盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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戦後処理、プッシーキャッツと気付き

 結局あの後、僕たちは病院に直行した。

 僕、かっちゃん、轟くんは怪我は無かったものの、飯田君に切り傷があったからだ。

 そこで、僕たちは犬のおまわりさんにであった。

「私が保須警察署署長の面構犬嗣だワン」

 ワンて。

「まず、君たちの行為については、極めて重大な違反があったと言える。わかるね」

「……資格取得なく、ヴィランに危害を加えたことですよね?」

「そうだワン。まあ、デアデビル、バクゴー、ショートについては、ミルコとエンデヴァーから交戦許可を出していたと申し出があったが。インゲニウムについては正規の指示を経ていなかった」

「……ですが、飯田くんは、あくまでヒーローネイティブの救出を優先していました。逃がさなかったのはヒーロー殺しです」

「そのあとヒーロー殺しに蹴りを入れていたね。あれが良くなかった」

 確かに、それを言われるとぐうの音もでない。そこにかっちゃんが口を挟む。

「ようは、法律違反を見逃すかわりに、功績にも目を瞑れって話か?」

「大分円滑だワンね……。君達には二つ選択肢がある。飯田くんとマニュアルが処罰を受けることになるが、このまま表彰を受けるか。それとも、功績をミルコとエンデヴァーに与え、真実には目を瞑るか」

 そこで飯田くんが口を挟む。

「待ってください! 僕が処罰を受ければ、少なくとも三人の功績は明るみに出るんですよね!? でしたら!」

「それはマニュアルも言っていた。自分の監督不行で前途ある若者の功績が明るみに出ないのは納得できないと。だがら、こうして話している」

 成程。

「「「じゃあ秘密で」」いいわ」

 僕らの声が重なりかっちゃんが舌打ちする。

「別に功績が欲しくてやったわけじゃないしいいですよ」

「俺は結局全部の攻撃避けられてたし、功績なんて言われても気持ちが悪いだけだ」

「デクのおこぼれなんざいらねえ」

「君達……」

 僕は飯田くんに向き直る。

「それに、君が助けを求めてくれて、僕は嬉しかった。だから、それで十分だ」

 そう言うと、飯田くんは感極まって涙した。

「すまない……。私怨で暴走し……諭され……挙句の果てに命まで……何といえばいいか」

「気にしなくていいよ、友達だろ」

「気にすんなよ委員長。じゃあな」

「めそめそ泣くんじゃねえメガネ」

 その後、飯田くんも退院し、僕らは病院を出ようとする。

 病院の外では、ミルコとエンデヴァーが話し合っていた。

「敵連合か……気に食わねえが、チームアップの必要はあるかもな」

「……お前の口からそんな言葉を聞くとはな」

「うるせえ。思うところあんだよ。……ようお前ら。ケガなくて良かったぜ」

「……ふん、学生のおこぼれの功績などいらんのだがな」

「良く言うぜ、『ショートたちなら絶対友達を選ぶ』って言ってたくせによお」

「ぐ、貴様!」

 僕達は二人に出会い、疑問に思ったことを聞く。

「あの、最後のヒーロー殺し、あれ凄い殺気でした。立ってられなくなるぐらい。何で動けたんですか?」

 その問いに、ミルコとエンデヴァーは頭をかく。

「そりゃあ、あれだ。お前らがいたからな」

 そう言われ、僕達は首を傾げる。

「……守るべきものがあって、ヴィランがいる。ならどんなに怖くても、ヒーローはヴィランを真っ先に仕留めなくちゃならねえ」

「ヴィランをどこにも逃がさない。それがヒーローの使命だ。傍らに守るべきものがあるならなおさらだ」

 僕達は二人の言葉に押し黙ってしまう。

 それが、僕に足りないもの。

 守るための、敵意。

 確かに僕はブルズアイに立ち向かった。

 あれを、いつでも発揮しなくちゃならない。

 

 そうだ、そのために、僕は”恐れ知らず”を名乗ったのだから。

 

「ま、私はビビッてなかったけどな」

「それにしては尻尾が逆立っていたがな」

 エンデヴァーの言に、ミルコが青筋を立てる。

「ば、お前あれはちげーよお前! お前こそ一歩下がってなかったかあ!?」

「下がってなどおらぬわ戯け! 人聞きの悪い!」

「ふーんだ! 大体娘とほとんど同世代のやつに張り合って恥ずかしくないんですかあ!?」

「そう言うセリフは冬美のように淑やかになってから言うんだな!」

「ああ出ました親ばか! どうせ思春期の時は『パパと洗濯もの一緒にしないで』とかいわれてたんだろ!」

「冬美はそんなこと言わぬわああ!!」

 何か凄いレベルの低い言い争いを始めた。

「やめろ親父。恥ずかしいから」

「これがナンバー2とナンバー7かよ……」

「ほらミルコ、行きますよ」

「うむ、往来の場で迷惑です!」

 飯田くんもいつものように戻ったし、僕もフーっとエンデヴァーに威嚇するミルコを引っ張ってホテルに戻った。

 

