幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。   作:馬刺し

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遅くなりました!
少し忙しかったのと、単純に上手く纏まらなかったのが原因です。
申し訳ない。


14話 幼馴染と乱戦前夜。

「俺はペイン、君と同じプレイヤーさ」

 

 

 

 

 

 そいつは、気配もなくそこに現れた。  

 

 

 

 

 

 ……なんて格好良さげに言ってみたが、実際は久々の水浴びにテンションが上がって、索敵を怠っていたことが大きい。

 

「……斬らないのか?」

 

 当然、その疑問が浮上する。

 

 どこかの極振りさんと違って、俺を倒すには、剣一本と一秒あれば事足りる筈だ。

 

「君が戦うと言うのなら、今からでも相手になるよ」

 

 爽やかな笑みを浮かべている聖騎士さんの目を見て、そこらのプレイヤーとは強さの格が違うことを理解する。

 

 あっさりと両手を上げて降伏の意を示した。

 

「誰がやるか、お前なんかと……タオルの恩もあるからな。それに……勝算のない勝負はしない主義なんだ」

 

「……そうか」

 

「なんで、少し残念そうなんだよ!?」

 

 視線を外し、ポツリと呟いたペインに対して、おもわず食い気味にツッコミを入れてしまった。

 何、お前? 

 割と好戦的なタイプだったりする?

 

「いや、君とそのパーティメンバーは少し有名人だからね。どんなプレイヤーか気になっていただけだよ」

 

 俺のツッコミに冗談だ、と笑いながらそう返答してくる。

 冗談に見えなかったのは、俺だけなのだろうか?

 

「……まあ、前回イベントでメイプルは悪目立ちしてたらしいからな。喧嘩売るのは、お勧めしないぞ?」

 

 タオルを借りたこともあり、心からの親切でそう言うと、彼は少し意外そうな表情をしてから、不敵な笑みを浮かべてみせた。

 

「……っ、忠告ありがとう。俺も、君と同じだ。勝てると思うまで、勝負を挑むのは止めておくとするよ」

 

「……そんな時が来ればいいけどな」

 

 心の底からそう思う。

 アイツ、まだまだ伸び盛りなのだ。

 

「来るさ、近いうちにね……それじゃあ、イベントお互い頑張ろうじゃないか【巫女】さん」

 

 そう言い残して、ペインは背を向け歩いていく。

 終始格好つけられたまま、というのも尺なので

 

 

「うるせぇ、俺は男だ…………タオルのお礼に、極上の焼き芋でも作ってやろうと思ったんだけどな!」

 

 

 巫女と呼ばれたことに対する返事と、大きすぎる独り言を叫ぶと、彼はその足を止めた。

 

 

◇◆◇

 

 ちゃっかりしっかりあっさりと、俺が作った焼き芋を美味しそうに食べていったペインと分かれて数十分。

 小川で釣りをしていると、メイプルから『サリーが起きたよ!』とのメッセージが送られてきた。

 

 サリーが崖下に降りてくるまで、少なくても二時間はかかるだろうと予測してから、どうやって時間を潰すか考える。

 そろそろ釣りには、飽きてくる頃合いだったのだ。

 取り敢えず、目印としての傷をつけた場所へ戻ることにする。

 途中で見かけたモンスターは、どれも頭部に一発投げておけば倒すことが出来たので、渓谷全体の攻略難易度は、それほど高くないのかもしれない。

 

 やることがなくなったので、料理スキルを叩き上げることにした。

 

 先程の焼き芋により【料理Ⅳ】へとスキルは上がっているが、最終的には【料理Ⅹ】まで持っていきたい。

 

 

 お前はお前で何を目指しているんだ?

