幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。   作:馬刺し

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3話 幼馴染と単独行動。

『レベルが11に上がりました』

 

『スキル【潜影Ⅰ】を習得しました』

 

 そんなアナウンスを聞き流しながら、俺はその場に座り込んだ。

 初戦闘にて、中々の曲者を相手にした俺は、集中が途切れた反動をモロにくらっていた。正直、もう動きたくない。

 

「少し気付くの遅かったかな、ごめん。それにしても、最後よく当てたね?」

 

「半分はラッキーだけどな……二本目を撃ち込む直前に【投剣Ⅰ】をとれたのが大きかったんだと思う。どっちにしろ助かったよ、サリー。多分手伝ってくれなきゃ、逃してた」

 

 釣竿を回収して、地底湖から上がってきたのは、先程、感覚だけで蝙蝠を狙い撃ったであろう化け物(サリー)だった。

 あの牽制がなければ、蝙蝠は俺の攻撃が届く前に、影の中へと逃げていった筈なのだから、流石と言わざるを得ない。

 

「それにしても……メイプルには困ったもんだな」

 

「あははは……通りで、やけに苦戦してると思ったよ」

 

 彼女に視線を向けると、そこには未だ規則正しい息遣いですやすやと眠りこけているあどけない少女がいる。

 

「……眼福だな、メイプルの寝顔は人を幸せにすると思う」

 

 戦争とかなくなりそうなレベル。

 いや、メイプルの為に新たな争いが生じるのがオチか……

 

「アサギ?通報するよ?」

 

「マジすいません、やめてください。冗談です」

 

 青いパネルを操作しながら、絶対零度の視線を向けられると、冗談だとわかっていても少し、焦りを感じる。冗談……だよな?

 結構、本気で謝り倒すこと十数秒、どうせコイツも駅前デザートとかいってくるんだろうな……なんて、罰に対する覚悟を決めた時だった。

 

「……ん、ん?ふわぁ……あれ?私眠ってた?」

 

 その元凶が、目を覚ます。

 

 彼女の目に映ったのは、サリーが俺の首に短剣を突き立てる寸前の光景。

 

「だ、だめぇぇ!!!」

 

 突撃してきた彼女へ、事情を説明することに、少々の時を要したという。

   

 

◇◆◇

 

 

「へぇ、湖の底に未知のダンジョンね……それ、攻略するなら単騎で行く羽目になるぞ?水中戦じゃ、俺とメイプルはロクに戦えないし」

 

 AGIが0のメイプルでは、水中での移動に時間がかかるため、第一、ボス部屋まで息が続かない。

 俺に至っては、カナヅチの戦力外である。

 

「わかってるよ……元々、ユニークシリーズを狙いに行くなら、単騎で初見攻略しないと行けないからね……うん、いいね!余計に、燃えてきたよ!」

 

 常人には考えられない宣言をする彼女を見て、改めて、彼女が様々なゲームのトッププレイヤーとして戦ってきた存在なのだ、ということを思い知らされる。

 

「うわぁ……ゲーマーの目になってるよ、サリー」

 

 その様子には流石のメイプルも、苦笑いを浮かべている。

 ……ん?

 いや、待て。  

 

「………なぁ、メイプル?お前……魚は?」

 

「あ……」

 

 そう、偶々サリーが、隠されていたダンジョンを見つけただけであり、本来の目的はこの地底湖に生息する白い魚だったはずなのだ。

 

「ど、ど、どうしよう、あっくん!ゆったりしすぎて眠っちゃってたよ!」

 

 本来の目的ほったらかしで、お昼寝を堪能していた彼女は、慌てた様子で、どうしようと訴えてくるのだが……知らん。

 俺に、どうしろと?

