転生勇者イセカイザー   作:楽雁つばさ

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1-4「勇合転生」

キュオーッ!

大きなヘビがフレイナに襲いかかる。

「やぁっ!」

フレイナは、槍を蛇に突き出した。

ヘビは体を大きくくねらせて、それを回避する。

キシャーッ!

体勢を立て直して、ヘビがまた襲いかかる。

「えいっ!」

フレイナは、突き出した槍を地面に突き刺して、棒高跳びのように大きくジャンプ。

ヘビをよけた。

「いくよっ!」

後ろに回り込んで、ヘビの尻尾を狙う。

ザクッ!

槍の先端がヘビに刺さった。

クシャーッ!

ヘビが苦しそうに鳴くと、フレイナは槍を抜く。

ギャシャーッ!

怒った蛇は、その尻尾で槍を弾き飛ばした。

「わっ!」

慌てて拾いに行こうとするフレイナ。

蛇が大きな口を開けて、彼女を食べようとする。

「美味しくないよッ!」

フレイナは右手から火を出して、蛇を威嚇した。

身を引く蛇。

その隙に、フレイナは左手で槍を取り戻す。

「まだまだぁ!」

右手の火を刃先に移して、両手で槍を突き出した。

ザシュッ。ヘビの体を貫いた。

グシャアアーッ!

ヘビの悲鳴が響く。

「あっ、ごめん! ちょっとやりすぎたかな…」

心配そうに見るフレイナ。

対して、蛇は彼女をキリッと睨み、地面に尻尾を突き刺した。

すると、まるで水しぶきのように、地面から土が溢れ出した。

土は蛇を飲み込んで、大きな山になる。

やがて、その頂上から、蛇の顔が現れた。

ギシャォオーン!

雄叫びを上げて山から飛び出した蛇は、もう蛇じゃなかった。

体が太くなり、小さな前足と、大きな後ろ足が生えて、顔は凶暴になった。

その全長は、大体15メートルくらい。

まるで、恐竜だ。

「うわわっ! そんなに大きくなるなんて、聞いてないよっ!」

フレイナは槍を構えるけど、恐竜はそこに、大きな尻尾を叩きつける。

ベキッ!

「あーっ!」

槍は、真っ二つに折れてしまった。

「ふ、フレイナ、大丈夫なの!?」

思わず、声を上げて確認すると、

「イセくん…どうしよう、大丈夫じゃないかも…っ」

フレイナは涙目でこっちを見ていた。

「そんな!」

めっちゃ強いって言うから、大丈夫なのかなと思って見守ってたのに。

「だって、こんなに大きくなるなんて、思わなかったから…っ」

フレイナは、今にも泣き出しそうだ。

僕は彼女に駆け寄った。

「と、とりあえず、逃げよう!」

言いながら、その手を取って走り出す。

恐竜も、僕らを追ってくる。

だめだ、すぐに追いつかれる!

「くそ、もっと早く走らないと…![

呟くと、突然、僕の左腕が光った。

「えっ!?」

「わっ!?」

揃って驚きの声を上げる僕らは、光の中に飲み込まれる。

 

