盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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今回は実は2話分でしたが、キリ良く1話分に直してます。なのでちょっと長めです


死闘終わって

 SIDE オールマイト

 

 まるで、野戦病院だった。

 怪我がなかったのは飯田少年、口田少年、上鳴少年、瀬呂少年、だけだった。

 生徒の中で一番重傷だったのは緑谷少年。

 両足と肋骨の骨折と、腹部の打撲による内臓の損傷。

 背中には無数の裂傷、出血多量。

 麗日少女は右足の開放骨折。靭帯損傷。

 爆豪少年は内臓の出血による意識の混濁。

 他の少年少女も一様に切り傷を負っていた。

 先生も、相澤君が出血多量により意識不明の重体。

 13号も意識不明のまま救急搬送された。

 I・アイランドで会敵したあのヴィラン。

 あいつのせいで、生徒達は……。

 いや、違う。

 あの時、逃がした私のせいで、巡り巡って生徒達が怪我を負う事態となった。

 

 何が、平和の象徴。

 何が、ナンバーワンヒーロー。

 空しさが、心を貫く。

 

 許さんぞ、ヴィラン連合。

 

 SIDE 緑谷

 

 僕は、USJの一件から丸一日経って意識を回復した。

 原因は分かっている、ワンフォーオールを100%使ったからだ。

 その結果、僕の体はボロボロになり、入院を余儀なくされた。

 お母さんは泣きながら看病してくれた。

 だが、僕の心は別のことでいっぱいだった。

 僕があの時、I・アイランドで余計なことをしたせいでブルズアイはあそこに来た。

 そのせいで、皆が傷ついた。

 僕のせいで。

 オールマイトが、僕の病室にお見舞いに来た。

 その時に、僕は申し出た。

「皆に全て言う!?」

「もちろんワンフォーオールのことは言えませんけど、僕があなたの弟子としてI・アイランドに行ったことは言いたいんです。そのせいでみんなを巻き込んだから」

「だが、ブルズアイの言葉を真に受けることはないぞ」

「それでも、皆傷ついたんです。皆、僕を受け入れてくれたいい人達でした。そんな皆を、間接的にとはいえ、僕は傷つけたんです。だから、せめて真実は言いたいんです」

 そういう僕は、シーツを思いっきり握りしめた。

 灼けた涙腺から、涙は出なかった。

 

 

 SIDE 切島

 

