盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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期末試験開始

 時は流れ6月最終週。

 上鳴くんの絶叫が教室に響く。

「全く勉強してねー!! 体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」

 そうなのか。

 上鳴くんの叫びよりも先ほどから一定のリズムで聞こえる芦戸さんの笑い声が気になる。

「いや、でも職場体験から一カ月近くあったんだから本当はやってるでしょ?」

 僕が言うと、二人はダウンした。失言だったか。

「た、確かに職場体験から、もう一か月、されど一か月、もう……」

 ごめん、とどめ刺しちゃった。

「まあ、中間は入学したてで範囲も大したことなかったからいいけど、期末は中間と違って」

「演習試験もあるのが、辛い所だな」

 確か峰田くんは中間で9位だったか。

「あんたは同類だと思ってた!」

「お前みたいな奴は馬鹿で初めて愛嬌があるんだろ? どこに需要あるんだよ」

「世界、かな」

 大きく出たなあ。

 そこで、八百万さんが声をかける。

「お二人とも、私座学ならお力になれるかもしれません」

「ヤオモモー!」

「……演習の方は、からっきしでしょうけど」

 ? 八百万さんなら大丈夫だと思うんだけどな。

 そう思ってると、同じ疑問を抱いたのだろうか、轟くんも小首をかしげる。

「お二人じゃないけど、ウチもいいかな? 二次関数ちょっと応用躓いちゃって」

「わりい俺も。八百万古文わかる?」

「おれも」

 耳郎さん瀬呂くん尾白くんが八百万さんに勉強を教えてもらおうとする。

 八百万さんは嬉しそうだ。

「イイデストモー!!」

「この人徳の差よ」

「俺もあるわテメエ教え殺したろか」

「おお、頼む」

 かっちゃんは絶望的なくらい天才肌だから教えるの下手なんだけど、切島くん大丈夫かな?

 まあ言うだけ野暮か。

「まあ、筆記試験は大丈夫として、実技試験は塩崎さんと対策するかな。でも付き合ってもらいすぎると悪いかな」

「筆記は大丈夫なんや……」

「そうだ、緑谷! 最近塩崎ちゃんと放課後よろしくやってるそうじゃねえか!」

 峰田くんはそう言って僕を詰める。人聞きの悪い。

「うん、環境破壊を少々」

「色気ねえつまらねえ」

 そう言われてもなあ。

「何か放課後凄い音しとるよね。一体何しとんの?」

「ちょっと体育祭でみせたゴリアテを出してもらって戦闘訓練をね」

 最近ようやくものになってきた。

 これなら、75%の力をフルに使える。

「あと緑谷くん。ちょっと気になったんだけど」

「葉隠さん。何?」

「……ゴツくなってない?」

 そう言われ、僕は嬉しくなる。

「本当? ちょっとこの数週間で3キロ増えたんだ! これなら上限値も上がってるかも!」

 そろそろ80%の大台に乗るかもしれない。

「はあ、お前ほんとストイックだよな。かわいい女の子と一緒に訓練して何もねえうえにやることは筋トレか」

 上鳴くんが感心したように言う。

「……話戻るけど筆記は大丈夫ってことは、ちょっと教えて貰ってもええんかな?」

 麗日さんに言われ、僕は頷く。

「うんいいよ」

「私もー」

 葉隠さんが元気よく手をあげる。

 といっても、僕は目が見えないからいざ教えるとなると難しいかも。

「飯田くんと轟くんもどうかな」

「うむ、ご一緒しよう」

「日曜日以外なら大丈夫だ」

 じゃあ、放課後集まろうか。と言ったところで通知が鳴る。

『緑谷様、塩崎様からメールです』

 ? 何だろ?

 

 

 

 自習室。

 僕と麗日さん、葉隠さん、塩崎さんは一緒の机で教え合う。

「二次関数は……」

「成る程」

「この公式は……」

「ふーん」

 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

 ……空気おっも。

 いや、勉強会ってこんなもの?

 何か凄い水面下で牽制しあってる空気なんだけど。

 隣の机では轟くん飯田くん鉄哲くん取蔭さんが勉強している。

「これは、凄いな」

「こう言っちゃなんだがどうやって雄英入ったんだ?」

「でしょー。これは三人がかりで何とか致すしかないじゃん」

「く、すまねえ俺が不甲斐ねえばかりに」

「ほんとだよ」

 

 

(まあ、でもそのおかげで勉強会の口実が出来たからオッケーかな。頑張れ茨)

 

 

 取蔭さんが意味あり気に笑う。

 まあ、でもこっちの机は勉学的には何とかなりそう。

 三人とも赤点ってことはないだろう。

 

