幼馴染が無双するそうなので便乗したいと思います。   作:馬刺し

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4話 幼馴染と雪精霊の宴。

「っこいせっ!」

 

『レベルが14に上がりました』

 

 撃ち出された鉄の刃が、ホバリングしていたハチドリタイプのモンスターを貫くと、レベル上昇のアナウンスが、戦闘の終わりを告げる。

 現在、俺は一人ゆっくりと目的地である雪原地帯が存在する北西部へ移動している最中だった。

 

 2の倍数レベルで5ポイント、10の倍数の際は10ポイント、ステータスポイントを得られることができるのだが……俺は、最初に振り分けた100ポイント以外のポイントを、全て保留状態にしたままだった。

 

 40ポイントと、表示されているそれを見ながら、小さくため息をつく。

 ……このままボス戦に挑むのは、少々しんどいものがある。

 そのため、そろそろステータスポイントの振り分けを行うつもりだったのだが、現在ではポイント振り分けのやり直しは出来ないので、どうするべきかを迷っていたのだ。

 

 後に聞いたところ、サリーは躱すから問題ないと言って、何も振り分けを行わずに……また、Lv 12の状態でボスに挑んだらしいのだが……それは、アイツのPS(プレイヤースキル)が狂っているだけである。

 

「メイプルはこういう時、迷わなくていいよなぁ。極振りの珍しい長所でもあるしな」

 

 ついつい、弱音が溢れてしまう。

 自慢ではないが、何かを選択することは、あまり得意ではないのだ。

 

 幼馴染のどちらともが、参考にならないのは、少しおかしいと思う。せめて、どちらか一人は常識枠でいて欲しいものだ。

 後に、同じような事を何度も考えることになるとは露知らず、ブツブツと脳内で愚痴り続けた結果……

 

「VITを捨てるのは、ちょっとキツイか」

 

 どこかの回避バカ(サリー)とは相反する結論に至った。

 人並みには、動ける自信はあるとは言え、全く強化しないというのは、現在の防具の貧相さを考えれば、自殺行為に他ならない……せめて、一撃ぐらい受けても、問題ない体力さえ残っていれば、勝ちの目はあると思っている。

 

 迷いが復活しないうちに、思い切って割り振りを行なってしまおう。

 

 結果がコレだ。

(+したものが今回割り振ったものである)

 

STR 20+10

VIT 0+15

AGI 40

Dex 40+15

INT 0

 

 

 ロクな魔法を覚えていないため、INTは0のままで問題はない。

 AGIではなく、DEXを上昇させた理由は、俺が多用している【投剣】の性質にある。

 本来サブ武器用として、扱われるスキルを現状では、メインスキルとして扱っているため、そう遠くない未来に、火力不足の壁に、ぶち当たることは予想できる。

 そのためには、STRと同等なぐらい、弱点を確実につけるためのDEXが必要になってくるはずだ。

 ある程度このスタイルに慣れれば、PSでカバー出来るように、なって来るのかも知れないが、今はまだ、システムの恩恵を受けて、戦うしかない。

 

「……サリーだったら、もう少し上手くやるんだろうけど……俺は俺だからな、しょうがない」

 

 今まで俺が悩み続けていたことを、アッサリと仕方ないで済ませてしまう、元も子もないような発言だったのだが、附に落ちた……と言ったところか、何故だかすごくしっくり来る言葉だった。

 

「…………洞窟か」

 

 周囲を見渡しても姿は、見えない。

 ただ……洞窟の奥から、笑い声のようなものが聞こえた気がした。

 

「…………やり過ごした方が楽だよな?」

 

 少し、どうするかを考えた後、足音を立てないように洞窟内へと移動した。

 いきなりPKされるとは、思っていないのだが……万が一、ということもある。

 

 念には念を入れて、隠れよう、という結論に落ち着いたのだ。

 少し進んだ先に、いい感じの窪みがあったため、そこに姿を隠す。

 