  

 

 と、運営サイドがその行動を見て、大きくため息をつくことになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 ゲーム内といえど、食べ物を粗末にする訳にもいかない。

 ストレージに入れてしまえば、作ってからの時間は関係ないのだが、気分的に干し芋やらスルメやらという保存が効くものを中心に、生産し続けること約二時間。

 スキル【料理Ⅴ】を手に入れたところで、上から聞き覚えしかない声が聞こえてきた。

 

「おはよう、アサギ……それとごめん、結構休んじゃった」

 

「おはようさん……あんま気にすんなよ?寝不足で、肝心な時に倒れてもらっても困るからな。それよりスルメどう?さっき川で釣れた」

 

 メイプルが普通に降りてくることは出来ないため、当然相手はサリーである。

 随分と顔色も良くなったみたいで、安心だ。

 

「川って……大丈夫なの、それ?」

 

「知らん、毒はない」

 

 そんな会話を挟みながらも、俺とサリーがスルメを咥えていると、メイプルから崖から少し離れるようにと連絡が届く。

 

 何をするつもりなんだか、と二人して目を合わせた後、一応崖から離れたところで……

 

 

「「うわぁ……なに、あれ?」」

 

 同時に、そう言葉を零した。

 

 視界に映るは、紫の球体が崖を転がり落ちてくる光景。

 いやあれ、どう見ても毒竜の毒と同色じゃんか……なにしてんのメイプル?

 

 その球体は、俺たちの目の前に落下すると同時に、破裂する。

 そして、内包されていたメイプルが、弾き出されたように出てきた。

 

「……目が、回って……ふらふら、する〜」

 

 パッと見で、怪我はなかったことはよかったのだが、困ったのは、彼女の取った次の行動だった。

 三半規管をやられたらしく、こちらにしがみつこうとしてきたのだ……致死毒塗れの状態で。

 

「おい待て、死ぬから!?こっち来るな!」

 

「酷い!?ねぇ、サリー、あっくん冷たい!」

 

「ちょ、待ってメイプル!?こ、こっち来ないで!?」

 

「サリーまで!?」

 

 

 その後、三分ほどを要して、半泣き状態だったメイプルの誤解は解けた。

 心が傷ついた!とか色々言った挙げ句に、お詫びとして、三人でデートをする約束を押し付けられたのだが……ご褒美だとしか思えないのは、口にしないようにしよう。

 そんなこと言えば、弄られるのがオチだろうしな。

 

「ま、何にせよ合流できてよかった……今日はどうする?」

 

 息抜きの時間は終了。

 仰向けで寝っ転がるような状態から、起き上がって姿勢を正す。

 そして、彼女らにこれからの予定を尋ねた。

 

「……ん、どうしようかな……普通に探索してもいいんだけど……うん。この渓谷かなり広いみたいだから、一応拠点を見つけときたいかな?メイプルもそれでいい?」

 

「うん!……あ、そうだ!私、卵を孵してあげたいかな……ちょっと気になってて」

 

 どうやら、最初の目的は安全な場所の確保になるようだ。

 立ち上がり、大きく伸びをした瞬間……

 

「…………ッ!……ふぅ」

 

「ん……アサギ、どうかした?」

 

 フッと意識が遠くなる感覚。

 膝からガクッと崩れ落ちそうになるのを、どうにか抑えた。

 

 vs怪鳥 vs一角兎

 

 この二回の戦闘が原因だと考えられるが、一番影響が大きかったのは怪鳥戦での無茶。

 つまり、二度と見たくもない悪夢が原因だろう。

 

 単独行動時に張られていた緊張の糸が、幼馴染たちの姿を見て緩んでしまったのがトドメを刺した。

 気がついていないだけで、現在の俺には想像を遥かに超える精神疲労が、溜まっていたのだ。

 

 立ちくらみのような感覚を振り払い、質問してきたサリーと不安げな表情を浮かべているメイプルへと笑顔を浮かべる。

 徹夜が響いているだけだ。少し仮眠を取ればマシになる。

 自分自身にそう思い込ませながら、返答する。

 

 

「ん、何が?別にどうもしてないぞ?」

 

 

 次の瞬間、不自然のない笑顔を向けられたサリーとメイプルの表情が消えた。

 こちらに向けられた二人の目からは、ハイライトが失われていた気がした。

 

「ね、アサギ?」

 

「あのさ、あっくん?」

 

 二人が同時に、そう前置きを入れて

 

「「()()()()()は吐いちゃダメだよね?」」

 

 打ち合わせをしていたかのように、そう問い詰めてくる。

 そんな二人に、俺が言える言葉など一つしかない。

 

「あ、はい。すいませんでした」

 

