目が覚めると僕は、ルクルエの、借りている部屋にいた。
ベットで寝ていたらしい。
「あれ…?」
立ち上がって、部屋を見回す。
他には誰もいないけど、机の上に、書き置きの乗ったボウルがある。
"ジュルンさんと買い出しに行ってきます。
お腹空いてたら、食べてね。
フレイナより"
そう書かれた紙の下には、キビィがたくさん置いてある。
横には、水の入ったコップもあった。
「…ありがたいなぁ」
なんて呟いて、キビィを一つ、口に入れた。
おいしい。体をいっぱい動かした後に食べるご飯みたいだ。
…って、そうか。
「僕、巨人を倒して、そのまま寝ちゃったのか…」
窓の外を見る。
この村、昨日来たときとは違う。
魔獣と巨人が暴れたことで、村の景観は変わってしまった。
村全体の3割くらいの建物が壊されて、より遠くまで見えるようになった。
…もちろんそこに、僕が壊してしまった、トアロというおじさんの家も含まれている。
それだけじゃない。
僕自身も、いくつかの建物を壊してしまった…かもしれないんだ。
魔獣や巨人との戦いの際、僕はそこまで気を回せなかった。
「そんな僕が、このお店には居られないよね…」
僕は、村の人に嫌われてもおかしくないことをしてしまった。
村の人に商売をしているお店に、村の人に嫌われる人間が居るのは、迷惑だろう。
それだけじゃない。
あの魔女の言葉も気になる。
アンタがアタシのターゲット。
いずれまた、力を奪いに来る
そんなことを言っていた。
それはつまり、いつかまた、僕の元に彼女が来る、ということだ。
その時はもちろん、さっきの魔獣や巨人も、連れてくるだろう。
要するに。
「どっちしても、僕がここにいる限り、いずれまた村が壊される。ってことだよね…」
そう結論を呟いて、考えをまとめる。
僕は、この村にいてはいけない。
「…村を、出よう」
言い聞かせるようにして、僕はフレイナの残した書き置きを、手に持った。
紙を裏向けて、"お世話になりました"と書いておく。
キビィをいくつか口に入れて。
僕は部屋を、ルクルエを出て、村を出た。
当てもなく、道に沿って進んで行く。
そろそろ村が見えなくなる頃だ。
ここまで来れば、カイザーを出してもいいかな。
そう思って、左腕の機械に触れた時。
「見つけたぁーッ!」
上空で大きな声。
見上げると、フレイナがホウキに乗って飛んでいた。
僕を見つけて、ぐんと降りてくる。
「良かった、間に合ったぁっ」
そういう彼女は、息が荒い。
ずっと飛び回っていたのかな。
「急に居なくなるからビックリしたよ。あの書き置き、もうお店には戻らないってこと?」
フレイナの言葉に、頷いてみせる。
「僕の力は、村の人達に、迷惑をかけるものだから」
「でもイセくん、この先どうするの? どこか行きたい場所があるの?」
「えっ?」
言われてみて、考える。
…たしかに、村を出るところまでは考えたけど、この先どこに行くかは決めてない。
「…うーんと、どこか遠くに…って…」
「やっぱり…アテはないんだね?」
頷くと、フレイナはふうっ、と息をつく。
「…じゃあ、ちょっとだけ待って」
そう言って、僕に背を向けて、魔法陣を浮かべた。
それは薄い赤に光っていたけど、数秒後に緑色に変わる。
「あ、ジュルンさん? …うん、うん。やっぱり、あたしが思った通りだったよ。…うん。うん」
…なんだか、電話をしているみたいだけれど、それに近い魔法なのかな。
「…だから…。そう。うん…。うん、わかってる。とりあえず…、うん、うん。じゃあ、また近いうちに連絡するね。…うん。じゃあね」
やがて通話を終えると、フレイナは僕に向き直った。
「お待たせ。…じゃあ、行こっか」
…うん?
「行こっか、って…?」
聞き返すと、フレイナはえへんと胸を張る。
「あたしも、イセくんに付いて行くよ」
えっ。
「ええっ!?」
思わず大きな声が出た。
「うわっ、そんなに驚かなくても…」
フレイナも驚く。
「大丈夫、迷惑はかけないから」
「いや、でも…」
それじゃ、僕が村を出た意味が…。
「だってイセくん、放っといたら変なもの食べちゃうし、それで死んじゃったら、そんなの悲しいじゃん」
「いや、そんなことは…」
言いつつ、思い出す。
そういえば、この世界に来てすぐ、僕は石化しかけたっけ…。
「…あるかも」
「でしょ? だから、一週間お休みを貰って、イセくんについて行こうかなって」
うーん、なるほど…。
確かに、フレイナが居てくれるのは心強い。
食べ物のこともそうだけど、今の僕は、この世界のことをよく知らない。
それに、フレイナはホウキで空が飛べる。
村から大きく離れなければ、帰れなくなることもないだろう。
「…わかった。じゃあ、とりあえず一緒に行こうか」
わざわざ心配して来てくれたんだ。
ここは彼女の優しさを、ありがたく受け取ろう。
「うん、よろしくね!」
フレイナは笑顔で手を差し出してくれたので、僕もそれを握り返した。
…こうして、僕たちは最初の一歩を踏み出した。
最初は目的もなくて、終わりも決めていなかったけれど。
ここが、僕らのスタートになった。
進み出したんだ。
それぞれの、辿り着く場所を探して。
ーー予告ーー
ーーファイヤーイセカイザーの力に覚醒し、旅を始めた良生とフレイナ。ーー
ーーそんな二人の前に、不思議な少女が現れる。ーー
ーー「ひょっとしてきみ、神獣官の一族?」ーー
ーー次回、転生勇者イセカイザー 第三話!ーー
ーー『神秘! 翡翠の瞳の少女!』!!ーー
ーー生を転じて、勇者となれ!ーー
フレイナの、『これでバッチリ!イセカイザー 』!!
イセくんとカイザーが融合した姿、転生勇者イセカイザー!
そこに、あたしのグレンチュリオンと、ローラとメリッサも合体!
炎剣転生合体、ファイヤーイセカイザーの誕生だぁ!
胴体を構成するグレンチュリオンは、もともと古代の秘宝『炎剣ヴァルカリバー』を運用するために作った魔装具なんだ。
届く距離まで移動して、一瞬だけ具現化させて敵に突き刺す!
大砲みたいな使い方なんだけど、イセくんによると「戦車」っぽいみたいだよ!
両腕を構成するローラとメリッサは、あたしのおかあさんが残してくれた大型の魔装具。
「トラック」っていう乗り物に近いんだって。
単体での戦闘を想定してない魔装具だけど、便利な機能がいっぱいあるから、生活する時はとっても役に立つんだ!
炎剣ウォルカリバーを使うための魔装具、グレンチュリオン。
ローラとメリッサのサポートを加えて、イセカイザーの力に変える!
ファイヤーイセカイザー。
それは、イセカイザーが炎剣ヴォルカリバーを使うための、『炎剣の勇者』としての姿なんだ!