「ーーーでさ、ーーーが」

「……で、……だから、ーーー」

 

 どうやら、二人組のプレイヤーらしい。

 声の大きさから、近付いて来るタイミングを感覚で測って……

 

「【潜影Ⅱ】」

 

 使い続けることで、強化された【潜影】スキルを使った。

 【潜影Ⅰ】と比べて【潜影Ⅱ】は大幅に強化されたと言える。

 身を潜めるだけだった【潜影Ⅰ】に対して【潜影Ⅱ】では、かなりゆっくりな速度だが、影の中を移動することが可能になったのである。

 

 これが【潜影Ⅲ】や【潜影Ⅳ】となった時には、恐らく……攻撃不可の制限が外れるに違いない。

 飛び道具使いからすれば、かなりありがたいスキルに成長してくれそうだ。

 

 また【潜影Ⅱ】に強化されたことによって、影に潜伏できる時間も1分に増加していることもあり、どうにか二人のプレイヤーをやり過ごせたようだった。

 

「【灯火】」

 

 これは、洞窟対策用に俺が買っておいたスキルである。

 街に存在する魔法屋で、スキルの巻物を買えば、誰でもその巻物に書かれているスキルを取得することが出来るのだ。

 

 【灯火】は非殺傷性の炎を、自分の付近に浮かび上がらせるものであり、暗がりでは重宝しているのだそう。

 松明と違い、両手を開けた状態で周りを明るくすることができることも利点の一つだった。

 

 

 

 そんな説明をしている間にも、蝙蝠さんやらゴブリンくんやらが湧いてくるのだが、大抵近寄られる前に、仕留め切ることが出来ていたため、無傷のまま洞窟探索は進んでいた。

 

 そして……

 

「……?……ッ!」

 

 探索され尽くされたであろう洞窟の、抜け道の存在に気がついた。

 恐らく、誰も気にも留めなかった窪みで、覗き込んだところで暗闇が存在するだけ、つまり、普通は行き止まりに見えるであろう場所だが、俺から見るとそれは、全く異なるものに見えた。

 

「【潜影Ⅱ】」

 

 スキルを発動して、進んでいたその先には、何もかもを飲み込む影だけが存在していたのだ。

 

 【潜影】スキルでは、最初に入った影から離れた影へと移ることは出来ない。よって、本来なら、大きく場所を移動することはできないスキルだ。

 ただ、今回は影属性の何かが立体的に存在していた。

 要するに、前から入って後ろから出られる影属性の物体として認識することができたのである。

 

 【潜影】スキル持ちでない人から、すれば、即死トラップとして扱われるこのトラップだが、俺からすれば、これは抜け道だ。

 

「これは……宝箱か?」

 

 トラップの反対側に出ると、未開封の宝箱が存在することに気がついた。

 

 流石にそこまで性悪ではないと思うが、一応、ミミックの可能性を考慮して、一発だけ短剣を投げておく。

 

 短剣が当たっても、変化は見られなかったため、宝箱を本物だと断定。

 

 すぐに開いてみる。

 そこに存在したのはーーーー

 

 

 

 

 

「……出口はそろそろのはずなんだけどな」

 

 宝箱ご開帳から暫く歩くこと、数分。

 一体の大型ゴーレムに出会ってしまったので、仕方なく戦闘態勢に移った。

 

 手始めに、剣を投げること6回ほど……見た目から予想できる通り、ダメージが一切はいらない。

 時間が経つにつれて、ゴーレムを貫通出来なかった剣だけが、地面へと積み重なっていき、その数を増やしていた。

 

 それでも何度も繰り返し、繰り返しストレージから短剣を取り出して、投げ続ける。

 

 攻撃し続けることで、スキルを強化する。

 それが俺に残されている活路だった。

 

『スキル【投剣Ⅴ】を取得しました』

『スキル【超速交換】を取得しました』

 

