「面白い、やってみるんだね!」
巨人が右腕を僕に向けた。
増魔獣の口は固く閉じられている。パンチのつもりだろうか。
『てやっ!』
僕はそれを、左手で外側に弾いた。
同時に右手の拳を握り、巨人の腹を殴り返す。
「まじょあっ!?」
巨人は、凄い勢いで吹き飛ばされた。
…凄い。
このパワー、カイザーだけと融合している時とは、桁違いだ。
『行くぞッ!』
強く地面を蹴り、飛んで行く巨人を追いかける。
「このっ!」
対して、巨人は右腕を下に向け、増魔獣の口を開いて、エネルギー派のようなものを噴射した。
それによって、巨人は大きく空へ飛び上がり、僕を避ける。
「調子に乗るんじゃないよ!」
見上げた僕に、巨人の槍が構えられた。
落下しながら、その勢いも足して、僕を串刺しにしようとする。
対して僕は、
『アトミック・バリア!』
とっさに浮かんだ言葉を口にした。
途端、左腕から、メリッサのパラボラアンテナが突出して、強烈な光を発射する。
光は半透明の壁になって、僕の頭上に、半球状の障壁を作り出した。
直後、巨人の槍が壁に届く。
けれど槍が受け流されて、僕を避け、地面に突き刺さった。
「まじょっ!?」
槍を抜こうとする巨人。
僕はそこから距離を取りつつ、右腕を向ける。
『ブラストグレネード!』
頭に浮かんだ言葉を放つと、右腕からローラのロケットランチャーが露出し、数発のミサイルを打ち出した。
「ぐあーっ!」
それら全てが巨人に当たり、爆炎が舞い上がる。
…よし、行ける。
この姿なら、あの巨人を倒せる!
確信を抱くと共に、僕は新たにまた一つ、悟った。
この姿だからできること。
そして、この姿になった、意味を。
『一気に決めるぞ!』
宣言すると、背中にあったグレンチュリオンの主砲の砲身が取れて、頭上に射出された。
いや…違う。
これは「主砲」じゃない。
グレンチュリオンは、フレイナの言う通り『剣』だったんだ。
今の僕には、それがわかる。
『炎剣ヴォルカリバー!』
砲身を両手で握ると、砲口から巨大な炎が燃え上がる。
この炎が、この剣の真骨頂。
今、僕の前で大きく燃え上がっているこれこそが、常に揺らぎ、一定の形を持たない「刃」なんだ。
『はぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!』
気合いを込めて、炎を強く、硬く、鋭くしていく。
今の僕の背丈すらをも超える、とても巨大な剣。
『必殺! 大紅蓮爆烈斬!!』
それを巨人に向けて、力一杯振り下ろした。
巨人は真っ二つに切り裂かれる。
「こ、こんなことが…っ! ちいぃっ!」
一瞬、小さな紫色の光が、巨人から分離して。
残されたは全てが、爆発して、霧散した。
『ふんっ!』
露払いの動作で、刃となっていた炎を消した。
剣の柄を背中に刺して、「グレンチュリオンの砲身」に戻す。
そうして両手が空いた頃、爆散した巨人の立っていた位置に、気を失っているトアロさんの姿があることに気がついた。
なにか、巨人と関係あるのだろうか。
気になって手を伸ばそうとすると。
「すごいね、あんた。アタシの魔法を焼き切っちまうなんてサ」
頭上に女性がいた。
増魔獣を操っていた魔女だ。
身に纏ったローブの足先から、何やら半透明のものを吹き出している。
その勢いで空中に浮いている。
アレも魔法なのかな…。
「勇者を名乗るのは伊達じゃないね。認めてあげようじゃないか」
魔女はニィッと不気味に笑う。
「よぅし、決めたよ! これからは、アンタがアタシのターゲットだ」
僕をみる視線は、やがて睨むようなものになった。
「覚えておきな! アタシはシューネ!」
そう言うと、足元の噴射を強めた。
「アンタの力、いずれまた、奪いに来てやるからねェ!」
急上昇して、すごいスピードで彼方へ飛んでいく。
「ウィーーーーーーーッ! チッチッチッチーッ!!」
ものすごい大きな、高笑いを残していった。
『…何だったんだ、アイツは…』
呟く僕。
その後、思わず膝を付いてしまう。
魔女も巨人も消えて、気が抜けてしまったらしい。
全身から力が抜けて、胴体前方が開く。
中からカイザーの車体が排出され、同時に僕の意識も、カイザーと共に吐き出された。
抜け殻となった大きな体は炎に包まれ、霧散する。
僕は、カイザーの運転席に座った状態で、元々の「人間としての姿」になっていた。
「イセくん!」
フレイナが駆け寄ってくれたので、僕は車の外に出ようとする。
けれど、足に力が入らず、うまく立てなかった。
「うっ…」
「ち、ちょっと、大丈夫!?」
しゃがみ込む僕を、フレイナが心配してくれる。
「大丈夫。…ちょっと、疲れちゃって…」
カイザーのシートに手を置いて、今度こそ立ち上がろうとする。
「うあっ!」
しかし、やっぱり体に力が入らない。
それどころか、カイザーの車体すら、僕の腕の機械に収納されてしまった。
体を支えるものがなくなり、僕は地面に倒れ込む。
「い、イセくん!」
近くに来てくれたはずのフレイナの声が、なぜか遠く聞こえて。
「…ごめん、やっぱりちょっと…休憩…」
僕の意識は、眠りの中に消えた。