 ホテルに戻ると凄い数の着信があった。

 塩崎さんとクラスの皆。一つ一つに返信していく。

 お茶子さんとは、心配した件、近況を報告し合った。

「そっか、ヒーロー殺し。大丈夫だったん?」

「うん! ミルコとエンデヴァーが全部やってくれたよ」

「そう……ならええねんけど」

 麗日さんはそこで言葉を区切る。

「私、デクくんがUSJの時みたいに無茶したと思った。でも、それならええわ。良かった」

 僕の心にチクりと何かが刺さる。……嘘をついてごめん。

「うん、大丈夫。それよりそっちはどうだった?」

「うん凄く有意義だよ! 今度学校であったら組手してくれへん?」

 麗日さんから呼吸音が聞こえる。空手の息吹に近いかな? 頑張っているようだ。

「うん、もちろん! 頑張って!」

 他にも何人ものクラスメイトに心配だった旨を告げられ、恐縮してしまった。

 そして、一通り通話し終えると、ミルコが僕の部屋のドアをノックした。

 僕は慌ててドアを開ける。

「ミルコ、どうしたんですか?」

「おう、明日は走ってちょっと知り合いの持ってる山にいくからな。夜更かしせずに早く寝ろよ」

 僕はいきなり言われて驚く。

「あの、いいですけど、何で急に」

「……その前に確認なんだけどよ? ヒーロー殺しにお前足を斬り落とされそうになったって警察に言ったんだってな?」

「え。ああはい……恐縮です」

「成程なー、……もったいねえ。早く寝ろよ?」

 ミルコはその後、髪をなびかせてすぐに出て言った。

 僕は首を傾げつつ、眠りについた。

 もったいない、何だろう

 

 

 保須から走ること2時間。

 僕はそこで四人の人に出会った。

「煌く眼でロックオン!!」

「猫の手手助けやってくる!!」

「どこからともなくやって来る……」

「キュートにキャットにスティンガー!!」

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」」

 …………。

「先輩方! お久しぶりです! 本日はありがとうございます!」

 …………。

「ミルコ久しぶりー! しかしどうしたの急に?」

 …………。

「ちょっと職場体験先の学生と稽古したくて。山がいいかなと」

 …………。

「急にいわれるからびっくりしたけど、ここだよ? あちきらが持ってる山の一つで、放棄された林業用の杉林」

 …………。

「ありがとうございます! 禿山にしてもいいんすね!」

 …………。

「そうね、その後に広葉樹を植樹する予定だから、むしろ伐採してくれると助かるわ。人里離れた山だから、万が一土砂崩れになっても心配ないし」

 …………。

「しかし、どうしたのだ。体育祭優勝者の少年。緑谷だったか。静止しているが」

 …………。

「あ、本当だ。どうしたんだ急に。おー……」

 

「プッシーキャッツだー!!」

 

 僕は叫んで、マンダレイに話しかける。

「あの! マンダレイ!」

「へ? 私?」

「あの! 僕昔から無個性って診断されていて! その時に参考にしたのがマンダレイのキャットコンバットで! 戦闘向けの個性ではないのにただの格闘技術で数多のヴィランを拘束しつつチームの司令塔として冷静的確に指示を出しているその姿に感銘をう「うるせえキメエ」へブウ!」

 はたかれた……。

「すまん先輩。こいつオタクなんだ」

 ……事実ですけど。

「あーうん、いいけど。褒められて悪い気はしないし……」

「ねこねこねこ。そっかーマンダレイのファンなんだー」

 ピクシーボブが笑う。本当にそう笑うんだ!

「も、もちろんご三名も、ラグドールはそのサーチの個性で敵の弱点を正確に察知しピクシーボブはその強力無比な個性で防御攻撃サポートと幅広く対応しそこを虎さんが殴る蹴るの暴行「じゃあ早速やるぞ」」

 語らせてー。

 

 数メートル間を挟んで、僕達は対峙する。

「んじゃあ、とりあえず。今発揮できる最大出力のフルカウルとやらでやってみろ」

「へ、いいんですか?」

 ミルコや周りでみているプッシーキャッツの体を吹き飛ばしてしまうかも。

「おう、安心しろよ。触れられもしねえから」

 そう言われ、僕は流石にムッとする。

「……では。75%!」

 僕がそう呟くと、電流と風圧が僕の体から噴出する。

「ほう、なかなか……」

「頑張れー!」

 プッシーキャッツの方々も見てくれているし、無様な姿は見せられない。

「いきます」

「んじゃあ、ほい」

 速い。

 レーダーセンスで居場所を捉える。

 75%で、左ジャブ。

 風圧が巻き上がる。

 ミルコはものともしない。

 ミルコの右蹴りが僕の胴を貫こうとする。

 僕は返す刀で攻撃を受け止めようとし、ミルコの蹴りが軌道を変える。

 フェイク、なら僕も、パンチに移ろうとしたところで、ミルコがさらに僕に近づく。

 近い、組技に移行。ミルコの手。

 僕はあっさり押し倒され、組み伏せられる。

 

