転生勇者イセカイザー   作:楽雁つばさ

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1-3「魔法」

空き部屋の掃除をしたら、いつのまにか、夜になっていた。

でも、ものすごく快適な場所になった。

元々誰かが住んでいたのか、ベッドがあったので、寝転んで、休憩する。

そうしてふと、考えてみる。

「…魔法、か…」

実在するなんて、思ってなかった。

けれど、フレイナの様子や、ジュルンさんの反応から見ても、あの二人にとっては当たり前のことのようで。

そういえば、ダンジョンとか、モンスターとか、そんな言葉も飛び交っていた。

…まるで、ロールプレイングゲームだ。

「…あれ?」

今一度、自分の状況を整理する。

僕は一度死んだ。

と思ったら、真っ暗な空間にいた。

光の人に会った。

カイザーを腕につけられた。

見知らぬ森にいた。

果物を食べようとしたら石化しかけた。

魔法を見た。

ダンジョン。

モンスター。

まさか。ひょっとして…

「異世界転生、ってやつなのかな」

そんなことを呟いた時、

どすんっ!

「あいたっ!」

隣の部屋で大きな音と、大きな声がした。

あっちには、フレイナがいるはずだ。

何かあったのかな。フレイナの部屋の前に立つ。

「フレイナ?」

「あ、イセくん! ちょっと手伝って!」

「え、うん。…お邪魔します」

部屋のドアを開けると、フレイナは、大きな箱の下敷きになっていた。

「うわ、大丈夫!?」

駆け寄って、それをどかす。

「ありがとう。…えへへ、ちょっと、召喚座標を間違えちゃって」

「召喚座標?」

「うん。久しぶりに出したから」

フレイナが立ち上がって、箱を見る。

「えっと…あっ、ここか」

フレイナが手を当てると、箱はパタパタと折り畳まれていった。

小さな板になって、フレイナの手の中に収まる、

そして、箱の中に入っていたのは…。

「なに、これ?」

見たことのないものだ。

長い棒の先に、大きな機械が付いている。

「何って、ホウキだよ」

「ほ、ホウキ?」

ホウキって…、

「ホウキってあの…掃除に使うやつ?」

「うん。…ま、まぁ、原形を留めてないのは、認めるんだけど…」

フレイナが言うとおり、それはホウキというには、かなり特殊な見た目だった。

たしかに、全体をフワーッと見れば、そう見えなくもない。

先端が細くて、後ろに大きなものが付いてて、その末端に円筒がたくさんついてて、末広がりになっている。

けど、なんというかこう、手作り感がないというか、工業製品みたいというか…。

「これで…掃除をするの?」

「ううん、これはもう、掃除道具としての機能はないから」

じゃあ、なんでホウキなんだろう。

「これはね、あたしの魔装具なんだ」

「…まそーぐ?」

「そう。いろんなことができるんだよ。…ほら!」

魔装具と呼ばれたホウキのようなものが、少し光った。

円筒が、パタパタと音を立てながら移動する。

やがて、そのうちの一本が、こぼれ落ちた。

「わわっ、と」

僕の目の前だったので、思わずキャッチする。

「…なに、これ?」

「開けてみて」

言われるまま、円筒を良く見つめる。上の方が少し材質が違う気がした。

まるでステンレス製の水筒みたいだ。

回すと開くのかな。

カポッ。

中には液体が入っていた。

暖かいものなのか、湯気が溢れ出して、僕の鼻をくすぐる。

「いいにおい…」

なんだろう、コレ。

なんとなく、コンソメスープを彷彿とさせる香りだ…。

「それは調魔液。魔装具の中の残存魔力が、熟成されて液体になったものだよ」

ちょうまえき…。

美味しいのかな。ちょっと口を近づける。

「わ、ダメっ!」

慌てて、フレイナが円筒を奪い取った。

「ちょっと、イセくん! 調魔液を飲もうとするなんて、おかしいよ!」

えっ…?

「そうなの?」

「そうだよ! お腹壊しちゃうよ!」

「…そうなんだ」

美味しそうな香りなんだけどなぁ。

「もうっ! …グーニルといい、イセくんはなんでもすぐに食べようとするね…」

フレイナは円筒を傾けて、調魔液を空中に垂らした。

うにょーん。

完全な液体というより、スライム状の何かのようだ。

濃い紫色をしている。

「これはね、こうするの」

フレイナは、それをこねこねと混ぜ合わせる。

やがて大きく引き伸ばし、ナスみたいな形になった。

さらに、フレイナは指先に魔法陣を浮かべて、ナスを通す。

ナスは赤茶色に変わった。

「これをこうして…はい、完成!」

赤茶色のナスを魔装具の上に乗っけて、フレイナは両手を広げた。

「じゃじゃーん! イセくんの席です!」

「…僕の席?」

「うん。さ、一緒に行こう?」

「行くって…どこに?」

話の読めない僕に、フレイナは笑顔で答える。

「モンスター退治、だよっ」

 

 

とにかく乗ってと言われたので、僕はフレイナが用意してくれた椅子に座った。

フレイナも、僕の前に横座り。

すると、ホウキは宙に浮いて、夜空へ飛び立った。

「わっ…すごい、飛んでる…」

思わず声が漏れる。

「えへへ。これも、あたしの魔法だよっ」

空飛ぶ魔法のホウキ…。

まるで、夢でも見てるみたいだ。

「さて、モンスター退治のために、大通りに行くよ!」

「えっ、僕、そんなことしたことないよ…?」

「大丈夫。あたしがやっつけるから。イセくんには、それを見てほしいんだ」

見てて、と言われても…。

「実はね、あたし、めっちゃ強い魔女なんだよ」

「…そうなの?」

そんな風には見えない。

「そう! …まぁ、普段は秘密にしてるんだけどね」

「秘密…?」

じゃあなんで、僕には見せてくれるんだろう。

そう聞き返そうとした時、フレイナは自慢を見た。

「あっ、そろそろモンスターが出たところに着くよ」

ホウキがゆっくり降下して、地面にたどり着いた。

座っていた僕たちが降りると、ホウキは小さくなって、フレイナの手の中に消える。

「じゃあイセくん、しっかり見ててね。…今から、モンスターをおびき寄せるから!」

ゴワッ!

フレイナが両手を地面につけて、大きな魔法陣を浮かべた。

「さあ、来いッ」

魔法陣は、夜の闇の中で怪しく光る。

光が中心にあつまり、黒い物体を呼び出した。

うにょーん。

物体は、魔法陣の光に引っ張られるように、細長い体を空へと伸ばす。

そのうち、顔みたいなものが現れた。

なんだか、ヘビみたいな生き物だ。

体長4メートルほどだろうか。

「…やっぱり! またキミだったんだ!」

キュオーッ!

フレイナの声に、ヘビが威嚇の声を出す。

「懲りないサーペントくんめ! 何度来ても、あたしが追い払っちゃうんだから!」

フレイナは空に手を掲げ、手の中がらホウキを出現させた。

フレイナはホウキをつかむと、それを頭上でぶんぶん回す。

その間に、ホウキの円柱の配置が変わっていく。

「勝負だっ!」

フレイナが振り下ろすと、それはもうホウキじゃなくて、大きな槍になっていた。

 

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