幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。 作:馬刺し
……読んでくれている全ての人に、精一杯の感謝と謝罪を。
感想、評価 いつでも待っております!
誤字脱字報告感謝です。
「…………さて、と……中々、いい感じに狩り尽くせたな。お疲れ様、ミィ」
「うん、アサギもお疲れ様だね……で、もう一回聞くけど…………本当に、今日集めたメダル、私が貰ってもいいの?」
物凄く複雑そうな表情を浮かべて、ミィはこちらへと首を傾げた。
時間は巡り、現在既に辺りには夜の帳が落ちており、彼女の掌の中には、本日の成果である6枚の銀のメダルが存在している。
「ん?勿論。俺は金のメダル持ってるしな」
「……それを言ったら、私も前回イベントの分を持ってるんだけどね……そう考えると、本当に助けてくれてありがとね?」
少しだけ照れ臭そうにそんなことをいうミィさん……ああ、妹に欲しい。
親族にエグいほど俺に懐いてる奴が一人いるのだが、そいつと俺の関係はかなりの訳ありで、一緒にいるだけで俺の心労が溜まり続けるため、癒されはしないのである。
対してミィはただの良い子。
メイプル達と違って、お互いにラブではなくライクであることが、はっきりしているため、気を遣う心配もないのだ。
「あれは、絵面が酷かったからな……美少女相手に大の男が寄ってたかって……あれはもう犯罪だ、犯罪。訴えたら勝てるぞ、多分」
なんて考えながら、冗談めかしてそんなことを言ってみると、何故かミィは顔を赤くして目をこちらから逸らした。
……ああ、美少女で照れたのね。全く意識せずに使ったので、気付くのが遅れた。
「び、び…………コホンッ、じゃ、じゃあ、私達のギルドで有効活用しちゃうけど、後で文句言わないでよ」
「誰が言うか、誰が。代わりに、なんかあったら、軽く面倒ごと頼むかもしれないけど……」
折角、大ギルド(仮)にコネを作ることができるのだ。そのチャンスを逃すほど愚かではない。
この約束がいつか、どこかで俺たちを助けてくれる時があるかもしれないしな。
「貸し一つ、ってやつだね。いいよ、多分、これでギルドの皆からの好感度が、更に上がると思うけど」
「それはまた、嬉しいような怖いような……ま、いいか……MPは問題なさそう?怪しかったら、合流場所まで送るけど」
元々は、迷子であったというミィ。
連れの二人が撃破されたとのことで、ズルズルと行動を共にしていたのだが、そろそろギルドメンバー達の元へと帰らなくてはならないようだ。
「大丈夫、アサギからたっぷりと分けてもらったから……約束通り、炒飯と餃子もいただきましたし、やり残した事も多分ない……かな?うん!」
「オッケー、それじゃ、ここらで別れるか。俺もメイプル達に飯を作ってやらないといけないからな」
「なんか、お母さんみたいだね?」
「うっさい、誰がオカンだ」
時計を見れば、既に七時をまわっている。
彼女らからの多少の文句は、甘んじて受け入れるとしよう。
何を作ろうか……なんて思考に入りかけたその時、何やら面白いことを思いついたのか、表情を明るくさせたミィは、俺の正面から5メートルほど離れた位置に移動した。
そして……
「それじゃ……バイバイっ、
そんなことを少しだけ恥ずかしそうに頬を染めながら、言ってのけたのだ。
……もう、これ相手公認の義妹で良いのでは?
◇◆◇
「……
「おい、待て。まだ何も言ってないぞ」
「アサギのことなら、勘でだいたい何やってたのかは、想像がつくんだよ……私もメイプルも」
底冷えするような眼で、こちらを見据えてくるサリーの視線から、スッと顔を背けると、顔を背けた先に瞳のハイライトを完全に消したメイプルさんがすぐ近くに立っていた。
「あっくんから、サリー以外の女の人の匂いがする……ねぇ?私の気のせいかな?」
「犬かよ、怖いわ!?」
背筋に悪寒が走る。
あれ、こいつヤンデレ属性持ってましたっけ?
過保護で一途で単純でわがままで……うん、別にあってもおかしくなさそう。
近づいてきたメイプルをツッコミの勢いそのままに投げ飛ばし、脱出を図ろうとするも、襟元をサリーに掴まれた。
「それにさ、アサギ?半日以上戦闘し続けて、メダルが一枚も回収できてなかったって……今まで、何してたのかなぁ?」
「あははは……まあ、そんな日もあるだろ?」
「ないわよ、ない。絶対ないから!……あれだけ、頭のおかしい爆炎をポンポン発生させておいて、全く戦闘しなかった……なんて、言わせないからね?」
「……いや、俺の魔法じゃないし、あれ」
爆炎自体はミィのもの。
俺は投げただけですので、嘘はついてない。
「ふーん?そうなんだ?」
……嘘は!ついて!ない!