 

「フッフッフッ、メイプルくん……君が欲しいのは、これのことかね♪」

 

 俺ではなく、サリーがどうにかしてくれるようです。

 そう言えば、コイツも元は素潜りで魚を狩るために、水中探索をしていたんだったな。

 

 芝居がかった話し方で、割り込んできた彼女が取り出した鱗の数はなんと80枚。

 俺とメイプルの釣ることができたのは、20匹ほどだったので、およそ4倍の効率だ。

 本人の名誉のために、内訳は言わないことにしておくことにする。

 

「流石、サリー!凄いよ……こんなに私が貰ってもいいの?」

 

 満面の笑みを浮かべて、受け取った鱗を両脳でいっぱいに抱えて、メイプルはサリーにそう問いかける。

 

「もちろん……私には必要なさそうだしね。代わりに、と言ってはなんだけどさーー」

 

 そして、サリーが何かを口にする前にメイプルが言う。

 

「明日から、毎日ここに来るの手伝うね!」

 

 不意を突かれたようで、一瞬だけサリーがキョトンとした表情を浮かべた。

 その後、彼女も先ほどのメイプルと同じような表情を浮かべて、メイプルに抱きついていく。

 

「ありがとう、メイプル!」

「サリーってば〜、もういいよ〜」

 

 うん、ゆるく百合百合している光景も、目の保養になりますが……俺、居ないものとして扱われてない?

 

「ね、あっくんもそれでいいよね?」

 

 ああ、よかった。

 忘れられてなかったみたいでよろしい。

 

 

 存在を認知されていたことに、安心しながら、俺はメイプルからの誘いを

 

 

 

「え、俺は、明日から別の所に行くけど?」

 

 

 アッサリと()()()()()()()

 

 

◇◆◇

 

 

 翌日

 

 

「さてと……こっちも、負けてらんないな」

 

 メイプルとサリーが、地底湖に向けて出発していったのを見送ってから、俺はそう独り言をこぼした。

 

 既にやることは決めていた。

 目標は、ユニークシリーズの入手。

 サリーがたかだか一層の隠れボスなどに負けることなど考えられなかった。

 よって、彼女らに置いてかれないよう、俺もユニークシリーズを手に入れておきたいのである。

 

 闇雲に攻略することも考えたのだが、残念ながらメイプルほどの豪運も、奇想天外な発想も俺は持っていない。

 だから、少し頭を使わせてもらうことにした。

 

 様々なスキルの取得条件、そんなのアリか?とでも言いたくなるメイプルのスキル欄を見て思った。

 恐らくNWOにおけるゲームマスター(以下GM)は遊び心に富んだ奴なのだ、ということを。

 

 その推測が正しければ、ユニークシリーズを得るためのヒントがここには存在する筈なのだ。

 

 

 カツン……カツン……と、俺の足音だけが、この空間の中に響き渡る。

 始まりの街、中央部に位置するここは……大図書館と呼称されている、人のいない寂しいエリアだった。

 

 GMに関する推測が当たっているならば、全てのスキル、装備やモンスターなどに関して、何処かしらに情報を記してあるのではないか?そう考えたのだった。

 

 例を挙げるとすれば、アニメ映画を見たときだろうか。

 特典として貰える冊子に、小ネタや衣装に関する裏設定などが書かれている場合がある。

 ここには、今の例で言うところの裏設定の情報のようなものが、存在すると思うのだ。

 

 つまり……遊び心で作られたであろうヒントを探すために、最も情報量が多いであろう、この大図書館にやってきたのである。

 

 といっても、大量の本が存在するこの場所から、特定の情報を選び取ることは、運任せではまず、不可能だ。

 

 よって、ここは……他にもユニークシリーズが存在すると仮定して、()()()()()()()()G()M()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 手始めに第1層全体を記した地図を広げた。

 その地図上に、昨日の夜から今日の朝にかけて、かき集めた情報をメモしていく。

 主要イベントクエストの発生位置、重要なアイテムが存在したダンジョンの位置、そしてユニークシリーズを手に入れることが可能、と判断されるダンジョンの位置やネームドモンスターが生息するエリアなど………etc