「あ。麗日さん、そこの計算違う」

「あ、ほんまや……何でわかったん?」

「なに書いてるか位は判断できるよ」

「とんでもないね」

「塩崎さんは応用で躓くね。反復練習でパターンを覚えるしかないか」

「すいません、不甲斐ないばかりに」

「いいよいいよ、いつも世話になってるから」

 そこで、葉隠さんの手が止まっていることに気づく。

「葉隠さん、どうかした?」

「き、休憩をお願いします……」

 ふと気づくと90分経っていた。確かに、そろそろいい時間だ。

「そっちは……、鉄哲くん大丈夫?」

 何かシューシュー言ってる。

「そうだな、そろそろいい時間だろう」

「うむ、10分程休憩してから再開しよう」

「ごめんねえ二人とも、助かるよ」

 取蔭さんが手を合わせる。

「ジュース買ってくるか」

 鉄哲くんの一言で、僕らは動きだす。

「まあ筆記はみんな何とかなりそうだけど、実技演習はどうなるんだろうね」

 僕のつぶやきに、鉄哲くんが拾う。

「噂じゃあ対ロボの戦闘訓練らしいぜ」

「入試の? そんな簡単でいいの?」

「おう、拳藤が先輩から聞いた。勉強会やるって言ったらA組にも教えといてくれって言われたからよ」

 拳藤さんいい人だなあ。

「だが、確かに簡単すぎるかもしれないな」

 轟くんの言葉に、塩崎さんも頷く。

「そうですね、今年は襲撃事件もありましたし、もっと別の試験になる可能性もありますね」

「うへえ、やだなあ」

 葉隠さんが言う。そう言えば葉隠さんどうやってあの試験を突破したんだろう。

「あのロボ、私の姿を捉えられないから楽なんだけど」

「なるほど」

「となると、一段上となると対人訓練かな」

 取蔭さんがコーラを飲みながら答える。

「ふむ、まあいかなる試験でも、やることは一学期の反復練習だろう」

「そうだね」

 

 

 

 そう言ってまた90分ほど勉強をして解散となった。

 何となくギスギスした空気もなくなったように思う。

 

 

 

 筆記試験は、勉強の甲斐あってみんな何とかなったようだ。

 そして、実技試験。

 

 

 

 僕達は正門前で先生たちと対峙していた。

「こりゃ、何かあるな」

 僕のつぶやきに、轟くんと飯田くんがうなずく。

「諸君らなら、事前に情報収集していたと思うが、すまないな、一部生徒は想定していたようだが、やり方を変えさせてもらう」

 特に上鳴くんと芦戸さんが悲鳴をあげる。

「今回行うのは、二人一組による戦闘訓練! 相手は教師さ」

 校長先生がにゅるっと相澤先生の捕縛布から出てくる。

 いいなあうらやましい。

「ペアの組と対戦する相手は、すでに決定済み、こちらで動きの傾向や親密度、諸々を踏まえて決定したから発表していく。

 轟と八百万がチームで、俺とだ」

 相澤先生とか、強個性の二人に個性を消す相澤先生。

 中々ハードなマッチアップだ。

「そして、緑谷と爆豪がチーム」

 その途端、かっちゃんが舌打ちする。

「デクとかよ、つまらねえ」

「はいはい」

 

 その途端、何かが超速でやってくる。

 

「相手は」

「私がする!」

 オールマイトがズシンと重量音をあげ着陸する。 

 かっちゃんがその途端嬉しそうな笑い声をあげる。

「そりゃあ、願ってもねえ」

「……僕もだよ」

「ふふ、いい顔だ……」

 相澤先生がため息を吐く。

「時間は有限、とっととバスに乗れ」

「よし、皆! 全員で突破するぞ!」

 飯田くんが皆に発破をかける。

「くそ! こーなりゃやけだ! レッツゴー林間合宿!」

「海! 山! 肝試ー!!」

 

 上鳴くんと芦戸さんも覚悟を決めたようだ。

 僕達はそれぞれバスに乗り、林間合宿を賭けた試験の場に赴く。

 

 

 

 試験ルール。

 僕達はステージ中央からスタート。

 30分以内に教師にハンドカフスをかけるか、ゲートから逃げるかでクリア。

 教師陣はハンデとして体重の半分のおもりをつける。

 

 

 

 約120キログラム、人二人分の重りをつけているといっても、そこはオールマイト。

 普通なら逃げの一択なんだけど。

「当然かっちゃん、逃げる気ないよね」

「ハ、当然だ」

 僕らは市街地を模したフィールドを駆けながら話し合う。

「そこはいいよ、ただ、僕が近接でかっちゃんは中遠距離からけん制して欲しい」

「……いやにあっさり引き下がるな」

「ちょっとね」

 

 ハンデありで二人掛り、それで逃げの一手しかないなら、これからの戦いに未来はない。

「……僕も、オールマイトを倒したい、戦ってみたい」

 まだ、オールマイトが戦えるうちに、でないと、彼は安心できないだろう。

「何があったかしらねえが、そういうことならやるぞ」

「ああ、 かっちゃん危ない!」

 僕は前にパンチを打ち込む。

 

「60%!!」

 

 その瞬間、僕が生み出した衝撃と前方からやってきた衝撃が打ち消される。

 だが、周りの建物は悉く吹き飛んだ。

「さて、脅威が行く!」

 

 

 

 その途端、威圧感がやってくる。

 あの時のヒーロー殺し以上。

 だが。

 

 

 

「デク! やるぞ!」

「うん! かっちゃん!」

 

 

 この前までの僕じゃないってことを、貴方に見せたいから、本気で戦います。

 

 

 期末試験、開始。




ウルトラアナリシス見てたんですけど
鉄哲知力C
塩崎知力D

……塩崎さん?
まあでもこの知力って十中八九バトルIQのことで、塩崎さんは策を弄するタイプじゃないのでこの値ということかな。
でもあれで勉強できないのもかわいい。うーん……。

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