頰を引きつらせた俺に対し、後ろから肩に腕を回したサリーは、顔を急接近させ、耳元で囁いた。
「ね、アサギ。今、本当のこと言うなら、許してあげてもいいんだよ?」
妙に色気を感じるので、やめていただきたい。直に当たる程の距離にあるサリーの髪から甘い香りが………………っ、やばい、昨日の今日でそれは、この距離はやばいから!
待って、待て。
近い、近いから待ってください、サリー様。
……そんなことを考えていたら
「あっくん、サリーに見惚れてないで、早く白状したほうがいいよ……サリーも、少し
「見惚れてませんからっ!?」
「げ、私まで巻き込まれた……!」
前方からメイプル襲来。
後ろで、弄りモードに入っていたサリーも、びっくりの威圧感である。
もう一度言うが、冗談混じりのサリーと違って、メイプルは割と本気でヤンデレの素質がありそうで怖い。超怖〜い。
……サリーを囮に逃げたりできないだろうか。
だが、まぁ確かに。
「……悪かったよ、今日は一日中一人で留守番だったしな?俺とサリーに叶えられるお願い事なら、大体なんでも聞いてやるから……それで、勘弁してくれよ」
一日中放置されていたといっても過言ではない彼女が、多少不機嫌であるのも、無理はないのである。
ポンポンと、メイプルの頭を撫でながら、そう言ってやると、彼女は顔を赤くして俯いた。
そして……
小さな声で
「……明日は、ずっと二人とも一緒だよ?」
そんな、どうしようもないほどに可愛らしい彼女のお願い事を聞いて、俺とサリーの頬が緩んでしまったことは仕方のないことだろう。
さてと、夕飯の準備と行きますか。
今夜のメインはグラタンである。
トランプなどのカードゲームや、オセロなどのボードゲーム、そのどちらもを大量に持ち込んでいたメイプルが、本日たまった鬱憤を晴らすかのように遊び続けて、早くも三時間ほどが経過し、深夜十二時。
健康児のメイプルが、胡座を掻く俺の膝に抱きつくようにして寝落ちしてしまったので、動くことも出来ずに俺はサリーと雑談に興じていた。
「……それで、今日は本当にどうしたの?」
「……ああ、さっきの話か。森林地帯で、大人数に追いかけ回されてた知り合いに会ってな?そいつと一緒に行動してたわ」
「………ふーん、どうせ女の子なんでしょ?」
「まーな?けど、本人は俺のことはラブじゃなくてライクの方って認識らしい。俺も同じだから、問題なんて一切ないです」
「何があったら、その情報をわざわざ伝え合うのよ………」
「………………いや、色々ありまして」
「アサギが失言したのね?理解したわ」
「理解が早くて助かるわ」
「呆れてるだけなんだけど?」
「照れるなぁ」
「褒めてないから!?」
「メイプル起きちゃうから、静かにしてよ」
「あ・ん・た・の!せいでしょ!?」
「いやぁ、良いツッコミ。安心するわ」
「はぁ、はぁ……無駄に疲れたわよ」
テンポよく進む会話に、安心感を覚えながら二人して笑い合う。
ああ、でも
その間もメイプルの頭を俺は撫で続けているのだから、我ながら、本当にどうしようもないほど自分のことが情けない。
「……どうかした、アサギ?」
「…………いや、なんでもない……そろそろ俺たちも眠ろうか。明日のメイプルは、普段より数段テンションが高いだろうから」
逃げるように……いや、
俺と彼女達の関係について考える、そんな思考から逃げるために、そう口にして胡座の状態で目を閉じた。
「…………そうしよっか」
そんな俺を、いつも彼女らは許してくれている。
こんな俺を、いつまでも待ち続けてくれている。
どんな俺でも、受け入れようと思い続けてくれている。
なら俺は。
他でもない宮戸彩華は…………
「えいっ!」
「うわっ!?……びっくりしたぁ」
「ふふっ、この方が眠りやすいかなぁ……なんて。膝はメイプルに取られちゃったしね」
「……そうかもな」
思考の海に呑まれる直前に、背中に衝撃を感じて目を開いた。
それから暫くの間。
暗い洞窟の中、俺とサリーは背を預け合い、無言でお互いの存在を感じ合っていた。
「ごめんね、彩華」
ポツリ
「……知ってるよ。貴方が何に迷ってるのか……私も、楓も」
ポツリと
「……私、楓と違ってズルイし、自分勝手だからさ」
小さな声で溢すのだ。
「………それでも私は」
楓の温度。
俺の鼓動に、理沙の呼吸。
いつしかそれは一つに同化し、深い深い眠りの中へと落ちていった。
俺の鼓膜に、心に、魂に。
『絶対に、何があっても……離れてなんかやらないから』
その言葉だけを刻み付けて。
◇◆◇
そして、迎えた7日目。
最終日の朝である。
それが希望の朝なのかも知らないし、喜びに胸を開くつもりもないが、取り敢えず、良く晴れたこの大空を仰いでおこう。
……あの夏休みの謎な習慣は、今でも残っているのだろうか。