 

 丸1時間かけて、思いつく限りの情報を地図上に記し終えた。

 そして、間髪入れずに次の作業へと入る。

 次は現在知られているトッププレイヤーたちが、装備している武器や防具の特殊能力や、それを得た場所などについての情報を再び、先ほどの地図上に明記していくのだ。

 

 

 それから3時間ほど経った後……俺の手元には、様々な情報を組み合わせて、出来上がった地図があった。

 

 そして、確認されている装備やスキルを属性ごとにリストアップした表も作ってある。この表を使い、"コレがあるなら、アレがないのはおかしいだろ?"的な意見や、"どの属性が現在、不遇な環境にあるのか"ということなど、多くの情報を、幾つも纏め続け、その一つ一つに関して一からじっくりと考察していったのだ。

 

 そして、得られた二つの結果を組み合わせて考える。

 

 全部で4時間程かけて、導かれた予想は、氷or風系統の装備が、第1層北西部の雪原地帯or西部の山岳地帯のどちらかに存在する(と思われる)ダンジョンorイベントの、単騎攻略で手に入るのでは?と言うものだった。

 

 ここまで予想を立てた後、漸く大図書館の本領が発揮される。

 ここを訪れて直ぐの状況とは違い、今の俺には何を調べるか……という明確な指針が存在した。

 よって、何冊あるかもわからない大量の本の中から、特に関係のありそうな5冊ほどを選び取ることが可能になる。

 俺はその本を軽く流し読みしていくことで、概要を理解していくことにした。

 

 1冊目は、ハズレ。

 2冊目も、ハズレ。

 3冊目は、少なくとも西部の山岳地帯はハズレであると、判断できる情報が存在したため、当たり。

 4冊目を手にして、少し経った後……

 

「っし、ビンゴ!」

 

 右手を握り締め、喜びを表現する俺の姿がそこにはあった。

 

 北西部雪原地帯に関する情報……『氷龍と絆を結んだ巫女の伝承』という括りの中にその情報は存在していた。

 そこでは、現在行方不明とされている"破壊不能"属性を持つ伝承の衣装について、触れられていたのだった。

 

◇◆◇

 

 

 とある管理者たちの会話

 

「おい、メイプルの調子はどうだ?最近はパーティーを組んだんだろ?」

 

「珍しく異常ありません!全く釣れない釣りをひたすら行い続けています」

 

「珍しいな」

 

「珍しいな」

 

「珍しいな」

 

 そこでは、メイプルが普通にゲームをプレイしていることが、とてつもなく珍しいこととして扱われているらしかった。

 

「ただ……一つ問題が」

 

「なんだ?メイプル以外に、何かやらかしてきた奴がいるのか?」

 

「一名、たった数時間で"雪の使徒"シリーズの入手法を0から導き出したプレイヤーが居ます」

 

「は?」

 

「は?」

 

「は?」

 

 空気が凍る、とはまさにこのことだろう。

 

「いやいや、どうやってだ?そんな情報どこにも流出してないだろ?」

 

「その……大図書館に存在する大量の本の中から、必要な物だけを抜き取るようにして、ピンポイントで情報を持ってかれました」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………?おい、コイツこの前、メイプルとパーティー組んでた奴じゃないか?」

 

 

「「「なら、仕方ないな」」」

 

 

 既に、メイプルならば仕方ない……という雰囲気が出来つつある管理者たちが、今の彼女の行動は、序の口であったと気がつくのはまだ先のことだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 またまた翌日。

 

 昨日は戦闘どころか、一度もステータス画面を見てすらいないまま、集中切れによるログアウトをしたため、今日からは、積極的にレベリングをすることにした。

 

 アレだけ全力で情報を掻き集めたのに、アッサリと死んで、初見クリア失敗……なんてことにはなりたくないからだ。

 

