盲目のヒーローアカデミア   作:酸度

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デアデビル

 オールマイトが建物に入って、数分すると、衝撃音が幾度か響きはじめた。

 

「博士、警察を呼んでください。それとヒーローも」

「分かった」

「あのヴィラン、強いです」

 

 先ほどからオールマイトと普通に殴り合っている。

 いや、オールマイトが一方的に殴られており、ヴィランは攻撃をかわし続けている。

 あのオールマイトとだ。

 十中八九増強系の個性、それに加えて体術の達人。

 こっちに来たら、まずい。

 

「早く離れましょう!」

 僕はメリッサさんたちを促す。

 この二人の戦いは災害に等しい。

「え、ええ」

 

 その時、パリンとガラスが割れる音がすると同時に、ヴィランが飛び出してきた。

 レーダーセンスで見ると、手には何やら装置のようなものを持っている。

 

「あれは個性増幅装置! ヴィランの狙いはあれか」

「……オールマイトに任せましょう。とにかく避難を」

 

 そこからは、一瞬の出来事だった。

 ヴィランがこちらを見る。

 オールマイトがヴィランに突っ込む。

 ヴィランが何かをこちらに投げる。一つ、二つ、三つ、空気を切り裂き、博士の方へ。

 オールマイトがこちらに気を取られる。

 レーダーセンスにより、空気の振動から物体を捉える。

 

 GAN! GIN! GON!

 

 アダマンチウムの杖が、飛来した何か、おそらくカード、を弾き落とした。

「外した? 俺が? ありえねえ」

 男の心音が驚愕のサインを示す。

「貴様! なぜデイヴを狙う!?」

「そうすりゃ、俺を狙えないだろう。ヒーロー」

 

 そう笑い、ヴィランはだが、冷徹な声でこう告げる。

 

「だが手加減した攻撃ではあのガキに防がれるな。いい腕だ」

 

 そう言い男は腰につけたパックルから何かを取りだす。

 レーダーセンスによりシルエットを視る。

 それは手裏剣だった。

 

「博士は殺すなと言われているが、娘は言われてない」

 

「な!?」

 

 ヴィランは思いっきり振りかぶり、手裏剣を三枚続けて投擲する。

 このままでは三枚がメリッサさんの眉間と胸元、首にそれぞれ刺さるだろう。

 僕は射線に体を滑り込ませ、ワンフォーオールを起動、一個を弾き飛ばし、一個は腕に刺さり、一個が胸に刺さった。

 

「イズク君!! イヤああああ!!」

 

 メリッサさんの叫びが、大通りにこだまする。

 

「GAAAAAAAA!!!!」 

 

 その時、ヴィランの叫び声がする。

 狙い通り、僕のはじき返した手裏剣は当たってくれたらしい。

 ヴィランは逃げるように去り、装置を手落としていった。

 去り際、こちらを見た。おそらく憤怒にあふれた表情をしているのだろう。

 僕は無視した、流石にこの距離では想像だけで、表情まではわからない。

 

「……メリッサさん。大丈夫? ですか?」

 

 僕は激痛に身をよじりながらも、メリッサさんを確認する。

 レーダーセンス越しに視る彼女に外傷はない。良かった。

 

「わ、私は無事。だけど、イズク君が」

「大丈夫です。内臓は外れてるので」

 

 兎に角二人が無事で良かった。

 そんな僕にオールマイトが駆け寄ってくる。

 

「メリッサ! 緑谷少年! 大丈夫か」

「オールマイト! ヴィランと装置は?」

「いや、私がメリッサの方に視線を外した時には、あのヴィランは消えていた。それより緑谷少年の怪我だ。ヴィランより、君の方が大事だ」

「ああ、装置は君が守ってくれた。とにかく早く救急車を」

 

 しばらくして、警察が事情聴取に来た。オールマイトの証言から、犯人を照合したが、渡航履歴からはそれらしい人物はいないとのこと。

 僕は、奴とはまた会いそうな気がしていた。

 そうして、慌ただしい一日は終わった。僕のケガは大したことはなかった。数針縫う程度で済んだ。

 分厚い筋肉が刃を止めてくれたらしい。

 ただ、メリッサさんには酷く心配された。

 

「ごめんね、イズク君。私のために。けれど無茶しないで」

「すいません。その、体が勝手に動いて」

 病室にて、今はオールマイトとデヴィット博士は席を外しメリッサさんと二人っきりだ。

「でも、貴女に怪我が無くて良かったです」

「イズク君。確かに私に怪我はなかったけれど、でも、そんな大けがをされたら、たとえ助けられても、私苦しいわ」

 そういうメリッサさんの声色はいつもより固い。

「……すいません」

「だから、約束して。自分を大切にして。そうすれば、あなたはみんなを笑顔にするヒーローになれる」

「……はい」

「けど、あなたの勇気で私は今生きてる。だから……ありがとう」

 そうしてやっと、メリッサさんは笑った。

「ねえ、知ってる? あなたみたいな向こう見ずな人を何ていうか」

 メリッサさんはって言う。

 

「デアデビルって言うのよ」

「デアデビル……」

 

「それがあなたのいい所だけれど、悪い所でもある。それを忘れないで」

 そう言ったメリッサさんの言葉を、僕は忘れぬよう胸に刻み付けた。

 

 

 僕が入院して3日後。つつがなく退院し、今シールド一家とともに空港にいる。

「本当に大丈夫ですか? またあのヴィランが来るかも」

 僕の問いに、デヴィット博士が笑って答える。

「なあに、心配いらない。さらにセキュリティの高いセントラルタワーで研究を続けることになったからさ」

「それに、ヒーローも何人か警護してくれることになったの。だから大丈夫よ」

 メリッサさんの言葉に、オールマイトも納得する。

「そうか……。心苦しいが、そういうことなら安全だろう」

 4人で話していると、メリッサさんが近づいてきた。

「イズク君、これを預けるわ」

 メリッサさんから渡されたのはブレスレットだった。

「あの、これは」

「そこのボタンを押して」

 僕は言われた通りボタンを押す。

 すると、見る見ると質量がまし、ガントレットになった。

「こ、これは」

「私の発明品、フルガントレット。あなたの個性、まだ全力じゃないように感じたから」

「それはまだ3回程度しか、あなたの出力に耐えられないけど、少なくとも反動は十分軽減できると思う」

「それは、でも何で僕に」

「あなたが無茶しないようにってこと。それに、次会う時は、もっといいサポートアイテムを作って見せるわ。だから、日本でも頑張ってね」

「は、はい!」

「あなたが立派なヒーローになるって、私、信じてるから」

 

 そう言って、僕たちは別れた。

 また二人とはある事件を共にするが、それはまた、次の機会に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのオールマイトがいたんだぜ、想定外だったんだボス」

「……それでおめおめと逃げ帰ってきたわけだ。愚か者が!

 それでも装置を持ってこないか、せめて気づかれなければセキュリティが強化されることもなかったものを!」

「それがあいつ、俺がいることを知ってたようなんだ。ボス、この失敗は必ず」

「……まあいい。他にやりようはいくらでもある。お前には出向を命じる」

「出向!? どこに!?」

 

「日本のオールフォーワンの所だ」

 

 通話の切れたスマートフォンを、男は憤怒の表情で見つめる。

「まじかよ! クソ! あのガキめ!」

 そう言って男、ブルズアイは携帯を投げつけた。




 メリッサにデアデビルと言わせたいだけのI・アイランド編でした。
 ヒーローにはライバルヴィランなんだよなあ。
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