ウォルフラムは、笑いながらメリッサさんを締め上げる。
「やめろてめえ!」
「じゃあ大人しくしてるんだな。雄英体育祭優勝者、緑谷出久」
「……くわしいんだな」
「お前、自分が思ってる以上に有名なんだぜ。
何せお前がいなければもっと計画はラクだったんだから。
おいサム。装置を持って来い」
「は、はい」
サムさんは慌てたように装置を持ってくる。
くそ、何とか隙を見つけてメリッサさんを助けないと。
そうしている間にもウォルフラムはメリッサさんを引き寄せ、部下に預けた。
部下は手を刃に変化させ、メリッサさんに突きつける。
「ソキル。離すなよ。シールド博士もきてもらおうか」
「く、メリッサ」
逡巡しつつも、デヴィットさんは近づく。
「良い子だ。俺らはとっととヘリでづらかるか。だがその前に」
ウォルフラムはアタッシュケースからヘッドギアのような装置を取り出すと、手で弄ぶ。
「装置は95%が完成済み。だが、あと5%が問題、そうだな」
「は、はい。その設計図は博士の頭の中のみにあります」
サムさんの言葉に、デヴィット博士は苦虫をかみつぶしたようになる。
「何故そんな面倒くさいことを。シールド博士」
ウォルフラムは慇懃な態度でデヴィットさんに問う。
「よくも抜け抜けと、貴様らのような奴らが装置を狙っていると知った時から、この研究を完成させるには細心の注意を払わねばならなくなった。
案の定、何者かの意図により、研究は凍結された。そして、私は装置を未完成のままにした」
「だからこそ、俺達が余分に仕事をしなければならなくなったんだ」
ウォルフラムがため息を吐く。
「設計図を前もって手に入れ、こんなものを作らざるを得なくなった」
そう言ってウォルフラムが取り出したのは小型の耳当てのような装置だ。
「そ、そんな馬鹿な! 私以外にその装置を完成させることができるのは! 一介のヴィランには無理なはずだ!」
「生憎、強力なスポンサーがいるのさ」
ウォルフラムが耳当てを当て、その上から装置を当てると、奴の体がエネルギーをまとう。
「さあて、まずは、目障りなお前からだ。緑谷出久」
そう言うと、奴は僕に手をかざす。金属片が、僕の体を包む。
まずい。せめてメリッサさんを。でもどうやって。
その時、葉隠さんがソキルと呼ばれた男に近づき、首を絞め上げた。
今だ。
「フルカウル。80%!」
瞬間、部屋に暴風が吹き荒れ、金属片が吹き飛び全ての人間が目をつぶる。
すぐに出力を落とし、シールド博士、メリッサさん葉隠さんを連れ、離脱する。
脱兎のごとく、逃げに徹し、通路から制御用コンピュータに近づく。
「メリッサさん! 解除を!」
「う、うん! ありがとう」
そう言うと、メリッサさんはコードを解除し始める。
奴らは? 逃げるか?
その時、レーダーセンスが異常を示す。
いや、これはまさか、センスは正常なのか?
床が波打っている!
side爆豪
「ハウザー・インパクト!」
俺が必殺技をかますと、ヴィランは壁に叩き付けられ動かなくなった。
口ほどにもねえ。
「おい、茨女。そっちは」
ゴキ!
「ぐああああああああああ!!」
見ると両腕を外されたヴィランが苦悶の表情を見せながらツルに拘束される。
「何か?」
おう、やっぱやるなこいつ。
「や、やりすぎちゃう?」
「逡巡している間に被害が広がります。スイッチの切り替えが遅いのは問題ですので」
くだらない問答してる場合じゃねえ
「おい、丸顔、俺ら浮かせろ。飛んでく」
「お願いします」
「う、うん。……何あれ?」
見ると、最上階にあたる外壁がたわんでいた。
どう考えても個性によるものだろう。
「おい、てめえらのボスの個性は?」
俺は茨女が拘束したヴィランに尋ねる。
「誰が言う……。ヒ!」
見ると茨女がじっとヴィランを見つめている。
「あ、金属操作だ。でもあんな規模じゃなかった」
「おい、何かやべえぞ! 行くぞ!」
そういったとたんタワーの天辺が破裂した。瓦礫が俺らに降り注ぐ。
「く!」
俺は爆破で防ぎながら叫ぶ!
