「くそったれな情報ありがとうよ緑谷。俺だけに聞かせたのは賢明だ」
イレイザーヘッドは、ゴーグルを被る。
「先生! 一人で戦うんですか!? イレイザーヘッドの持ち味は個性を消しての捕縛だ、あの人数では」
「緑谷。俺に憧れてんなら覚えておけ。一芸ではヒーローは務まらん」
そう言うと、相澤先生は凄まじいスピードでヴィランの群れに突っ込んでくる。
先生は個性を消しながら、捕縛布を使いヴィラン達を倒していく。
なぜか、あの男は動かない。おそらく酒を飲んでる。
何故だかわからないが、チャンスだ。
「とにかく皆! 逃げよう!」
僕は皆を促す。あの男が動き出す前に逃げないと。
「させませんよ」
そのとたん、モヤのような奴が僕らの道を塞ぐ。
エコーロケーションでは映らないので嗅覚に頼る。
「僭越ながら、我々の名はヴィラン連合。今日来たのは、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいとおもってのことでして」
切島君が飛び出そうとするが、隣にいたかっちゃんが止めた。
「クソ髪! 宇宙服先生の邪魔だ!」
13号先生が、モヤヴィランを吸い込もうとする。
独特な臭いが、13号先生の後ろに来る。
「ダメだ13号先生!」
13号先生が、ブラックホールを止めた。
「成程カンがいい生徒がいますね、あと少しで自分自身をチリにしてしまっていたところを」
「く……」
「私の役目はこれ」
そのとたん、独特な臭いのモヤが、辺りに散らばる。
僕は片足を高く上げた。
「散らして嬲り殺す」
思いっきり振り下ろす。
四股だ。
突風と地響きが、ヴィランのモヤを吹き飛ばした。
「な……!! グフ!」
「アホが!」
ヴィランが怯んだ隙をついて、かっちゃんがヴィランを爆破した。
「ば、爆豪なんだよ! 俺を止めたり向かって行ったり!」
「ああ!! 状況判断だよボケが!! おいメガネ! とっとと走って増援よんでこいや! 相澤先生がやべえぞ!」
かっちゃんの一喝に、飯田君が再起動する。
「あ、ああ! わかった!」
「おいおい、黒霧のやつ、やられちゃったのか。はあ、予定より早いが仕方がない。
行け。脳無」
13号先生が、声も上げられず吹き飛んだ。
瞬間、飯田君の目の前に、オールマイト以上の体格の大男が現れる。
「フルカウル! 65%!!」
僕はすんでのところで飯田君の前に立ち、その一撃を受け止める。
衝撃波が吹き荒れ、皆が吹き飛ぶ。
僕の腕の骨が、軋む音がする。
「何だ! この脳みそ剥き出しの奴!」
峰田君の叫びがこだまする。
「飯田君! 早く!」
「わ、わかった!!」
そう言って今度こそ、飯田君は走り出した。
そして、ゲートの外に出た。
「あ、逃げられた。……ゲームオーバーか」
その手だらけの男は、落胆のため息を吐く。
「黒霧も使えねえなあ」
「だが、どうするんだ、あの黒霧という奴がいないんじゃ帰れねえぞ」
酒を飲む男の声に、手だらけの男は声を荒げる。
「酒ばっか飲んでるあんたに言われたくない。出入口を奪還しよう。ブルズアイ」
「へいへい。全く世話がやけるぜ。だが、まずはイレイザーヘッドだな」
そう言うと男は、ベルトのパックルから手裏剣を取り出した。
「さあて、Let's play」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
僕と大男は殴り合いを始める。
だが、こちらの攻撃は全然効いていない。
おそらくショック吸収の個性。
それに加えて尋常でない身体能力。
殴り合いでは無理、集中力を切らすな、相手の攻撃をすべて躱せ。
そのすきに、かっちゃんの爆破、瀬呂君のテープ、芦戸さんの酸、峰田君のもぎもぎ、青山君のレーザーが当たる。
だが。
「全然効いてない!」
「何だありゃあ!」
視ると、傷口が片っ端から再生していく。
こいつに有効なのは。
「轟君! 凍らせてくれ!」
「わかった! どいてろ!」
僕が離脱すると同時に大男の体が凍っていく。
だが、こいつが、体を震わせると割れた体があっと言う間に再生してしまう。
僕は、背中に回り、首を絞める。大男は力任せに剥がそうとする。
「デクくん!」
「麗日さん!?」
麗日さんがこちらに駆けてくる。
「うおおおおおおおおああああああああああ!!!」
僕は叫びながら、力の限り締めあげる。
そのすきに、麗日さんが大男に触った。
そのとたん無重力状態になり浮かびあがった大男を見て、皆は歓声を上げた。
大男は拳を振り回すが、空中を漂うだけだ。
僕はビリー・クラブを投げつけ天井を割ると、その穴からヴィランを追い出した。
「あらら、改人脳無が無効化されるとは」
「おいおい、あんなので本当にオールマイトがやれたのか」
その男達がするりとやってきた。
その途端身構える1-A19名。
だが、その男は、別格だった。
片腕に持っている人がいる。
「あ、相澤先生!」
相澤先生が、視るからに重傷な彼が引きずられていた。
「さて、取引だ、そこの無重力の嬢ちゃん、個性を解除しな」
男は、相澤先生の首元にカードを突きつける。
「さもなきゃあ、君らのために戦った勇敢な先生は、死ぬ」
「は、はったりだ麗日、トランプで何やるってんだ!」
峰田君が叫ぶと、男はクスクスと笑う。
「確かにそうだ、これじゃ分かりにくい。ホッと」
男が指をはじくと、トランプが鉄製の武器、琉球の武器である釵になった。
そして、そのまま背中から、イレイザーヘッドをひと突きする。
誰かの叫び声がこだまする。
「安心しろお嬢ちゃん、急所は外してある。だが、次はどうかな」
「ブルズアイ。あんた、趣味が悪いな」
「は、あんたらほどじゃないよ。トムラ・シガラキ。おい、どうすんだ!? 俺は気が長いほうじゃねえぞ!」
僕たちはぎりぎりと歯噛みする。
特に麗日さんの心音が危ない。
「……聞く……な……麗……日」
「先生!」
相澤先生がはっきりと言葉を言う。
「最後の教えだ……お前ら、クソどもの言うことは、絶対に聞くな。ヒーローやってきゃあ、こういうことはある。
こいつらは麗日の個性を解除したら最後、その脳無とやらで俺を殺し、お前らも殺す。だから、死んでも解除するな。これが最後の……命令だ。……お前らはよくやった」
そんなことは理屈ではわかっている。けれど。
相澤先生は、言った。
「麗日を守れ、1年A組、最後に任せたぞ」
そう言うと、相澤先生はブルズアイの足の甲を踏みつけ、拳を振り上げる。
「バカだぜ、アンタ」
そう言ってブルズアイは、釵で相澤先生の胴体を貫こうとする。
瞬間、僕の体は勝手に動いていた。
(……! 速い!)
「手、離せ!」
ブルズアイがバク転でかわし、ポケットからカードを何枚も取り出す。
そのカードたちは全て相澤先生のところに、僕は相澤先生に覆いかぶさった。
黒霧ワープ阻止。
そして麗日強すぎワロリエンヌ
やっぱ最初に爆豪と切島が飛び出さなければ良かった模様