二人の英雄 その1
I・アイランドに到着するとすぐさまメリッサさんが駆け寄ってきた。
そして僕にハグする。
「イズク君! 久しぶり! 元気にしてた!?」
「はい! お久しぶりです!」
何かドキリとする音が聞こえた。
「かっちゃん君、麗日さん、葉隠さんも久しぶり! 塩崎さんは初めましてね!」
「あ、ありがとうございます」
「はい! お久しぶりです!」
「初めまして。よろしくお願いします」
「ケ」
かっちゃん舌打ちはやめなさい。
メリッサさんはクスクスと笑う。
「とりあえずホテルに荷物を置いてこようか。案内するわね。……イズクくん、そういえばなんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「……改造手術でも受けた?」
そう問われ、僕は体を触る。
「確かに結構ごつくなりましたけど」
「そうよね。一応体重やサイズは送ってもらってたから知ってるけど。それにしても大きくなったわね。
許容量も増えた?」
「一応は80%まで」
僕の答えにメリッサさんは満足げに頷く。
「そう。もう少しね! ふふ、コスチューム。新しく作ったのよ」
「本当ですか? ありがとうございます!」
僕らが話をしていると、かっちゃんが咳払いをする。
「とりあえず、移動してえんだがいいか?」
「あ、そうね。ごめんなさいね」
「ああ、別に」
(このままだとこいつら何かに変身しそうだ)
僕は首を傾げつつ、ホテルへ移動した。
僕らはプレオープン前のパビリオンを6人で見学していく。
多くの展示物がデヴィットさんの特許を元にした発明品ということで、彼女も嬉しそうだ。
「いや、凄いですよ。ほとんどの発明品がシールド博士の発明なんですね」
葉隠さんがはしゃいだように言う。
「ふふ、ありがとう。私もパパみたいな一流の科学者になって、あなた達みたいなヒーローを支えられるような人になりたいんだ」
「……きっとなれますよ。メリッサさんなら。ていうか、もうなってます」
僕の言葉に、メリッサさんは少しハッとしつつ、はにかんだように笑った。
「ふふ、ありがとう」
そして見つめ合い笑うと、麗日さんが咳払いする。
「……そういえば、オールマイト先生はどこに?」
そういえば、前日入りしていたと聞いたけど、まだ見てないな。
「マイトおじさまとパパは何か検査があるとかでラボに行ってるわ。でも今夜のレセプションパーティーにはでるはずよ」
「そうですか。あと、今日はサイクロプスさんやストームさんはいないんですね」
「ええ、二人もレセプションパーティーの準備があるから。今日はイズクくんたちがいるし大丈夫だって言ってお休みをとってもらったの」
……あの二人の代わりが務まるとは思えないけど、信頼には応えねばなるまい。
その時、僕は視線を感じた気がして振り返る。
「……かっちゃん。誰かいる?」
「あ? いねえが……」
「そう……」
「あ、向こうでヴィランアタックっていう催しがあるのよ。行ってみましょう」
メリッサさんに促され、僕たちは移動する。気のせいかと思いつつも、僕らはメリッサさんの後をついていった。
「ボス。セカンドプランの周りに何人かのガキがいます。遂行は不可能かと」
「……ガキだろう。何故無理だ」
「奴ら、雄英一年ヒーロー科です。例の、ブルズアイと渡り合ったというガキもいます」
「そうか……。下手に虎の尾を踏む必要もない。すぐに戻れ」
「了解」
かっちゃんがスタートの合図とともに飛び出し、仮想敵を倒していく。
「10秒! 凄まじい高記録です!」
「微妙だな。おい、デク! てめえもやれ!」
「はいはいかっちゃん。フルカウル、60%」
僕はワンフォーオールを起動し、左ジャブを放っていく。
「9秒! なんと暫定一位に踊りでた!」
「クソおしい! もう一回だ!」
「かっちゃん。あんまり占有は」
僕らの会話を、メリッサさんたちは笑ってみている。
「ふふ、二人とも、体育祭の頃と比べてとても強くなってるわね」
「そうですね。緑谷さんと爆豪さんは互いに切磋琢磨しあってますから」
「いいことね! 私も、コスチュームを作った甲斐があったわ」
