口直しを‥‥‥どうぞ
「どういうことか‥‥‥説明して」
不味い、すこぶる不味い。どうしよう?
「それ、緊張とかじゃないよね?何があったの?」
「実はネットサーフィンをしていt」
「嘘を言わないで。謙二が外から帰ってからずっとそうなんだもん。それとも、そんなに人に言えないことなの?秘密は守るからさ。お母さんに言えないことならせめてボクだけにでも話してよ」
心底心配そうな顔で迫る木綿季。ここまでか‥‥‥
「分かった。白状するよ。実は‥‥‥」
洗いざらいぶちまけた。話してる途中で思い出したせいだろう。足だけじゃなくて体も震え始めた。涙も出てきた。押さえようとしても収まらない。すると
ガシッ
力強く、それでいて優しく抱き締められた。同い年に抱き締められているのに沸き上がるのは恥ずかしさでも興奮でもなく安心感だった。以前俺がしていたように頭を撫でてくる木綿季。
「回りが何と言ってもボクだけは謙二の味方だから。そうやって抱え込んで壊れちゃうの謙二の悪いとこだよ?」
「‥‥‥‥すまん」
男のプライドが少しは残っていたのだろう。声は我慢できたが涙は止められなかった。静かに泣き続ける俺を木綿季はそれが収まるまで撫で続けた。泣く赤子を宥めるように。
それから数分後、落ち着きを取り戻した俺は
「すまんな、女の子の腕の中で泣くなんぞ情けないな」
「いいよ、それが謙二の助けになるならね。ところで、このことは‥‥」
「うん、絶対にお母さんには内緒だ。小学校の時に俺が虐められてるのがバレたとき学校に殴り込みに行こうとしてたからさ。幸いターゲットは俺だけだ。俺のせいでこの地域に住めなくなるのは申し訳がない」
「じゃあどうするのさ?外出られないんでしょ?あっもしかしたら‥‥‥」
そう言って手を握り直して外へと行く木綿季。
「おい!‥‥‥‥‥あれ?」
「うん。思った通り!」
問題なく外に出られた。震えも無い。
「このまま登校すればいいんじゃないかな?」
「でも、それじゃあ木綿季の学校は‥‥‥」
「気にしないで。秘策もあるからさ」
学校までは電車を乗り継いで通学する。通えなくは無いがそこそこ距離があり1時間ちょっとかかる。
「すまない。結局学校まで付き合わせてしまった」
「いいのいいの、気にしないで。それより‥‥‥大丈夫そう?手を離しても震えは無さそうだけど」
「ああ、何とか。見馴れた顔もいそうだし頑張るよ」
「無理はしないでね」
「当然だ」
入学式と簡単なガイダンス。どうやら初日はこれだけのようだ。本格的な学校は明日からだ。
次の日、親を適当な理由で説得してまた学校まで木綿季が付き添ってくれた。申し訳無さが募る。どんよりした気持ちで教室に向かうと
「おはようございます!」
爽やかそうな先生がいた。
「おはようございます」
挨拶を返して席に座る。人数は精々数十人といったところか。まあSAOに巻き込まれた現在中三はこれくらいか。お、
俺は古原なので席は前の方だ。そして俺の目の前にとても可愛らしい、見覚えのある女の子が座った。全員揃ったところで
「どうやら全員揃ったっぽいので始めますね。まずは自己紹介から。取り敢えず名前ともしよければプレイヤーネームも言ってほしいな。多分皆そっちの方が親しみがもてるでしょ?でも呼ぶときはちゃんと名前で呼ぶようにね?まずは私から‥‥‥」
驚いたのは担任もSAO帰還者だったということ。こんな人も巻き込まれてたのか‥‥さて、生徒たちの自己紹介だが、
「えっと、綾野珪子って言います。皆にはシリカって言った方が分かりやすいかな?よろしくお願いします!」
どよめく教室。シリカといえば中間層で大人気だったビーストテイマー。その容姿も相まってアイドル的な扱いをされていた。まあSAOって顔とか現実と同じだから教室にいた時点で勘付いた人もいたっぽい。さて、次は俺か
「古原謙二です。よろしくお願いします。皆には‥‥‥んんっ!」
咳払いをし、気持ちを切り替える。この感覚は久しぶりだな
「小次郎、と言った方が分かりやすいかな?これからよろしく頼む」
声はそのままに口調の小次郎の物にする。教室はさっきとは比べ物にならないほどの叫びに包まれた。謙二は手鏡を使っていなかった為最後まで容姿は設定した小次郎のままだったのだ。
自己紹介も終わり、教室も落ち着いたところで、一旦休憩となる。当然俺と綾野さんの回りには人だかりが出来上がる。
「ホントにあなたがあの剣豪小次郎?」
「そうだが?」
「同い年だったのか‥‥‥凄い‥‥・」
そりゃそうだ。和服に身を包んだ侍がふたを開けたらこんなガキなんだからな。俺でもそうなる。手鏡‥‥‥使っとけば良かったかな?
