幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。   作:馬刺し

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遅くなりました!
突然書けなくなりまして……
納得できる出来ではないのですが、どうぞ。

更新ペースが落ちる可能性が大きいです、すいません!


25話 幼馴染と悪夢の始まり。

 

 

 沈んでいた……はずだった。

 

 

 温かさを感じて、目を開く。

 

 そこには、笑顔のサリーがこちらを見つめていて……ほんの少し、頰が紅にそまっているのは……うん。

 つまり、そういうことなのだろう。

 

 彼女のおかげで、俺の呼吸は三十秒ほどならば、余裕で持ちそうだった。

 差し出された手をとり、彼女は向かうべき方向を示す。

 

 だが、待ってほしい。

 

 

 

 別に、俺は泳げるようになった訳ではないのである。

 

 

 

 目を合わせ、首を振るだけでそのことを伝える……これで伝わるのがありがたい。

 仕方ないなぁ、なんて言いたげな表情を浮かべた後、彼女は背中につかまるようジェスチャーで示してきた。

 

 STRがそこまで高くない彼女が俺を背負って移動できるのは、水中ならではのことだろう。

 

 彼女は海底に足をつき、しっかりと踏み込んで速度を上げていく。

 【凍結封印】の範囲外だった海は、未だに黒へと染まっているため、視界は奪われたままだ。

 

 それでも、彼女は迷うことなく一直線で空気のあるエリアへと向かっていく。

 息が続くのは残り十秒ほど……俺がそう感じた時だった。

 

「……!」

 

 サリーの動きが、直線的なものから複雑なものへと変化する。

 巨大イカの攻撃範囲に踏み込んでしまったのだ。

 

 メイプルが触手を受け負っていた先程とは手数が違った。

 殆ど倍になるのだ……回避難易度は次元が違うだろう。

 まして、人を一人背負った状態である。

 いう撃墜されてもおかしくないその状況下で、サリーは極限まで高めた集中力と勘だけを信じ、触手を回避し続ける。

 だが流石のサリーも……その状態で思うように目的地へと移動することはできなかった。

 次第に俺の呼吸も限界が近くなり、サリーの表情も険しいものになっていく。

 時間と共に状況は悪化していく一方だった。

 

 そこへ

 

「【挑発】!」

 

 もう一人の頼れる仲間が、最高の支援を送ってくれた。

 何本かの触手がメイプルの元へと向かった瞬間、確かな"道"が生まれたことをサリーは見逃さない。

 触手を足場に、水中を高速移動していき……ついに愛しき地上(正しくは海底)に到達する。

 

 辿り着いたその場所に……

 

 

「……それで、どうしてサリーのほっぺはそんなに真っ赤になってるの?」

 

 鬼が居た……と後にサリーは語るのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 

「あぁ、もうキレた。本当に死ぬかと思った……」

 

 割と頻繁に死ぬ死ぬ言ってるが、気にしない。そこはツッコミを入れないでくれるとありがたい。

 

 ポーションを使い、体力を全回復させてから俺とメイプルは巨大イカの目の前に立っていた。

 『ツカレタ、メイプルコワイ』とブツブツ呟き続けているサリーは、再び湧いてきたお魚さんたちと遊んでいた。

 

 

 

「【挑発】!【悪食】!!!」

 

 メイプルは自身に攻撃を集中させて、次々に打ち込まれる触手をMPへと変化させていく。

 

「メイプル……一撃で仕留めるから、全力寄越せ!」

 

 計5回、彼女はたっぷりと蓄えたMPを全消費してお気に入りのスキルを使用した。

 

「【毒竜】!!!」

 

「【刃状変化】!」

 

 三つ首の毒竜から、こちらへと巨大な毒の塊が飛ばされてくる。

 それを、全力で武器の形へと変化させる。

 ミスって触れたら死にそうだな、と思ったので【炎帝】の攻撃よりも時間をかけ、丁寧に作り上げていき……

 

「……完成!」

 

 一振りの長剣を左手で持つ。

 

「過保護発揮せずに……最初から、こうしとけば良かったのにな」

 

 ドス黒くも見える程濃い紫色(それはもう紫じゃない気がするが)の禍々しい長剣を見ていると、これ一本で相手の残り体力を、吹っ飛ばせそうな気がしてならない。

 

「アサギ〜、外しちゃダメだよ〜」

「あっくん、当ててね?」

 

 ……お前ら、変にプレッシャーかけるのやめて?

 

 だが、先程までのように遠距離ならともかく、30mも離れていないこの状況では外す気がしない。

 念のため、必ず相手に届く技で……そう思い、左腕を限界まで後ろに持っていく。

 

 俺が何かしようとしていると察知したのか、メイプルの【挑発】を無視して、二本の触手が左右から俺に迫ってくる。

 

 それらを……

 

「【カバームーブ】!【悪食】!」

 

「【パワーアタック】!【ダブルスラッシュ】!」

 

 頼しすぎる二人の仲間が吹き飛ばし、

 

「……【アクセルバレット】」

 

 生まれた隙を見逃さず、その弾丸は放たれる。

 

 加速し、巨大イカを貫いたその一撃は……そのHPを残り数%まで吹き飛ばして……減少を止めた。

 

「あら?」

 

 なんかこのまま倒しちゃおうムードだった俺は、そんな間の抜けた声を出し、

 

「あっくん?」

「アサギ?」

 

 彼女らはそんな俺をジト目で見つめてくる。

 いや、あのさ?

