盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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第二回戦 3試合

side塩崎

 

 ああ、やはり、あの方は素晴らしい人だ。

 敵である彼を救うために、汚名を被ってまで、全力を引き出させた。

 その高潔な精神は、あの頃から変わっていませんでした。

 私は控室を出て、入場ゲートへ向かいます。

 私は私で、勝ちませんと。

 お相手の飯田さんはあのレシプロという超加速が厄介。

 対する術は……あります。

 

『さあ、フィールドの修復も終わって二回戦第2試合! 始まるぜ!

 A組祭りの中! 一人気を吐く唯一のB組! 塩崎茨! バーサス! その速度追随不可能! サラブレット飯田天哉! ファイト!』

「レシプロ……何!」

 飯田さんが驚いておられます。ですが、これが私の最善手。

『な、何をしている。塩崎茨。いきなり正座で座りだしたぞ! ストライキかー!?』

『いや、あれはまさか……』

『なんだイレイザー! 塩崎が何してるか分かるのか!?』

『……俺の考えが正しいかどうかはわからん。だが、現に飯田は止まっているのだから実際合理的なんだろうよ。見ろ、開幕レシプロをしようとした飯田の動きが完全に止まった。

 その隙に塩崎は茨を自分の周りに敷くことでガードを固め始めた』

『ムムム! 確かに納得できねーが、少なくとも奇襲を防ぐ効果はあったようだな!』

 さて、飯田さんはどうきますかね。私の予想が正しければ。

 

(塩崎くんと長期戦は不利! ゆえに、攻め切る!)

 

 レシプロによる飛び蹴りが、私の肩辺りを狙う。

 それを読み切った私は、ツルを集め衝撃を殺し掴みとると、足を逆側に極める。

 そして極まった瞬間に、私のツルが伸び拘束する。

「降参してください。飯田さん」

「ぐぐ、参った」

 

『な、なんと塩崎茨。正座した状態から飯田の目にも留まらぬ飛び蹴りを掴み極めた! アメイジング! 一体何が起きたか解説のイレイザーヘッドお願いするZE! ぶっちゃけ俺全然わかんねえ!』

 

『塩崎が使ったのは古流柔術で言う座技だな。

日本古来の武術の中には、座った状態で襲ってきた相手を仕留める技が存在する。

本来であれば非常事態用の型だが、今回塩崎は飯田の攻撃先を上半身に限定するために、あえてこの技を使ったんだろう。

だが、それを実際の戦闘でやるには豊富な練習量と、何より度胸が必要だ』

 

『こいつはすげええええ!! 一回戦で個性を見せ、二回戦では肉弾戦の強さを見せる! 塩崎茨! 文句なしのベスト4進出!!』

 

 ……本来であれば、正々堂々真っ向勝負するべきところでしょう。ですが、なりふり構っていられません。私は必ず、緑谷出久さんと戦わなければならないのです。

 

 それが私にとって、ある意味プロヒーローになることより大事なことなのですから。

 

 A組の席に、あの人を見つけます。目が見えなくても、私の音を聞いているのでしょう。

 私は、そのことに嬉しさを抑えきれず、笑ってしまいました。

 

 

side緑谷

 

「飯田君、残念だったな。塩崎さんはやっぱり強いや。あれは合気道か、それとも古流柔術か……」

「そやね。けど、塩崎さん、こっちを見てるよ。笑ってる」

 僕は麗日さんにそう言われ、手を振ってみる。

「あ、振りかえした。やっぱり知り合いなんよねえ」

「うん、そのはず。何だけどね」

「そうだな、プレイボーイが」

 慳貪な声と殺気が僕を叩く。

「峰田くん!? 何なの人聞きの悪い!」

「やかましい! 2週間前にいきなり教室に来てハグにチークキスかまされやがって! そんな深い仲の女を覚えてねえだあ!? 人生舐めんのも大概にしろよ!」

 峰田君は血涙を流しながら言う。

「確かになあ、俺も試合前にあの子にお茶しないって声かけたら、そこに緑谷さんはいますか? だってよ。愛されすぎだろ」

 上鳴君そんなことしてたのか。だから負けるんだと思う。

「あんたそんなことしてるから負けるんじゃないの?」

 耳郎さんがおんなじこと言ってる。

「まあ、イズク君はモテるのね」

 メリッサさんに笑っていわれ、僕も戸惑う。

「いや、でも本当に覚えてないんですよ」

「うーん、でも、それならなおのこと、この戦いはチャンスでしょ」

 メリッサさんは僕の肩を叩く。

「とにかく全力で向かっていけばいいの。そうすれば、通じるところもあると思うわ」

「……はい」

「やっぱプレイボーイだよあいつ!」

 峰田くんが耐えきれぬように叫んだ。

「だから人聞きが悪い!」

 