 休校日明けの教室は、沈んだ空気だった。理由はわかってる、緑谷だ。

「なあ、爆豪、お前緑谷の様子聞いてねえか?」

「デクのことなんざ知るかよ……」

 爆豪が機嫌の悪そうに言う。

「入院先分かるか? 皆でお見舞いに行こうぜって話しててさ」

「勝手にしろ、俺は行かねえ……。丸顔はどうなんだ、あいつ除けば一番重傷だったろ」

 女子に丸顔って、お前。

「うん、リカバリーガールのおかげで何とか。爆豪君救けてくれてありがとうね」

「……救けられてねえだろ。救けたのはデクだ」

「……それでもありがとう」

 そういうと、麗日はにっこりと笑った。

 殺されそうな目にあったってのに、俺達に心配かけまいと笑っているのだろう。

 すると、相澤先生が入ってきた。

「相澤先生復帰はええええ!!!」

 相澤先生は包帯まみれだったが、何とか復帰という感じだ。

「先生! 大丈夫だったんですね!?」

「ああ、ギリギリ生きてたよ。おかげさまでな」

「それで先生! 緑谷のやつは!?」

 俺はたまらず立ち上がって、先生に聞く。

「あいつなら命に別状はない。だが、リカバリーガールの治癒による体力不足で三日間は入院だそうだ」

 その途端、みんなの安堵の声が響く。

「緑谷の見舞いにみんなで行こうって話してたんですけど、大丈夫ですか?」

「ああ、行ってやればいいが……。あんまり大勢で押しかけるなよ」

 相澤先生が、俺達を見回す。

 見るとセメントス先生やミッドナイト先生が扉の前に立っていた。

「まず、緑谷には後で言うが、全員生きていてくれてありがとう。良く麗日を守った。

 あの時、あの脳みそヴィラン……脳無と呼ばれていたか、あいつが行動開始していたら、それこそ何人死んでいたかわからねえ」

 その言葉に一同が緊張した面持ちになる。

「……そういえば、13号先生は大丈夫だったんですか?」

 麗日はおずおずと口にする。そうだ、13号先生もあのヴィランに吹き飛ばされたんだった。

「13号も命に別状はない。分厚い宇宙服ってコスチュームじゃなかったら、どうなっていたかは分からなかったそうだがな。

 だから麗日、あの時お前があいつを個性を使って封じたのは皆を助けた英雄的行動だった。ありがとうな」

 皆が麗日に感謝の声を送る。

 麗日は少し涙ぐみながら、笑った。

 そんなパワーの持ち主と殴り合っていた緑谷は、凄い奴なんだなと俺は感心した。

「そして何より、あのブルズアイと呼ばれていた男、あいつに俺が負けたせいで、お前らを辛い目に遭わせた」

 そういって、深々と相澤先生が深々と頭を下げる。

 その行動に、俺たちは驚愕するが、爆豪が大声を出す。

「あんなつええヴィランにタイマンで何とかしようなんて無理な話だろ! 謝られる筋合いねえわ!」

「爆豪の言う通りです。それ言ったら俺ら結局蹴散らされるばかりで、何もできなかった」

 轟が沈痛な面持ちで声を上げる。

「……ありがとよ」

「けど、あの男、一体何者だったのかしら。あんな強いヴィランなのに、聞いたことないわ」

 梅雨ちゃんが疑問を口にする

「緑谷ちゃんが彼を知ってた風だったけど、何だったのかしら」

「その説明に! 私が来た!」

 そこに現れたのがオールマイトだ。俺達は歓声を上げる。

「オールマイト先生!」

「一昨日はありがとうございました!」

「ありがとうか……、そんな言葉を言われる資格は、実は私にはないんだ。奴が雄英に来たのは、私が原因かもしれないからね」

 その言葉に俺達は首を傾げる。

「まず、私はおよそ1年前、I・アイランドであのヴィランと交戦したことがある。

 その時は、相手も名乗りはしなかったが、まさかあのブルズアイだとは思わなかった。

 奴の目的は私の親友デヴィット・シールドが携わったある研究開発中の装置の奪取。

 そこを偶然シールド宅に滞在していた私と緑谷少年が阻止した」

「シールド博士って? あのノーベル個性学賞のシールド博士ですか?」

「そんな人とオールマイトが、何で緑谷と一緒にいたんだよ」

「私と彼の個性は似ているだろう? それを知った私は、彼をスカウトしたんだ。彼の迷惑になるからと、公言は避けたがね」

「ってことは、緑谷ってオールマイトの弟子だったのかよ!」

「ケロ。でもそれなら納得ね」

「……ケ」

 爆豪が不満げに舌打ちする。

「緑谷のことはいいとして、『あのブルズアイ』ってことは、有名なヴィランなんですか?」

 芦戸が、手を上げて言う。

「……これは、警察に緘口令が敷かれている情報だ。

 だから他言は控えてほしい。

 奴の名はブルズアイ。アメリカ裏社会のフィクサー“キングピン”のお抱え暗殺者であり……全米全土の暗黒街にその名を轟かすヴィランだ。

 オフィシャルな記録はないが、何人もの政治家や企業家、ヴィラン、プロヒーローまでもが奴の餌食になっていると言われている」

 そのオールマイトの言葉に、俺達は震えあがった。

「そ、そんなとんでもねえヴィランだったのかよ……!! 俺もぎもぎ投げちゃったよ……!!」

 峰田は特に震えあがっていた。

「そんな凄いヴィランに恨まれているって、一体デク君は何したんですか?」

「……装置を抱えたブルズアイは、私から逃げきれないと思うと、私の隙を見つけるためにシールド博士の娘さんに手裏剣を投げつけた。

 それを緑谷少年が既のところで庇い、逆に手裏剣をはじき返し、ブルズアイは装置を取りこぼしたというわけだ」

「本当に人間か緑谷は」

 上鳴は真っ青な顔で言う。

 けど緑谷の奴、身を挺して女の子を庇うとは男だぜ。

「……では、そのキングピンという男が雄英襲撃の黒幕ということでしょうか?」

「八百万少女の言うことは尤もだが、キングピンという男は、アメリカの裏社会の中心に位置している男だ。調べようにも情報は出ないし、奴が日本に勢力を伸ばしているという話もない。