 そればかりは、しょうがないと思うんだよね。当てたから許して?

 

「ま、いっか……アサギ、メイプル。ラスト集中するよ!」

「うん!任せて!」

「仕方ない……油断せずいくぞ」

 

 体力が少なくなった時こそ、相手が凶悪になるのは怪鳥戦で経験済みだ。

 油断なく、全員が集中を高めてその時を待つ。

 巨大イカが、勢いをつけて海中から陸上へと突撃してこようとした直前……

 

「「「……あ」」」

 

 巨大なイカはmade of【毒竜】の剣による継続毒ダメージでHPを0へ……要するに消滅していった。

 

「……この行き場のないやる気をどうしろと?」

 

 サリーの言葉は、俺たち全員の気持ちを代弁するものとなった。

 

 

 

 

 

 

 ボス戦が終わり、イカが消滅したと同時に海も澄み渡っていく。

 サリーが周りを見て回ったところ、触手が一本ドロップしていたのみで、他の報酬は見当たらなかった。

 恐らく、魔法陣に乗った先に報酬があるのだろう。

 そう考えて移動することにする。

 

 俺たちが移動したのは【魔ヲ払イテ】その次の言葉の示す場所。

 転移先は……【青ク静カナ海】だったのだ。

 目を開けば、淡い光に包まれた海が広がり、それは澄み渡っていく。

 悠々と色鮮やかな魚が泳ぎ、綺麗なサンゴ礁やら何やら……とまるで楽園のような光景が広がっている。

 

 しかし……ご察しの通り

 

「死ぬわ!?」

 

 一名、ガチギレしているプレイヤーがいた。

 その後、息ができるのが判明し、絶好の練習場じゃん!と彼のテンションは上がるのだが……呼吸が出来ても泳げない、という事実に割とショックを受けてしまうのはまた別の話。

 

 

「……綺麗……すごい、すごいね、あっくん!」

「……ん、まぁ滅多に見られない光景ではあるな……俺みたいなカナヅチには特に」

 

 目を輝かせるメイプルに、海底で寝っ転がりながら同意しておく。

 ……若干、ビビってるのは内緒である。

 

 

 結局、報酬は銀のメダルが二枚と【古代の海】と呼ばれるスキル書が二本。

 水系スキルを取っていないと覚えられないものだったので、俺とサリーが貰っておいた。

 ギミック解除イベが起きたのが、夜遅く出ったので五日目の夜は海中で越すことに……

 

 ボス攻略後のエリアで休息を取りすぎている気もするが無視しておこう。

 

 

 優しく俺たちを包み込む、その静かな海での睡眠はこれまでに蓄積した疲労を全て取り除き、そして癒していく。

 

 その結果、全員仲良く寝坊をかますのだが……それも取れた睡眠の質と比べれば、些細なものだった。

 

 

◇◆◇

 

 

 

 伸びをする。

 六日目に突入してからたっぷり十時間ほど経過してから、俺たちは【青ク静カナ海】に存在した魔法陣に乗り移動した。

 移動先は噴水があった廃墟の前である。

 流石に水中クッキングは出来なかったので、その場で簡単に朝食を仕上げてしまうことにした。

 

「…………っと、こんなもんか」

 

 イベント事前に作っておいた味噌、そしてネギやらジャガイモやらを用意して仕上げた手抜き味噌汁に、炊き上げたご飯。

 更に盛り付けただけの野菜に、持ち込んだドレッシング。

 最後に鮭のような魚を焼いて、終了だ。

 

「……これのどこが手抜きなんだろ」

「さぁ?美味しければ何でもいいんじゃない?」

 

 何やらメイプルとサリーから呆れの視線を感じるのだが……手を抜きすぎたのだろうか?

 

「悪いな、かわりに夕食は楽しみにしといてくれ」

 

 俺の言葉に二人は顔を見合わせた後、笑みを浮かべて言うのだった。

 

「「勿論!!」」

 

 ……ハードル上げない方が、気楽でよかったかもしれない。

 

 

 

 

 朝食を取った後、俺たちは探索を再開した……のだが

 

「……遭遇するプレイヤーが多いな」

「メイプルを見た瞬間に逃げていくのが、完全に定番化してるから、メダルは稼げないけどね……」

 

 先程からプレイヤーとの遭遇率が跳ね上がってた。

 恐らく今日を除けば最終日しか残っていない、と焦り始めたプレイヤーたちが騒ぎ始めたのだろう。

 他のプレイヤーと比べてメダルを大量に持っている俺たちからすると、当然そこは気を付けるべきものなのだが……メイプルが有名すぎて挑んでくる奴らがいなくなっていた。

 

「サリー、今メダルは?」

「18枚……仕掛けるなら、今日かな」

「だよね」

 

 俺たちの会話を聞いて、背に乗せたメイプルが疑問の声を上げる。

 

「……何するつもりなの、二人とも?」

 

 俺は持っていた金のメダルを二枚、メイプルへと渡してから言ったのだった。

 

「メイプル、ちょっとお留守番してて貰うぞ」

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