盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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二人の英雄 その4

 ヘリが墜落し、僕は人を3人抱え離脱する。

 ヴィランとサムさんを捕らえ、放り投げる。

 塩崎さんの茨が三人をキャッチし拘束する。

 僕の後ろで、巨大な金属の巨人が形成される。

「この野郎。邪魔ばかりしてくれる!」

 僕は高速で移動し金属の触手を避けていく。

 だが、ウォルフラムは僕を狙い撃ちながらも、塩崎さんやかっちゃんにも攻撃を加えていく。

「デアデビル! 右ポケットの中に!」

 メリッサさんに言われ、僕はポケットを弄る。

 中に球体を見つけ、僕は意図を察する。

「メリッサ・シールド! てめえ目障りだ!」

 金属の触腕が塩崎さんとメリッサさんに殺到し、塩崎さんは咄嗟にメリッサさんを突き飛ばす。

 悲鳴をあげ、塩崎さんが墜落し、かっちゃんが抱える。

 メリッサさんに金属の触腕が殺到し、僕は衝撃波で彼女を守る。

「ごめんなさいイズクくん。私、足手まといで」

「そんなことありませんよ」

 僕はそう言って、メリッサさんの頬に手を当てる。

「見ててください。あなたがくれたスーツとアイテムで、あいつを倒すところを」

 そう言うと、僕はかっちゃんにメリッサさんを預ける。僕はかっちゃんに向き直る。

「かっちゃん、二人を頼む」

「ああ! てめえ勝手に! うっ」

 僕の表情を見たかっちゃんが一歩後ろにさがる。

「クソが。とっとと決めてこい!」

「ありがとう」

 かっちゃんはそういうと、デヴィットさん葉隠さん麗日さんのところに向かった。

 

 流石に、キレた。

 

 僕はウォルフラムに対し、80%を解放する。

 そのまま、僕はまっすぐダッシュする。

 それだけで衝撃波が、金属片を破壊していく。

「舐めんじゃねえ!」

 ウォルフラムが叫ぶ。

 僕は球状の閃光弾を投擲する。

「ぐあ! 小細工を!」

 その一瞬で十分だった。

 僕はウォルフラムの目の前に移動する。

 咄嗟にウォルフラムはアダマンチウムを展開する。

 それでいい。

「100%フルガントレット! スマッシュ!」

 その瞬間、紫電が吹き荒れ、アダマンチウムごとウォルフラムを吹き飛ばす。

 どれだけ硬度の高い金属でも、吸収できる衝撃には限度がある。

 僕は倒れたウォルフラムをひねり上げる。

 だが、ウォルフラムは意味ありげににやりと笑った。

「イズクくん! 上!」

 メリッサさんの叫びで気づく。

 レーダーセンスで全貌を把握できないほど巨大な金属塊が、タワーの上にあることを。

「全てぶっ壊れろ……」

 ウォルフラムはそう言い残し、気絶する。

 制御を失った金属塊が落ちてくる。

 僕は飛び上がった。イケるか?

 

 もう一度飛び立ち、一撃を当てようとする。

 僕の隣に飛び立つ一人の影。

「オールマイト!」

「緑谷少年! 一人だと手に余りそうだ!」

 僕は頷き、右腕を構える。

 こういう時こそ、笑え。

 

「「ダブルデトロイト! スマーッシュ!!」」

 

 瞬間、ガントレットが、金属片がひび割れる。

 それでも、振り抜く。

「行け! オールマイト!」

「トシ! やってくれ!」

「緑谷くん!」

「デクくん!」

「緑谷さん!」

 

「イズクくん!」

 

 砕け散った金属片が、雪のように降り注いだ。

 僕はそれを音で聞きながら、皆に手を振った。

 瞬間、真っ先に駆け寄ってくるメリッサさんを抱きとめる。

 そのまま4人の女性にもみくちゃにされた僕は、朝日を浴びて、微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 結局、エキスポは中止になった。

 まあ当然だろう。

 僕らに目立った怪我もなく、警察の聴取を受けることとなる。

 それが解放されたのが、昼頃。そのまま仮眠を取り、起きた時にはお腹がペコペコだった。 

 

 