 ただでさえ尻に敷かれているのが現状だというのに、一対二では勝ち目などない。

 ましては、正論を言っているのが向こうなのだから、抵抗などできるわけがなかった。

 

 

 俺から、今の体調を聞きだした二人が『早く休むよ!』と俺を引きずるようにして、渓谷を進んでいく。

 その後ろ姿を眺めながら、ふと思ったことを呟いた。

 

「……嘘なんて、バレるに決まってんのに……何やってんだろな」

 

 その独り言に対する回答は、幾ら考えても出てこなかった。

 

 

 移動すること十数分。

 安全地帯だと思われる、崖にできた大きな裂け目へと二人に放り込まれた。

 随分と雑に扱われたことに対するツッコミよりも先に、疲労感と安心感による眠気が俺に牙を剥く。

 

「……が先に……!」

 

「いや、昨日は………!」

 

「……の方が……から」

 

「……だって……つも、……ってるから」

 

 

 そんな、彼女らの言葉など耳に入ってこない。

 少年は深い深い眠りへと誘われていく。

 

 ……こんな、展開……最近、合った……よう、な……

 

 最後まで、ツッコミの精神を忘れないことが、実は彼の一番の長所であるのかもしれない。

 

◇◆◇

 

 

 不甲斐ないことに、あれからしっかりと睡眠を取ること6時間程。

 心地の良さを感じていた筈の頭に、段差から落とされるような浮遊感を感じたことで目を覚ました。

 

 耳の奥へと響いてくるメイプルとサリー二人の声から、彼女らのテンションがかなり高いことが窺える。

 一体、何事だ?

 そう考えて向けた視線の先には、ちんまりと緑色のカメと白色の狐が座っていた。

 

「え、待って。何この子たち可愛い」

 

「え、えっと……モンスター、なのかな?」

 

 思わず溢れた疑問の言葉に、メイプルが疑問符を語尾につけて返答する。

 それもそのはず、モンスターの卵から孵ったらしいカメと狐は、モンスターだなんて思えないぐらい愛嬌のある姿をしていたからだ。

 

「これは中々……うん。俺の分もありゃ良かったのにな」

 

「珍しいね?アサギが私達に気を遣った後に、たられば言うのは」

 

 かなり意外だったのか、サリーが少し変わったものを見るかのような目で、こちらを見てくる。

 メイプルは、その言葉に少しだけ顔を暗くしているようにも見えた。

 

「いやいや、譲ったことにどうこう言ってるんじゃないよ。どうせなら、三人で散歩みたいに出来たら良かったのにって思っただけだからな?」

 

 メイプルがまた落ち込んでしまうかもしれない、と少し焦り気味に、二人へとそう弁解する。

 大事なのは、三人でという部分なのだ。俺が譲らなかったところで、その目的が果たされる訳ではない。

 

「うん、知ってる」

 

 そんな俺の慌てた様子を楽しむように見ていたサリーが、あっさりそういう。

 メイプルも、暗い表情を浮かべていたのは演技だったようで面白そうに笑顔を浮かべていた。

 彼女らのニヤニヤした顔を見て、軽く弄られていたことに気づく。

 

「……性格悪い」

 

「「嘘つく方が悪い」」

 

 どうやら、両方割と普通に不機嫌な様子だった。

 

 

 

 カメ、狐の順にシロップ、朧と名付けられた二匹のモンスター及び新しいお仲間さんたちには、ステータスとレベルの概念が存在することが判明。

 三日目は全員それなりに疲れが溜まっていたこともあり、二匹のペットのレベリングをすることになった。

 メイプルよりカメのシロップの方がAGIが高かったことには、触れない方が身のためだ。

 

 

 

「メダル、集まりそうか?……寝てたら結構、時間食ったけど」

 

「ん……正直、30枚は難しいかもね」

 

 メイプルがシロップと朧の餌……つまり雑魚モンスターを麻痺させて回収するという作業を行なっている間、モンスターの捕獲手段を持たない俺とサリーは洞窟内で身を休めていた。

 

 メイプルがいないこともあり、比較的に現実的な話ができるサリーと方針を定めていく。

 

「やっぱ30はキツいか……悪いな」

 

