転生勇者イセカイザー   作:楽雁つばさ

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2-6「奥義」

「面白い、やってみるんだね!」

巨人が右腕を僕に向けた。

増魔獣の口は固く閉じられている。パンチのつもりだろうか。

『てやっ!』

僕はそれを、左手で外側に弾いた。

同時に右手の拳を握り、巨人の腹を殴り返す。

「まじょあっ!?」

巨人は、凄い勢いで吹き飛ばされた。

…凄い。

このパワー、カイザーだけと融合している時とは、桁違いだ。

『行くぞッ!』

強く地面を蹴り、飛んで行く巨人を追いかける。

「このっ!」

対して、巨人は右腕を下に向け、増魔獣の口を開いて、エネルギー派のようなものを噴射した。

それによって、巨人は大きく空へ飛び上がり、僕を避ける。

「調子に乗るんじゃないよ!」

見上げた僕に、巨人の槍が構えられた。

落下しながら、その勢いも足して、僕を串刺しにしようとする。

対して僕は、

『アトミック・バリア!』

とっさに浮かんだ言葉を口にした。

途端、左腕から、メリッサのパラボラアンテナが突出して、強烈な光を発射する。

光は半透明の壁になって、僕の頭上に、半球状の障壁を作り出した。

直後、巨人の槍が壁に届く。

けれど槍が受け流されて、僕を避け、地面に突き刺さった。

「まじょっ!?」

槍を抜こうとする巨人。

僕はそこから距離を取りつつ、右腕を向ける。

『ブラストグレネード!』

頭に浮かんだ言葉を放つと、右腕からローラのロケットランチャーが露出し、数発のミサイルを打ち出した。

「ぐあーっ!」

それら全てが巨人に当たり、爆炎が舞い上がる。

…よし、行ける。

この姿なら、あの巨人を倒せる!

確信を抱くと共に、僕は新たにまた一つ、悟った。

この姿だからできること。

そして、この姿になった、意味を。

『一気に決めるぞ!』

宣言すると、背中にあったグレンチュリオンの主砲の砲身が取れて、頭上に射出された。

いや…違う。

これは「主砲」じゃない。

グレンチュリオンは、フレイナの言う通り『剣』だったんだ。

今の僕には、それがわかる。

『炎剣ヴォルカリバー!』

砲身を両手で握ると、砲口から巨大な炎が燃え上がる。

この炎が、この剣の真骨頂。

今、僕の前で大きく燃え上がっているこれこそが、常に揺らぎ、一定の形を持たない「刃」なんだ。

『はぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!』

気合いを込めて、炎を強く、硬く、鋭くしていく。

今の僕の背丈すらをも超える、とても巨大な剣。

『必殺! 大紅蓮爆烈斬!!』

それを巨人に向けて、力一杯振り下ろした。

巨人は真っ二つに切り裂かれる。

「こ、こんなことが…っ! ちいぃっ!」

一瞬、小さな紫色の光が、巨人から分離して。

残されたは全てが、爆発して、霧散した。

 

『ふんっ!』

露払いの動作で、刃となっていた炎を消した。

剣の柄を背中に刺して、「グレンチュリオンの砲身」に戻す。

そうして両手が空いた頃、爆散した巨人の立っていた位置に、気を失っているトアロさんの姿があることに気がついた。

なにか、巨人と関係あるのだろうか。

気になって手を伸ばそうとすると。

「すごいね、あんた。アタシの魔法を焼き切っちまうなんてサ」

頭上に女性がいた。

増魔獣を操っていた魔女だ。

身に纏ったローブの足先から、何やら半透明のものを吹き出している。

その勢いで空中に浮いている。

アレも魔法なのかな…。

「勇者を名乗るのは伊達じゃないね。認めてあげようじゃないか」

魔女はニィッと不気味に笑う。

「よぅし、決めたよ! これからは、アンタがアタシのターゲットだ」

僕をみる視線は、やがて睨むようなものになった。

「覚えておきな! アタシはシューネ!」

そう言うと、足元の噴射を強めた。

「アンタの力、いずれまた、奪いに来てやるからねェ!」

急上昇して、すごいスピードで彼方へ飛んでいく。

「ウィーーーーーーーッ! チッチッチッチーッ!!」

ものすごい大きな、高笑いを残していった。

 

『…何だったんだ、アイツは…』

呟く僕。

その後、思わず膝を付いてしまう。

魔女も巨人も消えて、気が抜けてしまったらしい。

全身から力が抜けて、胴体前方が開く。

中からカイザーの車体が排出され、同時に僕の意識も、カイザーと共に吐き出された。

抜け殻となった大きな体は炎に包まれ、霧散する。

僕は、カイザーの運転席に座った状態で、元々の「人間としての姿」になっていた。

「イセくん!」

フレイナが駆け寄ってくれたので、僕は車の外に出ようとする。

けれど、足に力が入らず、うまく立てなかった。

「うっ…」

「ち、ちょっと、大丈夫!?」

しゃがみ込む僕を、フレイナが心配してくれる。

「大丈夫。…ちょっと、疲れちゃって…」

カイザーのシートに手を置いて、今度こそ立ち上がろうとする。

「うあっ!」

しかし、やっぱり体に力が入らない。

それどころか、カイザーの車体すら、僕の腕の機械に収納されてしまった。

体を支えるものがなくなり、僕は地面に倒れ込む。

「い、イセくん!」

近くに来てくれたはずのフレイナの声が、なぜか遠く聞こえて。

「…ごめん、やっぱりちょっと…休憩…」

僕の意識は、眠りの中に消えた。

 

 

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