 続く芦戸さんと常闇くんの戦いは、常闇くんの圧勝だった。

 やっぱり相当強いな常闇くんの個性は。

 

 続く、切島くんとかっちゃんの試合。

「爆豪! 俺はてめえとダチになりてえ! だから! この戦いでお前に認めさせてやる!」

「そうかよ……。黙って死ね」

 かっちゃんは、開幕から爆撃を切島くんに叩き込む。

 だが、切島くんは、硬化によって防ぐと、殴りかかった。

「いつも、お前は凄かった! ヴィランにも真っ先に向かって行った! それでいていつも冷静だった!」

「褒めすぎだ! とっとと退けや!」

 かっちゃんの爆破を真っ向から受けながら、切島くんはかっちゃんに殴りかかる。

 かっちゃんはかっちゃんで、切島くんの攻撃に当たる気配がない。

「けど、そんなお前が! 実は俺達から一歩引いてんのを俺は知ってる!」

「ああ!? ダチでもねえのに何言ってやがる!」

「これからダチになれる!」

「なるかクソが!」

 切島くん、僕の言ったことを……。

 やっぱり、君なら。

『さあ! 切島の猛攻! しかし何か無茶苦茶暑苦しい内容を語り合ってんな! 何かあったのか!』

『……あんまり茶化してやるな。……何かは確かにありそうだ』

「事情は緑谷から聞いた! お前の気持ちなんて俺にはわからねえ!」

「聞いたならわかんだろうが! 俺は! ダチなんて作る気もねえし! 資格もねえ!」

 かっちゃんの爆破が胴体に当たる。だが切島くんはビクともしない。

「それはちげえ! そこまで緑谷は求めてねえ! 緑谷はとっくに許してる!」

「知っとるわ! そんなこと! だからこそ! 俺が俺を許さねえ!」

 ……かっちゃん! この流れは流石にまずいかも……!

「さっきから何話してるんだあいつら。緑谷に関係あんのか?」

 峰田くんや麗日さんが、僕の方を見る。

「デク君。何か知ってる? ……デク君?」

 瀬呂くんや芦戸さんも息を呑む。

「……はやまるなよ、かっちゃん」

 かっちゃんは、切島くんにカウンターで爆撃、距離を取る。

 切島くんは、力の限り叫んだ。

「いい加減自分を、許してやれよ爆豪! でねえと! 緑谷もお前も! 辛いまんまだろ!」

 一瞬静寂が会場を満たす。

 だが、かっちゃんはギリギリと歯を噛みしめる。

「……許せる訳ねえだろうが……」

 かっちゃん。駄目だ!

 

「俺があいつから光を! 奪ったんだぞ!」

 

 その怒号が、会場を貫く。

 会場中の視線が、かっちゃんと僕の間を行き来する。

「爆豪……お前! 全国ネットだぞ?」

「ああ、何が。地元じゃ有名な話だ」

 そう呟いて、かっちゃんはそれでも宣言する。

「だからこそ! 俺はオールマイトをも超える! ナンバーワンヒーローになる!

 じゃねえと! あいつとのその約束まで破っちまったら! 今度こそ俺は俺を殺したくなる!」

 僕はかっちゃんのセリフを歯噛みして聞く。

 かっちゃんは両手を後ろに向ける。

 爆速で近づき、空中を回転する。

 切島くんはそれを察し、硬度を上げる。

 いや、あれは無理だ、

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!」

 

 まさに人間榴弾だった。

 切島くんは地面を2バウンドし、壁にぶつかる。

 

『き、切島場外。クラップユアはーんず……』

『……やるならちゃんとやれよ』

 