と、まぁそんなどうでも良いことは置いておく。
昨日のサリーの活躍により、俺たちが持っているメダル合計は、金のメダルが二枚(+メイプルの一枚)そして、銀のメダルが20枚と、目標の銀のメダル30枚分を大きく上回る結果となった。
要するに、本日は別に戦闘を行う必要がないわけで……
「ねぇ、あっくん、サリー!」
「どした、メイプル?」
「…………?」
元気良さそうに、こちらへと声をかけてきたメイプルに二人して目を向ける。
口周りに少し蜂蜜を溢しつつ、朝食のフレンチトーストを貪っていたサリーさんが、もぐもぐしながら、首をコテンと傾げていて可愛いです。
「今日は、目一杯遊ばない?」
…………なんてことがありまして。
「今度は水着を持ってこようね、サリー!」
「あはは……イベント限定エリアだから、残念ながら、ここには来れないけどね?…………って、アサギ!それ以上海に近づいたら怒るからね!」
「過保護か!?」
「「過保護だよ!」」
「……あ、はい。すいません」
洞窟近くの海で、騒いだり
「…………あれ、思ってたより……イケる?」
「あっ、俺これ苦手だわ」
「私は普通?でも、食感は面白いね!」
お互い、いい思い出のない砂漠にて、とれたてのサボテンで、ステーキを作ってみたり
「わっ、本当にイカが釣れた……ここ、川だよね?」
「うん……たぶん」
「あっくん、サリー!全く釣れないよぉぉ!」
「「極振りだから、しょうがないよね……」」
「そんなぁ……」
近くに優男風バーサーカーがいないかビビりながら、渓谷で釣りをしたり
「やっほぉぉ!!!」
「イエーイ!!」
「ちょ、はやっ!?二人とも速いから!?メイプルはともかく、アサギはそれ時期に死ぬから!」
「あ、アルマジロさんも久しぶり〜」
「それ、一緒に転がってるわけじゃないから!私達に突撃しようと命がけで転がってきたシュールなアルマジロさんだから!?」
懐かしき雪山の山頂から、ソリで滑り降りたり
「あっ、こっちの道……この前のお化け屋敷」
「よし、帰ろう。今すぐ帰ろう」
「だね!異論なし!こんなところに用なんてないもんね!」
「…………あははは」
薄暗い山道を爆走したり…………
そして、草原。
この一週間の激闘が始まった最初の土地。
「ああ……本当に、ほんっとうに……楽しかったぁ!!」
満足げな顔で地面に大の字で寝っ転がるメイプルさん……ほんとに満喫してたな、こいつ。
「……そりゃ、何よりだ。サリーもお疲れさん」
「楽しかった、けど……超疲れたわね。7日分の移動を、全部全力疾走して、1日で行うなんて…………」
ゲッソリした顔で、草原に倒れ込むサリーさん。
お前ら、揃いも揃ってはしたない。
……まあ、俺もへたり込むんだけど。
「同意だ、同意。割と馬鹿げたスケジュールだったぞ、このやろう」
「えへへへ……でも、楽しかったでしょ?二人も!」
最終的に、この笑顔で俺とサリーは彼女を許してしまうのだから、ズルイと思う。
同じようなことを思ったのか、サリーと目が合い、苦笑した。
アナウンスが響く。
終了の知らせを、俺たちは草原で大の字になったまま迎えようとしていた。
メイプルのストレージには、金のメダル一枚と銀のメダル十枚。
サリーが銀のメダル十枚に、俺が金のメダルを二枚。
手に入れた報酬をそれぞれ分配した結果であるのだが……やっぱり一つだけ、気に食わないことがある。
それは、俺の単なるわがままで。
彼女には、きっと必要のないことなのだろう。
それでも、やはり思ってしまうのだ。
それは、決して自己犠牲の精神などではない。
それは俺のエゴであり、俺が抱える最大の悩みの解消を妨げる要因の一つで…………
「おい、サリー……こっち向け」
転送まで残り十秒。
上半身を起こして、サリーに声をかけた。
同時に時計を見ながら、タイミングをはかる。
「……ん、どうかしたの、アサギ?」
残り五秒。
同じように体を起こし、穏やかに微笑んで見せた彼女に向かって、俺はニヤリと片頬を上げて応える。
残り三秒。
俺は手に持っていた
「……しっかり受けとれよ?」
残り一秒。
彼女は少し驚いた様子を見せたものの、いつものように、『仕方ないなぁ』なんて言いたげな表情で、その黄金色の輝きを右手で握りしめた。
◇◆◇
本当は……この考えを抱くこと自体が、彼女らに対しての無礼なのだろう。
俺はきっと、余りにも臆病で変化が怖いのだ。
だから、許せない。
他でもない俺自身が原因で、彼女ら二人の間に差が出来てしまうことが。
だから、選べない。
この関係が壊れてしまうことが怖いから。
◇◆◇
第二回イベント終了
合計獲得メダル数 金 2枚
銀 20枚
第二回イベント編
全体を通して、サリーのターンが多かったのかな?
次回、半分幕間的な現実編に突入です。