幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。 作:馬刺し
時間が経つのは早いものですね……
あ、やっぱだめ?その一言じゃ、済まないですよね。
とりあえず、投稿遅れて申し訳ございませんでした!!!
「【炎帝】!」
ミィが己の前方へと爆炎を放ち、炎による防壁を築く。
背中合わせの彼女に、MPがゴリゴリと吸われいくのを感じ取りながら、こちらはこちらで、忙しなく
「【ウインドカッター】!……と、【サンドカッター】!もいっちょ、【ウインドカッター】」
風の刃と砂塵の刃が、飛来する円刃
現在地に落ちた円刃全てが、
あれから……
ミィと仲良く岩山から転がり落ちてから、俺達にひと息つく暇もなく、押し寄せてきたのは20にも迫ろうかという、円刃の群れであった。
それらは何度叩き落としても、1分と経たないうちに再び浮き上がり、俺達へと襲いかかってくる。
完全に全方向を円刃に包囲された俺たちは、現在耐久戦を強いられているのだった。
ほんの少しだけ生まれた隙間時間を利用して、現状手に入る最も高価なMPポーションを使用する。
その数残り13本……ジリジリとポーションのストックが減りつつあるが、現状コイツが俺たちの生命線といっても過言ではない。
MPの使用効率が絶望的に悪いミィと、ある程度のMPを保持していないと大技を撃てない俺という組み合わせ。
この組み合わせは、殲滅戦ならば猛威を振るうだろうが、物量作戦による耐久戦には滅法弱い。
その弱点を、姿を見せぬ円刃使いはピンポイントで叩いてきているのだ。
そろそろ打開策を見つけないと、ギリギリで保たれている均衡は簡単に崩れてしまうだろう。
「……そもそも、相手はどっからここを見てんだ……高台……いや、俺たちが陣取ってた山頂部よりも高度のある場所は、この付近にはないはず…………追尾性のスキル……にしては、叩き落とした後の復帰が早すぎるか…………ミィ、何か気づいたことってあるか?」
馬鹿みたいなその連続波状攻撃に対しての考察を行いながらも、左手に持った『蒼刃』で飛来してきた二つの円刃を叩き落とし、背後のミィに声をかけてみる。
先程まで豚骨ラーメンを食べて満足気にしていた少女の姿は既になく、そこには【炎帝】の名にふさわしい一人の女性が立っていた。
「……攻撃に、気配を感じ取れるから、スキルの追尾というよりは、遠隔操作に近いのかな?……でも、それにしては数が多すぎる気もするよね。考えられるとしたら……プレイヤーが、実は二人組だった……とか?」
ミィの言う気配というものが存在することには、全面的に同意であった。
しかし、相手が二人で俺たちを襲撃している可能性は低いだろう。
視界外からの不意打ちや、片方への集中攻撃……仮に相手が二人組であったのならば、こちらへの嫌がらせになる行為はいくらでもできた筈だ。
だが、まあ……何にせよ、誰かしらが遠隔操作を行なっているのでは?という見立ては、同じであるので
「…………それにしては攻撃が単調過ぎる…………仕方ない。実を言えば一応、対抗策は有るんだよ。使わずに済むなら、それに越したことはなかったけど……」
(これから先、対ミィ戦を行う可能性があるなら、特に)
心の中でそう呟きながら、チート級のスキル持ちである『蒼刃』へと目をやった。
後ろから、どうしてそれを早く言わないの!といった念を感じるが、スルーしておこう。
「一分後、弾幕を止めるから、全力で走れるようにしといて」
「……むぅ……まあ、いっか。MP、少し貰うね」
「あいよ……そう拗ねるなって」
「拗ねてないよ……全然、拗ねてない」
「夕飯は、炒飯と餃子のつもりなんだが……」
「さっすが、アサギ。切り札は最後まで取っておかないとだもんね!」
「惚れ惚れする程の掌返しをありがとう」
ゆるゆると会話を続けながらも、集中は切らしていない。
体内時計で一分を数え終わり、視線を再び後ろへ向ければ、コクリと彼女は頷きを返す。
ギリギリまで円刃を引きつけてから、左手の力を緩め『蒼刃』を手放す。
落下し、地面を刃が貫いた瞬間、声を張り上げた。
「【凍結封印】!」
そして、生み出された霧へと円刃が触れた瞬間……
「あれ、なんか一個残った!?…………まあ、いい。撤収するぞ、ミィ!」
想定では、全部地面へと落下する予定だったのだが……分身系統のスキルだったのか。
そんなことを考えながらも、急いでこの場を離れることにする。
「了解、【フレアアクセル】!……って、あれ?【フレアアクセル】!…………あれぇ?」
「そうだったわ、忘れてたよ。お前にもスキル封印かかるんだったな!」
スキルが使用できず、首をコテンと傾げていたミィの手を引っ張り、岩山を駆け下りる。『蒼刃』は置きっぱなしだが、後で【超速交換】を使って回収でもすれば、良いだろう。
目的地は、身を隠しやすい森林地帯。
正直、どこに潜んでいるのかすらわからない相手など、正面突破をするには、気力的にもたないと判断したのである。