 これでベスト4が出そろった。

 だが、歓声はまばらで、僕はA組皆の視線にさらされる。

 僕はため息をつきながら、皆に説明を始めた。

 6歳ころまでかっちゃんにいじめられていたこと。

 かっちゃんが個性を使って落としたドラム缶から庇ったこと。

 そのドラム缶に入った薬剤で、失明したこと。

「お、思ったより、がっつり爆豪悪いな」

 峰田君があわあわとした声を出す。

「といっても、僕としてはかっちゃんにはちゃんとした友達を作って欲しいんだけどね」

「そっか、緑谷ちゃんは、とっくに爆豪ちゃんを許してるのね」

 蛙吹さんが言う。それに僕は頷く。

「うん、だから、皆にはかっちゃんと仲良くしてあげて欲しいな」

「それはいいけど、お前は、爆豪と友達じゃねえのかよ」

 上鳴くんが、僕に問う。

「違うよ。そうなるには、ちょっと僕らの関係は、歪すぎる」

 被害者と加害者として、明確に線が引かれてしまってる。

「あと、間違ってもかっちゃんを責めないで欲しい。僕はとっくに許してるのに、なぜか被害者面してかっちゃんを責める人ほど、ムカつく人はいないからね」

「ああ、いそうだねそういう人」

 ていうかいたんだよ葉隠さん。

 中学時代はそういう人が結構いた。本当やめて欲しかった。

「じゃ、皆、行ってくる」

 僕としてはかっちゃんも気になるが、塩崎さんも気になるんだよなあ。

 頭をかきながら、僕は試合場に向かった。

 

 

side メリッサ

 イズク君は説明した後、準決勝の準備をしに行った。

 お茶子さんがおずおずと私に聞く。

「メリッサさんは、知ってましたか? 爆豪くんのこと」

「昔、いじめっ子を庇って怪我をしたとは聞いてたわ。けれど、それがかっちゃん君だったなんてね」

 私はそう言うと、周りを見渡す。

 皆、纏う空気が重苦しかった。

「何だよあいつら。割と仲良さそうに見えて、そんな過去があったのかよお」

 峰田くんが頭を抱えて蹲る。障子くんも同意する。

「ああ、緑谷の様子では、爆豪にそこまで悪感情は持ってなさそうだったからな」

「実際、持ってないと思うぜ。緑谷はとっくに許してるっつってた」

 瀬呂くんが、皆にそう言う。

「でも、爆豪ちゃんは自分を許せないのね。相手も、相手の家族も自分を許して、緑谷ちゃんはどんどん前に進んで、けれどだからこそ、爆豪ちゃんは前に進めないでいる」

「確かに、やられた方はもう気にしてないことでも、やった方はすげえ気にすることってあるよな。しかも、あれはあまりにヘビーだぜ」

 梅雨ちゃんの言に上鳴君も同意する。

「……私ら、どうすればいいんだろうね。あの二人に」

 お茶子ちゃんか呆然と言う。

「……別に思いのままにすればいいと思うな」

 私は皆に言う。この辺、みんな年下なんだなあって思うな。

「オールマイトおじさまが言ってたわ。余計なお世話はヒーローの本質だって」

「余計なお世話、か」

「でも、そうやね。私らが怖がって二人に接しても、どうにもならんもんね」

「……とにかく今は、緑谷くんの応援をしよう! 次の塩崎さんは手ごわいぞ!」

 飯田くんの号令に、皆拳を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

side塩崎

 

 とうとうこの瞬間がやってきました。私は、とうとうあの方と。

 先ほどの試合では衝撃の事実が明かされ、まだ会場がざわついてますが、私のやることは変わりません。

 クラスの皆様からの激励を受け、控室に向かいますと、爆豪さんとすれ違います。

「……その節は、ありがとうございます」

「礼を言われる筋合いなんざねえ。……お前は、俺を責めねえんかよ」

「あなたは、誰かに責めてほしいのですか?」

 私の問いかけに、爆豪さんは舌打ちします。

「あなたとあの方と私が出会う前のお話でしょう。でしたら私が責める筋合いはありません。そのようなことをすれば私は業火で焼かれねばなりません」

「……そうかよ、邪魔したな」

 やはりこの方は贖罪を求めている。ですが、私が口を出すことではありませんね。あの方とこの人の問題でしょう。ですので、私が言うのは礼だけに。

「……ありがとうございます。あの方に教えないでいただいて」

「アン?」

「おかげで全力で伝えることができます。この大舞台で私の思いを」

「そうかよ……。精々気張れや。決勝がお前なら、楽だろうからよ」

 心にもないことを言いますね。あの方の勝利を微塵も疑ってないくせに。

 胸を高鳴らせながら私は入場口へ向かう。

 

 さあ、私の8年、全てぶつけましょう。

 




これは塩崎さんなのかオリ崎さんなのか。流石に魔改造しすぎか?
飯田のレシプロ攻略しようと色々考えてたらこうなってしまった。

他には完璧に決まった三角締めで飯田くんに「あれは……俺だ!」してもらうくらいしか思いつかなかった。

だが後悔はしていない。

職場体験先、どこがいい? (参考)準決勝終了まで

  • 原作通り グラントリノ
  • 幼き日の憧れ プッシーキャッツ
  • インターンへの布石 サー・ナイトアイ
  • 異能解放戦線への布石 ミルコ
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