 ブルズアイ自身はもともとフリーランスの暗殺者だから、キングピンが関わっているという線は薄いんじゃないかというのが警察の見方だ」

「以上が、君達に言える全てだが、ここでヴィランと交戦したお前たちに問いたい。

 お前たちは一年生にも関わらず、俺達学校は守ることができなかった。

 もし、お前たちが望むなら、普通科への編入や、他のヒーロー科への編入を認めるとのことだ。

 お前たちはどうしたい?」

 相澤先生が俺達を見回して言う。

「ケ! くだんねえこと聞くなよ先生!」

 爆豪が立ち上がって言う。

「俺はオールマイトをも超えるヒーローになる!

 ヴィランにビビッてケツまくってられっかよ!」

 爆豪の言葉に轟も続く。

「俺も一緒だ。ヴィランにビビるヒーローなんて存在する意味がねえ」

 その言葉に、皆もめいめい決意を口にする。

 皆、怖いことはあっても、逃げだすことはしなかった。

「確かに、ビビってらんねえよな。緑谷はたった一人で立ち向かったんだ!」

「私達、ヒーローになる為に雄英に来たんだもんね!」

「よし! 皆! やってやろうぜ!」

 俺が叫ぶと、皆一斉に手を振り上げた。

 相澤先生は、ボソリと呟いた。

「ありがとうな」

 

 SIDE 緑谷

 

