幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。   作:馬刺し

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21話 幼馴染と海辺の出会い。

「……今日もいい朝、張り切って行こ〜!」

「メイプルはいつも元気だね?」

「そりゃ、サリーもあっくんも一緒だからね!」

「ま、張り切って歩くのは俺なんだけどね?」

「……そこを言われると辛いかな」

 

 五日目の朝である。

 

 散々な目に合った昨日だったが、なんだかんだで金のメダルが二枚。

 【神速】が負けるレベルのプレイヤーキラーの存在という情報に、新たな装備など、今までで最大の成果を上げることができたため、実の所そこまで不満はない。

 

 俺がドンパチやっていた間に、メイプルとサリーは地下ダンジョンを彷徨っていたようで、なんでも一緒に地下へと落ちていった女性プレイヤーのカスミと鎖で繋げられたまま、システム的不死の巨大カタツムリに追い回されたのだとか。

 地下ダンジョンでの成果は銀のメダルが一枚と大楯が一つ。

 

 俺に銀メダルを見せびらかしてきた彼女らが、俺の持つ二枚の金のメダルを見た時の反応は爆笑モノだった。

 少し、動画を撮らなかったことを後悔しているぐらいである。

 

 取り敢えず、お互い濃い一日を過ごしたことにより疲労が溜まっていたので、見張り番をしながら睡眠を取った。

 

 そして、現在に至る。

 

 俺が昨日の時点で探索していた森林とは、別方向へと進んでいくと一つの洞窟の入り口を見つけた。

 避ける理由もないため、警戒を強めながらその中へと入っていく。

 不思議とモンスターとのエンカウントはなかった。

 

 進んでいっても別れ道などはなく、道が複雑に曲がっている訳でもない。

 

「……外れ、にしては深すぎるか?」

「うん……少し、変だね」

 

 経験則でサリーと会話を進めるが、背中のメイプルは頭に疑問符を浮かべている。

 ゲーマーとしての勘のようなモノだと説明しておく。

 俺やサリーは、ここら辺にレア物ありそうだな、とかイベント起きそうだよな、なんて感じた時は理由がなくてもその感覚を優先するような人種なのだ。

 

「……アサギ。ちょっと止まって」

「……ん」

 

 サリーから声がかかり、足を止める。

 彼女は暫く目を閉じてから、やっぱり、というように頷いた。

 

「少しだけど、波の音が聞こえる。ここは洞窟っていうより、トンネルって表現の方が合ってるのかも」

「……波の音、ね」

 

 彼女にそう言われて、耳をすましてみるが俺もメイプルも波の音など感知することができない。

 進めばわかるよ、なんて言うメイプルに肩を叩かれて歩みを再開する。

 暫く歩き続けると、進む先に光が見え始めた。

 その段階までくるとようやく、俺とメイプルの耳にも波音が届いてくる。サリーの異常性を再認識した瞬間だった。

 

 光が強まってくる。

 

 洞窟を抜けた。

 

 その先に、真っ白に輝くビーチがあった。

 

 そして、開放感あふれるその風景に感動していた俺の気持ちに水を差すように

 

『スキル【秘境の運び屋】を取得しました』

 

 無機質なアナウンスが脳内に響き渡った。

 

 

 

 

【秘境の運び屋】

 

 プレイヤーを背負った状態において、全地形効果を無効化する。

 プレイヤーを背負った状態でAGI+20%

 

 取得条件

 

 プレイヤーを背負った状態で、五つ以上の秘境指定地帯に到達する。

 

 

 

◇◆◇

 

「わお、何気にチート級のスキル。地形効果無効……って中々強力だよな。AGI+20%は嬉しいけど分からないな……背負った状態だと速度落ちるし」

 

 浜辺にて手に入れたスキルを確認しながら、海を眺める。

 ピチャピチャと水遊びをしているメイプルに、予想以上の波を受けてびっくりするメイプル。

 砂遊びを始めて、こちらに手を振ってくるメイプル……うん、メイプルのことしか眺めてないな。

 

 彼女へと手を振り返しながら、今度こそ海を眺めていると、ちょうどその時に潜水していたサリーが息継ぎをしに帰ってきた。

 たった一瞬しか海面上に出てきてないと言うのに、バッチリと目が合ってしまうと言う奇跡。

 なんとなく気まずくて目を逸らしてしまった俺に『しょうがないなぁ』なんて言いたげな笑みを向けてくる。

 かなり遠くにいたはずなのに、その笑顔だけはしっかりと認識できた。

 忘れることのないように、その笑顔を心の中へとしまっておいた。

 

 

 楽しそうにしている彼女たちを見守りながら、五つ以上の秘境という単語に疑問を抱く。

 恐らくは雪山、渓谷、砂漠、海辺に……あれ?