 一日ぶりに見るステータス画面には、振り分けられていないステータスポイントが30と表示されている他、何やら【潜影Ⅰ】と得た覚えのないスキルが追加されている。

 

「文字から察するに、影に入れる……みたいなスキルか?それだとありがたいんだが」

 

 思い浮かんだのは、あの蝙蝠さんである。

 とりあえず取得条件を確認してみると、大方、予想通りのことが書いてあった。

 

【潜影Ⅰ】

 30秒間、影に身を潜めることができる。

 10分後、再使用可能。1日5回まで。

 (潜影時の行動制限はスキルの強さで定まる)

 入手条件

 強化モンスター【影蝙蝠】をスキル【潜影】発動中に撃破。

 条件・DEX30以上

 

 予想外だったのは、蝙蝠さんが強化モンスターだったことぐらいだ。

 強化モンスターとは、稀に現れる通常個体とは異なる能力を身につけたモンスターのことらしい。

 蝙蝠さんは本来【潜影】スキルを持っておらず、かまいたちだけを使用する相手なのだそうだ……確かに、ただの雑魚にしては、厄介なスキル持ちだと思ったんだよな。

 

 まあ、終わったことは気にせずに行こう。

 こちらに不利益なことはないわけだから、深く考えなくていいだろう。

 

 ステータスポイントを振り分けるのは、もう少しスキルを取ってからにするとして、もう一つ注目するべきものが存在した。

 

 スキル【投剣Ⅰ】

 

 生産職についているプレイヤーが持っている貴重な攻撃スキル【投擲】とはまた別のスキルのようで、スキル説明にはたった一言。

 

 装備している剣類を投げたときに、威力上昇の補正がかかる。

 

 とのことだ。

 

 投げればどんな物でも発動する【投擲】スキルと違い、剣限定なのが痛いところだが、恐らく威力上昇の倍率が【投擲】よりも高いのだろう。

 

 注目した理由は簡単……このスキルを軸にして、プレイスタイルを構築していくのも、面白いと思ったのである。

 遠距離広範囲攻撃、接近戦サポートを得意とするメイプルに、中距離戦サポート、接近戦主攻を担えるサリー。

 そこに、遠距離、中距離戦の単体攻撃を行える自分が二人の間に入れば、少なくとも攻撃面に於いての穴は、なくなる。

 

 何よりも【投剣】はサブ武器を軸とするスキルである、ということが大きい。

 主武器として、全く違う装備を用意しておけば、対人戦ではかなり有利に動けるようになるからだ。

 

 色々と尤もらしい理由をつけてみたのだが、最大の理由は別にある。

 

 一昨日、武器を投げた時……凄え、気持ちよかった。

 コレだけである。

 手から放たれた刃が、一直線に相手に向かっていった光景、そして風を切る刃の音。

 そのどれもが、心地良かったのだ。

 

 ということで異論は聞かない。

 

 主武器の前にサブ武器を決定する、という変な状況に陥っているわけだが、もう知らない。

 ゲームなんて、やりたいからやる。

 

 それが許される世界だと思うからだ。

 ……マナーさえ守っていれば、だが。

 

 まずは、金稼ぎ。

 それで【投剣】用の短刀を買って、レベリング。

 短刀がなくなり次第……素材を売って、武器を購入して……ということを繰り返していくことにする。

 

「狩りの時間と行きますか♪」

 

 恐らく、ニヤリと笑っているであろう俺の表情を近くの女プレイヤーに見られて、ギョッとされたが、その程度で心が折れるほど柔ではない。

 ちょっと悲しくなっただけである。

 

 その後、感情が荒ぶるままにモンスターを狩り続けているプレイヤーが居たのだとか、なんだと噂になるのだが……心が折れかけて、モンスターに八つ当たりしてた……なんてことはしてないんだからね!(謎のツンデレ風)

 

 はぁ……真面目にやるか。

 急がないと、サリーがボスキャラを倒してしまう。

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