その言葉に、僕は顔を上げる。
「そういえば完成したんですか?」
「ええ。私のラボにあるわ。最終調整もあるから、よければ来る?」
「はい! 是非お願いします!」
そう言って、僕達はメリッサさんのラボに向かった。
「トシ。やはり個性指数の低下は激しいようだね」
「ああ、だが、次代の芽は着実に育っている。だから大丈夫だ」
オールマイトの力強い断言に、デヴィットも苦笑する。
「ああ、そうだな。すまない。あの装置さえあれば」
「構わないさデイヴ。それに、政府の圧力があったのなら仕方があるまい」
「せめて君に一度でも使えればいいのだが……。いきなり没収されてしまってね。
正直、何か作意のようなものを感じるよ」
デヴィットの言葉に、オールマイトがハッとする。
「……まさか、オールフォーワンか? それともキングピンか?」
「……どちらかの思惑があったとみるのが正解だろう。私の装置を使って何を企んでいるかは知らないが」
そこで、デイヴは悪戯そうに笑う。
「なあに、実はあの装置はな……」
僕は、ラボにてメリッサさんにブレスレットを渡される。
「このスイッチを使えば、すぐにヒーロースーツが装着できるはずよ」
「わあ、本当ですか?」
「はええ。すごいんやねえ」
僕らはメリッサさんのラボで、もてなしを受けていた。
「色々な賞を受けられているのですね」
塩崎さんが数々のトロフィーや盾をみながら言う。
「それほどでもないけど。けれど、皆本当に優秀ね。そうそう、今日のレセプションパーティー用のスーツもあるのよ。一度袖を通してくれる?」
「何から何まで、ありがとうございます」
「うふふ、いいのよ。それに、皆優秀なヒーロー候補生だもの。繋がりを作っておくに越したことはないわ」
「それ、俺もいくのか」
かっちゃんも往生際が悪いな。
「じゃあ、夜7時に集合ってことで」
「聞けや」
そして、僕たちはパーティーに出席するため、各々準備することになった。
「……塩崎さん。メリッサさんと一緒にいてもらえる?」
僕は彼女に耳打ちする。
「? 了解です」
僕は何となく昼間の視線が気になっていた。
塩崎さんは怪訝な顔をしつつも、頷いた。
7時、レセプション会場。
「いやあ、女性の準備って遅いねえ」
「まあなあ」
かっちゃんと僕は待ち合わせ場所で話し合う。
「あ、そろそろ来たよ」
「いやあ、お待たせ」
「えへへ、どう? 似合う?」
麗日さんはスカートタイプのドレスを身に纏い、葉隠さんはスパンコールドレスというのだろうか、を着てきた。
「うん、二人とも似合ってるよ」
さらに、メリッサさんと塩崎さんの二人もくる。
二人は、お揃いの上の方で纏めた髪型に、メリッサさんはスカートタイプ、塩崎さんはパンツスタイルのスーツを着てきた。
「4人ともお待たせ! じゃあ行こうか」
そう言って会場に向かおうとしたところで、警告音が流れる。
『I・アイランド内に爆発物が設置されたとの情報が入りました。これより厳重警戒モードに移行します』
「……何かあったな」
嫌な予感が当たった形に、僕は頭を抱える。
「ちょっと待ってて」
僕はビリークラブを使い、辺りの様子を探る。人の気配は僕達以外にないが。
「エレベーターも、携帯電話も使えませんね」
「とりあえず、パーティー会場に行こう」
皆の視線が集中する。
「オールマイトにデヴィットさん、サイクロプスさんにストームさんも会場にいるはずだ。
彼らが行動していないということは」
「……とらわれているということですね」
塩崎さんの答えに僕は頷く。
「4人のほかにもプロヒーローがいるはず。彼らに接触し、指示を仰ぐべきだ」
「異論はねえ。ここで6人で固まってても危険なだけだ」
「そうね、でももし、犯人たちがいたら」
葉隠さんの疑問に僕は笑って答える。
「そのための僕だ」
僕は耳をつつき、メリッサさんに向き直る。
「パーティー会場まで、案内してもらえますか」
「ええ、わかったわ」
メリッサさんは意志の篭った声を上げる。
僕らは努めて静かに動き出した。
今回は6人パーティーでいきます。
ここにさらに轟やら八百万やらいると超イージーなので