刻むことになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 メイプルと歩くこと1時間、彼女を背負って走ること30分……格段に上がった移動速度により、俺たちは草原を抜けた先のエリア……樹海に入ろうとしていた。

 その時のことだった。

 

 ドクンと、鼓動が一瞬大きくなった感覚。

 肌がピリッとする"強者の匂い"。

 

 思わず、隣に居たサリーの手を握り、後ろへと飛んだ。

 

「ふぇ?え、きゃっ!」

「……?え、うわぁ!?」

 

 サリーとメイプルの驚いた声を、気にする程の余裕もなかった。

 ……ふぇ?って可愛いかよ、サリーさん。

 可愛かったので気にしちゃいました。

 意外と余裕あるかもしれないね!

 

「ちょ、アサギ……何を……ッ!?【ウインドカッター】!」

 

 最初は、急に回避行動をとった俺を訝しむような目でみたサリーだったのだが……カサリ、と樹海の奥から樹々の葉を揺らす音がした瞬間、戦闘モードへと意識を切り替える。

 一瞬の判断で撃ち放たれた風の刃は、空を切る。

 サリーが集中力を高めて、辺りを索敵してみるも、近くに生物は存在しなかった。

 

「ごめん……逃した」

 

 ゲームで"失敗"と言えるミスをした、と落ち込むサリーなのだが……俺からしたら、障害物が多く存在する樹海で、音だけを頼りとした攻撃を外す……これを失敗と認識するサリーが異常なだけだと思う。

 

「いや、全然問題ない。逃げてくれたなら、まだマシな方だ。多分、接敵してたら少なくとも俺はやられてた」

 

 そのことを確信できる程のものだったのだ。自分でもわからない、先程の感覚は。

 

「え、何?今プレイヤーが居たの!?」

 

 うん、お前が居ると安心できていいな。

 そんな、少し失礼なことを考えているとバレないよう、メイプルに、さっきまで居たけどもう逃げたよ、とだけ伝えとく。

 

「アサギ……さっき、どうやってプレイヤーに気付いたの?」

 

 サリーの質問には、うまく答えることができなかった。

 言語化が難しい感覚だったのだ。

 そのため、一言だけ伝えておく。

 

「……勘、かな?」

 

 そんな俺の返事は、ひどく曖昧な言葉であるはずなのに……暫くの間、サリーは何かを考え続けていた気がした。

 

 

◇◆◇

 

 

 そんなことがあったので、樹海での探索はかなり念入りに索敵を行いながら、することにした。

 そのため、どうしてもペースは落ちる。

 周囲の警戒に、かなり集中力を使っていたサリーに、いい加減、疲れが見られるようになったため、現在サリーは俺の背中におぶさって眠っている。

 ……何度も移動時におんぶをしているメイプルは慣れたのだが、サリーをおぶった回数は、リアルを入れてもあまり多くない。

 今のうちに堪能しておこう……いやね、冗談だから変態を見る目でこっちを見ないでもらいたいな、メイプルさん。

 

 そろそろゲーム内時刻では、6時を回ろうとしている……そんな時だった。

 

「……あれ、なんか……居る?」

 

 先行していたメイプルが、そう呟いた。

 一応、何が来てもいいように右手を小太刀の柄に添えておく。

 そして

 

「わぁ!綺麗な炎……ねぇ、アレって人魂ってやつかな?あっ、あっちにはゾンビがいる……お化け苦手なサリーが眠っててよかったね!」

 

「【潜影】」

 

「へ?」

 

 背負ったサリー共々、メイプルの影へと沈み込んだ。

 ……言い忘れていたが【潜影Ⅳ】に強化された時、一名触れているパーティーメンバーを影の中へと同行できるようになっていたのだ。

 自分の影に沈み込まれたメイプルはというと……

 

「え、ええぇぇぇ!?」

 

 あっさりと一人にされたことに対して、絶叫したのだった。

 

 

 side メイプル

 

 

 あれから私は、一人慌てて、近くに存在していた廃屋に緊急避難した。

 【毒竜】を連打して、立ち塞がる敵たちをなぎ払い進んでしまったが、おそらく外がこの様子では、あっくんに加えサリーも戦力にはならないだろうから、今日の探索はここで打ち止めにすると思われる。

 ならば、使い切っても問題はないはずだ。

 私の足で3分圏内の位置に、休息可能な場所があったのは……影に引きこもっていたあっくんにとって、かなり幸運なことだったと思う。

 