 幸いなことに、暫く攻撃を続けているとそんなアナウンスが聞こえ、同時に、ほんの少しだけゴーレムの体に、ヒビが入るようになってきた。

 

 やっとダメージが入るようになったのだが、体力を削り切るには遠く及ばない。

 集中を切らさないまま、ヒビを作っている中心部へと剣を取り出しては、投げ続けた。

 

「ぁあああ!!」

 

 回転速度をさらに跳ね上げる、強化されたDEXの恩恵をフルに活かして、武器を装填し続ける。

 

 時折、ゴーレムが腕を振り回して来るのだが、回避の間も攻撃の手を緩めないようにした。

 

 いつしか、小さかったヒビはゴーレムの全身に行き渡るほどの、大きな傷へと変化しており、その体力はすでにレッドゾーンに至っていた。

 

「いい加減……くたばれ!」

 

 ガトリングガンのような勢いで、剣の雨を降らせていくうちに、ストレージに用意しておいた、70本ほどの短剣のストックを使い切ってしまったことに気づいた。

 

 よって、残された攻撃手段は一つ。

 弾かれてしまったため、床に散らばってしまっている短剣を拾い上げ、気合い十分に投げつけた。

 

 その一撃は、こちらに対して、腕を振り上げていたゴーレムのヒビの発生源に着弾。

 遂に、深々と突き刺さったその剣は、残りわずかとなっていたゴーレムの体力を削り切った。

 

『スキル【一極集中】を取得しました』

 

 気になるスキルをいくつも、取得した気がしたが、今はただ休みたかった。 

 だが、直ぐに休むことはしなかった。

 周囲に散らばる大量の短刀を、無心でストレージにポンポンと放り込んでいく。

 

「うへぇ……キツイなぁ〜」

 

 一瞬、立ちくらみの様なものを感じた気がして、膝に手をついた。

 

 今直ぐにでも、腰を下ろして、スキル確認を行いたいのだが……最後の一踏ん張りで、直ぐそばにある出口へと移動した。

 運悪く、先程のような硬い相手に湧かれても面倒だからだった。

 

 

 

【超速交換】

 

 装備中の武器を、ストレージに存在するランダムな3つの武器のどれかと入れ替える。

 任意発動可能 使用制限無し

 

 入手方法

 戦闘中、一分間に異なる30以上の武器を装備する。

 条件・DEX 50以上

 

【一極集中】

 

 5メートル以上離れた位置からの攻撃に適用される。

 初撃を当てた部位以外へのダメージが0となる代わりに、同部位への攻撃が成功する度にSTRが上昇する。

 攻撃を受けること、または、10分間ダメージを与えないことで、この状態はリセットされる。

 ただ、対象を撃破した場合のみ上昇状態は維持され、その状態からの次の攻撃を初撃として扱うこととする。

 (最大上昇でSTR+100%)

 

 入手方法

 戦闘中、5メートル以上離れた位置から、同箇所に攻撃を30回連続で当て続け、部位破壊と、対象撃破を同時に行う。

 

◇◆◇

 

 

「長い洞窟を抜けると雪国であった……か。壮観だな、コレは」

 

 

 

 思っていたよりも、洞窟で過ごした時間が長かったのか、一面に広がる純白の雪原の上には、現実では見ることなどできない、それは大層美しい星空が広がっていた。

 

「アイツらも、今度は連れてきてやるか……」

 

 ついつい、そんな言葉が独り言として生まれる。

 それは一人で楽しむには、余りにももったいないと思わせるほどの光景だったのだ。

 

 

 暫くの間、その幻想的な光景を眺めてから……俺はゆっくりと雪原地帯へ、最終決戦の地へと足を踏み出した。

 

 

 

『氷龍と絆を結んだ巫女の伝承』

 

 