「お前ら俺の後ろに来い! クソデクめ! 何してやがる!」
「見てください! あれを!」
見ると、デクの野郎が金髪女とおっさん2人を抱えて離脱し、屋上に向かった。
おそらく透明女もいるのだろう。
「おい、とっとと行くぞ」
side緑谷
金属片をかわしながら、僕らは天井に登った。
けれど、金属は触手のようになって次々と僕らを襲う。
「おいおい、とっととそいつらを渡せ。時間がないんだよ」
そう言う、ウォルフラムは、個性で形成した巨大な金属の塔の上で僕らと対峙する。
「そんなことできるわけないだろう。とっとと逃げたらどうなんだ。すぐにオールマイトが来るぞ」
僕の威嚇にウォルフラムは取り合う様子がない。
「やっぱり、お前が厄介だ。デヴィット・シールドだけでなく、セカンドプランまで守り抜くとはな」
「さっきから、メリッサさんをセカンドプランて呼ぶのは何なんだ?」
まあ何となく目的は察するけど。
「ふん、装置の量産のためには博士の力が必要というだけだ。そのためには、一人娘ってのは手っ取り早い」
「……下種が」
「そういうな。自覚はある。だがあくまでセカンドプランだ。別段今ここで殺してもいい」
何でもなさそうにウォルフラムは言う。
メリッサさんが僅かに怯み、葉隠さんが彼女を庇う。
「お前らがとっとと別れてくれてたら助かったんだがな。そうすれば迎えに行ったのに」
「……かっちゃんの言う通りにして正解だったか」
僕は背中にメリッサさんたちを庇う。
「まあいい、予定は変更されるものだ。生け捕りが無理なら、殺すまでだ。
デヴィット・シールド最後の作品。その肩書きもまた、この装置の価値を吊り上げる」
「勝手を抜かしてるんじゃない!」
僕の怒声をウォルフラムは受け流し、巨大な金属塊を形成する。
「別段恨んでもらって構わん。
タワーごと潰れろ」
そう言って金属塊を振り下ろす。
「トルネイド・スマッシュ!!」
僕は、80%の力で、金属塊を打ち砕く。
衝撃波が辺りに炸裂する。
「きゃああああ!!」
「メリッサ!!」
金属の触手がメリッサさんを浚う。
それが目的か。
僕は砕いた金属片を足場にメリッサさんに近づき触手を砕き、彼女を抱える。
「メリッサさん! 大丈夫ですか!?」
「う、うん」
「は、ならこっちだ」
そう言って金属の触手が今度はデヴィットさんに殺到する。
まずいと思った所で、良く知った心音がデヴィットさんと葉隠さんを抱える。
「かっちゃん!」
「デク! 何てこずってやがる!」
「緑谷さんメリッサさんをこちらに」
塩崎さんに言われ、僕は彼女を引き渡す。
「イズクくん。このベルトのスイッチを押して」
「メリッサさん。一体何を」
「本当はサプライズだったんだけど、そうも言ってられないよね」
メリッサさんはそう言うと、僕の手を握る。
「緑谷さん、メリッサさん、ヴィランがヘリで逃げます!」
ヘリの駆動音が聞こえる。中には、ウォルフラムがいる。
このまま逃がすわけにはいかない。
僕は、塩崎さんにメリッサさんを任せ、飛んで行った。
sideウォルフラム
くそ、やはりあのガキが厄介だ。
だがまあいい。装置は手に入った。
これさえあれば俺は無敵だ。
そう思っていた所で、衝撃がヘリに響く。
現れたのは、赤い悪魔だった。
さっきまでのボロボロの衣装とは明らかに違うヒーロースーツ、
「てめえは! 緑谷!」
「いや」
緑谷は俺の方を見て、怒気を隠さず言う。
「デアデビルだ。捕らえに来た」
そう言って殴りかかってくる。
俺はアダマンチウムで盾を形成し、防いだ。
衝撃波がヘリを破壊し、気持ち悪く揺れた。
次回 二人の英雄編最終回。