 私なりの全力疾走で見つけた廃屋に入ると、ちょうど3分が経過したのか【潜影】スキルが解けて、あっくんが私の影から出てきた。

 サリーはいまだに眠り続けており、あっくんは半泣きである。

 しばらく彼に謝り倒されたのだが、怒りは全く湧いてこない。

 むしろ、普段と様子が違いすぎる彼の方を心配してしまった。

 

「……ごめん、その……ホラー系は、無理」

 

 サリーに膝枕をしていると、かなり近めの距離に座っていたあっくんが、ポツリとそう言った。

 その姿を、遠い昔に見たことがあった気がして……脳裏に小学生低学年時代の思い出が蘇った。

 

「……あははは、そうだった。あっくん、サリーと同じかそれ以上、お化け苦手だったもんね」

 

 その記憶には、お化け屋敷に入った後、ギャン泣きして係員に助けられていた理沙の姿が強く残っていたのだが……実はこの時、彩華は入る前にギャン泣きして挑戦することすらを拒否していたのである。

 

「ごめん、ほんと……ごめんなさい」

 

 私に敬語を使い始めているレベルだ、精神的には相当まいっているのだろう。

 

 そして……気付いてしまった。

 

 普段から、自分やサリーに振り回されることの多い彼は、自分たちを甘やかすことはあれど、甘えてくることはないことに。

 そして、今。

 無意識なのだろうが、彼は私の手を握りしめて離さないでいることに。

 

 つまり

 

 大好きなサリーに膝枕をしてあげられて、大好きな彼に頼られて…………実は私、今凄くおいしい状況にいるのでは……と気付いてしまったのである。

 

 まあ、そんなことを考えていない、といえば嘘になるのだが……私が本当にしたいのは、この状態の持続じゃない。

 

「……いいよ、あっくん。こっち来ても」

 

「……?」

 

 視線だけで、疑問の意を示してくる。

 普段よりも近くにいるのにって、感じのこと考えてそうだ。

 ……こういう時、アイコンタクトって便利なんだよなぁって、思ったりする。

 

「早く早く、サリーも起こしちゃうね。みんなで、3人で一緒に居れば、怖くないよ♪」

 

 繋いだ手を引っ張って、肩がしっかりとくっつくぐらいに、彼の体を引き寄せる。それと同時に、サリーの肩をトントンと叩いた。

 

「……ん、ん?メイプル……どうしたのって、何処、ここ……って膝枕……って!??!!」

 

 顔を赤く染めて勢いよく、起き上がったサリーは、窓の外の光景を見て声にならない絶叫を上げた。

 瞬間、何で起こしたの!と言うような視線を向けてくる。 

 私は手を合わせて、ごめんねと小さな声で伝えてから隣を見るように視線で促した。

 

 そこに居たのは、普段よりもずっとずっと小さく見える(普段もサリーとあまり変わらない身長なのだが)涙の後をつけた幼馴染。

 

「みんなでいれば、怖くないかなって思って、起こしちゃった」

 

「ん……そっか。そうだね、その方が怖くないかも」

 

 そう言って笑ったサリーは、私の反対側、つまり、彼の隣に移動するとわしゃわしゃっと、彼の頭を撫でて元気付けようとする。

 

 ポツリ、ポツリと会話をしている内に、真ん中にいた少年は、気持ち良さげに寝息を立てはじめた。

 それを確認した後、サリーと目を合わせて二人で笑い合う。

 

『ありがとう』

『そっちこそ』

 

 互いにそれだけを、口パクで伝えてあいそれから先は沈黙が続いた。

 寂しくはなかった。

 その理由は3人で手を繋いでいる間は、何にだって立ち向かえる気がしたから、だと思う。

 

 

 side サリー

 

「……ん、何の……音?」

 

 一人、廃屋の中でサリーは目を覚ました。

 恐らく、昼間から睡眠をとっていたため、他の二人よりも睡眠が浅かったからなのだろう。

 

 そして、感覚がしっかりと機能してくると自分が聞いていた音が、今いる廃屋の下から聞こえてくる呻き声なのだということに、気がついた。

 

「……!…………ふぅ」

 

 そのことに気がついた瞬間、叫び声が洩れそうになるが、全力で抑えきった。

 頑張った、うん。私すごい頑張った。過去最高と言っていいほど、全てをかけた気がした。この頑張りに比べたら、この前の巨大魚なんてチョロいもんだった。

 

 何故、そうまでして悲鳴を飲み込み、助けを呼ばなかったか?

