転生勇者イセカイザー   作:楽雁つばさ

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2-5「炎剣転生合体」

 

「さぁ! どんなふうに改造してあげようかねぇ!」

巨人の手が、グレンチュリオンに伸びる。

「うわあっ!」

慌てて履帯を回し、回避するフレイナだけど、

「遅いねぇ!」

巨人は、グレンチュリオンの正面に回り込んだ。

早い。増魔獣だった時とは大違いだ。

「うそっ!?」

フレイナは軌道を変えようとするけれど、グレンチュリオンの左の履帯が、巨人の右手に掴まれた。

増魔獣だった時の頭が、そのまま腕になっている。

大きな口で、噛みつくかのように持ち上げた。

「わわわわっ!」

慌てるフレイナ。

「まずは動力を止めようか!」

巨人の左腕、増魔獣の尻尾の先端が、硬化する。

あれじゃあ、まるで槍を構えているかのようだ。

その先端が、グレンチュリオンの、フレイナが乗る砲塔に向けられる。

「まずいっ!」

僕は当たりを見回した。

ちょうど良いところに、倒れて斜めになっている、大きな瓦礫がある。

「いくよ、カイザー!」

僕はカイザーに飛び乗って、アクセルを踏み込んだ。

フルスピードで瓦礫の斜面を駆け上がり、飛び上がる。

「勇合転生!」

叫ぶと、僕とカイザーは一つになった。

飛び上がった時の勢いのまま、巨人の左腕を蹴りつける。

「まじょっ!?」

巨人はバランスを崩して、グレンチュリオンを取りこぼした。

『フレイナッ!』

その隙に僕は、グレンチュリオンへと跳躍。

落下による衝撃から守るために、グレンチュリオンの下に回り込み、僕自身の両足を、先に地面につける。

『ぐうっ!』

瞬間、グレンチュリオンの重量で、僕は押しつぶされそうになった。

思わず体をそらし、自分より後ろに、グレンチュリオンを下ろす。

なんて重さだ。カイザーと一つになっているこの体ですら、まともに支えきれなかった。

『無事か、フレイナ!』

「う、うん!」

ともあれ、フレイナに怪我はなかったらしい。

良かった…。

「あ、アンタ…」

その後ろで、巨人が僕を見る。

「どこから現れた…いや、何者だい?」

カイザーと一つになった僕を見て、なんだか動揺しているらしい。

『私は、転生勇者イセカイザーだ』

名乗ると、巨人はまた驚く。

「そうか、アンタはアンタで、別の勇者ってことかい。…こりゃ好都合だね!」

巨人の左腕の槍が、僕を狙って飛んできた。

『たぁッ!』

素早く横に飛んで、槍を避ける。

反撃…しようにも、あの大きさだ。

下手に近づけば、こちらが危険になるだろう。

ここは…あのライフル銃を使おう。

『アンブレ・ライフル!』

右腕のドアからライフルを出現させ、両腕で構える。

とりあえず、巨人の腹あたりを狙って…、

『シュートォ!』

叫びつつトリガーを連射し、エネルギー光弾を当てる。

しかし…

「あははっ! それでも反撃のつもりかい!?」

巨人には、かすり傷一つ付けられなかった。

『バカな、モンスターを一撃で沈めた銃だぞ!?』

「アタシのベイビィに、アタシ自身が合身してるからさ! そんじょそこらのモンスターなんか、比較ならないね!」

気付けば、巨人の右腕、増魔獣の顔が、こちらに迫っていた。

『くっ!』

僕自身は回避できたけど、持っていたライフル銃は噛み砕かれてしまう。

しかも、

「貰ったよぉ!」

回避した先で、巨人が左腕の槍を構えていた。

『しまった!』

だめだ、間に合わない。串刺しにされる!

そう気づいたその時、

「炎剣突きィー!」

ズドォーーン!!