「いや、これはしょうがないかな……私のSTRじゃあ背負えたところで、速く移動は出来なかっただろうし……休まず動く、なんて無理だから」

 

 そもそも、たった三人で400枚中30枚のメダルを確保することの難易度が高すぎるのだ。

 

「良くても20枚なら、ってところかな?あっ、メイプルはアサギが10枚確保してないってわかったら、メダル使わないと思うよ?」

 

 サリーの判断、そして俺と同じメイプルへの予想を聞き、少し考える。

 夜戦に出たい気持ちはあるのだが……動きすぎて今日みたいにダウンする、なんて本末転倒な結果にならないようにしないといけない。

 

「ちょっと、賭けになるけど……釣るか」

 

 考えを巡らせ、結論を出す。

 

「釣るって……何を?」

 

 呟きが聞こえていたのか、訝しむような表情を向けてくるサリーに対して、俺はニヤリと口角を上げて言うのだった。

 

「なぁ、サリー……稽古つけてくれないか?」

 

「へ?」

 

 

◇◆◇

 

 

「……っ!」

 

 一閃、それだけで、彼に襲い掛かろうとしていた黒き巨体が地に伏すことになる。

 

 一閃、それだけで、彼に襲い掛ってきた三人のプレイヤーの姿を葬り去る。

 

 カツリ、カツリと一人悠々と歩みを進めていく。

 

 目の前に現れるは先ほどの何倍もの巨躯を持ち、白銀の毛皮で全身を包まれたクマ型のボスモンスター。

 

 その攻撃を……躱し、弾きそして、正面から押し返す。

 

 彼の攻撃が一撃、二撃……と銀色の巨体に撃ち込まれるたび、攻撃パターンの変更が行われるも、彼にとってはさしたる障害でもない。

 

 相手のHPが赤ゲージに到達し、奥の手であろう渾身の一撃が放たれる。

 地面に腕を振り下ろし、そのボスモンスターが吠えると地面からは岩が突き出てくる。

 

 その攻撃の全てを見切り、跳躍したところで彼は気がつく。

 

「…………」

 

 安全地帯だと思われたその場所が、ボスモンスターにとっての最後の策。

 地中から飛び出た岩により、逃げ場を奪われた彼に、その巨体が豪腕を振り下ろす。 

 

 そして

 

「……中々、面白かったよ」

 

 

 一閃、彼が、青年が、聖騎士がその勝負を終わらせる。

 

 ドロップアイテムを確認、メダルと報酬をインベントリに放り込む。

 見上げると、そこには青白い月が浮かんでいる。

 

「そろそろ……か」

 

 二つ名"聖剣"前回イベント第1位

 ペインと呼ばれるその騎士は、一言だけそう呟いた。

 

 

◇◆◇

 

 

「無理無理無理……本当、もう無理だって〜…………私の馬鹿、こんなキャラ作ったの誰なの!私だよぉ!」

 

 同じ空の下

 

 ぶつぶつと、小声で自分への罵倒を続ける緋色の髪を持つ少女が一人。 

 

 もう、三日目も終わりを告げる。

 簡易テントのようなものを仲間が作ってくれたことはよかったのだが、なんだか敬われすぎていて辛い。

 

「炎帝って何!?かっこいいけど……うぅ〜やっぱ、恥ずかしいって!」

 

 自室と化したそのテントの中で、独り言を呟き続け、そしてベットでのたうち回る。

 

 そんな彼女に

 

「ミィ……明日の行動についてなのですが、今よろしいでしょうか?」

 

「!?!?……ふぅ……ああ、問題ない。今、行こう。人を集めてくれ、ミザリー」

 

 聖女、という二つ名を持つ仲間から、声がかかった。

 

「あぁ〜、もう……しっかりしないと!……やっぱり明日からは自由行動にしようかな……」

 

 二つ名"炎帝"前回イベント第4位、という実力者である彼女は弱音を吐きながら、テントから出ていくのだった。

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 そして……第二回イベント最大の乱戦となる

 

 

 

 

 

 

 

 第四日目の日が昇る。

 




また、書くのが難しいキャラが増えた……
とりあえず頑張りたいと思います。
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