 そうしてまでも守りたかった光景が、すぐ側にあったからだ。

 

 地下から聞こえる呻き声は、そこそこの音量であり、これが長時間続くようならば、隣にいる少年が目覚めてしまうかもしれない。

 それだけは、あってはならない。あっては許されないことである。

 勇気をもらうため、一度繋がれていた手に軽く力を込めた。

 そして、離す。

 まだ、右手に熱は残っている気がした。

 だから、私は動ける。何があっても、大丈夫。

 部屋の中心に置かれたテーブル、絨毯をどかせば、地下へと続く隠し階段が存在した。

 最後にもう一度振り返り、

 

「すぐ、戻ってくるからね」

 

 そう一言言い残して、私は廃屋の地下へと姿を消した。

 

 

 

 そこには、こちらに背を向けて座っている男性が一人居た。

 

 蝋燭に照らし出された彼の体は、血だらけで正気を失っているように見えた。

 

 血の気が引いた感覚。

 指先が動かなくなり、膝が笑い出す。

 段々と、呼吸のリズムさえもが狂っていき、焦点が合わなくなる。  

 

 

 

 

 来るんじゃなかった。

 

 

 

 

 その考えが、脳内に浮かんだ瞬間。

 

 

 熱を……思い出した。

 

 

 右手に残った熱が、私を支えてくれた。

 脳に酸素が回っていく。

 動かなかった指先には、血が巡り……次第に体に起きた異変は、収まっていく。

 

 冷静になった脳は、聴覚から送られてくる情報をしっかりと捉えた。

 

「はぁ……痛い?そんなの【ヒール】かけてあげるから、さっさと黙って!」

 

 先程まで呻いていた男性に、何度か【ヒール】をかけてやると、どうやら男性は成仏していったようで、男性がいたその場所には一つの指輪が残されていただけだった。

 

 効果を確認なんていられない、指輪をインベントリに打ち込んで、なるべく音を立てないよう最速で彼らのところへと戻っていく。

 

 テーブルなどを静かに元通りにしてから、私も元の位置へと移動した。

 

 さっきよりも少し近い?

 気のせい、気のせい。

 多少、暑苦しくても構わない。

 その熱が、私を守ってくれたのだから。

 

 右手を彼の左手に、重ねる。

 その瞬間、彼の表情が和らいだ気がしたのは、流石に都合が良すぎるだろうか?

 

「ありがとう」

 

 最後に一言だけ、そう呟いて私は彼へと体重を預けた。

 

 

 

 side アサギ

 

 

 

「……ん、ん?」

 

 何やら、温かい。

 というか、もはや暑苦しい。

 そして、左右から良い匂いやら、心地の良い柔らかさやら、なにやら……なんて、考えていると、段々と思考回路が機能してくる。

 

 目蓋を上げると、左右に二人の女神がこちらへと体重を預けてお眠りになっていた。

 ……サリーの方が、ギュって近づいてきてくれてるのは、少し意外だったかもしれない。

 

 昨日のことを思い出すと、恥ずかしくて死にそうになる。

 バカじゃねぇの、マジで!

 お化けが怖くて幼児退行化とか、マジで恥ずかしくて、軽く10回ぐらい死ねる。

 

 ただ……やり直せるなら、やり直すか。

 そう聞かれたら、恐らく俺はやり直さないだろう。

 ……コイツらのことをとやかく言えないぐらいには、やはり俺も彼女らを好んでいるのだ。

 

「本当、良い幼馴染を持てて、俺は幸せだな」

 

 一言だけ、そう呟いた後、静かに起き上がった。

 その時にサリーとメイプルを互いに体重をもたれさせ合うよう、うまくやっておく。

 身長の低いメイプルが、サリーの肩に頭を乗せて、その頭の上にサリーが頭を乗せた状態、といえば伝わるだろうか?

 

 その状態の彼女らに、ストレージからブランケットを取り出してかけておいとく。

 最後に彼女らの頭をソッと優しく撫でてから、廃屋の外へと移動した。

 

 さてとせめてもの、お礼の時間と行きますか。

 

 

◇◆◇

 

 

 その後、メイプルとサリーがアサギが全力をかけて作った朝食を食べて、満面の笑みを浮かべることとなるのだが、その様子がイベントの見所に含まれたことは、言うまでもないことだ。

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