 大図書館にて、その情報を掴んだ後……俺は調べ物を中断した訳ではなかった。

 寧ろ、そこからが本番だったまである。

 

 ここで言う氷龍は、何のことを表しているのか。

 巫女についても同様だ。

 そして、一番、不確かな情報であったのが"絆を結んだ"という単語だ。コレに関しては、明記されている資料が一つしか、なかったため本当に苦しんだ。

 

 ただ、それでも時間をかけて、既に意味は知っている。

 

 

 

 

 

 今からやることに、抵抗感はあると言えばある、それはただ単純にプライドの問題だった。

 

「……今日で、決めにいく」

 

 覚悟は決めた。

 人の気配も、少なくとも感じ取れる範囲にはしない。  

 

「ステータス」

 

 一言そう呟いて、目の前に青パネルを呼び出した。

 そして、殆ど空欄である装備欄に用意しておいた装備を移していった。

 

 頭 【雪の髪飾り】

 体 【踊り子・雪化粧】

 左手 【初心者の短剣】

 右手 【空欄】

 足 【踊り子・雪化粧】

 靴 【舞姫の靴・雪】

 

 ステータスに変化はない。

 完全なオシャレ衣装、と言うものである。

 

 そのどれもが本来ならば、男性は装備不可の衣装であるのだが……やはり、予想通りだ。

 この雪原は特殊エリアとして見なされているのだろう、男性である俺でも問題なく女性用装備を装備できた……これ、システム的に許可出されてるんだよな?

 

 幼馴染の二人に女装を強要された苦々しい過去が思い出されるが……今は気にしないことにする。

 これで、フラグ回収に関係なかったら許さねぇ。

 

  

 雪原に1人立つ。

 装備を替えた瞬間、先程まで、無風状態だった雪原地帯に、俺を中心として回るように風が吹き始める。

 

 ここからが羞恥を耐え忍ぶ本番だ。

 

「〜〜♪〜〜〜♪」

 

 歌を歌い、その場で舞を踊る。

 ユニークシリーズ入手のイベントのため、必要となる歌、そして舞は脳内に叩き込んできた。

 

 

『スキル【踊り子】を取得しました』

 

『スキル【歌い手】を取得しました』

 

 大図書館で得た情報……

 

『雪化粧の舞姫が雪原にて歌を歌う時、雪の精霊は姿を現す』

 

 俺の辺りに幾つもの淡い光が浮かび上がる。

 

『雪化粧の舞姫が雪原にて舞を踊る時、雪の精霊は心を開く』

 

 光は次第に温かさを生み、人としての姿をその地に現界させる。

 

 舞を踊り続ける。

 最初はギコチナイ動き、震える歌声だった舞も歌も、スキルの恩恵を受け、堂々たるものに変わっていく。

 

『雪精霊に愛されしもの、巫女となり氷龍との対話を許される』

 

 演舞が終わると、雪精霊の1人が俺の胸に手を当てて、纏っていた温かな光を受け渡してくれた。

 瞬間、HPバーの隣に信じられないことが表示された。

 全ステータス100%上昇バフ。

 全デバフ無効化バフ。

 HP、MP上限上昇バフ。

 

 その全てが、効果発動時間の制限がない。

 それはつまり……ここから先、このイベント終了時まで、これらのバフ全てが働く、ということを意味する。

 

 このバフが……きっと巫女として、雪精霊達に認められた証だ。

 

 少し前に、氷龍との絆を結ぶ……これが何を意味するか、調べ終わった。

 

 先程そう説明したはずだ。

 

 

 その問いに関しての……答え合わせの時間だ。

 

 

『巫女、()()()()()()()()、絶対の服従関係を結び、永久に壊れることのない伝承の衣装を得た』

 

 目の前に、降り立つは伝説の氷龍。

 

「いくぜ……氷龍!」

 

 この日、短剣を左手で構えた少年は、遂に人外への一歩を踏み出した。

 

 

 

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