 僕は、入院中のベッドの上で、一心不乱に絵を描いていた。

 これで18人目っと。

 そろそろお昼時だなというところで、扉がノックされる。

「はい、どうぞ」

 僕は、思いもよらない人物に当惑する。

「め、メリッサさん? オールマイト! メリッサさんが何でここに?」

「えへへ、来ちゃった。イズク君が入院したって聞いて、心配になって、パパに無理言って来たの」

 そう言って、花のように笑った。

「そんな、申し訳ないです」

「ううん、けど、あの時私達を襲ったのがあのブルズアイだったなんて、私知らなかった。あらためてありがとう」

「いえ、僕もメリッサさんのガントレットにはずいぶん助けられました」

「ん、ちょっと見して。……やっぱり、もう壊れてるわね。新しいの、持ってきたの」

「すいません、僕はまた無茶をして。怪我しないって約束したのに」

「いいの。あなたはクラスメイトを救けたんでしょ。ヒーローとしての活動をサポートするのがサポーターの役目だもの」

 けれど、とメリッサさんは前置きする。

「あんまり無理したら、駄目。やるなら、ちゃんと帰ってきて。お願いだから、ね」

 そういってメリッサさんは僕の手を握る。

「ちゃんと戻ってきたら、私はまた貴方が飛び立てるよう、全力でサポートする。だからお願い、必ず帰ってきて」

「……はい!」

 そういった所でオールマイトが咳払いをする。

「緑谷少年、君の言う通り、皆には私達の関係を言っておいた。皆驚いていたが、君を悪し様に言う人は一人もいなかったよ」

「……そうですか。……あの、僕、雄英に居てもいいんでしょうか?」

 僕の問に、オールマイトもメリッサさんも首を傾げる。

「これであのヴィランは、今後も僕を狙ってくる。そうなった時、皆を巻き込むんじゃ……」

「……確かに、その懸念はある。だが、雄英に通いヒーローを目指す以上誰もがその危険はある。ヴィラン連合の目的はあくまで私だしね」

「でも、僕は、皆を、これ以上」

 そういってスケッチブックを握りしめる。

「皆いい人達なんです。それを、あの時、怖かった、誰か死んでしまうんじゃないかって、僕は」

「マイトおじさま、私に任せて」

「メリッサ……。緑谷少年、あまり気に病むな。君の所為ではない、私達大人の責任だ」

 そう、オールマイトは言ってくれたけど、僕の頭はグルグルとそれで一杯だった。

 その後、オールマイトは立ち去り、メリッサさんと二人きりになる。

「そのスケッチブック見せてくれる?」

「……はい」

「わあ! 素敵な絵ね! 最初のページの子は?」

「……麗日お茶子さん、無重力の個性を持ってて、いつも仲良くしてくれて、入学試験では僕を助けてくれたんです。一昨日も、相手を拘束して僕を助けてくれて」

「次の子は? 眼鏡をかけた、キリっとした子」

「飯田君、僕らのクラスの委員長で、麗日さんといっしょに三人でいることが多いです。いつも真面目で……」

 その後も、一人ひとりメリッサさんに説明する。耳郎さんや障子君は聴覚仲間で友達になったこと。峰田君は、スケベだけど気のいい奴で、いざという時勇敢に戦ったこと。蛙吹さんは、いつも冷静でクラスの為に動いてくれたこと。轟君は最初とっつきにくかったけど、クラスの皆のためにブルズアイに立ち向かったこと。

 他にも、入学して1週間程度しか経ってないけど、大切な友達と、きっとこれから友達になる人たち。

「皆、勇敢に戦ったのね……。流石ヒーローの卵たち、凄いんだ」

「はい、凄い人達です。個性じゃなくて、戦う意志が」

「……そこまで分かってるなら、信じてあげてもいいんじゃない」

「信じる?」

 メリッサさんが僕の頭を撫でて言う。

「あなたが皆を守りたいって思うことと同じくらい、皆もあなたを守りたいってこと。大切に思ってるってこと、これから友達になりたいって思ってるってこと。そして、ヴィランに負けないヒーローになりたがっていること。それくらい、信じてあげてもいいでしょう?」

 メリッサさんは、僕の頭から手を離し、席を立つ。

「お昼、買ってくるわ、イズク君沢山食べるけど、私のおごり」

 そういって、メリッサさんは立ち去る。

 僕は、メリッサさんの言葉を反芻する。

「信じる……か」

 その後はお昼を食べて、眠りについた。

 

 SIDE切島。

 

「結局全員で来ちゃったなあ」

「しょうがねえよ。あんなことあったんだし、早く行って長居せずに帰ろうぜ」

 果物の盛り合わせを片手に俺が皆に言う。

「病院の中では静かに。 皆静かに歩くんだ」

「飯田君フルスロットルや」

 飯田がせかせかカクカクと動いている。

「お、ここだな」

 緑谷と書かれた病室を見つけ、俺はノックする。

「はーい」

 女の人の声、あいつの母さんか?

 その扉を開いたのは、金髪碧眼の女の人だった。

 俺達は思わず表札を確認する。

 緑谷の個人病室だよな?

「あ、君、切島君? 麗日さんに飯田君もいるね。ていうか皆いる!」

「へ? あの、誰すか?」

「あはは、ごめん、私メリッサ・シールド。イズク君の友達なの」

 そういって、メリッサさんは俺達と握手していく。

「今、丁度眠ってるの、できれば、入ってあげて」

 そういうと、メリッサさんは俺達を病室に招き入れる。

 流石に全員は入りきらず、代わりばんこにだが、緑谷の様子を確認する。

 緑谷の様子は、両足にギブスをしていたが、血色自体はよさそうで、俺達は安堵する。

 メリッサさんは紙コップに紅茶を注ぎ、皆に配っていく。

「あのう、デク君……イズク君の容体はどうなんですか」

「リカバリーガールの治癒の甲斐あって、怪我自体はほとんど治っているの。今は体力的な面で眠っちゃってるわね。お昼なんてライスボールを20個も食べてたから元気なものよ」