次の瞬間、僕は見知った運転席に座り、ハンドルを握っていた。

「あれっ!?」

いつのまにか僕は、僕自身の愛車、カイザーに乗っていたのだ。

助手席にはフレイナが居る。

「あれ? えっ? ここどこっ!?」

混乱してキョロキョロするフレイナは、立ち上がろうとして、屋根に頭をぶつける。

「あいたっ!」

そりゃそうだ。普通車の中で人が立てるわけがない。

「じっとしてて!」

僕は視界に映るものを改めてを確認した。

…どうやら、今の僕は、さっきの大通りを、カイザーに乗って走っているらしい。

ミラーを確認する。

時折、恐竜の足が映る。

それにシンクロして、時折背後から大きな振動が来る。

つまり、恐竜はまだ、カイザーに乗った僕らを、追いかけて来ているんだ。

何でこうなったかはわからないけど、車に乗れたのなら、自分の足で走るよりも全然良い。

「このまま、振り切るよッ!」

アクセルを踏んで、カイザーを加速させる。

「うわっ!? 何これ!? …ひょっとして、イセくんの魔法…?」

魔法って…。

もしかして、フレイナは車に乗ったことがないのかな。

「とにかく、説明は後でするから!」

何よりもまず、恐竜から逃げ切らないと。

「う、うんっ!」

フレイナが頷いて、前を見る。

「…あっ! ダメだよイセくん!」

けど、すぐに僕の視界を手で遮った。

「うわぁ!」

視界を確保するために、体をひねろうとして、思わずハンドルを切ってしまう。

「わああっ!」

「きゃあーっ!」

大通りから外れてしまい、カイザーは、野原に侵入した。

ガガガガガコン! ガガガガダダダダ!

激しい音を立てて、車体が大きく振動する。

とにかく、ブレーキを踏まないと!

ガコンガコンガコン!

ガダガダガダガタドドドドドグアシャーッ!!

…なんとか、無事に停車できた…らしい。

「ふ、フレイナ! 危ないよっ!」

「ご、ごめん! …でも」

フレイナは、さっきまでの進行方向を指差す。

「村に向かってたから…」

…えっ?

「…あっ、そうか」

大通りを走るってことは、その先にある村に向かう、ということだ。

僕らが村に向かうと、それを追って、恐竜が村に来てしまう。

フレイナは、その危険を察したんだ。

「…って、そうだ、恐竜は!?」

慌てて、その姿を探す。

大通りを挟んで向かい側の野原に、倒れ込んでいた。

なんだか苦しそうに、右足を抑えている。

…ひょっとして、突然軌道を変えたカイザーに蹴躓いて、転んだのかな…。

ギッ、ギァッ、ギシャアーッ!!

恐竜が立ち直って、こちらに向かってくる。

「やばい、逃げないと!」

なんて言うけど、困った。

このまま大通りを走ったら、村についてしまう。

かといって、逆走しても、そのうち別の村についてしまう。

通りを外れて野原を走る…には、路面が不安定すぎる。

カイザーでは満足なスピードを出すことができない。

逃げられない。

「それなら、あの恐竜を、大人しくさせるしか…!」

そう言った途端、また、僕の左腕が光った。

よく見ると、光っているのは腕じゃない。

腕についている、ガントレッド状の機械だ。

さっき、光の人が僕に押し付けたモノ。

ええと、たしか『お前の思う、お前の力』だったっけ…。

「なんとか、できる…?」

機械の光が一度消えて、また光った。

まるで、僕の言葉に、頷くかのように。

「…よし、やってみよう!」

決意すると、頭に言葉が浮かんだ。

そのまま、叫ぶ。

「勇合転生!」

 

一瞬、フワッとした感覚。

僕の体は、カイザーの屋根をすり抜け、ボンネットの上に立った。

運転手を失ったカイザーは、ひとりでに走り出した。

トランクルームを開けて、光のようなものを噴射し、その勢いで大きくジャンプする。

噴射が終わると、車体は宙を舞いながら、上下に分割された。

リアを基点に、上半分が180度、後ろに倒れた。

続いて、フロント部分が三分割され、僕が立っている中心以外の両端が、斜め後ろに迫り出した。

やがて、僕が乗っていた部分もパタパタと倒れ、僕ごと車体中央に格納される。

その瞬間、僕の意識は、カイザーと一つになった。

ルーフが足に。

トランクが膝に。

フロントが肩に。

ドアが腕に。

頭が出て、目が灯る。

口が勝手に、叫ぶ。

『転生勇者! イセカイザー!!』

 

ーーそれは、少年の持つ力。ーー

ーーそれは、強き戦士としての姿。ーー

ーー生を転じて成り遂げた、勇ましき者。ーー

ーーその名は。ーー

ーー『転生勇者 イセカイザー』!!ーー

 

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