 もう一個は何?

 少年は考え続けたが最後まで『竹林』という単語は出てこなかった。

 他が濃すぎて、記憶に残っていなかったのである。

 

 

「カナヅチ克服できた方がいいんだろうけど……克服できてたら、カナヅチって言われてないんだよなぁ」

 

 唯一泳げるサリーが海中の探索。

 ステータスの問題で泳げないだけのメイプルは砂浜を探索することにした……メイプルは遊んでるけど。

 

 一度だけ俺はリアルの方で、海に入り溺れたことがある。

 生死に関わるような事故ではなかったのだが、そのことを知っている彼女らは、近付かなくていいよ(近付くな)と強制的に俺を見学状態にしてしまったのだ。

 

「……過保護すぎる気もするけど、しょうがないか」

 

 にしても、海辺で巫女装束はないな。

 雪山の時は色合いがギリ合ってたし、砂漠の時は戦闘中だったから仕方ない。 

 ただ、戦闘している訳でもないのにこの格好は少し気に食わない。

 

 メイプルやサリーのようなゲーム感の強い装備なら別にいいのだが、無駄にリアル感がある巫女服だと気になってしまう。

 

「ミィにも誤解されてたしな……たまには、着替えるか」

 

 『蒼刃』と『顕現の証』を含む装飾品だけを残して、軽装へと装備を変化させる。

 

 黒のインナーにライトグリーンを基調とするパーカー。

 ズボンも袴から軽装へ変更。

 装備は軽くなった筈なのだが、完全な見た目装備であるためステータス面での恩恵はゼロに等しい。よって、感覚は軽くなったのに、装備のAGI+分がなくなったため、速度は落ちているとは不思議なものだ。

 伸びをして体をほぐす。

 メイプルが探索をサボっているので、危なくない程度にその辺を見てみることにする。

 

「ま、何はともあれ……これなら、男とーーー」

「あっくん〜!勝手にどっか行ったら危ないよ〜!って、何その格好、可愛い!」

「……くそぅ」

 

 どうやらカナヅチ克服よりも先に、対処すべき問題はあるようだった。

 

 

 

 

 

「あのな、メイプル……子供じゃないんだから、大丈夫だぞ?」

 

「ダメだよ、あっくん。あっくんが溺れた日も、そういうこと言ってたんだから」

 

「……そこに関しては、何もいえないけどよ……わざわざ手を繋ぐ必要はないでしょ?」

 

 そう、砂浜を探索することを思い出したメイプルは俺が手を繋いでいることを条件として、俺の探索同行を認めたのである。

 ……別に良いけどさ?

 折角なら手ぐらい、普通に繋ぎたいだろ?

 

「にしても……何もねぇな」

「そうだね〜、サリーの方にはあるのかな?」

「だといいけどな……!」

 

 会話を続けていたメイプルと俺だったが、後方に人の気配を感じて振り向いた。

 右手がメイプルの手で塞がっていなければ『蒼刃』を飛ばしたのだが、仕方がない。

 

 だが、先のことを考えると……それは俺たちにとっても、彼にとってもラッキーなことだった。

 

「ま、待って……敵意はないよ?僕、まだレベル5だし」

 

 そこには、ルービックキューブのような浮遊体を持ち、初期装備で身を固めた少年?が立っていた。

 

◇◆◇

 

 

「……メダルが2枚。やっぱ水中は探索する人が少ないのかも」

 

 そんなよく耳に馴染んだ呟きが聞こえた。

 

「お帰り」

 

「ん……ただいま」

 

 座ってのんびりとしていた俺は、目を開けて彼女を出迎える。

 彼女と笑い合い、そして……

 

「で、何これ?」

「知るか、俺に聞くな」

 

 俺のすぐ側にある砂の巨城について質問を食らった。

 全く、現実逃避していたというのに……にしても、メイプルとあそこまで波長が会う人は珍しいかもしれない。

 

「メイプルは?……さっき、手を繋いでたみたいだけど」

 

 ジト目を向けてくる彼女から、スッと視線をずらしてメイプルと彼がいるであろう方向を見る。

 ガヤガヤと騒がしいそちらにサリーが目を向けてから、ため息をついた。

 

 大方、なんか増えてる。

 

 という感想を抱いたのであろう。

 

 俺もそのテンションに耐えきれなくて、現実逃避に走ったのだから無理もない。

 

「もう……ほら、立てる?」

「……わかってるよ。繋ぎますって」

 

 サリーが差し出してきた手を握って立ち上がる。

 ……ちょっと?

 指絡めていい、とまでは言ってないんだけど?