彼方で、グレンチュリオンが火を吹いた。

「まじょっ!?」

巨人の足に大きな衝撃を与え、またもバランスを崩し、転倒させる。

おかげで、僕は事なきを得た。

『助かった、フレイナ!』

そういうと、彼女はニッと笑う。

とはいえ…。

「こんな程度、その場凌ぎじゃないか。痛くも痒くもないね!」

巨人はすぐに立ち上がった。

悔しいけど…、奴の言う通りだ。

今の僕らでは、この巨人を退けることはできない。

『このままでは…』

何か手を考えないと。そう思っていると。

「イセくんッ!」

グレンチュリオンから、フレイナが声を張り上げた。

「あたしが、イセくんに合わせるよ! だからイセくんは、思うように戦って!」

『しかし…』

「大丈夫!」

弱音を吐きそうになった僕を、フレイナが勇気付ける。

「イセくんの力も、あたしのグレンチュリオンも、同じ『誰かを助けるための力』なんだから!」

笑顔でそう言ってくれる。

「だから、力を合わせよう!」

力を、合わせる。

その言葉を聞いた途端、僕の頭の奥に、衝撃のようなものが奔った。

『…そうか』

その手があった。

その手が、あるんだ。

そんな手が、あったんだ。

『フレイナ!』

脳内に広がるイメージ。それは、まるで何かを思い出すかのようで。

『ありがとう! 君の力、借り受ける!』

やった事のない事なのに、妙な自信が生まれる。

できる。

今の僕には、それが出来る。って。

「えっ? …うん! 任せるね!」

フレイナが頷くのを待って、僕はその言葉を叫んだ。

 

『炎剣! 転生合体!!』

 

瞬間。

グレンチュリオンは、乗っていたフレイナを下ろした。

「あれっ!?」

驚く彼女の目の前に、大きな魔法陣が二つ浮かぶ。

「えっ! えっ!?」

その中から、新たに二台の車両が現れた。

荷台にロケット砲を装填したトラックと、パラボラアンテナのようなものが付いたトラックだ。

「まさか、『ローラ』と『メリッサ』!? まだ呼んでないのに…!?」

僕は見たことのない車だったけど、フレイナは何か知っているようだ。

ともあれ、ローラと呼ばれたトラックは右に、メリッサと呼ばれたトラックは左に、それぞれ走り出す。

一方で、グレンチュリオンは車体前方を起点とし、履帯を左右に開いた。

そのまま前方に閉じた後、履帯を唸らせ、本体後部を持ち上げる。

車体が地面と垂直になり、履帯を二本の足として立ち上がった。

そこへ、本体右側にローラが、本体左側にメリッサが、それぞれジャンプして合体する。

ローラは右腕となり、メリッサは左腕となった。

更に、胴体前方が大きく開いて、中から半透明のスロープ伸び、僕の足元に届く。

『てやっ!』

僕はカイザーと一つになったまま、車の姿に変形し、半透明のスロープを駆け上がった。

グレンチュリオンの中に飛び込むと、胴体が閉じ、僕を格納する。

『リバイブ・アップ!』

掛け声で、僕の意識は広がり、溶けていく。

一つになった、グレンチュリオンの中へ。

顔が出て、目が灯る。

口が勝手に、その名を叫ぶ。

『転生合体! ファイヤァァァアッ!!イセカイザァァァアアア!!!』

 

ーーそれは、少年の新たな力。ーー

ーーそれは、炎纏いし勇者としての姿。ーー

ーー生を転じて成り遂げた、灼熱の剣士。ーー

ーーその名は。ーー

ーー『ファイヤーイセカイザー』!!ーー

 

 

「まじょっ!?」

巨人が驚き、一歩後ずさる。

対して僕は、一方前に出た。

「な、なんなんだい、その姿は!」

言われて、僕は改めて、自分自身を見る。

大きい。

僕の体は、目の前の巨人と、肩を並べて立てるくらいになっている。

その体は、これまでとは違い、さらに機械的な姿になっていた。

右腕がローラ、左腕がメリッサ、胴体と両足はグレンチュリオンで、それぞれ構成されている。

そして、体の中にはカイザーもある。

まるで、カイザーを中核に、他の三車両で出来たスーツを着ているようだ。

そうして更に、理解する。

この体が出来ること。

この体に宿る力。

確信する。

この姿なら、巨人に勝てる。

『私の名は、ファイヤーイセカイザー』

右手の人差し指を、巨人を向ける。

『貴様を倒す、勇者の名前だ!』

 

 

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