「まっ、ちょっ……速い、速いって!?転ぶ、転ぶからぁ!」
「気にすんな、コケたらサラッと置いてってやるから」
「鬼ぃぃいい!」
傾斜がかなりキツめの山を転がり落ちるかのように、走り抜けて平地へとダイブ。
いつの間にか、背中に張り付いていたミィを庇うように受け身を取りながら着地し、休むまもなく森林地帯へ突入する。
体内時計で、そろそろ一分を超えてくる頃だ。
円刃が再びこちらを補足する前に、身を潜めるには、うってつけのスキルを発動させておきたい。
「どんな、運動神経、してるの!」
「まあまあ、落ち着けって。担いで、やってんだから、さ!」
俺がミィを右肩に担ぐような体勢のまま、全力疾走を続けて、探していた
「間に、合え!!!」
飛び込むようにして、左腕をそこに叩きつけながら、もう一つの切り札となるスキルを発動する。
「【潜影】!」
「へ、えっ、うひゃっ!」
ずぶずぶと森林の作る影へと沈み込み、ようやく一息つくことができた。
……にしても、これで大分ミィは俺の情報を持ってることになるな。
【刃状変化】に【暴食の壺】、【潜影】に【凍結封印】……あれ、もしかして割とまずい?これ。
たらたら、と冷や汗が流れるのを気のせいだと思い込もうとしていると、ようやく自分が影の中に移動したことを受け入れたミィが、こちらへ話しかけてきた。
「……アサギのスキル、だよね?」
「ま、そんな感じ。詳細は秘密な」
「あ〜、うん。そうだね……でも、一個だけ、聞いてもいい?」
「ん、別にいいけど?」
「……これ、何分持つの?」
「……五分くらい?」
短い休息になりそうだね、と遠い目をしてボヤいたミィの表情が非常に印象に残った、とだけ記しておく。
◇◆◇
「九十九、首尾はどうかしら?」
『……ごめんなさいです、我が主。不覚を取りました』
「あら、珍しいことも有るのね……流石は【炎帝】といったところでしょうか」
その髪色は、衣装に合うしっとりとした黒色で腰にまでかかるほど長く、柔らかな微笑からは包容力の高さを感じさせる。
しかし、それと同時に、一瞬だけ鋭い輝きを灯した瞳からは、彼女の持つ冷静さが窺えた。
『キメ顔をされているところで悪いけど、私が敗走をしたのは、主からの情報に虚偽があったからですよ?』
そんな、彼女に突き刺さる言葉の刃。
数秒ほど彼女の動きが固まり、ジワジワとその頬が赤に染まっていく。
そして……
「き、キメ顔なんてしてないもん!……って、虚偽って何!?私、何か悪いことした!?ごめんね?」
ものの数秒で先程までの
ワタワタと慌てながら、ペコペコと頭を下げる。
そんな彼女の視線の先に……
『いーえ、誰がなんと言おうが、今のはキメ顔です。全く、我が主ながら、ポンコツっぷりが激しいですね〜』
藍色の円刃が、宙に浮かんでいて
『虚偽なんて、決まってるじゃないですか。相方の方ですよ、あ・い・か・た!正直、【炎帝】よりしぶといですよ、あの巫女さん』
からかい混じりに女性をバカにする、九十九と呼ばれた少女の声が
……彼女らと彼が邂逅するのは、もう少し後のこと。
女性は『円刃』に対して謝り倒したあと、その場から一歩も動かずに蹂躙を再開するのだが……幸か不幸か、彼女の戦闘地帯はアサギとサリーの徘徊地域とは、また異なるエリアであったため、彼らが潰し合うことはなかった。
…………周囲のプレイヤー達がどうなったのかは、想像に任せるとしよう。
◇◆◇
「……おっと、追跡は終わったみたいだな。よかったな、ミィ?もう、走らなくていいぞ」
「……ほんと、だよ。暫くはゆっくりしたいかなぁ……アサギのこれからの予定は?」
「……メイプル達と合流してもいいんだが、まぁ、何にせよ……とりあえず、少し休もうか」
「だね……」
二人して、その場に座りこんでからため息を吐く。
常に索敵は行い続けているが、少々警戒は緩めてある。先程までの集中力が高すぎた分、反動は大きい。
先程まで、岩山でラーメンを食べていたというのが、酷く昔のことに思えた。
「…………炒飯」
「さっき、豚骨ラーメン食ってただろ……」
案外【炎帝】様は食い意地が張ってらっしゃるのかもしれない。
そんなことを考えながら、ストレージから砂漠での茶会で余っていた菓子と紅茶を取り出すと目に見えて彼女の瞳がキラキラと光り始める。
やばいな、こいつ。誘拐とかされないか心配。
メイプルとかサリーへ抱く好意とは違う……なんというか、あれだ。
「…………妹に欲しい」
「……ふぇ?」
思わず溢れたその本音に、空気が凍る。
やばい、これはやったわ。
変態と罵られる覚悟を決め、土下座の構えへスムーズに移行しようとして……
「い、妹……わ、私もお兄ちゃんに欲しいなぁ……なんて、思ったり……?」
「はい?」
再び、二人して硬直。
「……スルメ食べる?」
「う、うん…………スルメ?」
「ああ。この前、川で釣ってな」
「まさかの淡水魚!?」
会話のペースが元に戻るまで、なんだかんだ三十分ほどを要したという。