その日、家に帰るとリビングには珍しく父と母、木綿季と全員が揃っていた。
「どうしたんだ?皆揃って珍しい」
「謙二、私達に隠してたね?差別的な扱いを受けてたこと」
「!」
何故それを!?見れば木綿季が口からペロッと舌を出す。うむ、可愛い‥‥‥ではなくて!
「喋ったのか?木綿季」
「そんなに怒らないでよ謙二。ちゃんと色々考えた上で話したんだから」
「それってどういう‥‥」
その後聞かされた話に俺は度肝を抜かれた。端的に言うと木綿季を俺と一緒にあそこに通わすという。思わず
「なに考えてるんだ?大体通るわけ無いだろ!そんなの!」
ピラッ
「ん?」
黙って差し出されたプリントを見る。そこには
『古原謙二、心身の都合上古原木綿季との通学及び学校生活を認める』
とあった。ちゃんと学校の印と学長のサインも入っている。つまり正式な書類ということ
「マジか‥‥‥元の学校はどうしたんだ?」
「辞めたよ」
「は?」
今何て言った?辞めた?特別支援学校を?
「何があったんだ?」
「ははっ、大したことじゃないよ。純粋に行きたくなくなったからさ」
「なんでまた」
「だってボクってAIDS持ちなだけで別に発達障害とかないし‥‥‥はっきり言ってあそこにいるには健常過ぎるんだよ。通うのが認められててもね。それに‥‥‥」
「それに‥‥‥なんだ?」
「いい機会だし謙二と学校生活したいなーって」
「それが本音か!?」
「うん!」
隠しもせずに言ったよこの人。ああ、それで
「学校を変わるためにバラしたのか。俺のことを」
「そうだよ。まあ最初から謙二が帰ってきたらなんとしてでも一緒に通うつもりだったし、あの症状が出たのは都合が良かったよ」
「今何て言った!?」
「なんでもないよ。それとね」
「ん?」
「学校がそこそこ遠いからさ、一緒に暮らそっか」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!?」
慌てて見るとお母さんは笑ってる。くそっ親公認かよ!
「大丈夫なのか!?俺達まだ中三だぞ!?正気か!?」
「こう見えてボク独り暮らしの経験はあるし、仕送りはあるし、何かあったら行ける距離だし、お母さん曰く良い社会勉強だってさ。謙二と二人っきり‥‥ふふっ」
「何か邪悪な笑いが聞こえた気がしたが気のせいだな!うん!お母さん公認なら仕方ないな!」
もうどうにでもなりやがれ!因みにこのあとお父さんに
「木綿季を泣かせるなよ?それと鈍い男は嫌われるぞ。ついでにもうひとつ」
幾ばくかの間をおいて
「恋に目覚めた女は例えるならブレーキの壊れたダンプカーだ。気を付けろよ」
悟った目をするお父さん。思わず
「それ、実体験?」
「想像に任せるよ。ハハッ」
主人公はシリカと同い年ですね。うーん。原作の木綿季どうだったか、ここまで来ちゃったのでもう直しようがないし。調べてもアニメと漫画で違ったりして何がなんだか‥‥
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