「それは良かった」

 麗日はホッとした様子だ。

 八百万がおずおずと手をあげる。

「あの、シールドということは、メリッサさんのお父様は、あの」

「ええ、デヴィット・シールドよ」

 その言葉に、俺達は驚く。ノーベル個性学賞受賞者の娘か、すげえぜ。

「ってことは、緑谷がI・アイランドで守ったってのも」

「ええ、私」

「緑谷、お前よくやったぞ。こんな美人な姉ちゃん守るなんて」

 峰田がしみじみという感じで声をかける。

「今は眠っちゃってるけど、皆のこと、私に教えてくれたわ。皆親切にしてくれるって、嬉しそうだった」

 そういうとメリッサさんはどこからかスケッチブックを取り出す。

 そこに描かれていたのは、写真のような精度の、俺だった。

「え、これは、ひょっとして」

「イズク君が描いたのよ」

「「「「えええええ!!!」」」」

「う、嘘だろ。すげえ」

 めくっていくと、クラスの皆の姿が、それこそ写真と言っても信じるほどに綺麗に描かれている。

 誰もこれが全盲の人間が描いたとは思わないだろう。

 流石に芦戸の黒目みたいな色彩の部分は表現出来てないが、緑谷の優しさが出てるような筆味だった。

「葉隠さんって女の子は描いていいかわからないから描いてないって言ってたわ。その子以外は描かれているのよ」

「へえええええ!!」

「ほんま、これで食べてけそうやね」

「ケロ、凄いわ緑谷ちゃん」

「……私も描いてもらおうかな」

 そう言って盛り上がっていると、緑谷が身じろいだ。

「あ、やべえ起こしちまったか」

「……みんな、みんな!」

 緑谷がガバっと起き上がる。

「みんな、お見舞いに来てくれたの?」

 緑谷が戸惑った様な声を上げる。

「かっちゃんまで、ひょっとしてクラス全員?」

「ああ、そうだぜ!」

「俺は無理矢理引きずってこられたんだ!」

「まあ、いいじゃねえか……緑谷」

 そう言うと、俺は緑谷に向かって頭を下げて言う。

「すまねえ緑谷! お前ばっかりに任せちまって、本当は俺が盾になんなきゃならなかったのに!」

「き、切島君!?」

「お前のおかげで皆助かった。だから、ありがとう!」

 俺が叫ぶと、緑谷は困ったように言う。

「けど、あいつが現れたのは、僕のせいで」

「んなもんあいつの逆恨みだ! 気にすんな!」

 俺は躊躇いなく言い切る。

 緑谷はその一言に呆気にとられたようになる。

「切島の言う通りだ。ヴィランがヒーローを逆恨みするなんて良くあることだ。いちいちまともに取り合ってたら身がもたねえぞ」

 轟が近づいてくる。

 それを皮切りに皆が一斉に緑谷に近づいてくる。

「USJでは庇ってくれてありがとう。それに引き換え僕は逃げるばかりで。僕は委員長失格だ」

「飯田君! そんなことないよ! 君がオールマイトを呼んでくれたお陰で皆助かったんだ」

「緑谷〜おいら凄い怖かったぜ! ブルズアイってやべえ奴なのに、お前はたった一人でメリッサさん守って、かっけーやつだよお前は」

「峰田君も、あの時、峰田君の声も聞こえてたよ。ありがとう」

「俺、あん時雑魚の方行ってたけど、お前らヤバい状況だったんだな。すまなかった」

「上鳴君。君が何十人ものヴィランを倒してなかったらもっと不味い状況になってたよ。すごいよ」

 その後も口々に感謝の言葉を口にする。

 その一言一言に、緑谷は丁寧に返していく。

 やっぱこいつ、いい奴だな。

「その、ごめん、皆。僕がこの個性を使いこなせてれば、あいつにあんな……」

「おお、確かにあのふるかうる100%って技、凄かったぜ」

 と峰田が言う

「かっこよかったけど、あんまり使わないでよ? 何度もケガされたら心臓に悪いよ」

 と芦戸は心配げに言う。

「ごめんはナシな。お前のおかげで助かったんだから、言いっこなしだぜ」

 砂藤が、肩を叩いて言う。

「それに、誰かを助けるヒーローになるために私達はヒーロー科で学んでいくんだもの。だから自分のペースでいいのよ、緑谷ちゃん」

 梅雨ちゃんが、頭を撫でながら言う。

 緑谷はしばらく俯いたと思うと、泣き出しそうな顔で、笑った。

 その顔は、どこか憑き物が落ちたように晴れやかだった。




緑谷のコミュ回。
メリッサさんがどんどん聖母になってく。
もっとイズクを実験台にするなどのエキセントリックな行為をさせねば。

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