 

 お前、メイプルより恥ずかしがり屋の癖に時々大胆になるよな……なんて思いながらも、そんな彼女の行動を存外悪くない、と感じている俺にも問題はあるのかもしれないが……

 

 

「ただいま、メイプル。それで……誰?」

 

「あっ……お帰り、サリー!ふふっ、仲良しだね?二人とも!」

 

 笑顔で俺たちを迎えた後、繋がれた俺たちの手を見てさらに笑顔になるメイプル。

 拗ねられたり、落ち込まれたりしてもアレだから良いことなのだが……時々、メイプルの考えていることが分からなくなる。

 

「……?」

 

「そんな目でこっち見るな……俺だって割と真剣に悩んでんだから」

 

 メイプルとも手を繋いでいたことを知っている少年に訝しむような視線を向けられたが、そう返答すると"訳ありか"といった表情で頷き返してくれた。

 自己紹介しとけ、と視線を送り返しておく。

 

「……僕はカナデ。敵意はないし、レベルもたった5しかない。自慢じゃないけど、すごく弱いよ?さっきまでメイプルと砂のお城を作って遊んでたんだ〜」

 

「楽しかったね〜あっくんもやればよかったのに〜」

 

 ね〜、とお互いに頷き合っている彼らの姿を見て、サリーはカナデがノーマルな人種じゃないことを悟ったらしい。

 メイプル相手に慣れているから、俺たちには考えたら負けだ、の精神は染み付いている。

 

『そういうことね』

 

『そういうことだ』

 

 と、先ほどまでの俺の行動に納得したようで、アイコンタクトを取りながら会話を進めていく。

 といっても、本当に敵意はないようで砂の巨城を作り終えた後はメイプルとオセロをして遊んでいたらしい。

 ……盤面が全色白になっていることには触れないでおこう。

 メイプル、その黒色の鎧カッコいいね……今、こんな褒め言葉を思いついたことに他意はない。

 

「で、その浮遊体は?」

 

 当然、サリーもそこに疑問を持つ。

 俺も先程思ったのだが、地雷案件だと思い聞いていなかった。

 ……サリーさん、恐れなしかよ。

 

「……ん、これはね。【神界書庫(アカシックレコード)】っていうスキルを持ってる杖なんだよー」

「杖……なの、か?」

「うん、杖」

 

 ルービックキューブのような物体をツンツンと突きながら呟くと、カナデにあっさりと肯定されてしまう。

 

「へ〜、面白い!それで、スキルは?」

 

 メイプルは目を輝かせて、そう尋ねるのだが、カナデはニヤリと楽しそうな笑みを浮かべてこう返答した。

 

「パーティーメンバーになることがあったら、教えてあげる」

 

 楽しそうに笑うなぁ、とガッカリするメイプルを横目に、俺はカナデの人柄に少し興味を持ったのだった。

 

 暫く雑談をしてから、サリーが何かを思い出したようにポンっと手を叩いた。

 言い忘れていたが、メイプルに指摘されて恥ずかしがり屋が戻ってきたらしく、彼女の手は既に俺の手から離れている。

 

 

 

「忘れてた……ここから離れた離島になんだけどね、祠があったよ」

 

◇◆◇

 

 

 

 

「……そりゃ、無理だなぁ」

「うん、無理」

 

 

 

 祠がある……それが意味することは怪鳥クラスのボスがもう一体存在する、ということである。

 

 どんな相手かわからないなら、どうこう言いようがない、と俺たちが唸っているとカナデが『一回見てきてあげるよ』と偵察役に立候補してくれたのだ。

 幸い、リスポン地点からは100メートルほどしか離れていなかったため『死んだら戻ってくるねー』と言い残し、彼はあっさり離島へ向かってしまった。

 

 十分とかからずに戻ってきたカナデが言うには

 

『転送されたら速度の下がる海の中で、何も出来ずに触手で潰された』

 

 だそうだ。

 

 水中戦という時点で詰んでいる。

 サリー単騎で行こうにも、速度が低下する水なんぞに触れたら回避力が低下してやられてしまうだろう。

 

 俺たちはキッパリとその祠攻略を諦めて、もう少しだけ海辺を探索してみることにした。

 カナデもメダルを集めているわけではないそうなので、探索に協力してくれたのだが、暫く歩いても成果は特に得られなかった。

 

 

「じゃ、僕はこのくらいで……また遊ぼうね」

「うん、また連絡するねー!」

「手伝ってくれて、ありがとね」

「んじゃな。また」

 

 フレンド登録を済ませた後、彼と別れる。

 不思議な奴だったなぁ、と思う反面やはりどこかで思うのだった。

 

「不思議な人だったね〜」

 

「「お前が言うな」」

 

「ええぇ!?」

 

 メイプルとカナデはどこか似ている。

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