 すごい。流石プロ。身体能力はこの状態の僕なら互角のはずなのに。

 攻撃の継ぎ目を正確に。

 

 ミルコに解放され、僕は立ち上がる。

「す、すごいですミルコ。僕の攻撃の継ぎ目を……」

「うん、じゃあ、次。フルカウルとやら……そうだな。10%くらいでやってみろよ」

「へ、あ、でも75%で駄目なのに出力を下げて……」

「いいからやってみろ、面白いことが起きるから」

 僕は言われるがまま、今度は言われた通り10%の出力で行う。

「じゃあいくぞ。おら」

 ミルコは今度は左ローをする。

 僕は後退して躱し、左ジャブを放つ。

 ミルコは回り込んで手を取ろうとする。

 僕はそれを察知し、体を回転させ、バックブローをミルコに。

 ミルコはしゃがんで攻撃を躱そうとし、僕はそれを読み上から覆いかぶさる。

 ミルコは瞬時に後退し、距離をとると飛び込んで蹴り。

 僕はそれに合わせて前進し、ミルコの顔を抑える。

 そのまま、僕はミルコを組み伏せた。

 

 組み伏せ、ることができてしまった。

 

 出力を下げたのに、下げたからこそ……。

 

「ああ、そっかー」

「成程」

「へ? マンダレイ、虎。何が成程なの? 急にあの子動きよくなったけど」

「うんでもあちきも個性なかったら分かんなかった」

 

 プッシーキャッツの声が遠くに聞こえる。

 75%の時は、動きが悪い。

 

「んじゃ、私ら女子会してっから。この辺の山の杉は自由にぶっ壊していいそうだから、好きにトレーニングしろよ」

 

 いつの間にか抜け出したミルコが、土埃を落としながら言う。

 75%の力を、フルに使えていない。

 

「そうだな。素手で薪割とかいいんじゃねえか? んじゃ先輩達、いきましょう」

「そうね、お昼にしましょう」

「ねーねー教えてよー!」

「あいつのいない所で説明しますよ。自分で気づかなきゃ意味ないですから」

 

 そもそも何でヒーロー殺しの時、風圧で対抗しなかった?

 いや、ブルズアイの時もそうだ。

 僕は100%を使った。でも本当に100%だった?

 オールマイトの力だぞ?

 

 だってあまり出力を上げるとレーダーセンスが乱れる。

 無意識でブレーキを? 

 出力を上げているのに?

 出力を上げているのにブレーキを。

 

 じゃあ、僕は、いままで

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 僕の絶叫が山彦となって、辺りに響く、鳥達が飛び立った。

 すぐさま、僕は近くの木に向かって75%を振りぬく。

 破壊が、木々を何十本となぎ倒す。

 その木を一本掴みとり、手刀で木を一本一本細切れにしていく。

 

「僕は! 何て! 馬鹿なんだ! そんな! 大男が小股でダンスするような真似を! アホか! 僕は!」

 

 叫ぶ間に、僕の周りに綺麗に整形された薪が散らばる。

 

「足りないことって! それか! 僕は今まで! 力を持て余しただけの! 恥ずかしいいいいいい!!」

 

 思えば体育祭決勝の時は疲労もあって出力がせいぜい30%位だった。

 だからあれだけ動きが良かった。

 塩崎さんは戦闘の規模が僕のパワーに見合っていた。

 だから僕も応えてあれだけ動けた。

 

 ヒーロー殺しも、僕ならもっと楽に勝てた!

 ああ、これはヤバい。

 

 それから陽が沈むまで、僕の絶叫と破壊音が、辺りに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、もう気づいたか。やっぱ頭いいなあいつ」

「……なるほど、そういうことね」

「うん、確かに。でもこれで大分強くなるんじゃない?」

「ああ、しかしあのミルコがいい先生をやるとはな」

「まあ、あんだけ勿体ないことされてたら世話を焼きたくなりますよ」

「ふふふ、んじゃ、お昼にしましょうか。? 洸汰。どうかした?」

 少年は、絶叫と破壊音のする方を見ながらつぶやく。

「……くだらん」

 

 

 




最後にギリギリプッシーキャッツ乗った。
ミルコとプッシーキャッツが仲良しなのは当SS独自の設定なので悪しからず。

緑谷の気付きについて詳しいことは期末試験編で描写します。
その前に体育祭掲示板ですが、結構難産で更新遅くなるかもです。

一つ言えるのはこのSSの塩崎さんやべえなってことですね。
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