 僕らは打ち上げも兼ねて、レストランでバーベキューをすることになった。

 そこで、僕らはひとまず乾杯する。

「ええ、それでは皆さんお疲れ様でした!」

「「「「「お疲れ様でーす!」」」」」

 僕らはしばし歓談する。

「かっちゃん、肉だけじゃなくて野菜も食べなきゃ」

「お前は親か?」

 僕らはわいわいと騒ぎながらも、食事をすすめていく。

 

 折を見て、葉隠さんとオールマイト、メリッサさんとともに追加の串を用意していく。

「そうか、葉隠少女とメリッサも知ってしまったか」

 僕らの話は、オールマイトの弱体化の話だった。

「はい、聞いちゃいました」

「ふむ、聞いてしまったなら仕方ない。だが、他言は避けて欲しい」

「麗日さんたちには、いいんでしょうか?」

「うむ、ここまで協力してもらって言わないのも忍びないが、こればかりは、な」

 オールマイトは沈痛な表情を浮かべる。

 葉隠さんは元気に頷いた。

「了解です!」

 

 そして、翌日には帰るというところで、僕はメリッサさんにラボに呼び出された。

「はい、予備のガントレット。よければ使って」

「ありがとうございます。何から何まで」

「ううん、助かっちゃった。私のこと、何度も守ってくれてありがとう」

 そう笑うメリッサさんは、僕の横に座る。

 何かいつもより距離が近くて、僕は少しドキドキする。

「あの時、私のことを肯定してくれてありがとう。嬉しかった」

「……メリッサさんは凄い人です。あなたのアイテムで僕は何度も助かった」

 そう言うと、メリッサさんは首を振る。

「ううん、大したことないわ。あなたは、本当にオールマイトおじさまみたいに強くて、私は少し背中を押すことしかできない」

「……その少しが、とてつもなく大きいんです。僕にとって」

 そう言うと、メリッサさんは僕の手を握る。

「そのメリッサさんこそ。僕何度もあなたを危険な目にあわせて、怖い思いをさせて」

 そう言うと、メリッサさんは強く首を振る。

「確かに、少し震えちゃった時もある。けれど、あなたのおかげで、私は立ち向かうことができた」

 メリッサさんは両手で僕の手を握る。

「あなたの背中が、私を安心させてくれた。だからありがとう」

 そう言うと、メリッサさんは、僕の手を額に当てる。

 しばらくそうしていると、メリッサさんは迷ったように口をパクパクさせる。

「あの、言いたいことがあれば何でも言ってください」

 そう言うと、メリッサさんは意を決したように言う。

 

「じゃあ、聞かせてもらいたいんだけど。イズクくんって誰か付き合ってる子いるの?」 

「へあ?」

 

「茨さん? 麗日さん? 葉隠さん? 誰?」

「いえ、あの3人とも特に、塩崎さんは僕のことを慕ってくれてますけど正式に付き合ったわけではなくてその」

「ふむ、なるほど」

 メリッサさんは口に手を当て考え込む。

「あの、何故急に」

 僕の問いに、メリッサさんは意地悪気な笑みを浮かべる。

「……何でだと思う?」

 そういうメリッサさんは、何故か触れがたく、僕は顔を赤くする。

「あの、えっと」

「……だってしょうがないじゃない。あんなに助けられて、かっこよくて……」

「メリッサさん」

「でも、困らせたいわけじゃないの。本当よ」

 そう言うと、メリッサさんは笑って、僕の頬にキスした。

 キス、された。

「いつか、逃げずにちゃんと選んでね。待ってるから」

 

 そこからは、良く覚えてないまま部屋に戻った。

 

 そして、ここを発つ。

 メリッサさんは昨日のことなどなかったかのように、塩崎さんと楽しげに話している。

 僕はボーっとしながら、麗日さんに揺すられる。

「どうしたん? 今日何か変だよ?」

「あ、いや……」

 僕は音だけの世界で、あの柔らかい感触を思い出す。

 逃げてばかりは、いられないか。 

 

 僕は何となく寂しさを覚えながら、ただ二人を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究室の一室でウィルソン・フィスクはその装置を見上げていた。

「完成度はこれで90%といったところです」

「……シールド博士の身柄さえあれば、もっと進んでいただろうがな」

 ウィルソンはため息をつきながら、巨大な装置と、それに接続された女性を見つめる。

「もうすぐ君を助けられる。ヴァネッサよ」

 そう呟く男の表情は、極めて善良なものだった。




二人の英雄編終了。
少し林間合宿編は遅れるかもです。

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